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ボディビルディングの革命理論≪その2≫
デニス・デュブライルの理論

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月刊ボディビルディング1979年3月号
掲載日:2018.10.19
国立競技場指導係主任 矢野雅知

筋の収縮理論を根底から覆す

前回は、筋力トレーニングの世界にセンセーションを巻き起こしてアーサー・ジョーンズを中心とするトレーニング理論を紹介した。それをもう一度要約してみると、

「人間のからだとは、1つの単位としてトレーニングされるべきものである。すなわち、1つのボディ・パートをトレーニングしたら、ただちに次のボディ・パートに移っていくetc・・・・・・こうしてからだ全体はきわめて短時間でトレーニングされることになり(約20~30分)、従来のトレーニングのように、時間のかかる量ばかり多いものと違って、質が高いので最大の効果が期待できる」ということになる。

ところがここに、デニス・デュブライルなる人物がいる。

「アーサー・ジョーンズのトレーニング理論というものは、たしかに素晴らしいコンディションをつくってくれる。しかし多くの人がこの方法に従ってトレーニングしてみたところ、これは筋肉のサイズを大きくすることにはあまり効果がない、という結論を見い出している。言い換えれば、それは筋肉を太く発達させるプログラムというよりも、より良いコンディションをつくってくれるプログラムである、ということができよう」

彼はこのように述べている。そして「筋肉を太く大きくしようというためには、そんなものでは不充分である。ま、最大限まで筋肉を発達させたいと願うのであるなら、私の意見に従いなさい」というのである。

そして、この彼の理論が、またしても新たなセンセーションを巻き起こしつつあるように私には思えるので、いよいよ今回は、デュブライル氏のいう革命的トレーニング法、いわばボディビルディングの虎の巻の紹介に入っていこう。だが、なにぶんにもかなり理論的であり、難しい面もあるので、彼の考えを基本にして、いつものようにあくまでも私流の解釈で進めていきたいと思う。

ところで、はじめにお断りしておくが、このデュブライルの革命理論を読んでいくには、今までこの分野で学び信じ込んできた固定概念をある面では変えなくてはならないし、再び見直さなくてはならなくなると思う。

たとえば、筋肉の収縮というのは、筋原線維にはアクチンとミオシンという物質があって、簡単に言えば、アクチンの中にミオシンがスーッと入り込んでいく“滑走説”なるものが定説になっており、誰もがそれを前提にして話を進めていたが、ある科学者は「筋収縮を起こす最も重要なミオシンは、試験管の中でのみ解っていることであり、実際には筋肉には少しも存在しないかも知れない・・・・・・」という疑問を投げかけている。

もしそれが事実として正しく証明されたら、我々が信じていた筋の収縮理論は根底からくつがえされることになろう。複雑にして怪奇な我々の人体である。この分野でパーフェクトな知識はありえないだろうし、これまで常識として、固定観念としてとらえていたことを、どこかで変えなくてはならないときがあるかも知れない。

そういったことを認識して、いやそのくらいの気持になって読んでいただきたいと思う。そして、この理論が今だ科学者の理論的裏付けをされていないものであっても、既成の事実としてこれを支持してくれるようなビルダーが出現してくれたら、と願っている。

筋力・筋肉の発達のしくみ

骨格筋を構成する筋線維は、大きく分けて2つの物質からなる。1つは筋原線維(myofibril)、すなわち収縮筋(contractile muscle)で、ミオシンやアクチンによって実際に収縮をつかさどるもので、この収縮筋の断面積の大きさが絶対筋力を決定する。

もう1つは肉漿(sarcoplasm)、すなわち筋形質(metabolic muscle)と呼ばれる半流動体の物質で、新陳代謝をつかさどるもので、筋収縮のエネルギーを生むものである。従って、この機能が持久力に関係してくる。

数年間というもの、筋力は高まらなくとも、より大きな筋肉、すなわち筋の肥大は可能であるかないか、という論争がたたかわされてきたが、上記のことをよく認識しておけば、次のように位置づけることが出来よう。

