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なんでもQ&Aお答えします 1974年12月号

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月刊ボディビルディング1974年12月号
掲載日:2018.07.29

中高年者の脚・腰の鍛練法

Q 年令48才、息子(ボディビル歴6ヵ月、21才)に説得されて、つい最近、健康法としてボディビルを始めました。トレーニングは息子の指示にしたがってごく軽く行なっていますが、終了後はたいへん爽快な気分になります。経過も良好で心身ともに若がえってきたようです。そこで、おたずねしたいのですが、歩行、階段の昇降などにおける体力を強化するにはどんな運動を行えばよいのでしょうか。毎日が忙しいので短時間で行うことができ、しかも有効な運動法をご指導ください。
(埼玉県・井上昭治、管理職)
A 年輩の人がボディビルにいそしんでいるということは、多少ともボディビルの啓発にたずさわるQ&Aの担当者としてもまことに嬉しいことです。
 わが国において、ボディビルの組織立った啓蒙運動が始められてから約20年経ちますが、中・高年者の健康法としてのボディビルの有効性は、いまだ十分には理解されていないようです。ボディビルは、各人の体力において、許容できる範囲でトレーニングを行えば、中・高年者にとっても非常に有効な健康法であるといえます。
 そのような意味で、あなたも、ボディビルに正しい認識をもって、今後ますますトレーニングにいそしんでいただきたいと思います。
 さて、質問についてですが、トレーニングの時間に制限があるということですので、その点を考慮してお答えします。
 歩行および階段の昇降時における身体的な能力を強化するには、当然のことではありますが、脚、腰を鍛練する必要があります。それもたんに筋力を強化するというだけでなく、筋の持久力をも強化する必要があります。また同時に、長時間の歩行や、比較的強度な運動である階段の昇降に耐えるには心肺機能を強化することも大切になります。
 それには、まず脚、腰を強化するための運動の反復回数を、ごく一般的な回数(8~12回)にとどめないで、ハイ・レピテーション(多回数)で行うようにすることと、次に、心肺機能を強化するために、体力を比較的激しく使用する運動種目、および運動方法を採用してトレーニングを行うことが必要になります。
 では、具体的にそれらに必要な運動種目を説明しましょう。

○スクワット

 スクワットは大腿四頭筋と大殿筋をおもに強化する種目であり、これらの筋は、歩行および昇降運動において体重を支え、からだを移動させるために重要な働きをします。

○ヒンズー・スクワット

 この運動は、重量を使わずに行うスクワットのことで、できるだけ多く反復するようにします。効果の面についていえば、重量を用いて行うスクワットに比べて、筋力を強化するという点では劣りますが、筋の持久力を養い、心肺機能を強化するには非常に有効な運動です。

○フロント・キック

 これは、立った姿勢で、できるだけ膝を曲げないようにして、片脚ずつ前へ高く振りあげる運動です。1回ずつ左右交互に脚をあげるようにしても、また、1セットずつ交互に脚を変えて行うようにしても、どちらでもけっこうです。ただし、筋力を強化するという点を考慮すればいずれの方法で行うにしても、反動をできるだけ使用しないように行うのがよいでしょう。
 この運動は、歩行および階段の昇降における脚の振り出しと、脚を高くあげるための役割をする腸腰筋の強化に有効です。また、後述する大腿筋膜張筋にも有効です。

○オールターニット・ニー・レイズ

 この運動は、いわば足踏み運動のことで、背すじをできるだけ曲げないようにして、脚を可動範囲いっぱいまで高くあげるようにします。効果の面については、フロント・キックとほぼ同じです。

○サイド・キック

 立った姿勢で、一方の脚を伸ばしたまま、真横へあげます。大腿筋膜張筋と中臀筋に有効です。大腿筋膜張筋は、歩行および階段の昇降運動において、軸脚でからだのバランスを保つのに作用します。また、からだを斜め、あるいは横へ移動するのにも強く作用します。

○ヒール・レイズ(カーフ・レイズ)

 両足の間隔を腰幅くらいにとり、厚い板(または、それにかわる物)の上に土踏まずから後ろをはずすように立ちます。足をかける板(または、それにかわる物)の高さは、踵を下方へおろした場合に、限界まで十分におろしきることのできものでなければなりません。
 運動法は、脚を伸ばしたまま、踵の上下運動を可動範囲いっぱいに行うようにします。この場合、留意することは、体重が足の外側にかたよってかかることのないようにすることです。そのためには、運動中に、左右の經の間隔が拡がらないように両足の内側が並行を保つように足首を屈伸させます。柱などにつかまって、1セットずつ左右交互に片足ずつ行ってもよいのですが、その場合でも、両足で行うときと同じような要領で行なってください。
 この運動は、下腿三頭筋を主として、その他、下腿部の後部ならびに側部にある諸筋と、足底部の足底腱膜を強化するのに有効です。これらの筋を強化することは、歩行および階段の昇降などのとき、軸足で体重をバランスよく支える能力を高め、また、踵をあげる動作と、踵が浮いている状態での体重を支える働きを強めます。

