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ボディビルの基本⑳ 初心者のための基礎知識と実技【 知 識 編 】

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.10.13
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竹内 威(NE協会指導部長 ’59ミスター日本)

一般的な疲労

 疲労とは、働いた生体に、その結果としてもたらされる機能の低下の現象である。

 疲労はその疲れ方によって、肉体的なものと精神的なもの、全身的なものと局所的なもの、急性なものと慢性なものというように、ある程度区別することができる。

 疲労の本質については、現在の科学をもってしてもいまなお明らかにされていない。現在、疲労の原因として一般に考えられているのは、身体の活動により、エネルギー源であるグリコーゲンと血糖の保有量が減少し、その反面、中間代謝産物であるところの乳酸が増加して、作業能力を低下させるのではないかという説と、乳酸、破壊された細胞、尿素等の中間代謝産物や老廃物が、淋巴液や血液によって他の器管に送られ、それらの器管に作用して疲労の現象をひき起こすのではないかという説がある。

正常疲労と蓄積疲労

 仕事や運動で疲れても、一晩の睡眠か、長くても2〜3日で回復する疲労を正常疲労という。それに対して、1日、1日の疲れがいやされることなく持ち越された状態で、次第に蓄積されるのを蓄積疲労という。

 正常疲労は健康的な疲労のかたちであるが、蓄積疲労は非健康的で、ときには病的ともいえる疲労のかたちである。通常、オーバー・ワークといわれる状態は、この蓄積疲労の傾向を有している。

ボディビルと疲労

 ボディビルによる疲労は、どちらかといえば一時的な筋肉性の疲労であるから、一晩熟睡するか、翌日トレーニングを休むかすればたいていは回復する。しかし、これは、ボディビルの基本を守って、自己の体力に対して適量と思われるトレーニングを行なった場合についてのみいえることである。

 これに対して、体力や経験、日常の仕事や他のスポーツによる疲労などを考慮しないで、過度と思われるトレーニングを続けるときは、回復がスムーズになされず、疲労が蓄積されて、蓄積疲労の傾向を呈するようになる。いわばオーバー・ワークの状態となる。

 このようなオーバー・ワークの状態になっては、いかに熱心にトレーニングを行なっても、効果を期待することができないばかりか、かえって逆効果になってしまう。
 したがって、トレーニングを続けていくうえで注意しなければならないことは、疲労が蓄積されることのないように、トレーニング量と日取りを考慮して、つねに正常疲労のかたちで体力が回復するようにスケジュールを組むことである。
[註]トレーニング量が適量と思われ、一晩の睡眠で体力が回復しても、翌日のトレーニングは休むようにしなければいけない。というのは、筋力の向上や筋の肥大等、いわゆるトレーニングの効果は、筋組織が消耗から回復した後に得られるものだからである。つまり、トレーニング後の休養日に効果がもたらされるものと考えてよい。(図参照)
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オーバー・ワーク(修練過度)

 ボディビルにおけるオーバー・ワークの状態は、通常、1回のトレーニングによってもたらされることはない。このような状態をまねくのは、多くの場合、休養が不充分で、次のトレーニングまでに体力の回復が十分になされないほどの過度なトレーニングを続けることによって起こる。

 このように過度のトレーニングを続けていくと、前述したような蓄積的で回復しにくい慢性的な疲労の状態を有するようになる。そして、なおもそのようなオーバー・ワークの状態でトレーニングを続行するときは、極度の過労状態におちいり、健康を害し、深刻な場合には、胸部の疾患をまねくことにもなる。

 このような極度の過労状態は、徐々に疲労が蓄積してくるのが自覚できる場合と、自分ではさほど疲れていると思わないところへ急激におそってくる場合とがある。前者の場合は、どちらかというと、体力のあまりないひとに多くみられ、後者の場合は、比較的体力のあるひとにみられる。

 いずれにしても、そのような状態にならないためには、つねに体調に留意することが必要である。極度な過労状態に至らなくても、オーバー・ワークはすでに非健康的な状態であり、そのような状態では、もとよりトレーニングの効果を得ることはできない。

 したがって、このことをよくわきまえて、オーバー・ワークにならないように過度のトレーニングを避けるとともに、十分な栄養と休養をとって、速やかに疲労が解消されるように配慮することが必要である。とくに、熱心なひとは過度なトレーニングにおちいりやすいので、その点十分注意していただきたい。

 もし、オーバー・ワークの兆候がみうけられたならば、そのときはいさぎよくトレーニングの続行を中止し、長期的な休養(レイ・オフ。次号で説明する)をとって、蓄積された疲労をとり除くようにしてもらいたい。

オーバー・ワークにならないための注意

① 余裕のあるトレーニングを行い、からだにむち打つようなトレーニングの態度は改める。初心者の場合、必要以上に根性をもってトレーニングを行うことは、ややもするとオーバー・ワークに結びつくおそれがあるから注意する。

② からだが強く大きくなるのは、運動をしているときではなく、休養しているときであることを自覚する。

 トレーニングは、身体的向上を促すための刺激を与える手段であり、その効果は、トレーニングによる消耗から回復した後に、身体の組織にもたらされる。

③ 疲労を軽減し、回復を速めるには適切な休養をとることに加えて、消耗にみあう栄養をとることが必要である。

④ ボディビル以外にからだを使うことがら、たとえば、日常の仕事や他のスポーツによる消耗などを考慮して、無理のないスケジュールで行う

⑤ 人間のからだは機械ではないから調子のよいとき悪いときがあるのは当然である。その日のコンディションに合わせて、トレーニング量を減らしたり、あるいはトレーニングを中止したりするぐらいの気持のゆとりが必要である。トレーニングをノルマ視して、無理に行うことは厳に慎むべきである。

⑥ トレーニングが苦になったり、トレーニングごとに力が減退していく現象は、オーバー・ワークの兆候であるから、ただちに長期な休養をとり体力の回復をはかるようにする。また、休養と栄養の面で不備な点はないかどうか検討する。

 長期的休養は、通常7〜10日間ぐらいであるが、疲労の度合によってはさらに延長しなければならない。

⑦ 疲労を軽減し回復を速めるために、クール・ダウンを必ず行う。

⑧ 適切なトレーニングを行なっていても、定期的に長期の休養をとるようにする。

⑨ 生活が不規則になるようなとき、たとえば徹夜勤務などがあるときなどは、とくに食べ物に留意する。仕事中はもちろんのこと、事前に栄養価の高いものを食べることによって体力を蓄えておくようにする。また休息と休養のとり方についても十分考慮する。

⑩ 仕事や勉学の際には、深呼吸や軽い体操を適時行うようにして、疲労が定着するのをできるだけ防ぐようにする。
[ 月刊ボディビルディング 1973年5月号 ]

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