陸上競技の短距離走者などを対象としたスプリンターの研究から、「収縮筋のサイズは大きくならないが、筋形質は肥大する」という結論を導き出した。このことは、1回だけの収縮は強くはなくとも、最大に近い収縮をより長く続けられるということで、筋形質は発達するが収縮筋は発達しない、ということを示している。

ハイ・レピティション、短時間の休息、そのためのさほど強くない負荷というのが好まれている現代のボディビルディングのルーティンは、スプリンターの示す効果と類似してくることになる。つまり、収縮筋はほとんど発達しないが、筋形質は大きくなる。

だから、結果として筋肉は肥大するが、それは筋形質の増大であるから、筋肉は筋の持久力が高まってエネルギッシュになるが、これは強い筋肉ではないことになる。もちろんこの種のトレーニングによって、強い筋肉を獲得する人もいる。だがここではそういった例外を抜きにして、あくまでも一般的なルールで話を進めている。

最近多くのパワーリフターは、1つの流行りとして、ハイ・スピードの動作で、ハイ・レピティションを、オールアウトするまで行ない、1つのボディ・パートから次のボディ・パートへと、短時間に移っていくシステムを用いていた。ところが、彼らは筋力もサイズもほとんど向上しなかったので驚いてしまった。

しかしこれは驚くにはあたらない。15~20回のようなハイ・レピティションでオール・アウトするようなルーティンは、筋形質には効果をもたらしても収縮筋にはあまり効果がないからである。それにハイ・スピード・ムーブメントで、セット間の体息も短いのであるから、この種のトレーニングは、コンデショニングとデフィニションづくりにはベストのものといえよう。

だが、リフターや筋力も高めようというビルダーは、収縮筋をオール・アウトさせるような負荷を用いなくてはならない。おそらく1~5回ぐらいのロー・レピティションの負荷なら、ほとんど収縮筋が働いているので、収縮筋の発達をもたらし、強い筋力を獲得することができよう。

ということは、中間のレピティション、すなわち8~12回でオール・アウトするような負荷を用いてのルーティンは、収縮筋も筋形質も同様にうまい具合に発達させることができるということになる。つまり、この種のトレーニングは筋力にも、筋の肥大にも、また筋の持久力にも全般的な効果を与えるといえよう。

以上のことから、基本的にはベストのコンディショニング・ルーティンというものは、ベストの筋力ルーティンとは異なっており、さらにベストの筋カルーティンはベストのバルク・ルーティンとも異なっているというのがわかる。そして、リフターは収縮筋を発達させようと努力し、ボディビルダーは筋形質の発達を求める。しかし、最大のバルクを獲得するベストの方法とは、両者をともに発達させなくてはならないのである。

疲労物質が筋肉の発達に関与

筋肉は、トレーニングによって、その構成物質のタンパク質が分解されても、休息によって再合成されながら発達していく。

我々のほとんどが、ウェイト・トレーニングによって筋肉に強い刺激を与えると、筋肉に疲労物質が残って神経を刺激し、筋肉痛が引き起こされるということを知っている。しかしながら我々のほとんどが、この疲労物質が筋肉を再合成する重要な役割をになっているということに気がついていない。

筋肉を直接収縮するエネルギー源とは、アデノシン三燐酸(ATP)であるが、このATPを再合成するためのエネルギーは、クレアチン燐酸の分解によって得られるものである。クレアチン燐酸を再合成するためのエネルギーは、グリコーゲンが乳酸に分解することによって生ずる。

もし、酸素が供給されなければ、アッという間に乳酸という疲労物質が筋肉に蓄積されて、収縮することが出来なくなってしまう。また、酸素が供給されると、乳酸は酸化されてそのエネルギーの80%がグリコーゲンを再合成することになって、筋肉を収縮させ続けていくのである。この酸化のときに二酸化炭素という疲労物質が生じる。

ところが、この乳酸や二酸化炭素といった疲労物質が、分解した筋肉中のタンパク質を、それ以上に再合成するように刺激を与えているのである。つまり、筋肉を大きくするように代謝を促進させるには、疲労物質の存在が必要となるのである。したがって、トレーニング終了後、ただちに疲労物質が筋肉から消滅すると、筋肉はそれ以上に発達しないということになる。