 上記の運動が、歩行および階段の昇降時における運動能力を高めるためのごく一般的な補助運動であり、ボディビルの運動種目としても比較的初歩的なものです。あなたの年令でも、徐々にならすようにしていけば、容易に実行し得るものといえます。
 では最後に、これらの種目によるトレーニング・コースの1例を示してみましょう。このコースは隔目的に行うものです。
 ①スクワット 10回
 ②フロント・キックまたはオールターニット・ニー・レイズ 正確に行える回数
 ③サイド・キック 正確に行える回数
 以上の3種目を1セットずつできるだけ休息時間を短くして順次行う。体力的に余裕が生じてきたら2巡するようにする。
 ④ヒール・レイズ 正確に行える回数
 ⑤ヒンズー・シクワット
 心臓に害をおよぼさないと判断される範囲で、できるだけ多数回行うようにする。1セット。この運動は他のすべての運動を終えたあとに、一番最後に行う。終了後はただちに脚の力をできるだけ抜くようにして、脚を投げだすような感じで歩きながら、大腿部の緊張を完全にほぐす。そうすることによって、疲労を軽減し、回復を早めることができる。
[註]オールター・ニット・レイズとヒール・レイズは、大腿部のつけねと下腿部に疲労が残らないようだったら連日行なっても結構です。
 また、以上の補強運動によって脚力が強化されてきたならば、ナワ跳びとランニングを少しずつ行うようにすればなお効果があります。
(担当・竹内 威)

大腿二頭筋の発達を促すには

Q ボディビル歴1年8ヶ月、自宅でトレーニングを行なっているものです。私はボディビルの運動の中でも、とくに下半身の運動が好きです。そのようなわけで、大腿部の発達が他の部分に比較してかなりよいようです。
 しかし、その大腿部について、まったく不満がないわけではありません。その不満というのは、大腿四頭筋に比べて大腿二頭筋の発達が弱いことです。ジムでトレーニングを行なっているのでしたら、レッグ・カール・マシンを使用することで大腿二頭筋を発達させることは容易と思われますが、現在はアイアン・シューズもありません。特殊な器具を使わずに、大腿二頭筋を1人で鍛えることのできる運動はないものでしょうか。
(神戸市・林田)
A レッグ・カール・マシンやアイアン・シューズ等の大腿二頭筋を鍛えるための特殊な器具を使用せずに、しかもパートナーもいず1人で大腿二頭筋を強化するというのはかなりやっかいな問題です。やはり特殊な器具やパートナーに協力してもらって行う方法に比べると、効果の面では劣るようです。
 以上のことを前提として有効な種目を紹介しましょう。

○ベント・オーバー・ニー・ロッキング

〈かまえ〉バーベルを両肩にかつぎ安定のよい幅に両足の間隔をとり、上体を床と平行近くまで前倒する。このとき、背と腰を反らして弯曲した姿勢にならないように留意する。
〈動作〉上体が起きないように注意して、前倒した姿勢のまま、両膝を前後に浅く屈伸する。
〈注意事項〉膝を伸ばすときは完全に伸ばすこと。顎にシャフトをかけると顎を痛めるおそれがあるから重量はあくまでも肩で支持するようにしなければならない。背と腰を弯曲して行なったり、無理な重量を用いて行うと腰を痛める危険があるので、とくに注意する。

○ボディ・アーチによる方法

〈かまえ〉両膝を立てて床に仰臥し適当な重さのプレートを腹部にのせ落ちないように両手で押える。両踵の位置は、両膝の下よりも遠く、次に説明する動作を行なったときに、大腿二頭筋の抵抗をもっとも強く促すことのできる位置に定める。
〈動作〉肩と両足を支点にして、アーチをつくる要領で殿部を床から浮かし、上下運動を行う。この場合、両足にかかる重量を、踵へ手前へ引き寄せるような感じで支えるようにする。つま先の方向へ力がかかるようにして重量を支えると効果が半減する。

