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第57回男子・第29回女子日本ボディビル選手権大会講評 JBBF審査委員会委員長 中尾尚志の目

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.07.20
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7月24日の日本クラス別ボディビル選手権大会から始まった今年度のJBBF主催大会も、残すところ日本選手権だけとなった。一昨年と同じメルパルク東京に、全国から集まった選手、関係者並びに観客の皆様の期待に応えるように、第57回男子・第29回女子日本ボディビル選手権大会が、今年度の締めくくりにふさわしい幕を開けたのだった。

今年の日本選手権大会は、インターネットを通じたライブ中継の初の試みや、NHKのボディビル番組制作のためのカメラが持ち込まれたりと、例年に無く話題性に富んだものになった。その上、韓国からのゲストも参加して、我が国最大のボディビルイベントは、否が応にも盛り上がっていったのである。

男子予備ピックアップ審査

予定より遅れて始まったプレジャッジは、男子の予備ピックアップ審査から開始された。男子出場者39名を、20名に絞るピックアップ審査に挑むようにポージングする選手の姿に、今年1年をこの大会に賭けてきた思いがこちら側にも伝わってくるようであった。

予備ピックアップ審査は、6回行われて総勢27名の選手が呼ばれた。実際は、15名の選手が複数回呼ばれたのだが、1回しか呼ばれなかった選手8名のなかで、20名に残ったのは加藤、佐藤、増田の3名だけ。一方2回呼ばれた2名の選手は、どちらも残らなかった。もっとも多く3回のコールを受けた5名では、村松、大原、中武の3名が残った。

以上6名の選手と、一度もコールされなかった山崎、須江、合戸、近藤、高梨、鈴木、山田、谷野、相川、木澤、下田、須山、林、井上の14名が、次のピックアップ審査に進むことになった。昨年のファイナリスト12名はやはり強かった!!だが次のピックアップ審査の結果では、昨年のファイナリストのメンバーにひょっとして変動が起こるかもしれない? そんな想像を働かせながら女子のピックアップ審査に入っていった。
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【上】左より大原、岩尾、金子、村松、吉山。ジャパンオープンでは不発に終わった金子は、今回は筋肉の張り、カットともに良かった
【下】村松(左)と山本。過去に決勝進出を遂げている2人だが、今年は予備ピックアップで姿を消した

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【上】左より松本、小田、岩尾。8年振りに復活をした岩尾。結構良い仕上がりだ
【下】中武(左)と大原。中武も過去のファイナリストであるが、張り、カット共に今ひとつだった。今年の東京優勝者の大原は、全身に鋭いカットを見せていた

女子ピックアップ審査

女子は、28名の出場選手から12名に絞るピックアップ審査で始まった。2回のピックアップ審査で計10名の選手がコールされた。1回目のコールは、佐藤、高松、深作、湯澤、佐々木、高原の6名。佐藤にいつもの厳しさが感じられない。佐々木は過去最高の仕上がりに見える。高原の絞り過ぎがちょっと気になる。高松、深作、湯澤の3名は、いつも通りの仕上がりである。

2度目のコールでは、秋山(加)、湯澤、佐藤、高原と呼ばれ、秋山の表情に緊張感が漂う。2度のピックアップ審査に呼ばれたのは7名であるが、ポイントを獲得したのは湯澤、佐々木、秋山、高原の4名だけ!!はたしてこの4名から誰が抜け出すか結果が楽しみだ。

ピックアップ審査で一度も呼ばれなかった石澤、惠良、水間、久野、山野内、足立、清水、今村、神田、廣田、相馬の11名に佐々木が入った。これで今年度の女子ファイナリストが決定したわけであるが、興味深いのは、昨年出場していない水間、神田そして廣田の存在である。
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【上】左より佐藤、高松、深作、湯澤、佐々木、高原
【下】左より秋山、湯澤、佐藤、高原

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【左】昨年12位の高原は、やや絞り過ぎのように感じられた
【右】ミス日本の常連である秋山。まさかの予選敗退であった

