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★内外一流選手の食事作戦★①
フランク・ゼーンの食事法

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月刊ボディビルディング1979年2月号
掲載日:2018.10.10
健康体力研究所・野沢秀雄

1、はじめに

ヤクルトが奇跡的な優勝をとげ、またアメリカ大リーグのレッズの選手たちの来日を機に、バーベルやダンベルを用いたウェイトトレーニングが脚光をあびている。関係者にとってたいへん喜ばしいことだが、単にバーベルやダンベルをあげさえすれば、たくましい筋肉がついてくるわけではない。トレーニング法に対する研究をするのと同時に、食事法に関する配慮をおこない「たんぱく質中心」「ビタミン・ミネラル重視」の方向に内容を改善することが必要である。つまりトレーニングと食事法は互いに関連して体づくりに大きな役割を果すわけである。
トレーニング法については、この分野での第一人者であられる窪田登先生をはじめ、多くの先輩たちの研究の結果、すでに世界的水準にまで達しており、本誌上などでしばしば紹介されているが、食事法についてはまだまだ遅れている感がある。
そこで、今月からはじまる“一流選手の食事作戦”では、世界および日本の一流選手にスポットライトを当て、学ぶべきところは学び、日本の実情に則してそぐわない点は「◯◯という理由のために」と解説を加えたうえで、判断をすることを目的とする。
本シリーズを連載するにあたって、先ごろボディビルの先進国、アメリカ西海岸を視察してきた。それらの諸体験をふまえて私見を述べていきたい。貴重なデーターや資料を寄せてくださった内外の一流選手や資料を調査・引用させてくださった方々に厚くお礼を申しあげる次第です。

2、フランク・ゼーンの食事内容

トップに登場するのは1977年、1978年と2年連続して、チャンピオンの中のチャンピオンを選ぶ「ミスター・オリンピア・コンテスト」に優勝したフランク・ゼーン選手である。
彼はよく知られているように、骨格はそれほど大きくなく、筋肉のバルクに恵まれているわけでもない。体重のつきにくい体を、トレーニングひとすじに励んで、写真のようなシャープで逞しい筋肉質の体に変えることに成功した。
こうして、世界の超一流ビルダーといわれるロビー・ロビンソン、カル・サカラク、ボイヤー・コウ、エド・コーニー、トニー・エモット、ビル・グラント、デニス・ティネリーノらを次々と打ち破ってきた彼の気迫と、理論的なトレーニング法や食事法には学ぶところが多い。
このフランク・ゼーンの食事法については、本誌1978年12月号に窪田先生が紹介されている。これを再録すると別表のようになる。
われわれに見られない食品が出てくるが、クリームはアイスクリームではなく、高脂肪の生クリーム、クラブソーダはダイエットとして発売されている無糖炭酸飲料、ハーブティはさしずめ百年茶や中国茶のような薬草茶、家きん類はとり肉や七面鳥の肉をさすと思われる。
コンテスト5週間前の食事法

コンテスト5週間前の食事法

表中、※印をつけた補強剤は次の12種目があげられ、1日当り摂取量は相当な量に達していることが注目される。
記事画像2

3、徹底した高たんぱく質

「こんな厳しい食事法をしなくてはならないのか」と驚いた人が多いに違いない。確かに極限をきわめる立場にある選手として、ゼーンがこのような内容の食事をしていることは事実であろう。問題はわれわれがどこまでこれを見習うかである。
「ウェイトトレーニングをすると同時に、高たんぱく質の食事をすることが筋肉線維の発達を促進するので、体力づくりにぜひ必要だ」と認められているが、どの程度にするかは、その人の体格・トレーニング内容、あるいは背景となる国民の食生活などさまざまな要素がかかわってくる。
アメリカやヨーロッパでは「高たんぱくの食事をとる」ということがごく当り前におこなわれる。それというのが、日本や東南アジアの国とちがってごはん・麺に相当する“主食”がなくもっぱらステーキ・魚・野菜が胃袋を満たす主要食品である。パンもあることはあるが、ごく少量の添え物にすぎない。卵料理は一人前2個が標準だしステーキ・ハム・ソーセージも厚みが大きくたっぷりある。したがって国民一人来りの食事構成を調べると次の表のようになる。
[表1]

[表1]

アメリカ人は小さい頃から高たんぱく食・高脂肪食になっているため、腸の長さが短く、体格が大きく恵まれている点は、われわれと大きなちがいである。
反面、太りすぎや成人病が多くみられ、日本食のパターンがアメリカで見なおされていることも注目しておきたい。
記事画像4

