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なんでもQ&Aお答えします 1978年4月号

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月刊ボディビルディング1978年4月号
掲載日:2018.07.21

全身的な運動種目とスケジュール例

Q ボディビルを始めて6カ月になります。筋力的には多少の向上が見られましたが,体位はほとんど変わりません。そのようなわけで,最近,医者にみてもらったところ慢性腸カタルと診断されました。
 医師の話によりますと、からだ全体を使うような種目を選んで運動を行うのがよいとのことです。これからはボディビルのトレーニングも,そのような趣旨にそった運動を採り入れてやっていきたいと考えています。
 そこで,より全身的と考えられる運動種目と,それらの種目を含めたトレーニング・コースについてアドバイスしていただきたきたく思います。(札幌市 久松謙二 会社員 24才)
A 医師の言われることの真意はより全身的な運動を行うことによって,からだの活力を増すようにすることだと思います。
 したがって,ボディビルのトレーニングにおいては、比較的からだ全体を使って行う運動と、からだの活力を高めるような運動とを重視して行うのがよいでしょう。しかし、そこで注意しなければいけないのは、運動が過度になってはいけないということです。過度な運動によって体力が消耗しすぎると、からだの活力が衰え、かえって胃腸の働きが低下してしまいます。では運動種目について説明します。

◎比較的全身的と思われる運動種目

初級者にも向く運動としてはハイ・クリーン,クリーン・アンド・プレスなどがあります。その他,ポピュラーな運動としては,スクワットも比較的に全身的な運動といえます。
【ハイ・クリーン】

【ハイ・クリーン】

①ハイ・クリーン

〈かまえ〉まず,バーベル・シャフトの下に両足の甲が位置するように立つ。両足の間隔は肩幅くらいか,それよりも少し狭いくらいがよい。
 次に,両膝を屈し,肩幅よりもやや広い間隔でシャフトをオーバー・グリップの握り方で握る。このとき腰の位置が肩よりも高い位置にならないように注意し,また背の下部と腰のあたりを彎曲させないようにして上向きに反らすように留意する。

〈動作〉力が腕と肩に片寄らないように留意し,脚と背と腰の力も十分に使ってバーベルを上胸のあたりまで一気に引きあげ,引きあげたなら腰を少しおとし,腕と手首を返して肩の上(または前)で受けとめる。
 おろすときは,バーベルをいったん大腿部の位置へおろし,次いで,落ちついた動作で,腰背部を彎曲しないように留意して,上体を前傾させながら脚を屈して下までおろす。
 バーベルをあげるときも,また,おろすときも,いずれの場合も下部を彎曲させないようにくれぐれも注意する。(写真参照)

②クリーン・アンド・プレス

<かまえ>ハイ・クリーンの場合と同じ。

<動作>バーベルをハイ・クリーンと同じ要領で肩の位置までクリーンしたら,いったん静止し,そこからプレス(できるだけ反動を使わずに押しあげる)によるバーベルの挙上を行う。
 バーベルを頭上へ挙上したら,いったんバーベルを肩の位置までおろし,あとはハイ・クリーンのおろすときと同じ要領で下までおろす。
 つまり,クリーン・アンド・プレスとは,ハイ・クリーンとプレスの動作を連係させて行う運動である。

◎からだの活力の増強に有効と思われる運動種目

 からだの活力を増強するには,身体を比較的広範囲に使う運動,あるいは,比較的に全身的な持久力を必要とする運動,もしくは,運動時に適度な腹圧の上昇がともなう運動を行うのがよいと考えられる。そのような意味で,先に紹介したハイ・クリーンとクリーン・アンド・プレスもからだの活力を増強するには有効な種目といえるが,その他,初級者向きの運動種目として,スクワット,ベンチ・プレス,シット・アップそれにヒンズー・スクワット,プッシュ・アップ,Vシットなどが有効といえる。
 これらの種目のうち,スクワット,ベンチ・プレス,シット・アップの3種目はボディビルの運動種目の中でも最もポピュラーなものなので,説明を省略して,他の3種目についてのみ説明することにします。
【ヒンズー・スクワット】

【ヒンズー・スクワット】

①ヒンズー・スクワット

バーベルやダンベル等の重量物を用いずに空身で行うスクワットのこと。大腿四頭筋に重点的に効かすためには,反動を利用せずにあくまでも正確な動作で運動を行うようにするのがよい。しかし,からだの活力を増強するために,より全身的な運動としてこの運動を行うのであれば両腕を前後上下に振り,しゃがんで立つときは,ハネ返りの反動を利用し,リズミカルに動作を行うようにするのがよい。(写真参照)