男子ピックアップ審査

20名に絞られた選手から12名を選出する男子ピックアップ審査は、予備ピックアップ審査と比較にならないくらい熱気に包まれたものであった。いつにも増して繰り返されたピックアップ審査は7回を数え、徐々に進行表の時間から遠ざかって行こうとしていた。

1回目は井上、佐藤、林、高梨、増田の5名。佐藤は、しっかり仕上げてはいるが、少し甘く見える他の4名と比べると華奢に見えてしまうのは、体重差のせいかも知れない。

2回目は、久松、佐藤、高梨、大原そして増田。1回目と違うのは、井上と林に代わって久松と大原が呼ばれたことである。最近昇り調子の久松の皮膚感が良くない。腹筋も他のパートと比べると少し弱い。一方大原は、背中の良い選手である。

3回目は、山崎、大原、加藤、林の4名。山崎は、大きな選手のなかで健闘しているが、バックのダブルバイセプスは、体中を詰めてしまい、ことさら幅を狭めている。加藤も大きい方ではないが、ダイナミックなポーズの取り方で体を大きく見せている。

4回目は、林、山崎、井上、佐藤そして高梨。林は、バックに比べて前面の仕上がりに甘さが出ていた。高梨は、これまで欠点の少ない選手と云われながら今一つインパクトに欠けるところがあった。しかし今年は少し違うようだ。

5回目は、山崎、近藤、高梨、久松そして井上。ここにきて初めて近藤が入ってきたが、いつも通りの仕上がりの良さとは裏腹に、細く感じるのは高梨、久松、井上と比較するからか?

6回目は、高梨、久松、佐藤の3名。ラストコールは、加藤、山崎、佐藤そして、高梨。加藤は、バックに比べて前面の厳しさに少々不満を感じた。

10名の選手によって繰り広げられたピックアップ審査で、最も多かったのが6回の高梨、5回が佐藤、4回が山崎、3回が井上、林、久松、2回が増田、大原、加藤、そして1回が近藤であった。一度のコールも受けずにファイナルに駒を進めたのは、須江、合戸、鈴木、山田、谷野、相川、木澤、下田、須山の9名。そして厳しいピックアップ審査を勝ち抜いたのは、近藤、高梨、林の3名であった。ピックアップ審査に6回呼ばれた高梨、3回の林、そして1回の近藤。この回数が、この先予選審査にどう影響をおよぼすのか興味深いところである。
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【上】左より久松、佐藤、高梨、大原、増田
【下】左より井上、佐藤、林、高梨、増田

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【上】左より高梨、久松、佐藤。昇り調子の久松ではあったが、皮膚感が良くない
【下】左より山崎、大原、加藤、林

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【上】左より加藤、山崎、佐藤、高梨。高梨はこのラウンドで6回も抽出された
【下】左より林、山崎、井上、佐藤、高梨。山崎は体を詰めていて幅を狭めている

左より山崎、近藤、高梨、久松、井上

左より山崎、近藤、高梨、久松、井上

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(左から)ジャパンオープン優勝者の山崎は、惜しくも決勝進出ならず
今年の東京優勝者の大原。バックの鋭さが目を惹いた
10年連続決勝進出を果たしている井上だが、今年その記録は途絶えてしまった

女子予選審査

女子予選審査が始まったが、昨年のファイナリストで、惜しくも残れなかったのは佐藤、秋山、高原の3名。入れ替わって水間、神田、廣田が決勝進出となった。

水間の戦歴は周知のごとく元日本チャンピオンである。一方廣田も、日本クラス別選手権を幾度となく制覇している国際大会経験豊富な選手である。この2選手の入賞は当然かも知れないとして、一方神田は、抜群の素材と言われながら大会から遠ざかっていて、一昨年久々の出場にもかかわらず見事にはずした記憶が今も新しい。ところが、今回の神田は少し違う。持ち前のフレームは見事にVシェイプされ、女性ビルダーの典型のような体に蘇っていた。何はともあれこの3選手が、ファイナルにいることだけでも今年の女子日本ボディビル選手権大会の面白さが倍増すると云うものである。

