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蘇ったナチュラルプロテイン豆乳

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月刊ボディビルディング1993年1月号
掲載日:2020.02.17

実力以外の理由で敬遠

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 豆乳、随分と聞いて久しい感じがする。豆腐屋さんで買っていた時代から、健康食ブームに乗って、スーパーマーケットなどの冷蔵ケースに並べられるようになったのは20年くらい前だろうか。
 当時、成人病、肥満といった現代病とコレステロールとの間に、ただならぬ因果関係が発表された。美味飽食、グルメブームなどと言って、コレステロールの根源ともいわれる動物性脂肪を過剰に摂取していた日本人に、植物性タンパク質を中心にした日常基礎食品として、豆乳は評価されるに至ったのである。
 しかし、どうも日本人には豆乳の味がいただけなかったようだ。そもそもタンパク質の含有量が増えるにつれ、味のみならず、くさ味、そしてドロっとした舌ざわりが顕著になってくる。せっかく植物性タンパク質を主体にした、極めて有効な日常基礎食品だった豆乳が、このような実力以外の理由で敬遠されてしまったのである。

ハイテクドリンクとして復活

 ところが、いつの間にか、なんとなく古めかしい感じのする、羊の顔をした山羊といっった豆乳が、実はまったくのハイテクドリンクに変身していたのである。まさに、今の豆乳は、羊の顔をした狼といったところだ。
 このハイテクドリンク―そう呼ぶ理由は新たに考案実用化された製造行程にある。難しい説明は省くが、熱処理過程で凝固し易いアミノ酸を乳化させたり、沈澱、分離を無くしたことで、栄養価が極めて有利に吸収されるのである。さらに殺菌処理の高度化で、冷蔵保存しなくても60―90日は賞味できることになり、トレーニングに行くときの持ち運びにも便利となった。
 このような経緯の中、現在三種類の豆乳が市販されている。「豆乳」「豆乳飲料」「調製豆乳」がそれだ。「豆乳」はいわゆる自然食ブームの頃の物で、やや飲み難いのが難点である。味より成分を気にするビルダーにはお奨めだが、トレーニング前に飲むと胃がもたれるような感じになる。この「豆乳」に果汁、コーヒー、麦芽などを味や風味向上のために使っているのが「豆乳飲料」。豆乳の類の中では糖分が高く、ビギナービルダーがプロテインパウダーはまだちょっとね、というときにどうだろう。ただ糖分の高さは、他の豆乳とは比較にならないので注意が必要だ。最後に「調製豆乳」。これは日常基礎食品としてお奨めしたい。飲み易さ、味、タンパク質、ビタミンEの配合など、非常にバランスのよい、すぐれものである。

ここが売り!

 これら三種類の豆乳には、共通した特徴がある。それは、まず水溶性植物性タンパク質が含まれていること。水でさらしているために、尿酸結晶といった腎、肝機能に悪影響を及ぼすプリン体が極めて少ない。さらにアミノ酸組成も充分で、必須アミノ酸の内、特徴的に少ないのはメチオニンだけ。このメチオニン、お米に多く含まれており、炭水化物をお米から摂取するビルダーにとっては、アミノ酸バランスを取るための食品としてもお奨めできる。また、豆乳にはコレステロールが無い。そのうえリノール酸、リノレイン酸など人体内では作られない必須脂肪酸が含まれており、これらが不飽和脂肪酸であることから、コレステロール除去に一役かっているのは明らかだ。同じく豆乳に含まれている、トコフェロールにもこの効果が実証されている。まさに、ビルダーにはもってこい、といったところ。
 さらに意外な利点がある。それは、下痢の心配が無いということだ。ミネラルウォーターが原因で、下痢になるのをご存じだろうか。なんと犯人はカルシウム!海外旅行でちゃんとミネラルウォーターを飲んでいたのに下痢をしてしまった経験があると思う。実は、その中に入っていたカルシウムが犯人なのだ。豆乳には、このカルシウムが少ない。その代わりにリンが多量に含まれている。減量期に下痢で悩む人は豆乳を試してみてはどうだろう。医療現場でも飲まれておりバランスの良さはお墨付きだ。

消費国は世界中

 このような利点があってだろう、豆乳消費国は洋の東西を問わない。スポーツ界でも、マラソンのアベベ、水泳のマレーローズ、あのカールルイスやナブラチロワ、日本ではガッツ石松、具志堅用高などが愛飲しているとスポーツ誌が報じている。バルセロナオリンピックで活躍の目立った韓国選手団も豆乳を愛飲しているそうだ。ということは、先日のアジアオープンで活躍した、キム・ジュン・ホやハン・ドン・キなども愛飲しているのではないだろうか。消費国から見れば他の入賞者も愛飲している可能性が強い。

飲みかたはアイディア次第

 さてその飲み方だが、バナナや卵、フルーツなどをミックスするのはよく知られている。しかし、彼らトップアスリートには秘密のオリジナルブレンドがあるに違いない。そこでバランス抜群の「調製豆乳」を使った自分だけの豆乳ブレンドを作ってみてはどうだろう。アイディア次第でスープなども作れる。またコンディションに合わせて、三種類の豆乳を飲み分けるのもよい。生まれ変わった、基礎食品としての豆乳を見逃すてはない。
豆乳飲み飲み、ポーズをとれば、今日からあなたも、ハン・ドン・キ!
月刊ボディビルディング1993年1月号

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