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《初心者コーナー》最終回
ボディビルの心がまえと基礎知識

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月刊ボディビルディング1971年2月号
掲載日:2018.07.28
 11、12、1月号の3号にわたり、「初心者基礎6種目コース」を紹介してきましたが、このシリーズの最終回として、トレーニング、食事、睡眠、その他について述べ、締めくくりとします。

トレーニング頻度、時間

 ボディビルをやれば筋肉が発達するからといって、むやみやたらに行なっては逆効果です。
 週に3~4回、各々30分~1時間半も行なえば充分です。
 ただし、週に3回行なうとしても、月、火、水曜と続けてトレーニングを行ない、木、金、土、日曜と休むのはよくありません。
 月、水、金、または、火、木、土曜と1日置きに休養日を入れて行なった方が効率的です。
 トレーニングを行なう時間に、特别な事情がある場合はともかく、早朝、夜半は極力さけ、日中から夕方に行なってください。
 トレーニングの所要時間は、ボディビル開始1~2週間は、30~40分(各種目とも1~2セット)で充分で、1ヵ月ぐらいたったら、1時間(各種目とも3セット)ぐらいは必要といえましょう。
 以上のようなことは、平均的な初心者に対するもので、特に体力のすぐれている人、スポーツ競技を行なっていた人などは、体力、目的に応じ、トレーニング頻度、時間などを多少ふやしてもよいでしょう。

トレーニング種目の順序

 スクワット、スタンディング・プレス、ベンチ・プレス、ベント・ロー、スタンディング・スロー・カール、シット・アップの順に行なうように当技術委員会では勧めています。しかし、そのような順序に行なわなければ効果が無いなどというわけではありません。
 これは、トレーニングの進行上、このような順序で行なった方が各種目とも運動がしやすく、効果も得やすいからです。例えばスクワットを最後に行なうと、疲れ(先に行なった運動のために)てやる気がなくなってしまう傾向にあるので、最初に行なってしまうとか、ベント・ローの前にスタンディング・スロー・カールを行なうと、上腕二頭筋が張ってしまい、ベント・ローを行なう際、上腕二頭筋に力が入って、肝心の広背筋に充分意識が集中できなくなる恐れがある、というような点を考慮したものなのです。
 このようなわけで、順序通りに行なった方がよいとは考えますが、絶対に順序通りにやらなければならないと、かたくなに考えることもありません。

重量、回数、セット

 重量は、開始1週間ぐらいは、運動姿勢を正確に覚えることを念頭に置き、軽めのものを用い、増量を考えない方がよいでしょう。
 そして、2週間ぐらいから、徐々に増量し、セット数も2セット程にふやすとよいでしょう。
 それ以後は、体力に応じて、重量、セットを増やすとよいでしょう。
 ただし、1~2回しかくり返せない重量の使用、極端に多いセット数は好ましくありません。
 最低5~6回くり返せる重量で、5セットを越えない方が好ましいようです。
 一般的な考えとしては、経験2~3ヵ月以内の初心者は、最高4~15回くり返せる重量で、10回ずつ3セットも行なえば充分です。
 (セットとは、例えばある運動種目を10回連続して反復したりすると、1セットということになり、休息をはさんで同一の運動種目を再び10回行なうと2セットといいます。しかし、1セットの反復回数は10回とは限らず、2回でも20回でも、1つの連続した反復運動は1セットということになります。)

増量方法

 増量方法はいろいろありますが、ここでは、初心者向きな順序と方法を紹介しましょう。
記事画像1
 以上のような増量方法が最もやりやすいでしょう。
 しかし、あまり先走って増量すると筋肉を痛めますので、徐々に増量するように心掛けてください。

準備体操と整理体操

 準備体操は、適当に行なってください。特に寒い時は入念に行なった方がよいでしょう。
 しかし、20~30分以上も行なうのは賢明ではありません。
 あまり、多過ぎる激しい準備体操は準備体操とはいえず、むしろトレーニングの域に入ってしまい、肝心の筋肉の発達を願う、重量物を用いたトレーニングの効果を妨げることになります。
 準備体操の必要は、身体の各関節の可動性をよくし、体温を高め、精神的にも意欲を高め、この後に行なうトレーニングのための、心身の準備をはかることを目的に行なう、というような点にあるのです。
 整理体操は、準備体操ほど重要とはいえませんが、トレーニングによって興奮した心身をほぐすために、やはり適当に行なってください。

