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ポーズ写真に強くなろう ビルダー写真講座《12》

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[ 月刊ボディビルディング 1973年1月号 ]
掲載日:2017.09.27
講師●平岡 丈

■クリスからのアドバイス

 時のたつのは早いもので、この講座を始めてから1年があっという間に過ぎ、今回が最終回となりました。
 そこで、予告どおり今回は、クリス・ディカーソンから得たポージングに関する非常に有益なアドバイスについてお話ししてみましよう。
 ミスター日本およびエキジビションも終り、彼の帰国も近づいたある日、本社小沢社長に招かれ、ご存知高山勝一郎氏、本誌編集の小沢誠氏とともにクリスを伴い、神奈川県茅ケ崎市の社長宅を訪れました。
 ハードなスケジュールで疲れ気味の彼のために、という社長夫人の心づくしでスキヤキ・パーティーが始まりました。クリスは日本の牛肉が大変気に入った様子で、器用にハシを使いながら健啖ぶりを発揮、タマゴをかきまわす仕草など実に堂に入ったものでした。また、ビールと日本酒のどちらがよいかときくと、日本酒ほどおいしい酒は飲んだことがないなどといいながら、大きな手で小さいおチョコをつまんでチビリ、チビリ一。ゆでダコのように真赤になってゴクラク、ゴクラク(写真A)という光景も見られました。
写真 A

写真 A

 彼は、飲むほどに、酔うほどに能弁になり、私の質問に答えて様々な話をしてくれましたが、その中で、私の心に深く印象づけられたアドバイスがありました。
 写真Bをごらんください。これは彼が良いといった重村選手のポーズ写真です。なぜ良いのかときくと、彼いわく、体の向き、右足の向き、視線の向きの三者が対称的で、ポーズに広がりがあり、写真が立体的に感じられるというのです。私も写真の分野では、直線的よりも平面的、平面的よりも立体的の方がよいということは心得ていましたが、ビルダーのポーズについても同様に考えられるのだということを私に言ったのは彼が初めてでした。それだけに、このアドバイスには大いに共感を覚えましたが、ビルダーがポーズをとる場合、またそのポーズを写真に撮る場合、大変参考になることだと思います。
写真 B

写真 B

 スキヤキ・パーティーの後で、社長夫人のお点前によるお茶会が催され、クリスは少々にがい“日本の味"をかみしめるように味わい、“甘い、甘い”とヤセがまん一。一同大笑いというー幕もありました。
 ほんの数時間ではあったが、心のこもった温いもてなしに、彼のホオはくずれっぱなしでした。また、帰り際、夫人直筆の色紙を贈られた彼の満足そうな表情をごらんください(写真C)。
写真 C

写真 C

 丸一日クリスと行動をともにした私は、彼の思慮深さ、快活さ、礼儀正しさ等色々な面に触れることができまし
たが、注意すべきは、彼のポーズには、それら総ての面が集約されているということです。そこで、本当に良い写真を撮るためには、被写体となるベきビルダーの内面的な事柄についても知る必要があるということです。そこまでできなくても、そのビルダーと知り合いになった方が、何も知らなかったときよりも心の通った作品ができることでしょう。
 皆様、1年間のご愛読をありがとうございました。少しはポーズ写真に強くなりましたか?まだまだ書きたいことは山程ありますが、ひとまずお別れいたします。また別の企画でお目にかかりたいと思っています。それでは、本講座をもとにして、すばらしいポーズ写真をモノにしてください。
[ 月刊ボディビルディング 1973年1月号 ]

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