予選比較審査は、神田、清水、今村、佐々木、山野内のファーストコールで始まった。規定ポーズにおける神田のバランスの良さが目立っている。清水の仕上がりにいつもより細さが感じられる。厳しく仕上げてはいるが、ハリが弱い感じの今村。ボリュームを残すことに成功した佐々木。そして全体がバランスよく仕上がっている山野内。この5名全てがベスト6入りすることは文句なしとして、あとの一人が誰になるのか、この後の比較に関ってきそうである。

セカンドコールは佐々木、山野内、今村、相馬、惠良の5名で、神田と清水の代わりに相馬と惠良が指名されて比較審査が行われた。癖のあるポージングは改善されていたが、下半身のボリュームが昨年より落ちていた相馬。腹筋の出し方も良くない。一方、仕上がり・ポーズのキレともに良かった惠良が、この先どのように評価されるかでベスト6が決定されていくと思われた。

サードコールは相馬、足立、惠良、水間、久野の5名。足立、水間、久野の3選手が初めて出てきた。この比較審査をした審査員は、多分ベスト4までは確信があって次のランクのメンバーの選定に迷ったのではないだろか? 足立はいつもながらの仕上がりで悪くは無いが、マッスルの厚みに不満が残る。水間の状態は、連覇していた頃とは大きな開きがあり、ブランクの大きさがみてとれる。フレームはあいかわらずきれいであるが、ポーズのなかには重心が高くて不安定に見えるものがある。久野は、昨年から見違えるようになって今年もファイナルに残った。ポージングもかなり改善されてきたが、ファイナルの常連組とくらべるとまだ逞しさが足りない。

フォースコールになって改めてファーストコールのようなメンバーが呼ばれた。今村、山野内、神田、清水の4名。最後ならわかるが、途中でこのメンバーの指名には疑問が残る。

フィフスコールは、佐々木、清水、廣田、相馬、惠良の5名。廣田をセカンドグループと思われるなかに入れて、どのあたりにくるかを見たと思われる比較であった。上体の素晴らしい仕上がりに比べて、下半身の甘さに課題が続いていることは残念である。

シックスコールは相馬、今村、山野内、神田、清水。フォースコールに相馬を入れてこの比較をした審査員は、相馬の位置づけをするために指名したとおもわれる。昨年2位だった相馬の評価は、今年はそんなに高くはなさそうだ!!

ラストコールは、久野、石澤、廣田、水間の4名となり、多分下位クラスの順位づけの比較と思われた。今年しり上がりに調子を上げてきた石澤の仕上がりには少々不満が残る。水間は、下位グループのなかで比較されたことに悔しさもあったと思うが、腹筋はきれいに見えていた。

今年の女子の予選審査は、7回の比較審査の結果上位グループ、中間グループそして下位グループと、各グループ4名の選手が等分に選り分けられたようだ。上位グループには山野内、清水、今村そして神田。中間グループには惠良、足立、佐々木そして相馬。下位グループには石澤、水間、久野そして廣田と云うように。

予選審査の結果は、4人の審査員が1位につけた山野内がトップに、2位票4の今村が2位、3位票4の神田が3位、4位票3の清水が4位となった。中間グループは、相馬、佐々木、惠良、足立の順となり、下位グループは、水間、廣田、石澤、久野の順となった。
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女子比較審査のファーストコール。左より神田、清水、今村、佐々木、山野内。2年ぶりの出場となる神田のバランスの良さが目を惹く。ディフェンディングチャンピオンの今村は厳しく仕上げてはいるが、張りが弱い。清水もいつもより細さを感じる。山野内はバランス良く仕上げていた

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セカンドコール。左より佐々木、山野内、今村、相馬、惠良。相馬は昨年よりポーズの癖はなくなっていたが、下半身のボリュームが落ちていたようだ。惠良は仕上がり・ポーズの切れともに良い

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【上】左より相馬、足立、惠良、水間、久野
【下】左より相馬、今村、山野内、神田、清水

