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パワーリフティング競技における器具の規格化についての提言<1>
ベンチ・プレス台

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月刊ボディビルディング1978年12月号
掲載日:2018.06.10
日本ボディビル協会技術委員会委員長
名城大学助教授 鈴木 正之

全日本ミドル・ヘビー級 記録保持者
名城大学教員  前田 都喜春

I はじめに

 我が国におけるパワーリフティング競技も12年目を迎え、年々盛んに行われるようになってきた。筆者らが所属する愛知県の場合は、現役全日本選手権者3名のトップレベルの選手のほか県大会出場者は、新人大会をも含めると約100名となり、今や新しいリフティング競技として、ウェイトリフティング競技人口を完全に上まわるほど発展しつつあり、体力づくりと並行したリフティング競技として、将来、さらに一層の発展が期待される。この現象は、愛知県のみならず、全国的にみても同じことが言えると思う。
 しかしながら、パワーリフティング競技には、解決しなければならない3つの問題点がある。1つは、現在、JBBA、JPA、学生ボディビル連盟という3つの全国組織を統一しなければならないという組織統一問題。2つめは、上記3団体の異なるルールの統一問題である。この2つの問題点は今後の日本のパワーリフティング発展のために大きな障害になることと思われるので、すみやかに話し合いをして統一組織と統一ルールを確立することを切望してやまない。
 3つめは、いま述べた2つの問題とは関係なく、当面やらなければならない問題、つまり、パワーリフティング競技における障害予防等に関する問題である。
 リフティング競技における障害問題を考える場合、次の2つについて考えなければならない。1つは、競技ルールに基づく正しいリフティング・フォームとその練習方法。いま1つは、安全で使用しやすい器具の研究開発である。さらに、この器具については安価で普及しやすいものであるということも大事な要件である。
 そのためには、団体や組織だけの問題ではなく、器具を製作するメーカーとも協議し、その協力を得なければならない。しかし、現段階では、各団体によって使用器具がまちまちなため、協議のしようがない。
 今までは各団体とも規格があってないようなもので、試合の度に器具が変わったり、日頃練習している器具と試合時の器具が違ったりして、競技者もとまどったことと思う。そのために、練習時から試合まで統一した規格器具で、しかも使用しやすく、安全性の高い器具が望まれていたのである。
 そこで、一責任団体である日本ボディビル協会の技術委員会として、これらの条件を満たすような器具(ベンチ・プレス台とスクワット・ラック)について検討してきたが、一応の見解と改良器具を試作してみたので、各団体、選手各位、各メーカーのご批判をあおぎたい。
 なお、この見解と改良器具の作成には日本ミドル・ヘビー級(JBBA、JPA)記録保持者で名城大学教員の前田都喜春選手の協力を得たものである。また、一昨年、日本体育学会第27回大会で「パワーリフティング競技における規格器具の改良について」というテーマで発表したものを骨子としてまとめたことを付け加えておく。

Ⅱ ベンチ・プレス台とラックの規格と問題点

A.各団体の規定

 日本ボディビル協会(JBBA)の競技規定(昭和52年2月10日改正)による標準寸法は、ベンチ幅27.5cm、ラック幅48cm(中心より中心まで)、長さ135cm(ラック前30cm、ラック後105cm)、高さ40cmと規定されている。
 その他に注意することとして、ラックの高低調節ピンが手軽に操作でき、しかもピンが競技者の肩にふれないこと。ベンチ・プレス台を安定させるために6本脚にすること、などがある。
 世界パワーリフティング連盟(IPF)および日本パワーリフティング協会(JPA)の規定では、幅25~30cm、長さ122cm以上、高さ35~45cmとなっていて、その他には具体的に何の規定も示されていない。国際ルールといえども、この辺にあいまいな点があるように思われる。
 全日本学生ボディビル連盟には、特に器具についての規定はない。

B.ベンチ・プレス台の改良点

ⓐベンチ・プレス台の幅
 筆者らの経験したベンチ・プレス台の幅は、最少で23cm、最大で33cmであった。幅は広ければ広いほど、背・肩が安定してプレスしやすくなるが、広過ぎると、腕や肩がつかえてプレスしにくい。現在、使用されている台は幅25cmのものが一番多いが、一般に身体の肩峰の幅は37.5cmであるところから、両側からマイナス5cmずつとり、27.5cm幅が妥当ではないかと考えた。この27.5cmという幅はIPFの平均値でもある。

ⓑベンチ・プレス台のラック幅
 ラック幅の規定は以前は全くなかったが、次にあげるような条件を満たすためにも再検討の必要があろう。
 ①仰臥して顔をラックの間に入れるために、圧迫感のないこと。
 ②バーベルが安定していること。
 ③バーベルを握るさい、手幅のじゃまにならないこと。
 ④ナロー・グリップ・ベンチ・プレスがやりやすいこと。
などが考えられる。現在、公式試合用のものはだいたい39cmであるが、以上のことからもう少し広くし、48cmが妥当であろう。

ⓒベンチ・プレス台の長さ
 長さは100~130cmくらいのものが多いが、中には90cmというものもあった。あまり長くても意味はないし短かすぎると仰臥しにしく、またバーに頭をぶつけやすい。JBBAの135cm(ラックまで5cm、ラックより先が30cm)の寸法が妥当であると思う。

ⓓベンチ・プレス台の高さ
 高さに関する許容範囲は、35cm~45cmと非常にその差が大きいが、実際には40cm未満のものはほとんどない。高い方については43cmというのがあったが、平均的には40~42cmが多く、規格寸法にするとしても41~42cmまでであると思う。
 IPFの規定では35cm~45cmとなっており、10cmもの許容範囲があり高低の幅が大き過ぎると思う。ベンチ・プレス台は高さの調節ができないので、許容範囲はせいぜい5cm程度でなければ、最高重量に挑戦するときの足のおく位置も微妙に変化してくる。

 以上のように諸々の問題をふまえた統一規格が望ましく、[写真1、写真2]に示したようなベンチ・プレス台の規格を誕生させた。
 この規格についての異論もあると思う。とくに国際ルールでは、ラックが手幅の外側にあり、日本式のラックと違う点である。しかしながら、国際ルールといえども矛盾な点がある。それは、ラックが手幅の外側にあり、しかも高低調節ができないため、時には自力でラックよりはずさず、補助員にとってもらうなど、全く別の方法で行われているが、やはり、自力でバーベルをとってプレスする方が自然であり、競技性も増すと思う。この点、日本式のベンチ・プレス台の方が競技がやりやすく、しかも、すべての競技者を同一条件で競わせるという面からも良いと思う。
 その他、ラックの受け台(シャフトを支える部分)にも使用しやすいものと使用しにくいものとがある(写真参照)。受け台の溝が深すぎるとシャフトをとるときどうしてもひっかかってしまう。とくに深すぎる場合は、シャフトがラックの溝にはさまり、シャフトにくっついてラックからなかなかはずれないということもある。これなどは規格云々というよりは、改良すれば簡単に解決する問題だと思うので、メーカーに善処をお願いしたい。(次号はスクワット・ラックについて)
改良器具の寸法と要点上・写真1、下・写真2

改良器具の寸法と要点上・写真1、下・写真2

鋳物の使用しやすい受け台

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溶接の使用しやすい受け台

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最も使用しにくい受け台

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月刊ボディビルディング1978年12月号

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