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第25回全日本ベンチプレス選手権大会レポート

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[ 月刊ボディビルディング 2014年4月号 ]
掲載日:2017.05.17
2013年11月30日、12月1日/宇都宮市コンセーレ(栃木県)

2013年11月30日、12月1日/宇都宮市コンセーレ(栃木県)

17年世界選手権日本開催に向けて国内での熱き戦い

力強く選手宣誓を行う花田結衣(左)とジュニアの松島真之介選手

力強く選手宣誓を行う花田結衣(左)とジュニアの松島真之介選手

2014年5月にデンマークのロドビーで行われる世界ベンチプレス選手権大会の日本代表選手選考会を兼ねた第25回全日本ベンチプレス選手権大会が、11月30日(土)、12月1日(日)の2日間、栃木県宇都宮市の宇都宮市コンセーレに於いて開催された。大会と併催で、第2回全日本サブジュニア、ジュニア(サブジュニア12名、ジュニア38名出場)の競技も行われ、各カテゴリーのベンチプレス日本一と世界代表の座をかけた2日間の熱戦が繰り広げられた(より試合の臨場感を高めてお伝えする為に敬称略します。また、スコアシートは日本パワーリフティング協会HPで確認下さい)。

大会初日は、開会式のあと午前10時からサブジュニア、ジュニア、その後一般男子74kg級A~Iまでの9セッションが行われたが、一般部分のEグループ女子47kg級と52kg級からレポートを開始したい。

Eグループ:女子47kg級(出場5名)

女子47kg級 1位福島友佳子は133kgの日本新記録を達成した

女子47kg級 1位福島友佳子は133kgの日本新記録を達成した

女子47kg級 2位112.5kgに挑む新井拡子

女子47kg級 2位112.5kgに挑む新井拡子

女子47kg級 3位100kgに挑む高橋美和子

女子47kg級 3位100kgに挑む高橋美和子

このクラスは、シングルベンチでは数少ない三種リフターで、全日本、世界タイトル経験者である福島友佳子(東京・パワーハウス)
が、ダントツのパフォーマンスで圧勝した。

第1試技で122.5kgを挙上して、この時点で優勝を確定した福島は、第2試技の130kgも難なく成功させた。第3試技には、自身が保持する日本記録を0.5kg更新する133kgの日本新記録を樹立して、実に16年連続で16回目の優勝を飾り、ベストリフター賞も獲得した。

2位には、世界マスターズ2のディフェンディングチャンピオン、新井拡子(神奈川・スーパーパワーアサマTC)が第1試技の107.5kgで入った。第2、第3試技に112.5kgを失敗して不完全燃焼ではあったが、50歳代でこの階級日本No.2は立派だ。

3位は、第2試技に97.5kgを挙上した高橋美和子(東京・ノーリミッツ)が入った。

Eグループ:女子52kg級(出場6名)

自己集中する女子52kg級 1位白川カオリ

自己集中する女子52kg級 1位白川カオリ

第3試技112.5kgに挑む52kg級 2位増山朱美

第3試技112.5kgに挑む52kg級 2位増山朱美

52kg級宮本智子は第3試技に100kgを成功させ崖っぷちから3位を獲得

52kg級宮本智子は第3試技に100kgを成功させ崖っぷちから3位を獲得

女子52kg級も、世界レベルの闘いで目が離せなかった。第1試技で、世界マスターズ1の宮本智子(石川・ヴィテンののいち)97.5kgや世界マスターズ2の増山朱美(富山・健宝の湯)105kgと、両世界マスターズディフェンディングチャンピオンが失敗し、最後に登場した白川カオリ(東京・パワーハウス)は、2人の失敗をよそに125kgをきっちり成功させた。白川は、過去に世界オープンタイトルも獲得し、今シーズンからマスターズ2の仲間入りを果たしたが、そのパワーは健在で第2試技に132.5kgも難なく挙上した。第3試技では、自身が保持する日本記録を0.5kg更新する140.5kgに挑んだが失敗に終わったものの、世界オープンのレベルの差を見せつけて見事通算10回目の優勝を達成した。