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【上】左より佐々木、清水、廣田、相馬、惠良。久しぶりに出場してきた廣田であったが、下半身の甘さは克服できていなかった
【下】左より久野、石澤、廣田、水間。フレームの美しさは相変わらずの水間だが、全日本を連覇していた頃と比べると不満の残る状態だ

男子予選審査

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男子比較審査ファーストコール。左より須江、合戸、鈴木、下田、山田。今年アジアを制し、絶好調の合戸。タイトル奪還に燃えているようだ。鈴木も上腕あたりに進歩の跡が窺えたが、若干皮膚感が悪い。下田は昨年とあまり変わっていないようで、須江は調子が悪そうだ

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セカンドコール。左より須江、合戸、鈴木、下田、谷野。ここ数年精彩を欠いていた谷野であったが、今年は仕上がりが良い上に筋肉に張りがあり、重量感さえ窺えた

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【上】左より山田、下田、鈴木、合戸、木澤
【下】左より谷野、須江、山田、下田

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左より須山、山田、木澤、谷野、相川。相川は昨年指摘された胸が改善され、バランスが良くなった。一方、昨年までの丸みのある筋肉が影を潜めてしまった須山。一体どうしたのだろうか?

男子予選審査のファーストコールは、須江、合戸、鈴木、下田、山田の5名。合戸は絶好調のようだ。鈴木も上腕のあたりに進歩の跡が見えてフレーム自体が大きく感じる。気になるのは皮膚感だ!汗が出ていない。下田は悪くは無いがあまり変化が感じられない。しかし背中のワイド感には迫力がある。山田は確実に進歩しているが、下半身の甘さは依然残っている。須江一人調子が良くないように見えたのは残念でならない。脚にいつものボリュームが感じられない。

セカンドコールでは、山田と谷野が入れ替わって同じ5名の比較となった。失礼ながら谷野の良さには驚かされた。重量感すら感じさせる上に、ハリのある皮膚感も健在で、ひょっとしてこの先須江、山田あたりと絡んで面白くなりそうだ。

サードコールでは山田、下田、鈴木、合戸、木澤の5名が呼ばれた。トップグループに木澤が入ってきたが、この組では一人仕上がりに厳しさが感じられない。

フォースコールは谷野、須江、山田、下田の4名が呼ばれた。下田がこのグループで比較されたと云うことは、予選審査の段階でトップは望めそうにないということなのか!?

ところで、ここまで何回か比較審査を見てきたが、山田のサイドトライセプスが気になった。上体が開き過ぎてサイドポーズになっていない。規定ポーズで比較をするわけだから、一人だけ違うポーズだと本当の比較審査にならない。すぐに改善してほしい。

フィフスコールでは須山、山田、木澤、谷野、相川の5名が指名された。相川、須山の出番がやっと回ってきた。相川はいつも通りどこが悪いと云う訳でもなく、昨年指摘した胸もやや改善されてバランスの良さはあるものの、厳しさには少々欠ける印象が残った。一方、須山の状態は良くない。昨年までの丸みのあるマッスルは影を潜め、全体に小さくなっている。日本クラス別選手権大会で、山田に敗れた時よりなお深刻な感じをうけた。体調に問題があるのか、調整が上手くいかなかったのか、何か原因があると思う。元気な時の須山は、もっと迫力を感じさせるビルダーであるはずだ!!ここでもう一言「山田も須山も腹筋が弱い」

シックスコールでは須山、谷野、山田、木澤、須江の5名による比較となった。前の組から相川と須江が入れ替わったことで中間グループが見えてきたようだ。木澤は前面に不満があるものの、バックは上手く仕上げている。

セブンスコールは近藤、相川、須山、木澤の4名。やっと近藤が出て来た。相変わらず上手く仕上げているが、重いクラスの選手と比較するとどうしても細身に見えてしまう。今年の須山も、相川、木澤と比べると細く感じる。

