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正しい栄養シリーズ
タンパク質に富む豆類とその加工品

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月刊ボディビルディング1978年11月号
掲載日:2018.07.17
国立競技場トレーニングセンター
木村リミ
 豆類は、栽培がしやすく、どんな土壌でも育つので、世界各国で生産されている。種類も多く、いろいろな加工品も工夫されている。
 とくに我が国では、肉食の歴史が浅いので、植物性の蛋白源として、昔から我々の食生活にかかせないものとなっている。おめでたいときは、小豆を入れた赤飯を炊き、お正月のおせち料理には黒豆や凍豆腐、節分には豆まきがつきものである。また菓子類も、アンコやキナコを使ったものや、ぜんざいなど、数えあげればきりがないほどたくさん使われている。
 また、豆腐、納豆、味噌、しょうゆなど、日本独得の加工品は、その淡白な味と風味で親しまれ、1日としてかかすことのできないほど、我々の食生活に密接に結びついている。
 豆類は、穀類でいうと、ハイ芽にあたる部分を食べるので、タンパク質と脂肪が多く、穀類のようにデンプンにかたよっていないのが特徴である。
 豆類を成分によって分類してみると次のようになる。

①タンパク質と脂肪に富むもの
 大豆、ナンキン豆
②タンパク質とデンプンに富むもの
 アズキ、エンドウ、ソラマメ、インゲン、ウズラマメ、ナタマメ、フジマメ
③ビタミンが多く野菜としての性質があるもの
 枝豆、サヤ豆、未熟な青豆

☆大豆とその加工品の栄養価☆

 大豆の主成分はタンパク質で、約40%あり、豆類の中でも最高である。よく“畠の肉”といわれるのもこのためである。脂肪も15~20%含み、糖質は20%内外にすぎず、その栄養価の高さは、肉や卵と比べても少しもヒケをとらない。
 ただし、大豆タンパクの1つの欠点として、必須アミノ酸のうち、メチオニンとシスチンが少ないことが挙げられる。消化吸収率も悪く、煮ても70%くらいなので、納豆や豆腐などに加工されて、せっかくの栄養がムダにならないように工夫されている。
 脂肪はリノール酸をたくさん含んだ良質のもので、食用油として最適のものである。リノール酸は、細胞の新陳代謝をよくし、動脈硬化を起こすコレステロールを溶かす作用がある。またビタミンは、B類が比較的多い。
 煮豆にする場合は、うすい塩水にしばらくひたして(大豆タンパクは水によく溶け、食塩水だとさらによく溶けるため)、塩水とともに弱火でコトコト煮て、最後に調味するとよい。圧力ナベで120℃ぐらいにすると、だいたい30分でやわらかくなる。生の大豆にある弱毒性を消すためにも、また消化をよくするためにも、よく煮て食べるほうがよい。
 キナコは大豆を炒って粉にしたもので、保存性がよく、消化率もよくなるので、上手に使うと便利である。お正月に食べる黒豆は、黄、青、黒の3種の類ある大豆のうちの黒いものを甘く煮こんだものである。
 大豆を煮たり炒ったりして食べる場合の消化吸収率は、かなり個人差があり、よくかんで食べる人と、あまりかまない人とでは相当の差があることが実験データでも証明されている。これは大豆に限らず、他の食品についてもいえることであるが、よくかんで、唾液の分泌をよくして、胃腸の負担を少なくし、食物の栄養を有効に生かすことが大切である。

<モヤシと枝豆>

 モヤシは、大豆や緑豆を暗い場所で温水に浸して発芽させたものである。水分を多量に含み、豆と比べると栄養価はかなり低下するが、野菜的な性質が重宝がられる。
 とくに注目されるのは、もとの豆には乏しかったビタミンCがぐっと増えることである。ビタミンCの含量は、野菜類の中でも多い方で、キュウリの倍くらいある。このため、モヤシを調理するときは、水に浸したり、加熱す少なくして手早く扱い、ビタミンCの損失を防ぐことがポイントになる。
 枝豆は、大豆の未熟なもので、タンパク質に富み、大豆と比べて各種ビタミンが多く、風味もよく、栄養価も高い。大豆ほどではないが、消化があまりよくないので、とくに胃腸の弱い人はよくかんで食べること。そしてあまり食べすぎないようにした方がよい。

