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★スタミナ栄養シリーズ特集版★
"腹をひっこめる方法"

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月刊ボディビルディング1977年9月号
掲載日:2018.07.28
ヘルス・インストラクタ一 野沢秀雄

1.コンテストのレベル急上昇

77年度ミスター関東学生大会をトップに全国各地で,健康美とカを競うコンテストが今夏も盛大に開かれている「日ごろ鍛えた成果を力いっぱい発揮してみんなに見せよう!」というファイトや意気が感じられ,いつもながら気持のいいものだ。学生コンテストは従来から「キャリアが3~4 年の選手が出場するのだから,一般コンテストに比べてレベルが低くても止むを得ない」と思われてきた。だがどうだろう,回数を重ねるごとに出場選手のレベルがだんだん高くなってきた。前月号のグラビア写真からわかるように,上位3選手,専修大学臼井修選手・青山学院大学南研造選手・法政大学高西文利選手,それにオープンの部優勝の日本医科大学阿久津一己選手・日本大学佐藤勉選手など堂々たる筋肉の発達がみられ,社会人コンテストに出場しても相当に良い成績をあげるだろう。
 とくに感心することは,体をひきしめて,デフィニションを良くする方法をマスターしていることだ。講評にあたられた窪田登先生も「出場するときに腹筋の切れをはじめとして,全身の脂肪をきれいに無駄なくとる方法を選手たちは体得したようだ」と語っておられる。

2.一般人は腹をあまり気にしない

 夏のシーズンになって,ランニングシャツで仕事をしている人を見かける機会が多い。重い荷物を運ぶ運転手の人たち,建設や土木の仕事にあたる人たち,商店で汗まみれで働く人たち一一これらの中に「うあーずいぶん太い腕だなあ。肩巾も厚みがあって広いなあ」とびっくりすることがある。ところが腕・肩・胸・脚はすばらしく発達しているのに「ポコン」と腹が出っぱっている。とくにTシャツやランニング姿だと腹のでっぱりが特に目立つのだ。これでは「せっかくのいい体がシンデレラー」だ。
 「おれたちはよう,とくにバーベルを使って意識して体をつくったわけでないから腹が出ても気にしないんだ」「うまいものを食って,毎日生活してるからこれでいいんだ」と,まるで平気である。美的感覚という点でわれわれより相当に差がある。いや「美しいスタイル」というより,「健康」という観点からみて,腹が出て脂肪がついた状態は決して好ましいものではない。下表はアメリカ生命保険協会が1959年に発表した「肥満と死亡率」の関係表である。太っているほど成人病にみまわれやすい。とくに過剰な脂肪が腹部にたまりやすいので, キュッと引き締めておくほうがずっと「健康的」といえるのだ。
記事画像1

3.腹囲の大きいビルダーは注意を

コンテストに出場するくらいのレベルのビルダーなら誰でも「よし何が何でも腹を細くしよう!」とトレーニングと食事法で懸命な努力をする。ところが「健康管理にバーベルをあげている」というビルダーの場合, ともすれば腹囲について無関心になりがちだ。いや無関心というわけではないかも知れないが,実際に「自分の腹囲が何cmあるか」「皮下脂肪は何ミリあるか」具体的に測定して記録をとるまではいかない。「腹囲を1cmでも減らしてやろう」と決意すればかなりのところまではいくのに,徹底しようとしない。「自分はバルク型なのだから」とあきらめてしまっている。
 アメリカをはじめ世界のボディビルダーの傾向が,バルクからデフィニションへ,さらに血管が表面に浮かびあがるヴァスキュラリティへとすすんでいる。血管が目立つことが即筋肉の発達度や健康体であることと一致はしないが,「無駄な脂肪がとれている」という一つの証明にはなっているのだ。
 くもの巣のように目立った血管をビル・グラントやサージ・ヌプレが見せている。窪田先生は「これではケッカン人間と思われるくらいだ」と健康体力研究会に参加した人にシャレをとばして笑わせてくれたが,こんな驚異的な水準までゆかなくても,ある程度の無駄な脂肪は除去しておくのが望ましい。
 腹の出ている人は,皮下脂肪だけでなく,腸間膜や肝臓・心臓など体の内部にも「脂肪」が蓄積されている。いったん付着した脂肪は除去しにくいものであるが,最近の研究では,「脂肪組織も毎日毎日入れ替っている。ネズミの実験では約50日間で半分が入れ替わる」と発表されている。ぜひ次に述べるアドバイスのような方法で努力していただきたい。