しかし、実際にはこれらの疲労物質のすべてを、たちまちのうちに除去しでてしまうなんてことは出来ない。それでも、ある程度まではそれが可能である。たとえば、トレーニングを終えたら、すぐに軽いジョッギングなどを行なうと、気分も壮快で、積極的休息という効果があるので、筋肉痛もあまり残らないし、疲労物質もかなり取り除かれてしまう。だが、これでは筋肉にしばらくの間、疲労物質を十分に残しておかないので、筋肉は最大限まで強く大きくはならないだろう。

ここで次のことをよーく認識しておく必要がある。それは、アーサー・ジョーンズの理論に代表されるように、現代のボディビルダーが愛用しているハイ・スピード・ルーティン、すなわち種目間のインターバルを短くして、次から次へとトレーニングを進めていく方法では、疲労物質が各筋肉で代謝を十分に刺激する前に除去されてしまう、という逆効果を持っていることである。

また、軽いジョッギングと同様に、軽い負荷を用いて筋肉をフラッシング(充血)すると、筋肉痛は残らないという効果はあっても、疲労物質がかなり取り除かれてしまうことになる。だから、汗をしたたり落としながら150kgぐらいのバーベルでベンチ・プレスを死にもの狂いになってやったとしても、「さあ、最後に軽いヤツでやっとこう」などと、20kgぐらいのバーベルでフラッシングすると、せっかくの苦労も十分に報われない結果になってしまうということも考えられる。

さて、疲労物質が筋肉の代謝を刺激するのであるならば、そのためにはどのくらいの時間が必要なのであろうかという疑問が当然おきるであろう。それはおよそ20分くらいと考えられる。だから、20分後なら疲労物質を取り除いたとしても、筋肉の発達を妨げることはないであろう。

したがって、1つのボディ・パートのトレーニングを終えたら、次のボディ・パートのトレーニングをすぐには始めないで、少なくとも20分間は静かに休んでいることが大切なのである。

筋肉の発達とパンプ・アップ

「筋肉の発達にはパンプ・アップは不可欠の条件である」と信じているラリー・スコットは、トレーニングでは極限まで筋肉をパンプ・アップさせてあのブッとい腕をつくりあげた。そして、多くのボディビルダーがこの考えに同調している。

一方、「パンプ・アップは、必ずしも筋肉を発達させる重要なファクターとはならない。そんなにパンプ・アップさせなくとも、筋肉は適度の刺激を受ければ発達する。もし、パンプ・アップが不可欠の条件であるならば、フラッシングをあまりさせないトレーニング法、たとえばシークェンス・トレーニングなどでは、筋肉は十分に大きくならないことになってしまう。だがボブ・ガイダなどは、このシステムでミスター・アメリカのタイトルを獲得したではないか」と反論するビルダーも少なくないし、彼らの中には驚くほどの筋肉の発達を示しているものもたくさんいる。

それに、アーサー・ジョーンズなどの理論では、「ノーチラス・マシーンやアイソキネティックスを用いるなら1つのボディ・パートには僅か1セットやれば十分であり、バーベルやダンベルを用いるなら2セットやればよかろう」ということなので、ラリー・スコットなどの強調する徹底したパンプ・アップはとても望めないだろう。それでも彼らは「これで最大の発達が期待できる」といっているのである。

さて、このパンプ・アップとは、筋肉にいかなる影響を与えるものなのであろうか。

パンプ・アップとは、知ってのとおり、トレーニングされた部位に一時的に血液が増加する現象であり、「トレーニング後には、腕の筋肉が4cmもの増加をみた」という例もあるほどで、大幅に血流量が増加して筋肉が膨張するものである。

この点について最近、興味ある論文が示された。それは「1時間ごとに筋肉をパンプ・アップする、というように、頻繁にパンプ・アップをくり返すというルーティンは、きわめて短期間に筋肉を発達させる」というものである。

アメリカのボディビル専門誌、アイアンマン誌のピアリー・レイダー氏は1時間ごとに腕の筋肉をパンプ・アップさせたところ、わずか1週間で2.5cmもの腕の発達をみた、と述べている。それも毛細血管に血液が集まってパンプ・アップした一時的なものではなく明らかに筋線維が太くなる実質的な増加であった。

