フィジーク・オンライン

なんでもQ&Aお答えします 1974年11月号

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1974年11月号
掲載日:2018.09.03

大胸筋の内側と下部を発達させたい

Q.トレーニングを始めてから2年8ヵ月になります。現在までのところは経過も良好で、キャリアの割には発達もよいようです。
今まではからだ全体のバルクを増すことに専心してきましたが、これからは各部位の形を整えながら、筋の発達を促していきたいと思っています。
 そこで、さしあたっての課題として大胸筋の完成に取組みたいと考えています。現在の私の大胸筋は、外側に比べて内側の発達が弱いようです。
また下部の輪郭がはっきりしないのが欠点です。私のからだはどちらかというと皮下脂肪が少い方なので、大胸筋の下部の輪郭がはっきりしないのは、
その部分の発達が弱いことに原因があるのではないかと考えています。それで、内側の発達を促すための方法に加えて下部の発達を促す方法をもご指導いただきたいと思います。
現在、私が行なっている大胸筋のためのトレーニング種目は次のとおりです。 (北海道・佐藤)
記事画像1
A.あなたが行なっている各種目の使用重量から推察しますと、あなたの大胸筋はかなり発達しているものと判断されます。大胸筋の発達が未熟な段階では、
筋の発達における傾向をうかがい知ることは難しいものですが、発達が進むにつれて、発達上の傾向が判別しやすくなってきます。
そして、あなたのように多少欠点と思われるような発達における偏向の原因は、それまでに行なってきたトレーニングの内客にあることはもちろんですが、
胸部の骨格の形も無関係ではありません。
 たとえば、同じような内容のトレーニングを行なっていても、ハト胸の人と、扁平な胸の人とでは、当然、大胸筋の発達の傾向が違ってきます。
しかしながら、そのような発達上の傾向がたとえ偏向的であると思われるほどであっても、トレーニングのやり方によってそれを是正することは可能です。
 あなたの胸部の形がどのような形かわかりませんが、あなたの場合は比較的容易に是正できるのではないかと思われます。というのは、あなたが現在行なっているトレーニングの方法が、
大胸筋の内側と下部の発達を促すにはあまり適切な方法ではないと考えられるからです。
 あなたと同じようなトレーニングによって、内側と下部の発達を十分に得られる人もいるでしょうが、あなたの場合には、現実の問題として適切ではないように思われます。
 内側はともかくとして、下部のためにはディクライン・プレスとパラレル・バー・ディップを行なっていることで適切な処置がとられていると思われるでしようが、運動の仕方に疑問が感じられます。
ボディビルの運動は、すべて目的にかなった姿勢と動作によって行うことが大切です。このことを念頭において、後述するトレーニング法を読んでください。

〈1〉大胸筋の内側の発達を促す方法

〇べンチ・プレス
 べンチ・プレスは左右のグリップの間隔によって、多少、大胸筋の発達の仕方が違ってきます。グリップの間隔を広くすれば比較的に大胸筋の外側に効き、狭くすれば中央部から内側にも効くようになります。
したがって、左右のグリップの間隔を両腕を真横へ伸ばした状態における両肘の間隔よりもひとこぶしくらいずつ狭くとって行うとよいでしょう。

〇ダンベル・べンチ・プレス
 大胸筋の中央部および内側の発達を促すには、上記のグリップによるべンチ・プレスを補足するためには、ラテラル・レイズ・ライイングを行うよりもダンベル・べンチ・プレスを行う方がよいでしょう。
大胸筋の発達は、筋をより短い状態に収縮させるほど中央部および内側の発達が促されるようになります。そのようなことを考えれば、ダンベルによるべンチ・プレスは、バーベルによるべンチ・プレスよりも大胸筋をより短い状態まで収縮させることが可能なので、中央部および内側の発達を促すためにはぜひとも行なって欲しい運動です。
 べンチ・プレスのグリップの間隔を極端に狭くして行なっても、同様な意味で効果は得られますが、ただこの場合は、腕力をかなり強く必要とするのが難点といえます。
しかし、そのような方法によるべンチ・プレスを実際に試してみて有効と判断されるなら採用しても一向にさしつかえありません。
 ラテラル・レイズは、ダンベル・べンチ・プレスと同様に、大胸筋を短い状態まで収縮させることは可能ですが、この運動の場合は、ダンべルを上へあげるほどに抵抗が弱まってしまうということで、中央部と内側の発達を促すにはあまり向いているとはいえません。