<納豆>

 納豆は、豆腐とともに、奈良朝時代に中国から伝わったといわれ、我が国の食生活上、長い歴史をもっている。現在では、日本独得のものとなっており、大豆が“畠の肉”といわれるのに対して“東洋のチーズ”といわれるほど栄養価が高い。
 納豆は、煮た大豆に納豆菌をふりかけ、温室に入れてつくる。納豆菌にはヂァスターゼ、トリプシン、アミラーゼ、ペプシン等の消化酵素が含まれているので、大豆のタンパク質、脂肪、糖質の分解を高め、このため、消化吸収率がぐっとよくなる。
 同じ大豆食品である豆腐と比べてみると、水分が少なく、高タンパク、高脂肪の濃厚食品で、ビタミン類ではB2が多く含まれている。
 納豆は、大根おろしやネギなどの薬味を入れて食べることが多いが、これは食欲を増進し、ビタミン類を補なって、味も消化も一層よくなり、理想的な食べ方といえる。

<豆腐>

 大豆を水の中ですりつぶすと、タンパク質がよく溶け出すが、豆腐はこの性質をうまく利用して作られた食品である。
 豆乳は、水でふやかした大豆を、ドロドロにすりつぶして、水を加えて煮沸したものを布でこしたものである。つまり、豆腐のもとになるものであるが、そのままでも飲める。少しクセがあるが、慣れると、結構おいしい牛乳代用品となる。
 豆乳100g中に含まれるタンパク質は3.6gで、もめん豆腐の6g、絹ごし豆腐の4.9gと比べるとやや少ないが、液体で、そのまま飲めばよいので、簡単な上に、量的にも多く飲めるので、栄養的には豆腐と同等に考えてよい。飲みやすく加工して、紙パックに入れた豆乳飲料が売られているが純粋で新鮮な本物の味を味わい人は、朝早く、自分の店で豆腐をつくっている豆腐屋さんに行くと、温かい出来たての豆乳をわけてもらえる。値段は豆腐より割安である。最近では、肉食の害が心配され、植物性タンパク質が注目されはじめているので、豆乳愛好者も増えてきたようである。
 豆腐は、この豆乳に、ニガリや硫酸カルシウム等の凝固剤を加えて固めたもので、もめん豆腐と絹ごし豆腐がある。もめん豆腐は豆乳を固めたものをもめんの布でこしたものであるが、絹ごし豆腐は実際に絹の布でこしたものではなく、質がやわらかいので、その名がある。絹ごし豆腐の方がいくらか水分が多く、栄養成分は多少うすくなっている。
 豆腐の食べ方はさまざまで、冷やっこ、湯どうふ、豆腐をつぶして使う白あえ、いろいろのナべ物やみそ汁にも欠かせない。また、マーボ豆腐のように中華料理にも使われるなど、バラエティーに富んだ料理が楽しめる。
 注意しなければいけないのは、くさり易いことで、冷蔵庫で保存しても、その日のうちに食べるように心がけ、心配なときは湯豆腐にするなどして、加熱して食べること。豆乳も同様で、ヨーグルトのように固まりはじめたものはやめた方がよい。
 オカラは“うの花”ともいわれ、豆乳をしぼったときのカスであるが、かなりの栄養成分が残っており、野菜といっしょに油でいためたり、酢を加えるなど、料理次第では、おいしくて、しかも安価な栄養食品となる。
 凍豆腐は、高野豆腐、シミ豆腐とも呼ばれ、固めに作った豆腐を凍らせてから溶かして乾燥させたものである。保存性は良いが、栄養価は豆腐より劣っている。あまり古くなりすぎると、脂肪が変色してよくない。
 この他、油あげ、がんもどき、湯葉などが豆腐とともに作られるが、いずれも栄養豊富である。とくに湯葉はタンパク質を50%も含んでいる。