○アイソメトリックスによる方法

〈かまえ〉ベンチの長さの方向に沿って座り、両膝をそろえて立て、ベンチの縁に両踵をかける。上体は少し後ろに倒し、手をついて支える。
〈動作〉ベンチの縁にかけた足踵を手前に引きつけるようにして徐々に力を入れ、十分に力の入った状態を6~12秒間持続する。一定の角度のみを行わずに、膝の角度を変化させて行う。大腿二頭筋の緊張は、膝の角度が小さくなるほど下部から上部へ強くおよぶようになる。

 その他の方法としては、自転車の古チューブを利用して行う方法もあります。チューブの一方を柱などに固定し他の一方を踵に引っかけて膝を屈伸すればかなり効果を得ることができます。
(担当・竹内 威)

上腕二頭筋を発達させるには

Q ことしの4月にボディビルを始めました。自分でもまだ初級者の段階にあると思っていますので、運動はすべて、反動を使わずに正確な動作で行なっています。
 これまでの発達状況はまあまあのところですが、ひとつ不満なのは、上腕二頭筋が開始時とくらべてあまり変わりばえしないことです。開始時のカールの使用重量は15キロでしたが、現在は25キロで行なっています。そして自分なりに正確な動作で行なっているつもりですが、使用重量の増加の割には上腕二頭筋の発達が悪いようです。
 筋の肥大は、筋力の向上とほぼ比例していくということから考えても納得できません。いったいどのような原因によるものでしょうか。
(浜松市・原田 21才)
A 筋力は筋の断面積にほぼ比例するということから考えると確かにおかしな現象と思われます。しかし、筋力が10キロも向上したのに、筋の肥大がほとんど認められないというのは、それなりの原因があるものと考えられます。
 あなたの練習を実際に見ることができないので、推察による答しかできませんが、やはり運動法に誤りがあるのではないかと思われます。
 自分では正しい動作で行なっているつもりでも、案外間違った方法で練習している場合があるものです。あなたもひょっとすると次のような方法で行なっているのではないでしょうか。
 というのは、カール運動は、たとえ反動を使わなくても、やり方によっては比較的思い重量を容易にあげることが可能な種目なのです。
 カールの正しいやり方は、A図のように上腕部をあまり動かさないで、肘を支店にしてバーベルを巻きあげるように行うのですが、あなたの場合は、B図のように、動作開始とともに両肘をいくらか後方に引きあげ、その位置から肩を軸として上腕部を前方へ動かしながら巻きあげるようにしているのではないかと思われます。
記事画像1
 このような運動動作によれば、たとえ反動を使っていなくても容易に重い重量があがるものです。開始当初の軽い重量のときは肘を支点とした正しい動作で行なっていたものが、運動に馴れ、重量が重くなるにつれて、いつしか引きあげ運動を加えた容易な方法で行うようになってしまったのではないでしょうか。
 もしも、この推察どおりであれば、使用重量が増えたにもかかわらず、上腕二頭筋の発達があまり得られないという現象も当然の結果といえましょう。
(担当・竹内 威)

上腕三頭筋の長頭を太くしたい

Q ボディビル歴は2年3ヵ月です。上腕三頭筋の強化種目としてフレンチ・プレス・ライイングを採用しようと考えています。この運動にはアンダー・グリップによる方法とオーバー・グリップによる方法とがありますが、上腕三頭筋の長頭のバルクを増すのにはどちらの方法で行うのが有効でしょうか。
(姫路市・土方嘉男)
A 結論からいうと、どちらともいいかねますが、強いていえば、条件つきでオーバー・グリップによる方法の方が有効と考えられます。
 上腕三頭筋は、文字どおり外側頭、長頭、内側頭の三頭からなっています。
 アンダー・グリップによる方法は、長頭を比較的容易に刺激することができる点で、オーバー・グリップによる方法よりはまさっていますが、重い重量の使用が困難だという点では逆に劣っています。実施者が、上腕三頭筋、とくに長頭の発達が弱くて、運動中に上手に使用筋を意識することができずまたは、運動動作が未熟で、的確に長頭を刺激し得ない場合には、アンダー・グリップによる方法で行うのが適していると考えられます。しかし、握り方の関係上、ある程度の重量に到着すると、重量を維持するのに上腕三頭筋よりも手首に困難がともなうようになり、長頭の抵抗を十分に促すことがむずかしくなります。したがって、初めのうちはアンダー・グリップによる方法で行うのもよいですが、ある程度の重量に到達したならばオーバー・グリップによる方法で行うことが必要になります。そして、場合によっては、オーバー・グリップによる方法で行なったあとで、それを補足する意味でアンダー・グリップによる方法を実行するのもよいでしょう。
 アンダー・グリップによる方法で長頭を的確に刺激するには、両肘を外側に向けないように、腋をしめるような感じで、上腕部を外側へしぼってバーベルを支え、運動中、とくにバーベルを挙上するときに肘を外側へできるだけ向けないようにします。
 また、フレンチ・プレスは肘を痛めやすいですから、必ず軽い重量でウォーミング・アップを充分にしてから、重い重量を使用するようにしてください。
(担当・竹内 威)