○ショルダー・ブリッジ・プレイツ・ピンチング・エクササイズ
<かまえ>2枚の同じ大きさのプレートを、平らな面を外側にして合わせ、プレートの縁に指をかけないように手のひらと指の腹ではさんで持ちます。ようするに、左右の手のひらと指の腹の圧力によって2枚のプレートを維持するようにします。次に床(あるいはべンチの上)に仰臥し、両肩と両足を支点にしてからだを床(あるいはべンチ)から浮かし(ショルダー・ブリッジ)、2枚のプレートを、両腕を屈して胸の上に保持します。
<動作>2枚のプレートがずれ落ちないようにしっかりはさんだまま、両腕を伸ばして上方へ差し上げ、十分に肘を伸ばしきったら、元の位置へおろします。
<呼吸>息を十分に吸ったままの状態で運動を行い、かまえの姿勢で息を入れかえるようにします。
<注>プレートは必ず平らな面を外に向けて合わせ、また、縁に指をかけてプレートを維持するようにしないこと。そして、プレートの平らな面を、左右の手のひらと指の腹ではさんで維持することがこの運動のポイントです。

<2>大胸筋の下部の発達を促す方法

〇ディクライン・プレス
 ディクライン・プレスは下部の発達を促すには有効な運動種目です。しかし、これにはただし書きがつきます。つまり、運動のやり方いかんによって、その有効度がいちじるしく変わってきます。
あなたの場合、使用重量がべンチ・プレスとの比較からいって重すぎるきらいがあり、下部の発達にはあまり有効ではないフォームと動作で行なっているものと考えられます。
 ディクライン・べンチ(または、ディクライン・ボード)に仰臥して、バーベルをただあげるだけならば、運動になれさえすれば普通のべンチ・プレス以上に重い重量があげられるようになるものです。
しかし、下部の発達に効果的な方法で運動を行う場合には、そうそうべンチ・プレス以上の重量で行えるものではありません。ディクライン・プレスに限らず、ディクライン・ダンベル・プレス、ディクライン・ラテラル・レイズ等、ディクラインによる運動によって大胸筋の下部の発達をより効果的に促したいのでしたら、次に述べることがらに留意して運動を行うようにするほうがよいでしょう。
 まず、背の下部の部分をできるだけべンチ(または、ボード)に密着させるようにして運動を行うようにします。そのためには、頭をあげ、両肩をベンチから浮かすようにするとよいでしょう。
次に、両肩を頭の方へすくめないように留意して反復運動を行うようにします。このような方法のときは、あなたのようにべンチ・プレスよりも重い重量をそうそうあつかえるものではありません。
重い重量で行うことにこだわりすぎると、どうしても両肩が頭部の方へすくんだ状態になり、また、背が反ってしまい、かえって大胸筋の下部にあまり効かなくなってしまいます。
そのような方法では、大胸筋上部の腋に寄った部分から下部内側へかけて斜めの発達が強く促され、下部全体の発達を促すためには有効度が減退する傾向があります。

〇べンチ・プレス・ロゥア・ツー・ザ・リップ
 両膝を立ててべンチに仰臥し、背をできるだけべンチに密着させるようにします。シャフトを握る左右のグリップの間隔は普通のべンチ・プレスよりもいくぶん狭くして、大胸筋の下部、
肋骨のあたりからバーベルを押しあげるようにします。この場合、留意することは、背をできるだけ浮かさないようにし、また、両肩を頭部の方向へすくめないで、
両腋をいくぶん締めかげんにして運動を行うようにすることです。
 この種目における運動上の要点はそのままダンベル・べンチ・プレスとラテラル・レイズ・ライイングにも応用することができます。ダンべル・べンチ・プレスによる場合は左右のダンベルを並行に保持し、
両腋の角度を狭くして運動を行うようにします。ラテラル・レイズ・ライイングの場合には、ダンベルを真横におろすようにしないで、両腋の角度が直角よりも狭い角度になるようにおろします。 (担当・竹内威)