この階級は、白川が2つ抜きん出ていて、先の47kgと同様に2位、3位争いが注目されたが、増山朱美がスタート重量の105kgを第2試技で成功させ辛うじて2位を確保した。マスターズベンチから競技をスタートした宮本智子は、更なる高みを目指して2年連続で全日本オープンに参戦した。スタート重量を2度失敗し後がない状況で100kgを挙げきり、全日本オープン初の表彰台に立った。一つの山を越えた事で、今後に更なる躍進が期待される。

また、この階級の全日本パワーリフティングチャンピオンの寺村美香(北海道・リアルスィングス)は、大会の3週間前にノルウェーでの世界パワーリフティング選手権に参戦して来た。そんなハードスケジュールの中で良く健闘し、95kgで4位に入った。ベストコンディションで臨めば表彰台の一角も切り崩す可能性もあっただけに、その辺りが悔やまれた。5位には、暫くの休養期間を経て今シーズンから復帰した高橋友美(茨城・Big Guns)が90kgで入った。試合勘もだいぶ戻って来た様子で、来シーズンが楽しみな選手だ。

Fグループ:女子57kg級(出場6名)

女子57kg級1位長浜恵美の第3試技127.5kg

女子57kg級1位長浜恵美の第3試技127.5kg

逆転優勝を掛けて125kg挑む女子57kg級 2位酒巻知子

逆転優勝を掛けて125kg挑む女子57kg級 2位酒巻知子

女子57kg級3位 赤川智子の第3試技102.5kg

女子57kg級3位 赤川智子の第3試技102.5kg

昨シーズン念願の初優勝を遂げ、その勢いで世界オープンベンチに初参戦して3位の表彰台に駆け上がった若い長浜恵美(東京・パワーハウス)が、ディフェンディングチャンピオンとして登場した。しかし長浜は、第1試技の125kgを成功させたものの127.5kgを2度失敗。それでも2位に15kg差をつけて2連覇を達成した。今後は追う立場から追われる立場になり、更に強い精神力が必要になって来る。40歳代以上が主軸の全日本女子ベンチの中にあって長浜は唯一の20歳代王者で、これからの頑張り次第では一時代を十分に築いて行けると思われ、今後の活躍を楽しみに見守って行きたい。

2位は、世界マスターズ1で活躍する酒巻知子が第試技の110kgで入った。ベテランらしく第3試技に体重差逆転の125kgに挑み見せ場も作ったが、さすがに15kg増量は重過ぎた。3位には、前回と同じく赤川智子(静岡・FT GYM)が102.5kgで入った。

Fグループ:女子63kg級(出場5名)

日本女子最高重量160.5kgに挑む女子63kg級 1位北村真由美

日本女子最高重量160.5kgに挑む女子63kg級 1位北村真由美

63kg級は、久々に全日本ベンチに参戦した三種全日本チャンピンの北村真由美(神奈川・スーパーパワーアサマTC)が、第1試技のみの成功にも拘わらず152.5kgと圧倒的パワーを見せつけて5回目の優勝を果した。北村は、第2、第3試技で自身が三種の全日本で樹立した日本女子絶対重量の160.5kgを0.5kg上回る161kgに挑んだが、今回は失敗に終わった。

2位は、間もなくマスターズ3で前回の覇者古味良子(静岡・T-REX)が122.5kgで、3位は、奥谷由香(大阪・K's Gym)が87.5kgで入った。

Fグループ:女子72kg級(出場2名)

女子72kg 級1位澤千代美の第3試技112.5kg

女子72kg 級1位澤千代美の第3試技112.5kg

今大会女子最年少20歳の仲野衣美(大阪・阪南大学)が64歳の澤千代美(東京・パワーハウス)に挑んだ。ジュニアと一般にダブルでエントリーした仲野は、澤より先にジュニアの部で試技を行った。100kg―107.5kg―112.5kgと仲野は“見えない敵”と闘いながらも3試技を成功させ、4時間20分後に試技を行う澤の結果を待つ事になった。澤は、第1試技の102.5kgを一度失敗して、再度第2試技でこの重量を成功させ、第3試技では仲野と同重量の112.5kgに被せ、これを成功させて300g軽量の澤が体重差で4回目優勝の優勝を飾った。

