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疲労回復のための食事法

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月刊ボディビルディング1974年9月号
掲載日:2018.07.20
明治製菓食品事業本部・栄養士・野沢秀雄
 これまでに基本になる栄養素については栄養シリーズなどで説明してきたが、今回はこれらの応用術について述べてみたい。

 まず何といっても「疲労回復術」。ジメジメした梅雨のあと、汗がポタポタ流れおちるサマーシーズンがやってきた。夜は寝苦しく食欲もおちてくる。

 バテやすい季節のリリーフとして次のような方法をやってみたら?

「疲れに甘いもの」

 登山やハイキング、水泳に氷砂糖を持っていくのは、疲労をとるのに良い、という昔からの知恵のため。すなわち、砂糖やぶどう糖・果糖など甘いものは「分子量」といって構成する原子の数量が小さいため、体内で消化・吸収されやすく、すぐにエネルギーに変わる性質を持つ。疲労した部位に着くやいなやパワーに変わるので、すみやかに体力が回復する。

 最近デパートや薬局で売られている果糖はこの効果が大きい。というのは、体内を流れるスピードが、ぶどう糖の3倍から7倍はやく、超特急ひかり並みといったところ。マラソンの途中にコーチが飲ませる飲み物にこの果糖が使われていることは案外知られていない。

「成人病にもよい果糖」

 NHKテレビの銀河ドラマに「言うたらなんやけど」という放映があり、その中に食事コンサルタントを登場させて“果糖は太りにくく、とてもよろしいです”というセリフをのべさせていた。確かに甘味度が高いので少量で甘さが得られるほか、体内への吸収率がぶどう糖の約43%のため太りにくい甘味料といえよう。またインシュリンというホルモンを消耗しないでエネルギーに変わるので、糖尿病でインシュリンの分泌が悪い人には都合がよい甘味料だ。

 ただし、カロリー過剰の場合は脂肪に変わるが、そのスピードもぶどう糖より速いので、つねにカロリーコントロールをしながら果糖を食べるのがよい。これにより動脈硬化や、それに起因する高血圧・心臓病・脳いっ血・腎臓病等、いわゆる成人病の悩みから一歩解放されることになる。

「水のがぶ飲みや冷たい物は」

 さて甘い物がいいといってコーラやソーダを飲みすぎることはよくない。確かにスプーン5~6杯分の砂糖がふくまれ、炭酸の泡と共にのどをうるおし、“スカッとさわやか”にしてくれるが、飲みすぎると砂糖過剰で、酸性体質になり、いっそうバテやすくする。

 水を飲むなといわれるのは、唾液や胃の消火液の分泌を悪くするからである。胃腸が重苦しく、いつまでも消化されないまま残るので、必要最小限にした方がよい。また飲んだ水はトレーニングと共に汗になるが、このときミネラルが消耗される。前にも述べたように、悪い重金属が流れてクリーニングされるのはよいが、ナトリウム、塩素、カルシウム、カリウムなど有用な物質もなくなるので、体液のバランスが失われる。

 アイスクリームやアイスキャンデー、氷水など冷たいものも同様に、一時的には気分をよくするが、胃腸の消化作用を弱め、バテる原因になる。

「この食品が疲労をとる」

 水をあまり飲まないで疲労をとるには、レモン・梅干し・酢などがよい。これらは唾液中の酵素プチアリンの分泌を高めてくれるほか、胃の酸度を調整し活動をさかんにする。そのうえ筋肉のグリコーゲン不足を補う効果もあるので、おすすめできる食品だ。レモンのひとかけらを口に入れていると、のどのかわきが不思議に感じなくなるものだ。

 ビタミンB1・B2等も疲労回復によいので、白米より、七分づき、五分づき、三分づき、あるいは玄米や麦ごはんにした方が効果がある。にんにくもビタミンB1の作用を高めてくれるので愛用者が多いが、臭いの気になる人には脱臭してパウダーになった製品も各社から発売されている。牛肉よりも豚肉にB1が多いことも覚えておこう。
月刊ボディビルディング1974年9月号

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