フィジーク・オンライン
Weekly Monthly Shopping

木場克己 KOBA式体幹★バランス トレーニング の広がりと可能性 #2

この記事をシェアする

69
掲載日:2017.06.08
記事画像1

トレーナーの仕事の手助けと地域医療の向上につなげたい「ライセンス制度」

-- フィジーク・オンラインはアウター寄りの筋トレの情報が多いのですが、体幹トレーニングといいますと、自重やチューブで負荷をかける方法なのでしょうか。


サッカー日本代表の長友佑都選手が腰痛を抱えていたように、アウターだけを鍛えていたら腰痛を発症して悪化します。そこでインナーマッスルを鍛えれば、10の痛みを5に減らすことができる。重いものを瞬間的に持ち上げる時も、まずはインナーにぐっと力が入ります。体幹が弱いと何をするにも態勢が崩れやすくなり、加齢で筋力が衰えたら転びやすくなります。

私は競泳の池江瑠花子選手(ルネサンス亀戸)の体幹トレーニングを主に担当しましたが、インナーマッスルトレーニングでしっかり身体の軸を作っておくと、飛び込むときも壁をキックで蹴ってターンをするときもパフォーマンスが上がります。

長友選手も、インナーマッスルを鍛えた事により土台ができ下半身の安定がアジリティ(敏捷性)につながっています。チューブを使ったトレーニングをすると分かりますが、片足でチューブを支えられない人は頭が流れ、支えらすれている人は頭がぶれずに足の上にある。インナーとアウターの筋肉の連動がしっかりできているということです。

全ての競技において有用なインナーマッスルのトレーニングは怪我の防止やアウターマッスルのコントロール力を高める。

全ての競技において有用なインナーマッスルのトレーニングは怪我の防止やアウターマッスルのコントロール力を高める。

-- トレーニングをして、どのくらいの期間で安定するようになりますか。


意識ができて来たら、3週間ぐらいで安定します。まずは意識をしてインナーの土台を作り、そこからアウターやクイックの動作に入っていく。チューブやマットを使ってバランス能力をステップアップしていくと、トレーニングの強度があがっていきます。

リオオリンピックに出場した鈴木亜由子選手が在籍している日本郵政グループ女子陸上部を昨年より指導し、いま取り組んでいるのは、安定したフォームで走り、なおかつスピードを出すこと。トレーニングの意味を選手が理解してくれていると結果につながりますから、創部3年目の昨年のクイーンズ女子2016 実業団女子駅伝で見事 日本一を勝ち取ることができました。

このように結果が現れることは、トレーナーの伝える技術も大事ですし、意識して取り組んでもらうことが大切だと思っております。

たとえば頭の重さを意識して姿勢に気をつけると、頭から足先まで一直線になります。姿勢が悪いと常に前にかがんでいる状態になり、陸上選手だったら肋間筋が固まって深く酸素を取り入れられなくなります。疲れてくると肋間筋が開閉します。肋間筋が衰えると心肺機能が低下してより疲れやすくなり、背中や腰に負荷がかかります。走る際の腕の振りも負担になる。頭の重さは成人で5~8キロで、それを支えるのが首の筋肉や体幹の部分だということなどを話し、意識して取り組んでもらいます。


-- アスリートに限らず、中学、高校生ぐらいの時から言われたら意識しますよね。


そうですね。もっと早く知っていたら……と言われることがよくあります。ただ、体幹というキーワードだけを意識するのではなくて、トレーニングの意味をつかんでもらいたいんです。マットの体幹トレーニングで正しい姿勢を作ってから、インナー、アウターの必要な筋肉を作っていくと、自然に体力強化につながっていきます。


-- 木場先生が公認する「KOBA式体幹★バランス トレーニング(以下:KOBAトレ)」のライセンス制度を、2013年から始められています。実施状況はいかがでしょうか。


ドローイン(腹式呼吸)から始まる体幹理論、KOBA式ストレッチなどの入門メニューで構成された「ベーシック」の受講後、会員登録後に続くのが「B(バランス)ライセンス」。バランストレーニングを中心にしたメニューです。その上級に「A(アスリート)ライセンス」「S(スペシャル)ライセンス」があり、「Aライセンス」ではアスリートの指導が可能になるメニューを学び、「Sライセンス」は認定マスターコースとして、トータルで指導ができるトップトレーナーを育成します。トレーニング風景を見ながらケースごとにどう指導するかを考えたり、指導力を求めるようにしています。

今年5月から「競技別ライセンス」も始めました。サッカー、ゴルフ、野球、陸上、バレーボール、水泳、バスケットボール、それぞれの競技に特化したライセンシー認定を行います。ゴルフのコースなどはすぐに定員一杯になりました。仕事がなかなか軌道に乗らないトレーナーの方もいらっしゃるので、手助けしたいというのがライセンス制度の目的です。



KOBAトレとは?(KOBA式体幹★バランス トレーニング )