健全な学生生活の基本条件

Q 今春大学に入学しました。地方から上京して生活環境がガラリと変わり、私がいままでいだいていた大学生活の夢と現実の違いにガックリきました。
 そんなとき、本屋の店先でボディビルディング誌を立読みし、おもしろそうだったので買って帰りました。そして、35キロのバーベル・セットとダンベルを購入して3ヵ月ほど前からトレーニングを始めました。
 現在の生活は、睡眠9時間前後、練習は毎日1時間、食事は、朝食は食べず、昼は大学食堂(300円位)で、夜は外食(300円~500円)です。
 これからの練習や食事についてご教示ください。
(東京・二宮)
A 「青春とはなんだ」ということはよく聞く言葉です。生活環境が大きく変わったり、夢と現実に大きなへだたりがあったとき明日への希望を失い、生きる望みさえなくすことがあります。
 正義感や反抗心、自尊心、理想主義、冒険心といった、青年期に特記される現象は、精神や肉体の不調和によって起こるものです。
 しかし、それらの大半はスポーツによって矯正することができます。君が偶然、ボディビル誌を手にし、トレーニングを志したのはいいことです。勉学とスポーツをうまく取り入れたリズムある生活設計を立て、健康で有意義な青年時代を過してください。
 日常の生活設計をする場合、睡眠、栄養、運動を考えねばなりません。
 睡眠は肉体的、精神的疲労を回復するために十分とる必要があります。睡眠時間は個人差はありますが最低7~9時間必要です。前夜12時間寝たから次の夜は6時間でもよいというものではありません。毎日規則正い睡眠でなければなりません。また、就寝する時刻もなるべく一定にすることです。いくら睡眠時間が同じであっても、夜10時頃寝たのと、明け方4時頃寝たのとでは疲労回復の程度が違います。
 練習については内容が書いてないので詳しいことはわかりませんが、毎日1時間程度の練習なら適当だと思います。ただ注意しなければならないのはボディビル開始当初は、どちらかといえば軽すぎるくらいの練習量で始め、徐々に練習量を増やすようにすることです。疲労が翌日まで残るようでしたら、バーベルやダンベルの重量物を用いないで、徒手体操とかナワ跳びで軽くすませ、疲労が完全になくなってからまた始めてください。
 栄養については、朝食が欠けているのはよくありません。とかく一般的に朝食を軽視しがちですが、生理学的にいっても朝食をもっとも充実させるべきです。昼、夜食の内容はわかりませんが、外食はどうしても偏食しがちになるものです。外食の他に、果物や牛乳、糖分等の摂取も手軽に心掛けるようにしたいものです。工夫次第でそれほど費用をかけずに、しかも簡単な方法で栄養がとれます。
 たとえば目玉焼、さばやいわしの罐詰、とまと、キャベツといったようなものを組み合わせれば蛋白質やビタミンの不足を補うことができます。
 大学生の単身生活者は年々増加の傾向にあります。そして、肥満型かやせ型のいずれかに属している人が大部分です。若さにまかせて、栄養、睡眠をおろそかにしていると、いつか必ずとりかえしのつかないことになります。人格形成と健康維持のために、長くボディビルを続けてください。
(担当・能丸康司)