エイスコールは、相川、須山に加えてまだ呼ばれてない高梨と林を含めた5名の比較となった。井上に代わってファイナリストとなった高梨は、厚みのあるマッスルで欠点の少ないビルダーと言われているが、これまでに強烈なインパクトを受けた印象があまり残っていない。ファイナリストに入っても、下位グループから抜け出すにはもっとインパクトがほしいところである。今回も林がファイナリストに残った。上手く調整してきたが、若干マッスルの厚みが落ちたように感じた。ところで、このグループに須山が含まれていると云うことは、須山の置かれているポジションが、中間グループなら下位で、下位グループなら上位と云ったところか。

いよいよラストコールとなった。上位グループの順位付けの確認のためか鈴木、合戸、下田、山田の4名が再度指名された。頭はどうやら鈴木か合戸で決まりのようだ。合戸が鈴木に挑むようにとるサイドチェストでは、上体の筋密度で合戸が一歩リードしているが、下半身を含めた全体像では、脚のボリュームのせいか鈴木が圧倒しているように見える。昨年までは、上腕と背中の広がりに若干の不満を感じさせていた鈴木だが、1年にしてはかなり改善してきた。今年の合戸も、今まで見たことがないような気迫のこもったポージングをしている。これまであんなに懸命にポーズをとる合戸を見たことがない!!予選審査の結果は、一人の審査員を除いて全員が鈴木を1位にした。フリーポーズの上手い鈴木を、この先合戸が逆転するにはかなり厳しい状況になってきたと言わざるを得ない。

一方山田と下田はどうだろう。山田の勢いは、昨年中間グループだったことを思えば飛躍といえる。結果はバランスのとれた下田を越えることは叶わず、オール3位の下田に対して山田は、6名の審査員が4位につけた。次に今年の中間グループは、須江、谷野、木澤、須山の順となり、高梨が新しく加わった下位グループは、相川、近藤、林、そして高梨の順となって予選審査は終了した。

プレジャッジでは、男子は2度のピックアップ審査と予選比較審査、女子もピックアップ審査に予選比較審査と、徹底して規定ポーズによる審査をしてきたわけである。十分見てきた選手の体が、各審査員にはすでにインプットされている上の決勝審査は、当然フリーポーズを主にした審査にならなければならない。今年度より採用された玉利会長提案のベストアーティスティック賞も、ポージングテクニックが最も大きな要素を占めていると云っても過言ではない。女子・男子ともにどの選手がベストアーティスティック賞を獲得するのか、そんなところにも目を向けて決勝フリーポーズを見ていくと、荘厳な装飾を施された舞台上の様子が、なお一層興味深くなってくる。

日本選手権のファイナリストが、一同に介するラインナップは、いつ見ても見事である。それぞれに自信に満ちた顔は、この日までの精進の厳しさを表して競技者そのものである。日本のボディビルのレベルもここまで来たのかと熱いものがこみ上げてくる思いでいると、最初の選手のフリーポーズの曲が聞こえてきた。
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左より近藤、相川、須山、木澤。相変わらず上手く仕上げている近藤ではあるが、若干線が細く感じる。それは、今年の須山にも言えるようだ

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左より相川、須山、近藤、高梨、林。欠点の少ないビルダーと言われる高梨であるが、インパクトの薄さも毎回あげられるところだ。今年も強烈なインパクトを与えるまでには至らなかった。林の調整は上手くいっていたようだが、筋肉の厚みが若干落ちたように感じた

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ラストコール。左より鈴木、合戸、下田、山田。山田のトライセップスポーズは、上体が開きすぎていてトライセップスがうまくみえていない

女子フリーポーズ審査

女子は、石澤のフリーポーズで始まった。体重の落とし過ぎかマッスルにいつものハリが無い。背中の仕上がりも少し甘い。反対にポージングにはキレがあり、曲ノリもよく全体にまとまっていたが、サイドバックポーズのバランスを崩していたのが残念だ。予選11位、決勝11位、トータルも11位。

惠良は、コミカルでバラエティーに富んだポーズを織り込んだルーティンを、表情豊かに演じた。各ポーズのキレも良く、表現力ではかなり力をつけてきたようだ。ただ一つ、サイドバックポーズが流れていた。予選7位、決勝6位、トータル7位。