②プッシュ・アップ

 腕立伏臥腕屈伸運動。いわゆる腕立て伏せ運動のことである。この運動は,ベンチ・プレスと同様に胸と腕を主に鍛練する運動種目であるが比較的に全身的な運動といえる。そして運動時に適度な腹圧の上昇がともなうので,からだの活力の強化にはかなり有効な運動と考えられる。
 運動を行う上で注意しなければならない点は,肩から踵までの線を常にまっすぐに保って動作を行うようにすることである。
 できることなら1セット10回以上の多回数を行うのがよい。筋力が弱くて多回数ができない場合は,両手を窓のフチなど高い所につき負荷を弱めて行うとよい。

③Vシット

〈かまえ〉両脚を伸ばして床に仰臥したら,両手を頭の先方へ床にそって伸ばす。
〈動作〉臀部を支点にして上体と脚を同時にあげ,体でV型をつくるように動作を行う。からだを起こすときに両腕を振りあげ、からだを起こした時点でツマ先にタッチするようにする。
 運動に慣れて筋力的に余裕がでてきたら,からだを伸ばしたときに背と脚を床に完全におろしてしまわずに,少し浮かした状態に止どめ,腹筋の緊張を緩めてしまわないようにして,反復動作を繰り返えすようにうにする。

◎トレーニング・コース(例1)
なお,いずれの運動種目においても,多少,余裕が感じられる範囲に反復の回数を止めることを原則とする。

なお,いずれの運動種目においても,多少,余裕が感じられる範囲に反復の回数を止めることを原則とする。

◎トレーニングコース(例2)

 サーキット方式によるトレーニング法を採用すれば,運動の内容をより全身的な傾向の強いものにすることができる。例えば,シット・アップ,ハイ・クリーン,ベンチ・プレス,スクワットの4種類の基礎的な運動を,できるだけ休息時間を短くして1セット(反復回数は10回くらい)ずつ連続的に行い,体力的な余裕があれば,それを2巡から3巡して行うようにする。使用する重量は各種目とも,普通の運動法における使用重量よりも軽い重量がよい。

追記:全身的にからだを動かすといった意味ではバーピーも非常によい運動なので,体力が過度に消耗しない範囲で行なってみるのもよいでしょう。

◎バーピー

 床に立った姿勢から、体をかがめて両手を両足の前の床に付き,同時に素早く両脚を後ろへはね伸ばして「腕立て伏せ」の姿勢をとる。腕立て伏せの姿勢をとったらすぐに逆動作で元の直立姿勢に戻る。
 慣れないうちはいくぶんゆっくりした速度で行なってもよい。なお両脚を後ろへはね伸ばしたときに,腰に無理がかかる場合もあるので,とくにその点に注意して動作を行うようにする。

左右の大胸筋をもっと近づけたい

Q ボディビル歴は1年2カ月です。私の胸は,左右の大胸筋が一般の人より離れているので、大胸筋そのものも小さく見え,胸全体の印象も貧弱に見えます。
 そこで質問ですが、そのような胸の形を直す方法はないものでしょうか。ありましたらご教示ください。ちなみに,ベンチ・プレスの現在の使用重量は65kg(8~10回の反復で3セット可能)です。また,現在の胸のサイズは拡張時で98センチ(普通時92センチ)です。(東京T・S 21才)
A 結論から申しあげます。左右の大胸筋が離れすぎているのを直すことは不可能です。間隔が開きすぎているというのは,左右の大胸筋が離れすぎた状態で骨に付着しているのですから,どうしようもありません。
 このような状態は,あなたも気にしておられるようにハンデであることは確かですが,しかし,ビルダーとして致命的なハンデではありません。大胸筋の筋量を増やすことによって,そのようなハンデを補うことはできます。
 ひと昔前の話ではありますが,第2回ミスター東京になられた鈴木正弘氏はそのようなハンデを,大胸筋を人一倍発達させることによって克服した1人です。
 現在の胸囲が拡張時で98センチ,ベンチ・プレスの使用重量が65kgとのことなので,まだまだこれから大胸筋が発達する可能性はあると思います。はっきりとした記憶ではありませんが,いま述べた鈴木氏の胸囲は120センチ前後で,ベンチ・プレスの筋力は140kg(3回挙上可能)前後だったようです。あなたの身長がわかりませんので鈴木氏と比較することはできませんがせめて胸囲110センチ前後(拡張時)ベンチ・プレスの筋力が100kg(8〜10回可能)くらいになるまで頑張ってください。そうすれば胸全体の印象もずっとよくなることと思います。
なお,胸全体の印象をよくするには大胸筋全体の筋量を増やすことはもちろん大切ですが,とくに内側の発達を促すことが重要です。その意味では,普通のベンチ・プレスだけでなく,ナロー・グリップ・ベンチ・プレスも併せて行う必要があると思います。

