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広背筋を大きくしよう ~ 中・上級者のための集中的トレーニング法 ~

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[ 月刊ボディビルディング 1968年7月号 ]
掲載日:2017.11.21
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吉 田 実 (第一ボディビル・センター)
 トレーニングを長いことやっていると、最初のころのような目立った筋肉の発達が見られなくなったという経験を、おそらくだれもがおもちでしょう。これは、最初のうちはいままでにない強烈な刺激を受けて急速に発達した筋肉がしだいに運動に慣れてきて、いままでのように刺激を感じなくなったからです。

 このようなばあい、普通のトレーニングをしていたのでは、思うような効果があがりにくいものです。その対策として、狙いとする部分を決め、その部分をきたえる種目とセット数をふやして、筋肉を集中的に刺激し、その発達をうながす方法があります。これが集中的トレーニング法なのです。

 今月は、広背筋の集中的トレーニングの運動5種目をとりあげてみました。

ストレート・アーム・プルオーバー

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10cmていどの握り幅で、ひじをのばしたまま、背と臀部をべンチから浮かさないで行なうことがポイントです。

バー・ローイング

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腕をのばしたときに腰を少し後ろに引くようにすると、広背筋下部が大きくのびてよく発達します。

べントオーバー・ローイング

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バーべルを引きよせるときに背の反動を使うと、効果は半減します。

チン・ビハインド・ネック

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あまり腕の力に頼らずに、広背筋を十分に意識しながらけんすいすること。

ラットマシーン

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いろいろを引き方がありますが、引く角度を変えるようにすると、刺激する部位が変わって効果的です。
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 一つ一つの運動が確実に刺激をあたえているにもかかわらず、発達しにくくなった筋肉を、より大きく発達させるには、刺激の量と強度をふやすよりほかありません。集中的トレーニングとは、つまり、他の部分に対する種目やセット数を犠牲にして、その分だけ狙いとする部分の種目とセット数をふやしていくという、いわば非常手段なのです。

 初級者のばあいのように、普通の全身的トレーニングだけでも筋肉が充分発達する段階では、集中的トレーニングの必要はぜんぜんありません。初級者は、量をふやすまえに、まず一つ一つの種目を正しい運動姿勢で行ない、確実に効果を生み出すように、質的な向上をはかるべきです。最初から体をあまりいじめずに、全身的にバランスのとれた円満な体をつくるように心がけなければなりません。

 広背筋は、上半身のなかで最も大きな筋肉ですから、正しい運動方法で確実に刺激をあたえれば、非常に大きく発達しやすい部分です。しかし、腕や脚とちがって、その筋肉自体が独自に運動することはできません。広背筋を鍛えるには、腕を使って運動しなければならないのです。ですから、方法をあやまると、たんに腕だけの運動になってしまって、広背筋に正しく刺激をあたえるという目的が充分に達せられないことになります。

 自分の実力以上に重いバーベルを使用し、腰や体全体の反動を使って、バーベルの上げ下げに終始してしまう人が多いのですが、これでは広背筋の運動にはなりません。バーベルの上げ下げは、それ自体が目的ではなく、体を鍛えるための手段なのですから、目的と手段を混同したり、とりちがえないようにすることがたいせつです。体力を消耗して努力しても発達しないーーこんなバカなまちがいを起こして、努力をカラ回りさせないようにしましょう。自分の力に見合った重量を使用して、体の反動を使わずに広背筋を充分に意識して運動してください。

注意すること三つ

 次に、集中的トレーニングを行なうばあいの注意事項を三つあげてみましょう。

 まず第一に、練習種目の選択にあたっては、できるだけ異質の種目を組み合わせて、多角的に運動を行なうということです。ひと口に広背筋といっても、非常に大きいのですから1カ所だけでなく、上・下・横と広範囲にわたって多角的に刺激することが、筋肉を大きく発達させるコツであるといえます。たとえば、ベント・ロー、バー・ローイング、ワンハンド・ローの3種目を行なうよりは、ベント・ロー、チン・ビハインド・ネック、ラット・マシーンの組合せのほうが、効果の点で数段まさります。

 第二に、刺激が強く、練習量が多いほど、筋肉の疲労は大きくなりますから、集中的トレーニングは長期間つづけるべきものではないということです。一般には、1カ月くらいが限度でしょう。そして、集中練習のあとは、筋肉に充分な休養をあたえることが必要です。1カ月で思うような効果があがらなかったときは、そのまま継続しないで、2〜3カ月その筋肉を休ませてから、もう一度集中するとよいでしょう。

 第三は、集中的トレーニングを行なうときは、他の部分をあるていど犠牲にすることを覚悟して、狙いとする部分以外の種目やセット数をへらすということです。他の部分の練習量はふだんと同じで、集中する部分の種目やセット数をふやしたのでは、全体的にオーバーワークになって、筋肉が発達するどころか、逆にやせ細ってしまいます。目的の部分以外は現状維持できればいうことなし。多少落ちるのがあたりまえなのですから、あまり欲ばってはいけません。一度獲得した筋肉は、細くなっても、また練習すればすぐ元の太さにもどります。

 せっかくスケジュールを立てて練習にはげんでも、その狙いが生かせないようでは、なんのための集中的トレーニングなのかわからなくなってしまいます。つまらない事に気をとられずに、おおらかな気持で、楽しく練習することが、りっぱな体をつくる近道なのです。
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[ 月刊ボディビルディング 1968年7月号 ]

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