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★自分でつくる栄養料理シリーズ★⑪
“特製野菜サラダの作り方”

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月刊ボディビルディング1978年10月号
掲載日:2018.08.25
野沢秀雄(ヘルス・インストラクター)

1.マサヨシ~、元気か~い

 畑仕事をしているおふくろさんが、都会で働いている息子の名前を呼んで「元気にしちょるか~。野菜を食ってるか~い!」と大声で叫ぶCFはたいへんな人気。おかげで各社のトマトジュースや野菜ジュースは好調に売れている。ビルダーの中にも「缶詰の野菜ジュースを毎日飲んでいます」という人が多くなってきた。

 先月号に「野菜いための作り方」を紹介したところなので、「また野菜かあ。栄養のないものが続くなあ」と思う人があるかもしれないが、次のような理由で、今月もひきつづき、野菜の食べ方についてアドバイスをしよう。

①食事分析を受けた人の大多数が、野菜・果物不足の傾向にある。

②野菜ジュースを飲めば、生野菜を食べなくてもいいと信じている人が多い。

③野菜ジュースは栄養価が高く(実際にはたんぱく質・カロリーなどあまりないのだが)、これを飲むと、体力がモリモリつくと誤解している人がいる。

④本当は野菜と組み合わせて、サバの缶詰やチーズなどを食べれば栄養効果が大きく、おいしく食べられる。

⑤野菜でも、栄養の点からみると、すぐれている野菜とそうでもない野菜とに区別される。

⑥また季節や栽培法で含まれる栄養素に差が大きく現われる。

2.この点が問題だ

 「1日にどの位の野菜を食べればいいか」について、栄養学者の間に意見がいろいろあるが、一つの目安として「1日に500gの野菜や果物を食べれば運動選手として合格」と私は考えている。500gというと「ほうれん草一人前(50g)・ピーマン2個(50g)・トマト1個(100g)・バナナ1本(100g)・りんご1個(200g)」くらいの量である。これを1日3食、あるいは間食として、わけて食べるのだから、それほど多い量ではない。

 ところが現実に一人一人のメニューを調べてみると、この半分くらいの量しか食べていない人が圧倒的に多い。前号に述べたように、体力づくりに必要なビタミンやミネラルは、野菜類におもに含まれているのにもかかわらず少量すぎるのだ。

 その人たちは「かわりに野菜ジュースやトマトジュースを飲んでいる」というわけだ。

 確かにコーラやソーダ、ジュースなど砂糖が主成分の清涼飲料よりも、野菜ジュースやトマトジュースを飲むほうが健康的なことは事実である。

 また、確かに野菜の成分であるカルシウム・カリウム・鉄・一部のビタミンは、缶詰ジュースにした中に溶けて残っていることも事実である。

 だがそうかといって、「生野菜のかわりになる」「神秘的なスタミナ源になる」と信じるのはまちがいだ。

 その理由をあげると、工場で製造する工程で、機械にかけたり加熱して濃縮したり、缶につめて殺菌する工程が問題だ。せっかく含まれている繊維がこわされる(植物中の繊維は胃腸の働きを助け、便秘を防ぐ役割を果す)。またビタミンや酵素の大部分が熱のために活力を失なってしまう。

 とくに、野菜の生命であるビタミンCは「分析するとほとんど残っていない」というケースが多い。

 昔は人工的にビタミンCを加えて、殺菌後でも必要な量だけ残るように配慮していたが、現在市販されている野菜ジュース、トマトジュースには、ビタミンCが添加されている製品はあまりない。単に「しぼってジュースにしてある」というだけである。それどころか「水と食塩を加えて、うすめて製品にしている」という場合さえみられる。残念なことだが。

3.どんな野菜をえらぶか?