水間は、ポージングの上手い選手である。仕上がり具合は少しフラットであったが、ポージングに入ると、自分の全体像をきれいにみせる術を知っていて、ポーズをバランス良くまとめていた。マッスルにも丸みが感じられて、今後もっと良くなってくるような気がする。予選10位、決勝9位、トータル9位。

久野のフリーポーズは、緩急のある構成のなかにも女性らしさを感じさせるものがあり、感情豊かに演じていた。ポーズのキメはしっかりしていたが、2つあったサイドバックポーズの一つでバランスがとれていなかった。ポーズとポーズの繋ぎに、ところどころぎこちなさがあった。予選・決勝・トータル全て12位。

山野内のバランスの良さは、フリーポーズにも反映されていた。仕上がりの良さに裏付けされた自信が、落ち着きのあるポージングによって終始流れるように運ばれていった。手や指先にまで気配りされたポーズのキメもしっかりしていたし、最も自信のあるバックダブルバイセプスで締めていたところなど憎い演出が施されていた。予選・決勝・トータル全てで1位。

予選で厚みが感じられなかったマッスルが、フリーポーズになって蘇ってきたように良く見えだした足立。今までと違った選曲に、ポーズがマッチして仕上がりの良さも強調されていたし、脚のセパレーションも見えて予選よりかなり良く見えた。予選・決勝・トータルともに8位。

予選では全体に細くなった印象があったが、フリーポーズではいつもの清水に戻っていた。ポーズによって脚が少し弱く見えることもあったが、仕上がりの良さを上手く曲に合わせて女性らしさも演出していたし、難しいサイドバックポーズも上手くとっていた。予選・決勝・トータル全てに4位。

佐々木は、ポーズをとった方がバランスのとれたフレームに見える。最近筋量も増してポージングの幅も出てきたし、しなやかなポーズもとれるようになってきた。ポーズが曲とシンクロして1分間を上手く使っていた。予選6位、決勝7位、トータル6位。

予選で1点差の2位に甘んじた今村が、得意のフリーポーズで逆転できるか興味深いところだが、規定ポーズではやや細身に見えたのが、フリーポーズに入ると細さが感じられない。肩と背中が素晴らしく、その良さを上手くポーズに織り込んだテクニックは、仕上がりの良さもあって今村らしさが出ていた。残念ながら予選・決勝・トータル全て2位で、山野内に届かず。

終わってみれば今大会の台風の目のような存在であった神田は、規定ポーズからその予兆を表していた。フレームの大きさ、筋量、そしてポージングテクニック!!調整こそ十分とは言えないまでも、どれをとっても目を惹くものであった。フリーポーズになっても自分の良さをぐいぐいアピールするポージングは、他の選手にとって厄介なものに映ったことだろう。予選・決勝・トータルすべてにおいて3位。今後の課題は、上体と下半身の絞りの差を、いかに縮められるかである。予選・決勝・トータル全て3位。

いつも通りの調整にも充実感に欠ける廣田。しかし、フリーポーズはさすがにベテランらしく無駄のないものであった。とりなれた曲のポイントにポーズのキメをしっかり合していくところはさすがである。上体前面の仕上がりの良さにくらべて背中は少々甘かった。そして毎回の指摘で申し訳ないが、下半身の調整にもっと工夫してもらいたい。上体が素晴らしいだけにもったいない気がしてならない。予選9位、決勝10位、トータル10位。

ラストポーザーは昨年2位の相馬。大きなフレームに手足の長さを生かしたポージングは、昨年よりかなり改善されていた。曲選びもポージングにも工夫の跡がみられ、全体をとおしてオーソドックスなポーズで組み立てられたルーティンは評価できる。予選で細く見えた脚もフリーポーズのライティングでは気にならず、かえってセパレーションが見えていた。体自体は昨年より確実に良くなっていた。以前の成績は忘れて今回の結果をスタートラインとして今後頑張ってもらいたい。予選・決勝・トータルすべてに5位。