器具なしで大胸筋を発達させたい

Q.健康管理を目的に器具なしでトレーニングを行なっている者です。始めてから4ヵ月になりますが、現在ではプッシュ・アップを40回以上連続して行えるようになりました。
このまま回数を増やしていけば、それにつれて大胸筋が発達していくでしょうか。 (千葉市・吉野)
A.回数を増やしていく方法は、筋の持久力を増すにはよい方法ですが、筋を肥大させるという点ではさほど効果を期待することはできません。以前、テレビ放送で、プッシュ・アップを数百回行う人を見ましたが、
大胸筋は目立つほど大きくはありませんでした。
 常識的にいって、ボディビルのトレーニングでは20回くらいまでの反復回数で行うのが、筋の発達を促すという点で適していると考らえれます。したがって、プッシュ・アップで大胸筋を発達させるのにも、
この原理に基いて背の上部(肩に近い部分)に重量物をのせるか、誰かに適当に押してもらうかして負荷をかけ、20回以内の反復で行うようにするのがよいでしょう。
 足を椅子か机の上などの高い場所において負荷を高める方法もあります。しかし、なんといっても直接、背の上部に負荷をかけて行うのが最も効果的です。
ただ、重量物をのせるとき、背の下部から腰の方へのせないように留意してください。背の下部の方へのせると、運動中に上体が反りやすくなり大胸筋に対する効果が半減するおそれがあります。
ひとに背を押してもらう場合でも同様のことがいえます。 (担当・竹内威)

左右不均等な腹筋をなおすには

Q.ボディビル歴3年8ヵ月ですが、現在の体格は自分でいうのもなんですがビルダーとして一応見られるものであると思っています。
それで、来年あたりは県のボディ・コンテストに出場してみたいと考えています。ただ、自分のからだのうちでひとつ気がかりなのは、腹筋が左右異なった形をしており、発達状態もちがうことです。
左右異なった形をしているのはある程度先天的なものと聞いていますが、なんとかなおす方法はないものでしょうか。また、左側が右側と比べて発達が弱いのですが、これをなおすにはどうしたらよいでしょうか。 (群馬県T・Y24才)
A.結論から申しますと、腹直筋の形が左右ちがった形をしているのは、あなたもいわれるように先天的なもので、これをなおす方法はありません。しかし、腹直筋の左右の発達状態の不均等をなおすことは可能です。
 腹直筋は、第5~第7肋軟骨から恥骨に付着する腹部前面の長い筋肉で、白線によって左右、縦に分けられており、また、3~4条の横線(腱画)により筋肉の隆起が4~5段に分けられています。
 このように白線と腱画によって分けられている腹筋の形は、たいてい左右ほぼ同じ形、つまり対照をなしているものですが、中にはいちじるしく左右の形が違っていることもあります。
このことは、腹直筋の全体の形が、そのような形になるように、先天的に腹直筋を区分する白線と腱画によって区分されている個々の筋肉の形がそのように形づくられているからです。
したがって、これを矯正することは不可能なわけです。
 ただし、腹直筋の左右の相違が、たんに筋肉の発達の上での不均等によるものであるならば、それをなおすことは可能です。つまり、白線によって縦断されている左右の腹直筋の相違が、
腱画と個々の筋肉のゆがみと形に原因するのではなく、発達上の強弱大小によるのであれば、比較的容易にそれを矯正することは可能であるということです。しかも、それほどむずかしいとではありません。
 ひとロでいえば、発達の弱い側に強い側よりも負荷が強くかかるように運動を行えばよいわけです。たとえばあなたのように左側が右側よりも発達が弱いのであれば、左側に強く負荷がかかるように、
上体をいくぶん右側にひねった状態で腹筋運動を行うようにします。そして、左右の不均等な発達が是正されるまでは、正規の方法を中止し、いま述べた変則的な方法を継続するようにします。
 このように、方法そのものは簡単ですが、あなたのように長期間のトレーニングによってもたらされた腹直務の左右不均等な発達は、それを矯正するのに、あるいはそれなりの困難がともなうかもしれません。
頑張ってやってみてください。 (担当・竹内威)

握力を強くする方法は?

