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<ベンチプレス>高頻度トレーニングとは?

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掲載日:2016.10.26
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ここでは【高頻度トレーニング】ということで、週に4回以上の頻度でベンチプレスのトレーニングを行う方法の、様々なバリエーションを紹介します。

高頻度トレーニングとは?

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「トレーニングを行ったら超回復のため休まなければならない」、「休まずにトレーニングを行っても筋肉は成長しない」

こういったことは、ウエイトトレーニングをはじめたときに誰もが耳にする言葉でしょう。しっかりと筋肉を追い込んだトレーニングを行い、しっかりと休む。
同じ部位のトレーニングを行うのは多くて週に2回までで、回復が追いつかない人なら週に1回でもかまわない。また、高重量を扱う人は回復に時間がかかるため、同じ部位のトレーニングは週に1回だけしか行わなくて良い。このようなことが当たり前のように言われ、トレーニングを行う上での常識となってしまっているのではないでしょうか。

しかし、その一方で週に4回や5回、中には毎日同じ部位のトレーニングを行い、信じられないような高重量を扱い、パワーリフティングやベンチプレスの試合で高記録を出している選手も多くいます。このような高頻度のトレーニングを行っている有名な選手と言えば、やはり児玉選手でしょう。
彼は週に5回という高頻度のトレーニングによって記録を伸ばし、世界ベンチプレス選手権大会で5連覇と偉業を成し遂げました。

しかし、児玉選手の事を例に挙げると多くの人が決まってこう言うのではないでしょうか。
「高頻度のトレーニングで記録を伸ばしているのは彼が特別だから」と。
確かに児玉選手は高頻度トレーニングを行い、圧倒的とも言える記録を誇っています。ただ、彼に特別な才能があったから高頻度でトレーニングが行えるという事ではありません。彼の才能はベンチプレスで他の誰よりも高重量を挙げる才能であり、ほかの人よりも高頻度でトレーニングが行えるという才能ではないのです。

実際、彼が始動するK'sジムの多くの選手が、週に4回以上の頻度でベンチプレスのトレーニングを行い、記録を伸ばしています。全ての人が高頻度トレーニングで結果を出せるとは言い切れません。しかし、やり方さえ間違えなければ、多くの人が記録を伸ばすことが出来る効果的な方法のひとつとして、高頻度トレーニングを取り入れることができるはずです。

現在、高頻度トレーニングに対して多くの誤解が生まれてしまっています。また、高頻度トレーニングへの疑問もあるでしょう。ここではそういった誤解や疑問を解いた後、高頻度トレーニング導入までの流れを紹介したいと思います。

高頻度トレーニングへの誤解と疑問

■どこからが高頻度トレーニングか?
「週に何回ベンチプレスを行えば、高頻度トレーニングになるのか?」ということですが、基本的には週に4回以上ベンチプレスのトレーニングを行う場合から、高頻度トレーニングと呼ぶことになります。

週に2回ベンチプレスのトレーニングを行う場合、月曜日にトレーニングを行い2日間オフ、木曜日にトレーニングを行い3日オフといったように、トレーニング日の前後に必ずオフを設け、週に3回の場合も同様で、トレーニング日の前後に1日、もしくは2日のオフを設けることになります。

これに対して週に4回以上ベンチプレスを行う場合は、2日連続以上で行うことになります。

例えば、週に4回の場合であれば、1週間で、
トレーニング ― オフ ― トレーニング ― オフ ― トレーニング ― トレーニング ― オフ
または
トレーニング ― トレーニング ― オフ ― トレーニング ― トレーニング ― オフ ― オフ
といったように、必ず2日連続以上で行う事となり、このような2日連続以上でベンチプレスのトレーニングを行う週に4回以上のトレーニングを、高頻度トレーニングと呼んでいます。

なお、週に5回以上の頻度で行う場合は、エブリベンチと呼ぶこともあります。


重い日と軽い日を分けるか?
「一週間に4回や5回もベンチプレスが行えるのは、トレーニングを重い日と軽い日に分け、軽い日はほとんど触る程度にしかトレーニングをしないからだ」

高頻度トレーニングを行っている人が、「トレーニングを分けて行っている」ということだけが情報として出てしまっているため、このような誤解をしている人も多いはずです。確かに、高頻度トレーニングを行う場合、すべてのトレーニングを同様の内容で行うことは稀で、トレーニングを分けて行うことが多くなっています。

ただし、「重い日と軽い日」といったような分け方ではなく、状態に合わせてトレーニングの目的とトレーニング内容を変え、地力アップ(筋力・筋量アップ)のトレーニングを行う日、
身体をつくるトレーニングを行う日(筋量アップ)、力を引き出すトレーニングを行う日(筋力アップ・神経系強化)といったようにメニューを分け、数種類のトレーニングを行うことが多くなっています。また、どのメニューも軽く触るだけといったようなことはほとんどなく、基本的にはその状態で扱える最も重い重量でトレーニングを行うことになります。

「重い日と軽い日に分けてトレーニングを行う」ということではなく、「日によって目的や内容を分けてトレーニングを行う」

これが高頻度トレーニングの正しい考え方になります。


常に疲れた状態でトレーニングを行うのか?
「毎日トレーニングを行っていて疲労が残らないのですか?」
児玉選手はこういった質問をよく受けますが、彼は決まってこう言います。
「慣れれば大丈夫です」と。

