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アーノルドのライバルが確立した「ヘビーデューティートレーニング」とは?

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掲載日:2016.06.09


世間では、雑誌やTVにDVD、インターネット等でも沢山のトレーニングの情報があふれている状態だ。特にトレーニング初心者や中級者は(上級者でもいるかな)一体どれが正しい方法なんだ?なんて迷ったりしてるんじゃないだろうか?

「トレーニングは一人一人に合ったやり方を自ら見つけ出していかなければならない」なんて言う人もいるけど、こんなに情報があったんじゃ自分に合った方法を見つけ出すまでに何年かかるかわからない。

しかし全てを検証しなくても筋肉が大きくなるための必要条件は見出せるはずだ。その必要条件を探求していった伝説のビルダーがいる。彼の名前はマイク・メンツァー、そう彼こそがヘビーデューティートレーニング(以下HDTと表記する)を確立した人物だ。

マイク・メンツァーはアーノルド・シュワルツェネッガーの最大のライバルとして1970年代から80年にかけて活躍した伝説のビルダー、オールドファンならもちろん知っているだろう。

彼はノーチラスマシンの開発者として有名なアーサー・ジョーンズ博士と出会い、大きな影響を受け、自らのトレーニング理論を完成させた。

1980年のミスターオリンピアでは過去最高のコンディションで出場するもアーノルドに破れ、彼は引退を決意。彼の引退と共に、HDTも次第にボディビル界から注目を浴びる機会が少なくなったのだ。

しかし彼は活動をやめなかった。マイクは現役当時と変らない情熱を込め、トレーニング専門誌等への執筆業と共にパーソナルトレーナーとして数々のクライアントを指導した。

クライアントはドリアンイエーツ(元MRオリンピア)アーロン・ベーカー等のようなトッププロビルダーをはじめ映画俳優、多くの一般トレーニーと幅広く、日本人ではストロング安田(安田強)氏が彼から直接指導を受け、僅か半年間で8kgの筋量増加に成功している。

彼はクライアントへの指導を通してデータを集積し検証し、彼が亡くなる直前までHDTを常にカスタマイズさせていったのだ。HDTが概念だけが一人歩きしているようなアプローチでは無いって事はわかってもらえただろうか?

ヘビーデューティーの実践者ストロング安田氏(左)とドリアン・イエーツ


ドリアン・イエーツのMRオリンピアでの活躍もあり、HDTは再び脚光を浴び、実践者は急増した。いわゆるブームという奴だ。しかし、ここで大きな問題があったと僕は考える。

あまりにも技法(やり方)に注目が集まったために、マイクが本当に伝えたかった、ウェイトトレーニングに対する態度(心がまえ)が殆ど紹介されなかった事。

本当のHDTの効果を体感したいのなら、技法よりもむしろ、態度(ウェイトトレーニングに対する心がまえ)が重要なのだ。いや、こう言った方が正確かもしれない、ウェイトに立ち向かう強い精神力HEAVY DUTY MINDを持ち、マイクが考案したHDTを行って初めて、最高の結果が期待できるのだ。

アメリカで出版されたマイクの本には重要な部分として「こころ」のパワーを沢山のページを割いて紹介している。この本で、僕が皆さんに一番伝えたい事はこの部分、自分自身の「こころ」を理解することで、あなたのトレーニングは確実に変化するという事だ。

この理論編ではマイクの残したHDTの概念の中でも特に「こころ」の部分、それが持つパワー、可能性を、より実践的な形で、僕なりに紹介していければと思っている。

まずは、HDTとはどんなトレーニングなのか簡単に説明し、少し解説を加えようと思う。


■ ヘビーデューティートレーニング(HDT)とは
①アーサー・ジョーンズ博士(ノーチラスマシン開発者)の理論をベースにマイク・メンツァーが考案
②各種目に対して1セットのみ。そして高強度(高重量を扱うという訳ではない)である。
③全ての可動範囲で負荷が抜けないように、チーティング(反動動作)を使わず、正確なフォームでトレーニングを行う
④従来考えられているトレーニング頻度と比較すると非常に低い頻度(同一部位は週に1回(初心者)〜2週に1回(上級者)
⑤etc

■ 1セットオールアウトHDTで最も象徴的な言葉
たった1セットで、筋肉は肥大するの?という読者の声が聞こえてきそうだが、実際多くの大中小規模な実験結果があり、(アーサージョーンズ博士のノーチラス社が巨額の資金を投資して実際に実験を行った)ほとんどの被験者には大きな筋量の増加が認められている。

ただし、従来の多セット法で行っていたようなやり方や強度で、上記の条件(各種目1セット)でトレーニングを行っても筋肉の発達はあまり期待できないだろう。

■ 複数セット VS ワンセット
単純に考えて、1セットしかしない場合と10セットする場合では、どちらが各セット限界に挑めそうだろうか?イメージしてみてほしい。答えは簡単、もちろん1セットだ。

人間には意識のレベルと無意識のレベル(前意識を含む)があると精神分析の創始者Sフロイトが言ったように、毎回のセットで一生懸命頑張ろうと意識のレベルでどんなに考えていても、無意識のレベルでは10セットこなすという計算が働き、目的は筋肉を限界まで追い込むという事であったはずなのに、10セットをこなす事、10セットで限界に追い込む事が目的の中に含有されてしまうのだ。
そのために、わざわざ強度を無意識的に弱くしてしまっているのだ。

ここまで説明すれば「1セットでオールアウト」する方法が強度を極限にまで高めるには合理的だということは、もう理解できるはずだ。従来のトレーニング理論で言われる筋肉の発達には3セット必要であるとか、5セット必要であるというような説明には明確な根拠は無いっていう事実を、皆さんは知っていただろうか?