この階級の競技の進行方法について個人的に解せない心境だ。ダブルエントリーの仲野のジュニア72kg級のエントリーは一人、また、一般も澤一人であれば、一緒に試技を行う手だてがあったのではないかと思う。今回の状況では一般の部で試技を行って、その結果をジュニアの結果としてフィードバックすべきではなかったのか?何故なら澤は、仲野の検量体重も試技重量も事前に確認出来る状況にあり、その結果を見ながら試技を行う事が出来るという有利な闘いが可能になった訳だ。簡単に言えば、一つの終了した大会結果を見て、別の大会でその数字超えを狙う訳で、俄然後から行う方が有利な状況だ。

もともとダブルエントリー自体が日本独特の国内ルールで、カテゴリー別の大会併催時にちょくちょく今回と同じ方法で実施されている。一回の競技で2つのカテゴリーの結果を得る事が可能になり、主催者側にとっては日程短縮のメリットがあるが、この様なアンフェアな状況が常に付いて来ることが難点だ。例えば、今回のようなケースを避ける為(先に試技を終えた選手の救済作として)『後から試技を行う選手は、体重差狙いを禁止する』というルールがあっても良いと思う。あるは、出場カテゴリーの選択権を選手自身に与えるという事はどうだろうか?

何れにしても現行のダブルエントリー方式が競技の発展の為に貢献しているのか、個人的には大いに疑問が残った。
第3試技107.5kgに挑む女子84+kg級 1位小松麻美

第3試技107.5kgに挑む女子84+kg級 1位小松麻美

Gグループ:男子59kg級(出場11名)

男子59kg級で2連覇した木村育史は第2試技で203.5kgの日本新記録樹立

男子59kg級で2連覇した木村育史は第2試技で203.5kgの日本新記録樹立

男子59kg級2位竹花真人の第2試技202.5kg

男子59kg級2位竹花真人の第2試技202.5kg

男子59kg級大会最高齢で137.5kgのM-4日本新記録更新に挑む馬籠徹

男子59kg級大会最高齢で137.5kgのM-4日本新記録更新に挑む馬籠徹

この階級には3名の世界オープン優勝経験者に世界ジュニアベンチ優勝の竹花真人(東京・パワーハウス)が加わり、一枠の世界代表権獲得の為にそれこそ世界レベルの熾烈な闘いが繰り広げられた。

三種の9試技と異なりシングルベンチは3試技で勝負が決着する為、三種に比べ3倍凝縮した集中力と闘い方が要求される。時として第1試技を確実に獲るというセオリーは通用せず、あるいは第1試技を失敗しても第2試技は増量して行くといった強気の闘い方が要求されてくる。

そんなサバイバルな闘いを制したのは、ディフェンディング世界チャンピオンの木村育史(大阪・K's Gym)だった。木村は、安定感ある試技で203.5kgの日本新記録を達成し2連覇を果たした。2位は2年ぶりにカンバックを果たした竹花で、第1試技の190kgで入った。結果的に失敗はしたもののが、202.5kg、204kgと先行する木村を果敢に追い続けた竹花の積極的な闘い方には共感を受けた。

打倒木村に燃えた池田尚也(三重・リアルスタイル)、中田和夫(大阪・K's Gym)の両雄は健闘むなしく記録を残すことなく敗れ去った。しかし、その3回の挙上に掛けた魂は十分に観客に伝わった事と思う。3位には上位陣の潰し合いの中、3試技を確実に成功させた大石昌宏(佐賀・Team 力姫)が172.5kgで入った。

また、70歳の今大会最高齢で出場した馬籠徹(茨城・Big Guns) が、第2試技に132.5kgのマスターズ4の日本新記録を樹立して8位入賞を果たした事は見事だった。

この階級を観戦していて、私ももう一人の世界オープン優勝経験者としてこのステージに立ちたいという、強い思いに駆り立てられた。

Hグループ:男子66kg(出場10名)