KOBAトレ ライセンスへの想い




-- ベーシックの土台は同じでも、競技によって枝葉が違っていくんですね。


Aライセンス、Sライセンス取得者が競技別を受講できます。ライセンス制度の会員数は現在約500名で、認定マスター(S)が91人(※取材時)になりました。

KOBA式が普及したら嬉しいことですし、学校レベルでも2つの専門学校で導入していただいています。全国に広がって怪我をしない身体作りや体力強化、地域医療の向上につながっていくことを最終的には目指しています。

強化トレーニングも大事ですけれど、正しい姿勢や怪我をしない身体作りへの意識を持ち、自己管理をしっかりやっていくことも大事ですから。ライセンス制度によって、これからの子供たちを育成するトレーナーの質が高まっていったらいいと思っています。

基本を踏まえつつ、1人1人の状態を見てトレーニングを行うことが大切

-- スポーツ振興や高齢化社会の中で、パーソナルトレーナーの役割が高まってくると思います。トレーナー技術の統一性などはどのようにしていくとよいでしょうか。


パーソナルトレーナーも個人事業主ですから、食べていかなくてはいけないし、多様なのは当然です。だからアウターはアウターの専門家がいていいし、私のようにメディカル的な発想から身体を作るトレーナーがいてもいい。アスリートのトレーナーとしていちばん大事なことは、強度を上げていく前に、選手の身体を知っておくことだと思いますよ。

すでにヘルニアの既往歴を持つ選手がいたら、どのあたりのヘルニアでどこの神経支配に影響しているのかを把握すること。指の感覚はどうか、力が入りづらい箇所があるかなどです。

ハムストの可動域が左右で違っていて、瞬間的にレッグカールでばんと上げて力が入りづらい場合、足でなくて腰に原因があったりするので、最大ではなくて90度ぐらいまで曲げさせてみる、力が入る範囲で終わらせておくなど、きちんと見定めながら進めないと「金の卵」を潰しかねないです。

選手とトレーナーの信頼関係につながるところで、ちゃんとコミュニケーションをとりながら、その選手にあったメニューを作り上げていけるかどうかが、パーソナルトレーナーとして生き残れるかどうかの大事なところだと思います。

ただ、障害の内容は競技別で違うので、水泳選手なら水泳肩、同様にゴルフ肘、野球肩といった競技特有の障害について、最低限は知っておくことは必要です。それプラス、パワー系のメニュー作りを進めていけたら、その選手はプレーヤーとして長く活躍できると思います。

自分はインナーに着目した身体作りで突き進みますけれど、いろいろなアプローチの仕方があると思います。パーツ的な強さも必要ですから、それぞれに考えてメニューを作っていく必要があります。


-- 基本をおさえながらも、1人1人を見るということでしょうか。


そうですね。チーム全員に同じメニューを課すと、ある選手は難なくできるがある選手は疲れがたまりやすかったりします。その差には原因があるので、チームに合わせるのではなくて個々のレベルに合わせてメニューを作らないと、オーバートレーニングで怪我をする可能性が出てきます。

メンタルの問題ではなくて、ある選手があるレベルまで行かないのはフィジカルでなんらかの原因があります。ではどうするかのアプローチの仕方を、ケースごとに考えて作っていくといいと思います。


-- 人によって身体は違いますし、トレーニングを受ける方も、メニューの意味が分からなくて続かなくなってしまうことがあります。


トレーニングは基本的に、何が正解かがたぶんなくて、統一や規格化は難しいと思います。個々によって体力の限界があるので、結局のところ、現在の身体のパフォーマンスをどのように上げていけるのか? ということになります。

柔軟性、パワー系でいろいろな指標があります。最大筋量を測ってみようと、レッグプレスで無理に負荷をかけてぎっくり腰になることもあるので、「怪我をしない程度」という指標は必要です。

どれくらいのタイムで走れるか、どれくらいスタミナがあるか、直線は速いがジグザグだと遅い選手もいます。ジグザグでお尻が振れても、頭がぶれない選手はスピードが出ます。一方、直線における腿の振りは強いがお尻が踏ん張れない選手なら、踏ん張る筋肉を作っていくことになります。

だから最大筋量を上げることよりも、なにか動きをさせたところで現われた指標から見ていく方がいいのではないかと。私は現場の中で怪我をしないためのトレーニングを作って来ました。個人にあったもの、チームにあったものといろんなアプローチがあり、いずれも1年で結果が現れるものなんですよね。

私自身のトレーニングで基本的なところとしては、「朝から姿勢を意識してくれ」というのをいつも伝えています。朝「気をつけ」をしてみて、掌が身体の真横にあるかどうか。少しでも前にあれば背中が張っているということなので、ほぐしてからトレーニングするようにしてくださいねと言っています。必ず朝に身体の状態をチェックをするような意識づけが大事だと思います。パーソナルトレーナー的に考えたら。