この点について深く考えたり調べた事がある人は意外に少ないんじゃないだろうか?1セットでオールアウトさせるやり方が複数セットよりも強度を高める事ができるという事がわかったところで、それに関連した筋肥大の基本原理を考えてみよう。

精神分析の創始者S.フロイ卜について
ジークムント・フロイト(1856〜1939)オーストリアの精神科医
フロイトは人間のこころは意識(自分でいつも意識している領域)と前意識(意識をそちらに向けると認知できる領域)そして、無意識(自分でも意識できない、自分も知らない領域)の層があると考えた。フロイトの考えた精神分析とは無意識の存在を前提とした、人間のこころを解き明かそうとする学問体系であり心理療法である。



筋肥大の基本原理


筋肉を付けるという事
まず最初に、何故筋肉が付くのか?という事を考えてみよう。そう聞かれると、すぐに答えられる人は少ないのではないだろうか?何も難しく考える必要はない。人間は(当然全ての生物も環境適応する)環境に適応するから筋肉がつくと考えられる。

例えば日差しの強い地域に住んでいる人は、日光に対して強い肌を持っている。そして、毎日肉体労働をするような人は、仕事に就いた数ヶ月はとても疲れて毎日が大変だけど、次第に体力がつき以前よりは楽になってくる。どちらも環境に対して適応したと考えられる。人間の身体は特定の要求が継続的に課されると、その環境に対応するために適応する。

そこで、ボディビルダーが筋肉を付けるという事は、どういった要求を身体に課せば良いのか考えてみよう。

答えは簡単。筋肉の中でも、よりたくさんの速筋が必要とされる状況を作り出せば良い訳だ。筋肉は大きな分類で速筋(白筋/FG、FOG)と遅筋(赤筋/SO)に分ける事ができるが、それぞれには特性があって、速筋線維は単位時間内の筋出力が大きいけれど、持久力は乏しく(短距離走をイメージ)、遅筋線維は筋出力が小さいけれど持久力に優れた特性を持っている(長距離走をイメージ)。

速筋と遅筋をそれぞれに用いたトレーニングを比較した場合に、圧倒的に太くなりやすい性質を持つのは、速筋線維だから、筋肥大を目標とするなら速筋を刺激する必要があるのだ。


速筋が必要とされる状況とは?


ここで皆に再び質問。ウェイトレーニングで筋肉を発達させるためには何セット必要だろうか?3セット?5セット?20セット?もう答えはわかっているはずだ。

多ければ多いほうが良いのでは?と今まで思っていた人もいるだろうけど、僕たちが欲しいのは速筋だから、たくさんのセットをこなす能力が必要なわけではなく、一時に動因される筋肉の稼働率が重要なはずだ。

1セット40秒から72秒(いろいろな説はある)の範囲で限界に達するように重量を設定し、反復運動を行う。そして筋肉へ発達のシグナルを送るためには、毎回限界に挑むようなトレーニングでなければならない。

HDTは『1セットしかやらない』のではなく、まさに『1セットしかできない強度でトレーニングをする』ということ、つまり1セットが終了した時点で、筋肉は悲鳴を上げ、心臓は早鐘を打つように激しく鼓動し、もう1セットやる?なんてトレーニングパートナーに聞かれたら、ぶん殴りたい気持ちになるって状態だ。

そんなセットに挑むためにマイクは「ジムでのトレーニングは戦場に向かうかのような精神状態で挑む」と言っている。皆はジムに来る前に、またセットに入る前にどんな精神状態だろう?マイクのいう精神状態のレベルに上げることができれば、必然的に集中力もピークになるだろう。


ヘビーデューティートレーニングを確立したマイク・メンツァー


このような方法でトレーニングするなら一回のトレーニングに必要な時間は30分も必要は無い、同時に人間は高い集中力を保ち続けるには30分程度が限界だろうという説もあるように、とても合理的な考えではないだろうか?

少しはHDTについて理解していただけただろうか?次回からはHDTによって、皆さんの潜在能力を100%引き出すためのノウハウをより具合的に紹介していきます。



  • 肉体と精神究極のトレーニングバイブル ヘビーデューティーマインド
    2013年8月30日初版発行
    著者:小川淳
    監修:日本ハイインテンシティトレーニング協会(JHITA)
    発行人:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社
    編集:株式会社M.B.B.


[ 肉体と精神究極のトレーニングバイブル ヘビーデューティーマインド ]

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