Q.パワー・リフターを目指してトレーニングしている者です。べンチ・プレスとスクワットに関しては記録も徐々に向上していますので、いまのところ問題はありませんが、デッド・リフトの記録がまったく伸びないのです。
 最も重い重量をあげるこのデッド・リフトに強くなることが、トータル記録を伸ばすうえで有利と思うのですが握力が弱いのが悩みです。なんとか握力を強くする方法はないものでしょうか。(岐阜県・木島、26才)
A.握力を強くする方法としてはハンド・グリッパーやスナッパー、あるいはイーグル・キッチャーなどの器具を使用して行う運動もありますが、ここでは普通ボディビルのトレーニングに用いられているものを使っての方法を述べることにします。

○ピンチ・グリッピング・フラット・工ッジ・プレイツ
<動作>平らな面を外側にして2枚のプレートを合わせ(場合によっては3枚以上)、それを片手の指ではさんで持ちあげる。この運動で15kgプレート2枚が持ちあげられるようになれば相当の握力の持主といえるでしょう。
いままでに日本人で20kgプレート2枚を持ちあげたという話は聞いたことがありません。それだけ手・指の力と握力を必要とする運動です。またこの運動は、握力を強くするほかに、前腕部の発達にも効果があります。
握力はたんに手・指の力だけでなく前腕部も大きく作用します。

○リスト・ローラー・エクササイズ
<動作>ダンベル・シャフトの中央にプレートをひもで吊りさげ、シャフトの両端を両手で握り、シャフトを回わしてプレートを巻きあげる。内側に巻きあげる場合と、外側に巻きあげる場合とでは効果が異なる。
また両手をからだの前に高く維持して行うと上腕二頭筋、および腕橈骨筋に負担が強くかかるので、べンチの上に立ち、両腕をさげた状態で行うようにしてもよい。あるいは、シャフトを受ける台をつくり、
そのうえでシャフトを回わすようにすれば握力の強化が容易になる。

○ワン・ハンド・ハンギング
<動作>チニング・バーにタオルを巻きそれに片手でぶらさがる。この運動は思ったより困難な運動で、それだけに握力の強化には効果があるともいえる。この運動の原理を応用して、
バーベルにタオルを巻き、それでデッド・リフトを行なってみるのもよい。 (担当・竹内威)

肉を食べすぎて肥満、疲れぎみ

Q.ボディビルを始めて5年になります。肉屋の店員をしている関係で昼食、夕食にはたいてい肉を食べます。もともと肉は大好物で、ビルダーの蛋白補給源にも良いと聞きましたので一層よく食べるようになりました。
それが原因なのか、身長172cmで体重が90kgにもなり、少々肥満ぎみです。23才ですが、遣伝的に頭髪が薄く禿げています。最近、なんとなくだるく感ずるときもあり、
また夜、小便が近くなって一晩で数回のときもあります。まだ健康診断を受けていませんが、どこか内臓が悪いのではないかと思っています。このままボディビルを続けてよいものでしょうか。
A.検査をしなければはっきりしたことはいえませんが、動脈硬化症ではないかと思われます。動脈硬化の症状は一般に老化現象と考えられ、老人になるとある程度必然的に起こるといわれています。
最近、若年層の間にもしばしばこの症状が見られるようになりました。
 動脈硬化が進行すると、脳、心臓、腎臓などの内臓に血管障害を起こし、多年にわたって蓄積されることによって次第に悪化し、動脈硬化症が原因となり死亡例もあります。
それは、血管の血液が各種器官に働かず、血管壁の変性によって血液の流通を阻害するからです。
 その原因としては、コレステロール異常、高血圧、ホルモン異常、血管壁障害などがあげられます。コレステロールは動物脂肪に含まれ、多量に摂取することによって血管に沈着し、動脈を硬化するものです。
中性脂肪(含水、炭素、糖分)もこれと同様です。ホルモン異常、つまり甲状腺、膵臓、男・女性ホルモンの異常も動脈硬化を促進させます。
 動脈硬化は一般に血管内獏の変化であり、脳動脈が硬化すると脳血栓を起こし、神経衰弱、頭痛、めまい、物忘れを起こす。心臓動脈硬化は狭心症、心筋硬塞から圧迫感、手・足・顔のむくみがみられ、
四肢の動脈硬化では手足の痛み、歩行困難を起こす。いずれも死亡することがあるおそろしい病気です。
 動脈硬化症の手術は現在でも考えられず、中性脂肪、コレステロール脂肪を低下させる薬物療法(脱コレステロール剤)か、食事療法(総力ロリーを1800前後におさえ、動物性脂肪、砂糖などの過食を避ける)が必要です。
いずれにしても、定期的検査によって早期に発見することが大切です。
 ボディビルダーの多くは動物性脂肪を最高の筋力源、熱量源などと思い込み、運動力学と食品衛生がアンバランスになっていることがよくあります。とくにあなたの場合は商売がらからも
肉類が主食品のようになっているとしたら、この動脈硬化には厳重な注意が必要です。植物性の脂肪や蛋白、それにビタミンCを充分に摂取することが大切です。
 お手紙によりますと、夜の放尿が多いそうですが、腎臓の動脈硬化症ではないかと考えられます。この症状は、昼間の尿量よりも夜間の方が多く、尿の色調も薄く、尿毒症、萎縮腎などからむくみを生じます。
 以上のように現在では動脈硬化症は老人病のみではなく若人病であることを忘れてはなりません。そして、この病気は健康人の生活の中に存在するものです。
 一般的な注意としては血圧、食塩、脂肪、砂糖、カロリー、肥満などに日頃から気をつけることです。ビルダーの場合は、あまり過激なトレーニングは避け、とくに心臓を圧迫するような運動は慎しむことです。
また、急にトレーニングを中止すると、かえって肥満ぎみになり、動脈硬化症を悪化させることにもなります。結局、適度な運動と動物性脂肪源の選択にあると思います。 (担当・能丸康司)