1時間ごとにパンプ・アップさせるなんてトレーニングも常識はずれであるが、それによって短期間に腕囲が2.5 cmも増加したなんてことも常識はずれである。もし、これが事実なら、確かにパンプ・アップさせて血流量を増大させることは、筋肉の発達に効果がある、ということになろう。

血流量と筋肉発達の関係

そこで、次のことを明らかにしておこう。筋肉が発達するには、
①筋肉の発達を“刺激”する
②発達する“能力”がある
という、2つのことが基本となる。筋肉を刺激するというのは、ヘビー・トレーニングによって与えられる。つまり、アーサー・ジョーンズなどのシステムやシークェンス・トレーニングなどは、この①の筋肉の発達を“刺激” することになる。むろん、我々が通常行なっているプログラムのほとんどが筋肉に刺激を与えようとしているものである。

しかし、発達を刺激するだけでは十分ではない。筋肉がトレーニングによって筋タンパクが分解されて刺激を与えられても、もし筋肉が反応して次のトレーニングまでに回復(超回復)されなければ、もちろん筋肉はそれ以上に発達しないことになる。だから、回復能力とは、刺激を与えるトレーニングと同様に重要なものである。

回復能力を高めるためには、健全なからだのコンディションでなくてはならないし、良好な食事を摂取しなくてはならないのは当然である。それと同様に、より以上に新陳代謝を盛んにしなくてはならない。そのためには、血液が筋肉にたまった不要物質を取り除いて栄養分を運ぶということが、もっとも重要なことになる。つまり、筋肉に血液を増加させることによって、筋肉をより早く発達させることになるのである。

筋肉に強い緊張をもたらすようなヘビー・トレーニングは、筋肉の発達を“刺激”するだろう。しかし、それだけでは、発達するための“能力”を向上することにはならない。おそらく、1時間ごとにパンプ・アップさせるようなトレーニング・システムというものは、短時間で血流量を大幅に増やすことによって、筋肉を発達させる“能力”に大きな効果を示すものなのである。それゆえ、筋肉の発達に関して、次のような原理に到達する。

“筋肉の血流量が増加すれば、他のファクターが等しければ筋肉はより早く、より大きく発達する”

そこで次のような例をみてみよう。陸上競技のランナーであるが、上体の筋肉がきわめて弱かったので、ランニングの練習の前にウェイト・トレーニングを取り入れたところ、数ヵ月のち彼の筋肉はグーンと強くなったのに驚かされたのである。

これは、筋肉のサイズを大きくするためのベストの方法ではないが、ここで指摘しておきたいことは、ウェイトトレーニングによって筋肉に刺激を与え、ランニングによって血液の循環が高まるので、筋肉の血流量の増加が、筋肉をより早く反応させたということである。

もうひとつ“ザ・ストロンゲスト・マン”と自認する。あの偉大なポール・アンダーソンを例にとろう。

彼の怪力については今さら言うまでもないが、恐らく大多数の人が彼のトレーニング法は、ヘビー・ウェイトを用いたロー・レピティション・システムであったと信じているが、実際には、軽いウェイトで、始めから終りまでかなりのハイ・レピティション・システムでやったのである。しかも彼は種目間のインターバルで、血流量が低下するのを避けるために、ハイ・レップスの運動を行なったりしている。

彼はトレーニングをやり始めた頃、脚の筋肉はサイズも筋力も早く発達することがわかったが、上体の筋肉の方はそうではなかった。彼はそれを「血液は脚の方には下がっていきやすいが上体の筋肉の方には十分に循環しないからだろう」と理由づけた。

そこで彼は、少しでも多く上体に血液を送り込んでやろうとして、上体を下にするようなデクライン種目をとり入れて、ハイ・レップスで筋肉をパンプ・アップさせることに主力をそそいだのである。

例えば、デクライン・ボードに足をひっかけて頭を下にし、プーリー・ウェイトを使って肩をパンプ・アップさせたりした。効果は抜群で、たちまち彼の上体は脚の筋肉にマッチするように発達しはじめたのである。