 「簡単に飲める」という点で缶入り野菜ジュースは便利であるが、体にいいかどうかでは生野菜に軍配が上る。

 「自分で生野菜を食べるほうが健康にずっといい」とわかったら、次は何をどう食べるかが問題になる。

 まず第一のポイントは、季節ごとに出廻っている野菜を食べることだ。

 表1に自然の太陽を浴びて育った露地野菜と、温室栽培でつくられた野菜の栄養価を示す。これでわかるように自然の野菜のほうが、ずっと栄養価が高い。「最近のトマトは味がまずい」と言われるが、数字の上からもはっきりわかる。
(表1)

(表1)

 第二は新鮮な野菜を食べることだ。

 スーパーや八百屋の特売で、売残った野菜や古くて腐りかけたような果物を買うことは、栄養的にみるとあまり得ではない。(生きのいい、とりたてならいいが……)

 表2に畑でとれてすぐのと、流通経路で日数がたったものとの栄養価に差があることを示す。
(表2)

(表2)

 第三は、同じ食べるなら色の濃い野菜を食べることだ。表3に2つのグループに野菜をわけたが、Aグループは「有色野菜」と呼ばれて、100g当りビタミンA効力(ビタミンA量+カロチン量×1/3)が1000単位以上ある野菜。Bグループは1000単位以下で、洋風料理によく出てくる野菜である。
(表3)

(表3)

 どちらのグループが体のためにいいかはいうまでもない。ところが日本人の食事量調査では、Aグループの野菜は年ごとに食べる量が減り、逆に洋風傾向に比例してBグループの野菜の需要が飛躍的にのびている。同じ食べるならビタミンA・C・カルシウム・鉄などの豊富なAグループを、われわれは食べたい。

 第四は煮たり、ゆでたり、焼いたり、いためたり、加熱することは最少限にして、なるべく生で食べることだ。そのためには、スタミナ野菜サラダを自分で作ると、味もよく、おいしく食べられる。以下に作り方をのべよう。

4.こんなに多いサラダの種類

 新宿や渋谷、原宿のサラダ専門店をのぞくと、20種類以上もメニューに書かれていて、女の子たちがワイワイ楽しみながらサラダをほおばっている。「えっ、これが350円もするのかい」と驚いてしまうが、「味がおいしいから平気」とカワイコちゃんは気にしない。自分でいくらでも作れるのに。

 サラダづくりのポイントは調味料である。フレンチソース・マヨネーズ・タルタルソースなど、バリエーションを工夫しておいしく食べることができる。いくつかのポイントと組み合わせを紹介しよう。

Ⓐ野菜サラダ・フレンチドレッシング

 キャベツ葉2枚・ピーマン2個・パセリ・青じそ・トマト1個を適当にきざむ。サラダ油スプーン2杯・酢大さじ1杯・こしょう少々をシェイクしてよくまぜて、野菜の上からタラタラとふりかける。これで出来上り。

 ゆで卵をスライスして添えるとデラックスな栄養料理になる。
(約200カロリー・たんぱく質8.5g)

Ⓑサバの缶詰入り特製サラダ

 タマネギ半分・ピーマン2個・パセリ・青じそ・キャベツ1枚・トマト1/2個を用意する。まずタマネギはスライスして、沸騰した湯にサッと2~3秒間とおし、冷水でさましておく。

 上記の野菜を適当な大きさに刻んで皿に盛りつける。サバの缶詰を一缶あけて、同時に並べ、マヨネーズとソースをかけて食べる。もちろんレモンをしぼってジュウジュウふりかけてもよい。
(約450カロリー・たんぱく質45g)

Ⓒタルタルソース付特製サラダ

 浜松東部トレーニングセンターの会員で桃香園という中華料理店に勤めるコックさんが、吉田会長の肝入りで特別に腕をふるってくれたサラダ。

 プロティンパウダーをまぜてソースをつくっているのが特徴。バリエーションを考えて工夫するとよい。

 材料はタマネギ・キャベツ・ピーマン・レタス・セロリ・ニンジンで、どれも細かくきざむ。

 ソースはサラダ油と酢をまぜ、プロティンパウダーを加えて均一にかきまぜる。ゆで卵をきざんで加えるとなおスタミナがつく。

 野菜の上からソースをかけ、好みに応じて、塩やしょうゆで味をととのえて食べる。
(約250カロリー・たんぱく質15g)

Ⓓフルーツサラダ

 りんご1/3個・みかん1個・かき1/2個・セロリー1/3本・青じそ葉数枚・きゅうり半分・チーズ3切れを用意する。

 適当な大きさに庖丁で切って、皿に盛りつけ、マヨネーズとしょうゆであっさりと食べる。もちろん、レモンをしぼってふりかけてもよい。食欲が増して胃がじょうぶになる。
(約270カロリー・たんぱく質10g)
月刊ボディビルディング1978年10月号

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