この言葉だけを聞くと、どうしても「児玉選手だから・・・」なんて思ってしまうでしょうが、K'sジムで高頻度トレーニングを行っている選手のほぼ全員が、ほとんど疲労を感じずに高頻度トレーニングを行っています。

オフの後にトレーニングを行う方が、2日以上続けてトレーニングを行う場合よりも重い重量が挙がることが多いのですが、ほとんどの場合でその差は2.5kg程度で、人によっては全く変わらない、オフを取らない方が挙がるということもあります。

また、「それだけ毎日トレーニングをしていて筋肉痛にならないんですか?」という質問をする人もいますが、高頻度トレーニングを行っている人のほとんどが、筋肉痛になっていません。これはしっかりとトレーニングを行っている人なら誰もが知っていることですが、筋肉痛になるトレーニングが良いトレーニングとは限りませんし、筋肉痛にならないと筋肉は成長しないというわけではありません。

適切なトレーニングを行ってさえいれば、筋肉痛になる、ならないということは、重要視する必要はないのです。


回復の早い限られた人だけが可能なのか?
「毎日トレーニングを行っても疲労が残らないのは回復が早い限られた人だけでは?」
そう思うでしょう。

確かに、すべての人が高頻度トレーニングに対応できるわけではありません。回復の遅い人は、どうしても高頻度トレーニングでは疲労を残した状態でトレーニングをすることになり、その効果も得られないでしょう。

ただ、回復が早い「限られた人」だけが可能か?と言うと、そうではありません。

高頻度トレーニングに対応できるかどうかで最も重要なのは、その導入方法と実施方法です。この2つを正しく行えば、「限られた人」だけではなく、多くの人が高頻度トレーニングを行えるはずです。高頻度トレーニングで効果を得られている人は、回復の早い限られた人ではなく、高頻度トレーニングをうまく行っている人なのです。

そういった人たちが誤った高頻度トレーニングの導入方法や実施方法を行っていたとしたら、回復の遅い人と同様に高頻度トレーニングで効果を得られていなかったでしょう。


高頻度トレーニングの効果は?
「高頻度トレーニングはその労力に見合うだけの効果があるのか?」当然、多くの人がこう思うはずです。

週に2回ベンチプレスのトレーニングを行っていた人が、高頻度トレーニングを取り入れて週に4回トレーニングを行うとなると、様々な面で今までよりもきつくなってきます。ジムに通う時間を作るのも大変でしょうし、他の部位のトレーニングもどうしてもおざなりになってしまうでしょう。しかし、高頻度トレーニングを取り入れ、対応できた場合、それらの労力に見合っただけの効果を得られる可能性は充分にあります。

知る限りでは週に2回程度のトレーニングから高頻度トレーニングに変更し、うまく対応できた人のほとんどが、短期間では通常ではありえないような記録の伸びを示しています。トレーニングをはじめたばかりであっても、1年で50kgから75kgになるように、25kgも伸びればいいところです。そこから先は1年で5kgから10kg程度しか伸びず、トレーニング年数が長くなるにつれて体重を増やしたりしない限り記録は伸びなくなってきます。

しかし、高頻度トレーニングを取り入れ、対応できた場合、うまくいけば数年分に値する記録の伸びを、短期間で得られることもあります。例えば、児玉選手の場合、高頻度トレーニングを取り入れる前はノーギア(専用のシャツを着用しない試技)で185kgという記録で2年近く停滞していました。しかし、高頻度トレーニングを取り入れ、それにうまく対応できたことで3ヵ月後には15kgも記録を伸ばして200kgに、そしてその3ヵ月後にはさらに10kg記録を伸ばし210kgを挙げるようになっていました。たった半年間で185kgという高いレベルから、ベンチプレスをはじめたばかりの人の1年分の記録の伸びを見せたわけです。

この児玉選手の例は極端かもしれませんが、高頻度トレーニングに対応できた人の多くが、半年程度の短い期間で平均して10kg以上も記録を伸ばしています。ただし、高頻度トレーニングを取り入れ、対応できた後の半年間は、トレーニングの頻度を2倍にした分だけ効果も2倍になったような記録の伸びがありますが、そういった記録の伸びのほとんどは
力を引き出すことによる効果で、それから先は地道に体を作り、地力を上げていかないと記録は伸びません。体を作る場合、トレーニングの頻度を2倍にしたからと言って、その分だけ体が作れるという事はありません。

高頻度トレーニングに否定的な人は、「多くトレーニングすればいいってもんでもないだろう」とよく言いますが、確かにその通りです。他の人の何倍もトレーニングをしたからといって、他の人の何倍も効果が得られるとは思いません。ただ、人よりも多くトレーニングを行うことで、記録を伸ばすきっかけ、記録を伸ばすヒントを得る機会が増えるのは間違いないと思います。それがフォーム的なことであったり、トレーニングの方法であったりと様々ですが、それらが記録を伸ばすチャンスとなり、結果的に通常のトレーニングではないような記録の伸びにつながってくるのです。
  • ベンチプレス 基礎から実践 ベンチプレスが誰よりも強くなる(VOL.1)平成23年9月1日初版1刷発行
    著者:東坂康司
    監修人:児玉大紀
    発行人:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


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