このように、ポール・アンダーソンは、大きなサイズと筋力を発達させるために、大きな刺激を求めたのではなく、より以上の回復能力を要求したのである。

彼の上体の筋肉は、不要物質を完全に取り除いて、ヘビー・トレーニングをやっていくための栄養物を早く運ぶことができなかった。彼はもともと大きくて、力の強い男であったが、トレーニングをやり始めると、さらにグングン大きくなった。彼を大きくさせたのは回復能力である。

彼は、はじめにヘビー・トレーニングをやらずに、血流量を増大させることによって大きく強くなっていったが小さな刺激でも、あの巨大な肉体をつくり上げられるという、きわめて数少ない能力の持ち主であったからであろう。

このような人は他にもいる。軽いウェイトを用いて、ハイ・レップスのトレーニングをやるトップ・ビルダーも沢山いる。なのに、なぜ他の人が同じことをやってもダメなのか。残念ながらホルモンのレベルや、その他、先天的なファクターがアンダーソンとは違っているからである。だから、ヘビー・トレーニングをやって、強い刺激を筋肉に与えないと、大きな筋肉はつくられないのである。それに、頻繁にパンプ・アップさせるようなトレーニング方法は、筋肉の発達を刺激することはないけれども、刺激に筋肉が反応する能力を高めるので、そういったものを採用することが必要なのである。

ところで、パンプ・アップさせると筋肉の血流量は、いったいどのくらい増えるものだろうか。ふだんの2倍?3倍?いやいやそんなもんじゃない。聞いて驚くなかれ、それはなんと、ふだんの50倍にもなるのである。

血液が50倍にもふくれあがれば、新陳代謝が高められるのは当然である。だからパンプ・アップのためのトレーニングというものは、最高度に筋肉を発達させようというボディビルダーにとっては、決して無視できないものであろう。

では、筋肉に強い刺激を与えようとして、ヘビー・トレーニングをやってから、軽いウェイトを用いて血流量を増やすためにハイ・レップスのパンプ・アップのトレーニング(フラッシング)をやったとしたら、両者の利点を生かしてベストの結果が得られるだろうか。

それは、両者を分割してトレーニングすれば、答えは「イエス!」といえるだろう。なぜなら、すでに述べたように、ヘビー・トレーニングによって生じた疲労物質が、筋肉に十分に刺激を与える前に、パンプ・アップのトレーニングによって、それらがかなり取り除かれてしまうからである。したがって、疲労物質のせっかくの効力が半減してしまうことになる。

だから、ヘビー・トレーニングを行なったあと、少なくとも20分以後にパンプ・アップのためのトレーニングをやるようにする。そして、このときはパンプ・アップだけを求めるのだからなにも重いウェイトを用いることはない。それに、オーバー・ワークを避けるということからも、筋肉にほとんど負荷のかからないような軽い重量で十分である。筋肉を疲れさすというよりも、むしろリフレッシュされたように感じられるぐらいのウェイトを用いて速い動作でやるのがよかろう。デュブライル氏は、ふだんバック・プレスでは120kgをやるが、このパンプ・アップのためのフラッシング・トレーニングでは、たった10kgを使って行なっている。

それでは、この種のトレーニングは何回ぐらいやればよいのであろうか。それは、1日3回やるのがよかろう。1回のフラッシングは5~10分間くらいが適当であろう。また、1日に2回でもよいし、都合で1回でも効果があるが、3回やるのとは、効果の面で大きな違いがあるだろう。

ここで、フラッシング・トレーニングには、どのくらいのレピティションで何セットやるのがよいかを述べようとは思わない。すべてのボディビルダーに共通して効果的な数字をあげることはできない。それは各人が自分自身に最も適したものを、体験によって導き出さなくてはならないからである。

再び繰り返すが、筋肉を発達させるためには、ある人にとっては大きな刺激は必要としないが、フラッシングでパンプ・アップさせて回復能力を高めることが必要であり、またある人にとっては、大きな刺激を必要とするが、その人は、それにあっただけの回復能力を持っているので、筋肉をフラッシングさせる必要がない。だが、ハード・ゲイナーであるあなたは、両方を必要とするのである。
(つづく)
月刊ボディビルディング1979年3月号

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