糖尿病と診断されたが

Q ボディビルを始めて3年になります。24才の会社員ですが先日、からだの調子がよくないので健康診断をしてもらったところ糖尿病といわれました。
 トレーニングは日に1時間ぐらい近くのジムでやっていますが、糖尿病でも影響はないものでしょうか。身長は165cmで体重は78kgです。
(神奈川県・木島)
A  糖尿病は過血糖による変化から、糖の代謝不全が原因で、膵臓のランゲルハウ島(B細胞)から分泌されるインシュリン不足が呈する疾患です。
 過血糖、および糖尿は、脳下垂体前葉の発生する因子であり、また、肝臓における脂肪、蛋白の過剰摂取によってインシュリンが拮抗的に働く場合があります。インシュリンは膵臓のランゲルハウス島の細胞から毛細血管、門脈をとおり、肝臓に吸収され、ここで好酸性のA細胞と、好塩基性のB細胞に分別されるのが通常で、尿に糖が出現することは以上の細胞が変性したり破壊されたりして機能不全を起こすからです。
 インシュリンは糖代謝に対し基本的に関与し、機能不全は十二指腸に流出するもので、トリプシン、ステプシンなどを有しデンプンを分解します。つまり、自家消化作用を生じ、膵臓壊死または脂肪壊死となります。膵臓は筋層を有しており、脂肪の代謝機能に関与し、ホルモンの不足、身体の脂肪の調節、蓄積に働きかけます。
 このようにして、脂肪の代謝不全が起ると、血症を伴い、糖尿病に陥り、細胞内に脂肪の沈着が著名であります。こうした現象は、若年者にも見られ、機能過多によって死亡する例もあります。急性炎症では、腸チフス、天然痘、流行性耳下腺にみられ、また胃潰瘍、化膿性リンパ節でも見られます。慢性炎症は再生、肥大の現象が著しく、結合織の増加も見られます。特殊な例として、結核、梅毒、嚢胞に見られる場合もあります。
 膵臓の腫腸は、細胞腫、筋肉、軟骨腫、リンパ管内に腫瘍があります。症状が複雑であることと、1回の尿検査で糖が出ることは通常でも起こります。あなたの場合は、数回の検査から糖尿病の診断があったものと思われます。
 インシュリンは食事量によって起こります。糖尿病に対する注意の第一条件は糖質、蛋白、脂肪の食事療法と、1日の総カロリーを決定することです。間食をさけ、合併症がなければ、酒1合、ビール1本程度ならそれほど影響ありません。急激にカロリー数を減少することなく、徐々に減少し、また、過激でなければ健康であることと、消化作用や、発汗のためにボディビルはよいでしょう。病気には影響はないと考え、むしろ食事療法を一日も早く実行することです。
(担当・能丸康司)

中年以降の人に多い肝硬変症

Q 28才の会社員です。ボディビル歴は5年です。酒はもともと大好きで、いまでもジムの帰りに必ずといってよいくらい飲みます。
 ところが、最近、腹部に痛みを感じ日光浴をしないのに全身の肌が黄身をおびてきました。また、かゆみもあり、寝つきが悪いので寝就前ビール1本は最低飲みます。どこか悪いところがあるのでしょうか。
(大阪府 S・T38才)
A 中年以降の人にとくに多いウイルス性疾患で、肝炎が原因し、肝硬変症を起こしているものと思われます。そのままほっておくと下血、嘔吐が続き、最悪の場合は死亡することもあります。
 健康な人間の血液中(血清)には、1.0%以下の色素(ビリルビン)が含まれています。体内の病変によって色素の過剰障害が起こり、全身の皮膚や重篤な患者においては、内蔵の諸臓器が黄疸と称し、粘膜や細胞が黄染されています。これはビリルビンの血球が破壊されるためで、健康な人は尿中にウロビリノーゲンとして排泄されているのです。
 血液から肝臓の処理能力を超えますと尿中に排泄されることはみなさんも経験ずみのことです(大量に酒を飲んだ翌朝の第一尿が黄色調に見える)。これは知覚神経を刺激する胆汁酸塩が、皮膚のかゆみを増強し、さらに迷走神経を刺激して、不眠、興奮、徐脈となり、肝臓の細胞機能は壊死に陥いり、中毒、栄養障害、伝染病を併発して死亡することになります。
 もちろんボディビルを行うことは困難不可能であり、嘔吐、腹痛、下痢、便秘の症状を呈し、肝不全で急死する例もありました。
 医学の進歩とはいえ、肝臓の障害は外見的に察知できないものです。このため早期発見は困難であり、もちろんあなたのように毎日何回も酒を飲むのは有害です。ビルダーの諸君は肝に命じておくことです。
 体力が向上し、運動量が増加したからといって酒量も増加することはまったくありません。
 肝炎ウイルスの患者が学校、病院、ジム、下宿先などの集団生活に加わっていると食物や飲料水で経口的に感染する例もあります。微熱、食欲不振、悪心、嘔吐があり、それが2~4時間持続したなら肝炎ウイルスと疑ってよいでしょう。比較的短時日に治療できますが、まずおかしいと思ったら検査を受けることです。肝臓はビリルビン代謝、糖代謝、蛋白代謝、脂質代謝、解毒代謝のそれぞよの機能を有しております。肝臓は常に人間の重要な生理機能を営む宝物です。なによりもふだんの心掛けが必要です。
(担当・能丸康司)
[解答は59ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生と慶応大学医学部法医学教室・能丸康司先生]
月刊ボディビルディング1974年12月号

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