多くの感度の高いアスリートが木場氏の元を訪れる。左:久保 建英(くぼ たけふさ)選手 右:中井卓大(なかいたくひろ)選手

多くの感度の高いアスリートが木場氏の元を訪れる。左:久保 建英(くぼ たけふさ)選手 右:中井卓大(なかいたくひろ)選手

多くの企業とのコラボも。写真はPanasonic「コアトレチェア」

多くの企業とのコラボも。写真はPanasonic「コアトレチェア」

写真は座ってバランスを取るだけで体幹が鍛えられるPanasonic「コアトレチェア」

強い選手の特徴は「地道なトレーニングを愚直に続けてられる人」

-- トレーナーの方も、レベルアップしていく必要がありますね。


アスリートは身体能力を発揮できるかどうかを重ねて自信をつけていくので、「積み重ね」を地道にできるかどうかが大事ですよね。

積み重ねの面では「体幹トレーニング」もそうなんですよ。最初は3日間、次に3週間、3ヵ月続けて私のところにトレーニングに来てくれる選手は、あとは放っておいてもちゃんと続けてくれるので、3ヵ月継続させるために私はいろんな言葉でやり続けるように伝えます。すると習慣化する、そんなやり方をしています。

結果を出すことのできる選手は、地道なトレーニングを愚直に続けている人たちです。3ヵ月続けられたら、もっと続けてレベルアップしていこうと。


-- 地味なことを続けるメンタルや、こうなりたいという目標設定が大事だというのは、アスリートに限らずどの人にも言えることではないかと思います。「意識」していれば、高齢になっても動き続けていけるでしょうか。


できると思いますよ。プロスキーヤーの三浦雄一郎さんのような意識の高い人は、自分の身体をよく知っていて、何が足りなくてどうすればいいか、身体と対話していると思います。私もトレーナーを仕事にしながら自己管理できていないとよくないので、たとえば夜に会食をしたら、その後12時間は食事を空けるようにしています。腸が疲れるし、カロリー過多になりますし。小学生のときから格闘技をして体幹をトレーニングしていました。猫背でインナーマッスルの弱い人は、体重を落としてもリバウンドしやすいです。


-- いま書店では「体幹」「コア」の本が並んでいます。先生の近著では『完全体幹強化術-”軸”を鍛えて腹を凹ます』(日本文芸社)が今年3月に刊行されています。


内容はドローインやストレッチについて紹介していますが、割れた腹筋が表紙になっていて、実は腹筋はアウターなんですね(笑)。「体幹」という言葉が流行していますが、「インナーマッスル」についてもう少し広めたいんです。

「体幹」だけでなく「体軸」とバランスについても知ってほしくて、『体幹・体軸バランストレーニング』(宝島社)を昨年出版しました。体幹だけでなく、インナーとアウターをどう整えていくとパフォーマンスの向上につながるかをもっと知ってもらいたいと思っています。


子供の学力、体力が向上!! 自治体も注目する KOBAトレ

記事画像5
-- 町中にトレーニングジムを開設して、幅広い世代を対象にした体力強化に取り組んでいらっしゃいます。『小中学生のためのフィジカルトレーニング』(学研パブリッシング)という本も出しておられますが、子供の身体能力の差異を感じておられますか。


それは感じていますね。私は鹿児島市の出身で、もともと鹿児島の子は元気がよくて、田んぼや山で遊んで全国的にも体力が高かったのですが、最近、体力の低下が指摘されるようになりました。ただでさえ少子化なのに、体力がないまま大人になって活躍できるのかと、鹿児島県伊佐市が『児童生徒体力向上プログラム ~「KOBA式トレーニング」事業~』を2015年にスタートさせました。

私が小中学校に体幹トレーニングを教えに行き、授業前の姿勢作りやバランストレーニングを導入しました。するとバランスを取ることで意識、集中力が増して、学力、体力で効果が出ました。今年は3月に徳島県鳴門市の小学校でもトレーニングを行い、鳴門市で指導者を育成していくことになりました。また新たに6月1日より一般社団法人JAPAN体幹バランス指導者協会を立ち上げましたので更にライセンス制度が生きてくるかと思います。



-- ありがとうございました!



最後に、、、
取材中ずっと気になっていた絵は、、、やっぱり世界のサッカー選手のあこがれ「高橋 陽一先生」の作品!!

取材中ずっと気になっていた絵は、、、やっぱり世界のサッカー選手のあこがれ「高橋 陽一先生」の作品!!




木場克己 インナーマッスル インタビュー

木場克己 怪我を減らし、パフォーマンスを高める 奥深きインナーマッスルの世界 #1
木場克己 KOBA式体幹★バランス トレーニング の広がりと可能性 #2




インタビュー・構成:chie aoki
木場克己(コバ カツミ)
KOBAスポーツエンターテイメント株式会社 代表取締役
有限会社コバ・メディカルジャパン 代表取締役
株式会社アスリートウェーブ 代表取締役
一般社団法人JAPAN体幹バランス指導者協会 代表理事
一般社団法人TTC 代表理事

鍼灸師/ 柔道整復師/中津中医学院認定鍼師/健康運動指導士/日本体育協会アスレティックトレーナー/東京都教育委員会講師/日本体育協会公認アスレティックトレーナー検定員(2008年〜)/KOBA式体幹バランストレーニング協会代表/他、多くのクラブチームアドバイザー、プロ選手専属トレーナー、著書多数


■HP
木場克己オフィシャルサイト
コバ・メディカル ジャパン
アスリートウェーブ

KOBAトレ(KOBA式体幹★バランス トレーニング)

Recommend