フリーポーズの舞台では、装置もライティングもかわって別世界になる。このステージに立つ資格のある選手は、毎年男子女子ともに12名だけである。文字通り日本の頂点に立つ選手達と言える。雰囲気のある舞台でライトを独り占めし、自分の感性に合った曲に合わせて得意なポーズをとる。これこそ日本選手権決勝フリーポーズの醍醐味である。女子の華麗さのなかにも鋭敏でキレのあるフリーポーズの後は、いよいよ今大会のラストにふさわしい男子日本一を決めるステージである。
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男子フリーポーズ審査

男子のトップを務めるのは須江。ピックアップ・予選までは、昨年より迫力に欠けるところがあったが、やはりフリーポーズの名手である。脚も細くは感じるが、反面セパレーションが見えて上体とのバランスは良くなった。元気な時の須江は、規定ポーズでは迫力、フリーポーズでは観る側を魅了するものを持っている。優美さと剛をミックスさせた今年のフリーポーズは、今までになくシンプルで、かえって良さが強調されていたのに順位は少し下げそうである。予選・決勝・トータルすべて5位であった。

予選では鈴木に先行されたが、どんなパフォーマンスでその差を縮めようとするのか?いよいよ合戸の決勝フリーポーズとなった。凄い筋密度で、これでもかというようにぐいぐい押し出してくるポーズは今年も同じである。インプルーブしたバックを、最初にもってきたのも自信の表れとみた。フロントで絞るポーズもインパクトがある。しかし、絞るポーズばかりが目立ってしまうと、時に単調に見えてしまうことがある。フリーポーズでは、最初があり、中盤・終盤と流れがあって、最後に確かな印象を残さなければならない。日本選手権のファイナリストには、ポージングの上手い選手が多くなってきた。合戸にも一工夫したフリーポーズを見せてほしい。予選で一つあった1位票が無くなり、かわって3位票がついて、予選・決勝・トータル全てで2位。

予選下位グループにあって健闘している近藤が、フリーポーズでどこまで巻き返せるか?今年新設されたベストアーティスティック賞を、日本クラス別で第一号として受賞したポーズの上手い選手である。舞台を左右につかって華麗に舞うようなフリーポーズであったが、少し飾り過ぎの印象を受けた。フリーポーズの評価は、思ったほど伸びず、予選・決勝・トータル全てで10位。

予選のライティングでかなり甘く見えていた高梨だが、決勝の舞台に立ったとたん良く見えだした。丁寧にポージングしているが、今一つインパクトに欠ける。ポージングが単調なのと、どのポーズも顔の表情が変わらないことにも原因があるのかも知れない。それと背中の下部の甘さも目立った。念願の日本選手権ファイナリストになったからには、ポージングにも工夫をしてもっと上を目指してほしい。予選12位、決勝11位、トータルで11位。

ディフェンディングチャンピオンの登場で、場内が一段と沸いた。落ち着いて見える鈴木からは自信すら伝わってくる。昨年とは違うようだ。無駄のない、それでいて華麗に、時に力強く表現するポージングは見事だった!!ミスの無いポーズの中にも、やや不満が残ったのは背中の広がりである。他の部分が改善されていたからこそ感じたのかもしれないが、背中にワイド感が増せば、世界の舞台でも結果が残せるだろう。決勝では全ての審査員が1位につけた。予選・決勝・トータル全て1位。

昨年からファイナリストの仲間入りをした山田は、今年も一段と成長した。ゲストポーズに招かれた回数も一番多かったと聞く。昨年は少々華奢に見えたが、今年はトップグループに入って堂々と渡り合っていた。昨年はキメのポーズが少なかったが、今年はポーズの組み立ても上手くいって決勝らしいポージングだった。しかし、上体の厳しさと比べて下半身の甘さは、フリーポーズでもカバーしきれなかった。予選・決勝・トータルともに4位。