食事

 初心者にとっても、確実にトレーニングを行なうことと、充分な、内容の高い栄養と睡眠が、筋肉を発達させるために肝要なことではありますが、あまり栄養に関して初心者は神経質になってはいけません。
 といっても、肉類、魚類、タマゴ、乳製品、大豆食品など、蛋白質を多く含む食品を、多少考慮して摂取することは必要といえます。
 さらに、野菜、果物などビタミンを含む、アルカリ性食品も適当にとるように心掛けるのも好ましいことです。
 発育期の人は、同時に、小魚などカルシウムを多量に含む食品を努めて摂取するようにすることも必要といえましょう。
 以上のような点にいく分か注意を払うことは、好ましいことではありますが、極端に神経質になる必要はありません。
 いずれにせよ、最も大切なこととは、美味しく食べることです。
 なお、食品とはいえませんが、いわゆる嗜好品であるタバコ、コーヒー、お茶、アルコール飲料などは、度を過ごしてはいけません。もちろん、刺激の強い食品、消化の悪い食品は、胃腸によくありませんので、やはり、度を過ごさないようにしましょう。

睡眠

 睡眠は、疲労を回復させるには、簡単で最上の方法です、逆に睡眠不足は疲労の原因になります。
 できるだけ8~9時間は寝るようにしてください。
 長時間寝ていても、熟睡できなければ、睡眠の効果も半減します。
 熟睡できるような環境を作ることも必要です。
 同時に、短時間で睡眠状態に入れるような安定した精神状態を保つことも重要なことです。
 興奮しやすい人は、就寝前にあまり考えごとをしないで、心を落ちつけるようにし、寝つきの悪い人は、その原因をつきとめ、寝つきをよくすることです。
 徹夜マージャンは、ボディビル愛好者にとって、きわめて好ましくありません。
 程々に切り上げて、睡眠をとるようにした方が賢明です。

トレーニングにおける諸注意

①《服装》冬は、からだを冷さないように、トレーニング用衣を多めに着てください。
トレーニング用衣は清潔にし、からだの動きが楽なものを着用すること。
不潔なトレーニング用衣は、非衛生的であるばかりでなく、他の人に不快な思いをさせるので、つつしんでください。

②《器具》器具の取り扱いには充分気をつけ、とめ金はしっかり締めてあるか、足元に器具がちらばっていないか、身近に人がいないか、よく確めてからトレーニングしてください。もちろん、器具を乱暴に取り扱ってはいけません。
器具が痛むばかりか、思わぬケガのもとになります。

③《運動々作》運動々作は正確に。初心者で、よく何でもかんでも重い物を上げればよいと感違いして、運動々作をでたらめにやる人がいますが、これはケガのもとになり、非効果的です。
また、自分の行なっているトレーニングがよくないのではと思い、ベテランのトレーニングのサルマネをしたり、あれも、これもしてみたいなどととまどってはいけません。
初心者にとって必要なことはまず基本的なトレーニング技術をマスターして、正確な動作でトレーニングすることです。

④《意欲的なトレーニングを行なえ》疲労している時、意欲のない時はトレーニングを軽減させるか中止すること。
だらだらとトレーニングしてはいけません。
意欲を持って、1つ1つのトレーニングに心をこめて行なうこと。
意欲があるかないかで、効果も違ってくるし、意欲のない時は、いきおい不注意になりがちで、事故やケガを起しやすいものです。

⑤《その他》ジムでは、器具を一人占めしたり自分勝手な行動は許されません。
また、他の人に不快感を与えるような、大きく粗野な気合を入れたり、下劣な言動は慎みましょう。
しかし、遠慮していては、思うようなトレーニングはできません。お互いにゆずり合い、助け合って、楽しく行ないましょう。
トレーニング中の人を笑わせたりいたずらしたり、格闘のマネをふざけてやってはいけません。重大な事故を起す原因になります。
わからないこと、不平、不満のある時は、指導員に相談すること。

初心者の心がまえ

 これからボディビルを始める人は、ぜひ、開始前の写真をとっておき、体位、体力の測定をしておくことです。
 そして、定期的にそれらを行なって保存しておくと、発達状況がよくわかり励みになるものです。
 ばく然とトレーニングするだけでは好ましくありません。 
 できるだけトレーニング日記をつけましょう。
 よく「オレには素質がない」と思い何もしないうちから自分の可能性を否定する人がいます。
 もちろん、誰でもミスター何々のような筋肉の所有者になれるとは限っていませんが、確実にいえることは、誰でも熱心に行なえば今よりは筋肉が発達し、体力がつくことは間違いないのです。
 長い間、やるだけやってみて、その結果「自分の素質はこの程度」と思えばよいのであって、やる前に決めつけるのは早計です。
 これから始める人の前途は洋々としているのです。なお、特に、病気を持つ人、心臓血圧に異常のある人、極端な病弱体質等の人は、信頼できる医師によく相談してから始めてください。
(JBBA技術委員会)
月刊ボディビルディング1971年2月号

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