高血圧とトレーニングの関係は

Q.私は42才の会社員です。先日1週間ほど人間ドッグに入って検診を受けた結果、高血圧症といわれました。健康維持のため、7年前からジムに通ってトレーニングをしてきました。
しかし、最近はすっかり気力がなくなり、ジムも休みがちです。それが原因なのか最近はすっかり肥満体に近くなり、身長165cmで80kgになってしまいました。
高血圧の場合、ボディビルのトレーニングはどんな具合にやればよいでしょうか。 (名古屋市・高橋元春)
A.一般に自分の年令に90を加えた数値が最大血圧の正常値といわれています。この数値はおおよそであり、たとえば、80才の人の場合、80十90=170の血圧が正常であるかといえば必ずしもそうではありません。
つまり、最大血圧の正常限界は150以下といわれており、この170の数値は異常だといえるわけです。
 一般に40才以上でも40才以下でも、最大血圧(心臓が収縮し血液を流出する圧力)は140以下であり、また最小血圧(心臓が拡張時の圧力で血管の収縮の強さ)は90以下で、正常は80前後とされています。
 世界保健機構(WHO)の規定は、最大血圧140~159、最小血圧90~94を境界高血圧とし、最大血圧160以上最小血圧95以上を高血圧症と診断するものです。
 お手紙では血圧の数値が明確でなく42才で165cm、80kgということしかわかりませんが、病院で精密検査の結果高血圧症と診断されたことと考え合わせると、腎臓、ホルモンの異常によるものかも知れません。
 高血圧症の原因はいろいろあり、遺伝、生活環境、食事によって起こることもありますし、尿蛋白によって腎臓機能障害を起こすこともあります。一般にホルモンの異常は、分泌系の異常から起こり、
脳下垂体、甲状線、副腎が主たるものです。今日では若年層の高血圧症も増加しております。これらの多くは腎臓障害、精神緊張によるもので、早期に発見し、完治することが大切です。
 高血圧症の初期の症状は、頭痛、肩こり、目まい、耳なり、不眠、手足のしびれ、記憶力の減退です。動脈硬化が進むと、嘔吐、軽い半身摩痺、眼底出血があります。また、高血圧症を数年間持続すると、
心臓肥大が原因で、胸部の圧迫、痛み、息ぎれ、不正脈を起こし、手、足、顔のむくみが見られます。
 高血圧症の予防、治療に際しては、たんに血圧を下げればよいというものではありません。40才以上の場合、血圧を急激に下げると脳血栓、狭心症によって死亡する例もあります。
高血圧症の原因となる精神的、肉体的要素をとり除くことが大切です。