<味噌としょうゆ>

 味噌は大豆に含まれる栄養成分をほとんどもっている上に、消化吸収率が非常によい。調味料として使われるので、少量ではあるが、味噌汁など毎日のように摂るものなので、大切な栄養食品といえる。また、ニコチンの毒を消すとか、コレステロールを溶かして高血圧、動脈硬化の予防になるなど、健康と結びついて考えられている。
 味噌は食べるばかりでなく、種々の薬効作用があるといわれ、古くから火傷や打撲のときの湿布薬に使われたりしている。
 味噌にも塩分の多いものと少ないものとがあり、一般に辛口、甘口といわれているが、だいたい7%~14%くらい塩分を含んでいる。その他、製法により数多くの種類がある。
 しょうゆ味噌と似たような製法で栄養的な性質も似ているが、塩分が多く、18%くらい含まれて、調味料としての役割が大きい。作り方、添加物の違い等で、さまざまの味のものがあり独特の風味が楽しめる。

☆その他の豆類☆

<アズキ>

 アズキには、いくつかの種類があるが、性質はみな同じで、主成分はデンプンで、タンパク質がこれに次ぎ、脂肪は少ない。通常、糖質55%、タンパク質20%、脂肪2%くらいである。ビタミンの中ではB類がかなり含まれている。
 アズキは昔から脚気に効くといわれているが、これは、ビタミンBの存在とともに、皮に含まれるサポニンという成分の働きである。このサポニンは脚気に効くほかに腸刺激作用があり、これが便通効果につながっている。この他、体調を整えるいろいろの効果がある。
 赤飯の他に、あん、しるこ、甘納豆など、砂糖で甘く煮て使われることが多いので、食べすぎると胸やけすることがある。こんなときは、漬物をいっしょに食べるとよい。
 アズキをやわらかく煮て、塩や砂糖でうすく味つけすると、おいしいアルカリ食品となり、たくさん食べられて栄養的にもよい。早くやわらかくしようとして、重曹を入れて煮ることがあるが、ビタミンBが減少するので、栄養的には感心しない。

<ナンキン豆>

 ナンキン豆は、開花後、土中にもぐって結実するので、落花生とも呼ばれる。栄養豊富で、炒って豆のまま食べてもおいしく、また、とくに脂肪分が多いので、ピーナッツバターや食用油の原料にされる。
 脂肪は50%くらいも含まれており、タンパク質は大豆よりいくらか少なく30~35%、炭水化物は豆類中、最も少なく15%くらいである。ビタミンも比較的に多く、とくに、食べるときむいて捨ててしまう渋皮にはビタミンB1がたっぷり含まれているので、できればそのまま食べてしまいたいものだ。
 消化吸収率は、豆類の中では良い方であるが、酸性食品であり、子供などが食べすぎると鼻血を出したりするので、一度にたくさん食べすぎないように注意すること。
 
 

 豆類にはこの他、エンドウ類、ソラ豆、インゲン類などがあり、それぞれいくつかの種類があるが、総じて、主成分は炭水化物であり、ビタミンが豊富で、野菜的性質と毅類的な性質を合わせ持っている。野菜については前号で記したので、それぞれについての詳細は省く。
 豆類やイモ類は、どちらかというと女性に好まれ、男性にはあまりふりむかれないようであるが、栄養的にも優秀であり、カロリー源としても白米よりすぐれた面があるので、この機会に見なおして、いろんな方法でたくさん食べるようにしていただきたい。
月刊ボディビルディング1978年11月号

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