エキスパンダーで胸郭を発達させたい

Q 胸郭の発達を促すのにはストレート・アーム・プルオーバーが有効と聞いていますが,バーベルではなく,エキスパンダーを用いて同様な効果をあげられる運動はないでしょうか。もしあったら教えてください。(奈良・西尾吉弘 12才)
A バーベルを用いて行うストレート・アーム・プルオーバーと効果的に全く同じというわけにはいきませんが,エキスパンダーを用いて胸郭の発達を促すことは可能です。エキスパンダーの一方の把手を柱などにくくり付けて固定するか,トレーニング・パートナーに持っていてもらうかして,エキスパンダーによるストレート・アーム・プルオーバーを行えば、多少はバーベルによるストレート・アーム・プルオーバーに似た効果が得られます。
 しかし、エキスパンダーの一方の把手をくくりつける適当な物がなく,また,持ってくれるトレーニングー・パートナーがいない場合は,ダウンワード・プルを行うとよいでしょう。
ダウンワード・プルは本来は腕・肩・背等を鍛錬するための運動種目ですが,胸郭の発達を促すのにも有効と考えられます。

ダウンワード・プル(エキスパンダー・ダウンワード・プル)

【エキスパンダー・ダウンワード・プル】

【エキスパンダー・ダウンワード・プル】

〈かまえ〉両腕を頭上へ伸ばし,エキスパンダーを水平にかまえる。この場合,エキスパンダーを握った左右の手は,掌が外へ向くようにする。

〈動作〉肘をまげないように留意して両腕がほぼ水平になるまでエキスパンダーを左右,横下方へ引っぱる。
 この場合,エキスパンダーを顔の前面ではなく,頸の後方で引き拡げるようにするほうがよい。

<呼吸法>エキスパンダーを伸ばしながら息を吸い,縮めながら吐くようにする。息を吸うときは,できるだけ大きく息を吸う。

<注意事項>①筋力の強化が主たる目的ではないのだからバネの強度は余裕がありすぎるくらいの強さに止どめる。1~2本で十分と思われる。
②動作は終始左右の均衡を保って行う。左右が不均衡になる動作で行うと胸郭がいびつになるおそれがある。
③エキスパンダーをちぢめたときに完全にバネを緩めてしまわずに,多少緊張した状態にさせておく。
④動作は深呼吸に合せてゆっくりした速度で行う。ことにエキスパンダーを頭上へちぢめ戻すときにはゆっくり行うようにする。

早く逆三角形のからだにしたい

Q ボディビル歴は2カ月です。胸が薄く広背筋が小さいので大胸筋と広背筋を大きくしたいと思っています。それに,下腹部が出ているので,その部分を引きしめたいと考えています。どのようなトレーニングをしたらよいでしょうか。

<現在の体位>
身長165cm
上腕囲30cm
体重59kg
前腕囲26cm
腹囲70cm
胸囲90cm
大腿囲49cm

<現在のトレーニングスケジュール>
記事画像5
(川崎市 大出昭次 工員 17才)
A ボディビルをやっている以上は,誰しも早く逆三角形のたくましい肉体美になりたいと思うのはあたりまえですが,欲ばりすぎてはいけません。
 あなたにしてもいろいろと肉体的な要望はあるでしょうが,2ヵ月足らずののトレーニングをしただけで,今からあれこれ思案するのは早すぎると思います。事実,その程度のトレーニングの月数では,からだつきがビルダー的な体型に変わるものではありません。年令も若いのですから,焦らずに,これから先1年,2年と地道に鍛えてゆくようにしてください。そうすれば,いつしか今のからだつきがビルダー的な体型に変ってゆくことでしょう。
 したがって,いまのところは現行のスケジュールをもう3カ月,できれば6カ月くらい続けるのがよいと思います。
 現在,あなたが行なっている6種類の運動は,最も基礎的な運動種目ですから,現行のスケジュールでもビルダー的な体型を得ることは十分可能です。いましばらくの間は運動種目を増やさないほうがよいでしょう。いたずらに運動種目を増やすと,トレーニングが過度になり,かえって効果が得られなくなることもあるので注意してください。
【解答は1959年度ミスター日本,NE協会指導部長・竹内威先生】