規定ポーズではかなり期待が持てそうな勢いの谷野であったが、フリーポーズになってやや失速してしまった。本来フリーポーズで稼ぐ選手のはずだが、今回の調整具合にマッチしないポーズが二、三見られた。とくにサイドバックのポーズは、広がりがみえない上に、下部には甘さも残っていた。須江、山田との競い合いを期待していたが、上位グループに食い込むことは叶わなかった。予選、決勝ともに5位票を2つもらったが、予選・決勝・トータル全てで6位。

相川の調整は、マッスルのボリュームを残してぎりぎりのところで仕上げた感があったが、フリーポーズになってやや甘さが見えだした。とくにサイドバックのポーズで、下部に調整不足が見えて幾つかのポーズを駄目にしていた。ポージング全体は曲と調和して、気持ち良くポージングしているように見えた。予選・決勝・トータル全てで9位。

木澤は、ベスト6に入れず悔しい思いだったろうが、やはりやや厳しさに欠ける仕上がりの結果であることは認識しなければならない。ポージングは年々改善されて、スムースなポーズ運びは落ち着きも感じさせていた。選んだ曲もポージングとマッチして好感がもてた。部分的に言えば、胸筋にもう少しボリュームがほしい。予選・決勝・トータル全てで7位。

予選でオール3位の下田だったが、フリーポーズでどんな評価が出るのか興味深いところであったが、前面の仕上がりに比べてバックの甘さがポーズに影響したようだ。バックの優れたビルダーのはずだが、ラットスプレッド以外は調整不足を見せてしまった。ポージング自体やや硬さを感じさせるところがあり、今回の選曲も、下田のポーズや表情とはミスマッチのような印象を受けた。決勝では、2位票が1つ入った代わりに4位票が2つになった。予選・決勝・トータル全てで3位。

決勝の点だけでいえば木澤と同点の7位。研ぎ澄まされた腕と脚は、カミソリのような鋭さを見せていたが、裏腹に上体のボリュームは失われていた。腕や脚の運びに独特のものを持っていて、須山独自のポージングは、良くも悪くも須山ワールドを表現していた。観方を変えれば、腕の使い方が全てに体の中心へと絞られて、ことさら上体の幅を狭めていた。もっと体の両側に広がるようなポージングをしないとフレーム自体が小さく見えてしまう。予選・決勝・トータル全て8位。

相棒のように毎年共に入賞していた井上の顔が見えない今年のファイナリストのトリをつとめるのは林。いつものように仕上げてはいるが、ややマッスルの厚みが落ちたように見える。それと、ファイナリストのなかにあって三角筋のボリュームが少ない方だ。ポージングは単調ではあるが、正確にとっていて真面目さが滲みでている感じがする。来年はもっと大変だろうが、頑張ってまたこの舞台を踏んでもらいたい。予選11位、決勝12位、トータル12位という結果であった。
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午前の部として全国高校生選手権大会そして、日本ジュニア選手権大会を終了し、今また今年度国内最終大会である日本選手権大会の幕が下りようとしている。全ての表彰を終えていよいよ日本を代表するベストアーティスティック賞の発表となった。審査員の最終チェックの結果、女子は清水恵理子、男子は須江正尋の両選手が選ばれた。ボディビルが表現スポーツである以上芸術性は最も重要な要素であり、その芸術性の表現には、ポージングによるところが大きいと言える。

体を鍛えるだけでなく、内面的な向上をも目指す努力をするならば、知性やマナーも伴って付いて来るはずである。そんなビルダーこそが、芸術性をも兼ね備えたアーティストと呼ばれるのである。
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  • 中尾尚志(なかお・たかし)
    1945年京都市生まれ (社)日本ボディビル連盟一級指導員・一級審査員
    IFBB(国際ボディビルダーズ連盟)国際審査員、
    日本体育施設協会トレーニング指導士
    (社)日本ボディビル連盟専務理事
    (社)日本ボディビル連盟審査委員会委員長
    京都府ボディビル連盟理事長
    アキレストップジム代表

写真/
徳江正之
[ 月刊ボディビルディング 2012年1月号 ]

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