4.腹をひっこめるアドバイス

「洋服を新調したときにウエストが大きくなっていて驚いた」という例が多いが,ビルダーならふだんウエストは何cmで,皮下脂肪が何ミリあるか,的確に知っておくことだ。メジャー1本あれば簡単に測定できる。皮下脂肪はヘソの横1~2 cmの部分を両指ではさみ,厚さをメジャーで読みとればよい。次の表は年令と腹囲・皮下脂肪,身長と腹囲の関係を示したもので,自分の場合と比較して参考にしてほしい。
<年令と腹囲・皮下脂肪標準値>

<年令と腹囲・皮下脂肪標準値>

〔'77関東学生コンテスト2位・南研造選手〕

〔'77関東学生コンテスト2位・南研造選手〕

<身長と腹囲の関係>

<身長と腹囲の関係>

なお, ビルダーの場合は「腹囲74cm以下,皮下脂肪10ミリ以下」をぜひ目標にしたい。皮下脂肪はホルモンの関係で男性的な人ほど少なく,逆に女性は2倍近く多いことが知られている。対策として第一は食事法だ。「体つくるためだから, うんと食べればいい」と,肉・魚・チーズ・タマ ゴ・プロティンなど食べすぎてはいないだろうか。体基1kg当り2gのたんぱく質を確保すれば,充分に体は発達する。食欲のままにガツガツ食べすぎると,カロリーがオーバーになった分は脂肪にかわってしまう。
 とくにコンテスト前の調整の場合はカロリーと糠質・たんぱく質・脂肪のバランスを考慮して,段階的に体脂肪を除去しなければならない。「健康維持にギリギリの段階である800カロリーくらいを目標にして成功した。最後の調整では500カロリーにした」とミスター日本に優勝した榎本正司選手は語っている。「やればできるんだ」という感銘を与えてくれたが,常時こんな低カロリーで生活するわけでは決してない。「ある期間だけで実行する」というのが正しい方法だ。
 去る6月26日に行われた関東学生ボディビル選手術大会で,バルク型からすばらしいデフィニション・タイプへと変身して2位に入賞した南研造選手は次のように語っている。
「無理に急激に減量するより,段階的に3ヵ月くらいかかって減量するほうがいいといわれ,食事法とランニングなどを行ないました。2月に88kgあった体重が4カ月後のコンテストのときには74kgになりました。14kgもやせてちょっと心配になって病院で診察してもらいましたが, まったく異常がないというので安心しました」一一栄光のかげに大変な苦労があり,それだけに入賞は尊く,大きな喜びであろう。
 対策の第二はシット・アップ, レッグ・レイズ,サイド・ベンドなどの腹筋運動のほかに, ランニングやジョッギングをおこなって走りこむことだ。距離は多くなくていいからマイペースで走ってみること。前述の榎本選手,南選手,阿久津選手はじめ,減量を決意したビルダーは走ることを日課にとり入れている。朝起きたときや,夜寝る前に走って成功する人が多いので参考にするといい。なお,「腹をひっこめるために甘いものをひかえている」といいながら,トレーニング中にコーラやソーダをガブカブ飲むビルダーを見かけるが,以前に紹介したように,糠分が一缶に約27gも含まれるので,やたらに飲むのはさけよう。
月刊ボディビルディング1977年9月号

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