4、体格上の問題・トレーニング状況の問題

フランク・ゼーンが研究会のテキストに述べているところによると、「ふつうの人は体重2.2ポンド(1kg)当り1gのたんぱく質がいるが、ウェイトトレーニングをおこなって体重をふやしたいなら、体重1ポンド(0.45kg)当り1gの良質のたんぱく質をとるべきだ」ということになる。これは筆者がいつも「体重1kg当り2gを目標にたんぱく質をとるように」とアドバイスしていることとよく一致する。
ところがアメリカ人の平均体重は72kg、ボディビルダーの場合、90~100kgの選手が多い。したがって、一日あたり180~200gのたんぱく質が必要となる。
いっぽう、日本人の平均体重は約62kg、ボディビルダーの場合65~80kgであることが多い。したがって一日あたり130~180gのたんぱく質を食べれば目標は達せられる。アメリカ人の2/3~3/4でいいわけだ。だから「アメリカの一流選手が1日に肉1kg・プロテインパウダー200gとっているから、オレもこれだけ食べれるよう努力する」という考えはやや早計である。
さらに重要なことは「◯◯選手の食事法」という場合、普通のトレーニングをおこなっているときか、コンテスト直前のハードトレーニングで脂肪をそぎおとしているときか、区別をはっきり理解することだ。
前記のゼーンの食事法は、あくまでも「コンテスト5週間前に入ってからの食事」である。彼は午前に1回、午後に1回と合計4時間近いハードトレーニングを連日おこなっており、そのときの食事法である。
彼の食事内容を単純に採用し、トレーニング内容が彼ほどきつくないならせっかくつぎこんだ栄養はムダになってしまう。ムダになるだけならいいが体内で化学変化を受ける過程で胃腸・肝臓・腎臓に負担をかけ、あるいは太りすぎの原因になったり、果てはビタミンA・Dなどの過剰症が現われて、健康を損なって逆効果になることさえある。
要は自分の体にあったものをトレーニング状況にあわせて、ちょうど良いくらいにとることである。それには単に真似だけでなく、自分で考えて食べることが大切だ。
実際にゼーンの研究会テキストによると、普通のトレーニングの場合は、彼自身、もっと炭水化物をふやし、楽にエネルギーが発揮できるように配慮している。

5、補強剤について

最後にビタミン・ミネラルなど微量栄養素のとり方について言及しよう。
ゼーンが挙げている12種(研究会テキストでは37種類毎日食べることが紹介されている)のうち、あまり知られていないものを解説すると、

①ビタミンB1複合剤はビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸などビタミンB群の各成分を、錠剤にまとめたもの。味はまずい。

②ビタミンC複合剤はビタミンCのほかルチン、ビオフラビノイド、へスペルジンを含む錠剤。これもまずい(薬だと思えば仕方がないが……)

③レバーは動物の肝臓エキスの錠剤。日本で売られているものより強烈。

④レシチンは水と油を乳化させ脂肪の消化を助けるもの。肝臓病にもよいとされ、日本でも製薬会社が売っている。

⑤HCLは単なる塩酸でなく、グルタミン酸やベタインの塩酸化合物で、たんぱく質の分解・消化に役立つ。

⑥ミネラル剤はカルシウムのほか鉄、マグネシウム、リン、亜鉛、銅、カリウム、クロムなどを含む。

⑪コリン⑫イノシトールは共にリンを含む脂質で、脂肪を燃焼・分解するのに役立つとされている。

このように多種類のヘルスフードが用いられるわけだ。
ところが補強剤という名前のとおり本来は毎日の基本となる食事を充実させ、数多い食品材料を食べるなら、実際はそれほど必要なく、どうしても不足する場合にリリーフされるのが、サプルメンツ(補強剤・補助食品)である。
ゼーンなど一流ビルダーだけでなくアメリカ人一般に、本末転倒というか補強食品に頼りすぎている感がある。
ゼーンの食事法の場合、高たんぱく質を追及するあまり、穀物や小魚などをとることがなく、やむをえずこのような補強食品を採用することは理解できる。日本でも白米・白砂糖・白いパン・うどん・化学調味料など精製しすぎたものを用いてばかりいると、微量栄養素不足の傾向になることが一般に認識されだしている。
ハイプロテインパウダーの場合も、単純にたんぱく質だけを詰めただけでは、白砂糖と同じように微量成分が不足し、そのたんぱく質を体内で反応させてゆくサイクルが不完全燃焼することになる。この点ビタミンB1・B2・Cなどを混合して、配慮されている製品はベターであり、そのうえにゼーンらは補強剤を用いているわけだ。
日本人の場合、微量成分を食べるのに伝統的な醸酵食品が大きな役割を果たしている。納豆・みそ・つけもの・酢・清酒・かつをぶし等である。またチーズやヨーグルトも該当する。これらの食品は微生物が複合的にさまざまなビタミンやミネラルをつくりだし、知らず知らずのうちに体調をよくするのに役立っている。
したがって、自然に近い食品を食べてトレーニングすれば、それ以外にプロテイン、ジャームオイル、レバー、カルシウムくらいのヘルスフードを採用すれば十分ではなかろうか?
ただしゼーンのように極限を目ざす練習を連日何時間もおこない、食事法も極端に偏った超人工食品が主体になった場合は、微量成分についても研究をさらにすすめて、このような数多い補強剤をとるところまでゆきつくものと思われる。
アメリカ人は、補強剤を1日に200錠も飲用している人がよくあるといわれ、実際に街を歩くとヘルスフードの店が大通りに店を出し、棚にズラリとびんが並んでいる。
日本では「薬事法」という法律があり、薬品に類似した内容・形態を持った製品は販売規制がおこなわれ、なかなかアメリカやヨーロッパのようにはゆかない。「ぜひ入手したい」と望んでも輸入の段階でストップをかけられるのが通例になっている。それだけ日本は製薬メーカーの力が強いともいえる。各自で栄養学を研究して、現在可能な中からベターな食事法を考えるしかない。
第1回なので総論的に長くなったが次号以下に、各選手の工夫点などを詳しく述べてゆこう。ゼーンにもいつか再登場してもらい、彼の意見を紹介してゆく予定である。ご期待ください。
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月刊ボディビルディング1979年2月号

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