簡単な体力機能測定法

Q ボディビルを始めて2年になります。生まれつきからだが細く,運動は何をやってもクラスでビリでした。高校を出て,社会人になってから,なんとか人並の体格,人並の体力を持ちたいという動機からボディビルを始めたのです。
 この2年間,かなり一生懸命トレーニングをしたおかげで,いまではやっと人並みのサイズに近づきました。筋力の方も,各種の運動種目の使用重量によって相当強くなったことはわかります。ただ,柔軟性とか敏捷性といった総合的な体力の伸びがわかりませんので,これを簡単にテストできる方法があったらお教えください。(東京都 金谷好文 店員 20才)
A 簡単な体力(機能)測定の方法について,「正しいボディビルディング(窪田登著)」にいくつか紹介されておりますので,それを引用してあなたへの解答といたします。(以下引用)
 一般にボディビルダーは,とかく筋力や筋持久力の発達にのみ興味をもち他の要素の向上にあまり関心を示さないことが多い。これではもちろん片手落ちもいいところである。体力の構成要素には,筋力のほかにも,パワー,敏捷性,全身持久性,柔軟性などがあるからだ。
 そこで,いったいどのような体力要素がとくに伸び,どれが伸びにくいかを知るために,トレーニングとは別につぎのような簡単な機能テストを3~6カ月おきに実施して,弱点の発見につとめるのがよいだろう。

く筋カ>

背筋力,握力は,これらの専用測定器具で測定すればよい。しかし,全身には大小400以上の筋肉があるので,上記の2つの方法だけで全身の筋力を知ることは困難である。
 幸い,この点,ボディビルディングではバーベルやダンベルを使った運動が多いので,それらの種目の挙上記録で一応のことは判断できる。ベンチ・プレスやスクワット,ツー・ハンズ・スロー・カールなどのような基本的な運動で定期的にその向上の度合いを調べていくとよいだろう。

<筋持久カ>

チンニングやプッシュ・アップのような運動で測定するとよい。3秒間に1回のテンポで正確に何回できるかその回数を調べる。もちろん,バーベルを使う運動を選び,同一重量で最高くり返し回数を調べてもよい。この場合は,その運動種目の1回もち上げられる最大重量を調べておいて,その30%の重量に調節してこれで最高くり返し回数をテストするのである。

<パワー>一(図1)

垂直とびで調べる。壁から20cmほど離れて横向きに立ち,壁側の手を伸ばして,壁に中指の先に塗ったチョークの粉をつける。もちろん,両足裏は床につけたままである。次にそのままひざを曲げて勢いよくとび上がり,もう一度、壁に中指でしるしをつける。
こうしてつけられた上下のしるしの垂直距離をはかるのである。単位はcm。2回実施して,よい方の成績をとる。

く敏捷性>一(図2)

120cmの間隔をおいて,3本の平行線を床にひき,その中央線をまたいで立つ。「用意,始め」の合図で左の線に触れるか越えるまでサイド・ステップしたら,ふたたび中央線格にもどり,今度は右の線にサイド・ステップしていく。
 このようにサイド・ステップしながら,20秒間に越すことのできる線の数を調べ,これが多い方が敏捷なからだというわけである。

<全身持久カ>一(図3)

 高さ40cmの丈夫なベンチの前に立ち,2秒間に1回のテンポで,ベンチに昇っては降りる動作を3分間続ける。途中で,先にもち上げる足をかえてもよい。その直後、ベンチに腰かけて,
a 運動後1分から1分30秒まで,b運動後2分から2分30秒,C3分から3分30秒までの3回の脈拍数を調べ,これらをつぎの式に入れて指数を出す。この数値が大きい方がよい。
記事画像6

く柔軟性>一(図4,5)

まず、伏臥上体そらしを紹介しよう。床の上にうつ伏せに寝て,両手を腰のうしろにおき,両足を45cmくらい開いてパートナーに両足をしっかりとおさえてもらう。そのまま上体をゆっくりとそらし、これ以上は上がらないというところで,あごから床面までの距離をcm単位で読む。数字の大きい方がよい。2回実施して高い方の成績をとる。
 つぎのテストは,両足先を約5cm開いて台上に立ち,ひざを伸ばしたまま上体を前に傾け,両手をできるだけ下に伸ばす。そのときの台上面から指先までの距離をcm単位ではかる。台面に指先がとどかぬときは指先から台面までの距離をマイナス何cmと読む。2回くり返して,よい方の成績をとる。
[図1垂直とび]

[図1垂直とび]

[図2サイド・ステップ]

[図2サイド・ステップ]

[図3台の昇降]

[図3台の昇降]

[図4上体そらし]

[図4上体そらし]

[図5上体前曲げ]

[図5上体前曲げ]

月刊ボディビルディング1978年4月号

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