①精神的な要素については

a緊張をとり除き充分休息をする。
b精神的にのんびりすごす。
c睡眠を充分とり、家庭ではつとめて仕事のことを忘れる。
d家庭のイザコザは早期に解決する。
e対人関係で異和感をもたない。

②肉体的な要素については

a過度の運動をさける。
b競争、競技をさける。勝負ごとも悪い。
c考えるゲーム、フォームはさける。
d夜ふかしをさける。
e熱い風呂に入ることはさける。
 この他にも日常生活で注意することが沢山あります。たとえば、寒さをさけること。食事のとり方では過食をさけ、糖質、塩分、動物性脂肪の制限等があります。さらに、便通をよくし、
酒、タバコ、香辛料等は最少限度にとどめることです。そして、野菜、果物、牛乳を摂取するようにします。
 高血圧症と診断されたからといってボディビルの運動を直ちに中止するのはよくありません。いままでの睡眠、仕事、運動のリズムが破壊され、代謝障害を起こし、より肥満体となってしまいます。
もちろん過激なトレーニングはいけませんが軽い運動は続けるべきです。重い重量に挑戦し、筋肉を肥大させることだけがボディビルではありません。その人の年令、体力、健康状態、生活環境等によって、
その運動量を自由にコントロールすることがボディビルの本来の姿です。42才はまだまだ若い年令です。適当な運動を長く続けられることをおすすめします。
ややもすると筋肉肥大だけがボディビルだと思われがちですが、運動不足の解消、体力維持も立派なボディビルです。 (担当・能丸康司)

扁桃腺肥大を治したい

Q.18才の高校生です。小学生の頃から風邪をひくと高熱が続き、すぐ扁桃腺がはれて、痛くて食べ物ものどをとおらないほどです。体をきたえれば風邪もひかず、扁桃腺に悩まされることもなくなると思い、
1年前からボディビルを始めました。ボディビル以外に扁桃腺を予防するなにかよい方法はないものでしょうか。 (浦和市・本田)
A.扁桃腺肥大は通常、口を開けたときに奥の両側に見られます。肥大の程度は軽度・中度・高度で、生後から6才前後で最も大きく、12才前後で小さくなります。
 あなたの場合、病的肥大であるかどうかは精密診断をうけることです。この場合、種々の障害、たとえば呼吸が苦しい、いびきをかく、のみ込みが困難、扁桃に無色斑がある、鼻声になる、
頸やアゴ下のリンパ節の腫を併発するといったような場合は、病的と疑ってよいものです。
また病的であっても手術は慎重に決定することです。なぜならば、口腔内にある生理的機能を有する大切な器官だからです。くれぐれも手術は専門医とよく相談のうえ行うようにしてください。
扁桃腺肥大も種々の病原菌によって感染し、腎炎、リウマチ熱を併発し、とくに咽頭扁桃肥大症(アデノイド)に患り、難聴、注意カ減退、気管支炎症、胸部発育不良になり、学校の成績も低下します。
 一般に扁桃腺肥大には急性と慢性があり、急性の場合は安静にし飲酒入浴をさけ、サルファ剤や抗生物質で病原菌を取り除くことによって完治します。
日常、気温、湿度の変化、疲労、過飲、便秘、刺激に注意することです。
 ボディビルとの関連については、疲労が進み、食欲不振、食事不摂生、肩こり、筋肉痛などの症状が進むと扁桃腺は慢性に移行し、腎炎、心疾患、神経痛などに移行します。
 一般的な注意事項としては、過度なトレーニングは避け、練習後はよく汗を流し、風邪に注意し、とくに食事に気をつけることです。ビタミンC群、糖分を摂取し、
練習終了後には重曹水やホウ酸水のうがいを励行することです。感染したときはトレーニングを体み安静にしていることが大切です。 (担当・能丸康司)

(解答は59ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生と慶応大学医学部法医学教室・能丸康司先生)
月刊ボディビルディング1974年11月号

Recommend