男子66kg級優勝を決めて第3試技に240kgに挑む中山幸久

男子66kg級優勝を決めて第3試技に240kgに挑む中山幸久

男子66kg級2位広永賢司の第3試技192.5kg

男子66kg級2位広永賢司の第3試技192.5kg

男子66kg級逆転優勝を掛けて235.5kgに挑む高橋恵介

男子66kg級逆転優勝を掛けて235.5kgに挑む高橋恵介

66kg級も、見応え十分な闘いが繰り広げられた。世界オープンディフェンディングチャンピオン中山久幸(東京・ノーリミッツ)に過去に世界オープンを制した高橋恵介(茨城・Big Guns)が挑んだ2強の争いに会場が固唾をのんで見守った。

高橋のスタート重量の230kgは、受けが不十分で、第1試技、第2試技共にフィニッシュが不安定で失敗試技となった。対して中山は、第1試技で自己ベストタイの235kgと強気の試技をしっかりと挙上してリードを奪うも、第2試技の237.5kgはフィニッシュが決まらずに失敗。中山の失敗を確認して高橋は、第3試技を235.5kgに増量して最後の賭けに出た。不安定な受けにも拘わらず、プレスコールのあと最後の力を振り絞って一気に挙上したが、バー左側がラックに触れながらのフィニッシュとなった。挙上が未完成な状況で主審のラックのコールが掛かり、その後僅かにバーが下がってしまった。一度は白2つで成功試技と判断されたが、間髪入れずに陪審員からバーの下がりを理由に判定を覆す判断がなされた。歓喜に包まれた高橋陣営が、奈落の底に突き落とされた瞬間であった。

こうしてバトルを制した中山は、8年連続の通算10回目の優勝を達成した。

2位は、共に第2試技を成功させた広永賢司(大阪・K's Gym)が185kg、3位は、田中勝之(神奈川・K's Gym 横浜)が180kgで入った。

Iグループ:男子74kg級(出場16名)

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男子74kg級児玉大紀の第2試技270kg。ポーズ、ミッドポシション、フィニッシュまで

男子74kg級児玉大紀の第2試技270kg。ポーズ、ミッドポシション、フィニッシュまで

大会最多エントリー16名中5名が失格という全階級を通して最も失格者が多かった中で、ディフェンディングチャンピオンの児玉大紀(大阪・K's Gym)が独り舞台を演じ、285kgというとてつもない日本記録を打ち立ててベストリフター賞も獲得し、8回目の優勝に花を添えた。

第1試技257.5kgで開始した児玉は、第2試技に270kgを難なく成功させたあと、第3試技には自身が保持する275kgの日本記録を一気に10kg上回る285kgに増量、しっかりした受けから、安定軌道でフィニッシュもしっかり決めて完璧な挙上を完成させた。検量体重72.5kgで285kgを挙げた児玉のフォーミュラ208.05ポイントは、IPF史上最高ポイントという偉業を成し遂げた。

2位は、3試技全てを成功させた古川公一が、3位は第1試技のみの成功にも拘わらず三島忠が入り、上位3名のK's Gym勢が表彰台を独占した。

こうして日本記新録が続出し、熱い闘いが繰り広げられた大会初日が無事終了した。

Jグループ:男子83kg級(出場:13名)

男子83kg級1位福島勇輝第3試技280kg

男子83kg級1位福島勇輝第3試技280kg

大会2日目は、午前10時からJグループの男子83kg級で開始された。この階級での注目は、前回の兵庫大会で305kgの日本新記録を樹立して国内最高フォーミュラ207.400を打ち立ててベストリフター賞を獲得した福島勇輝(静岡・FT Gym)であったが、第1試技の270kgの挙上にいつものスピード感がなく、成功はしたものの明らかに本調子では無かった。第2、第3試技に挑んだ280kgの挙上を失敗し、自身4回目の優勝は達成したものの本人にとって不完全燃焼の結果となった。

2位は、第1試技で250kgを挙げた中島聡(北海道・筋肉道場馬鹿力)が入り、3位には第3試技で粘りの242.5kgを成功させたマスターズ2の上月敦雄(東京・パワーハウス)が入り、3年連続で表彰台にたった。

Kグループ:男子93kg級(出場10名)

第3試技300へ挑戦する男子93kg級1位吉川望

第3試技300へ挑戦する男子93kg級1位吉川望

この階級で大学生ながらディフェンディングチャンピオンの山下保樹(大阪・阪南大学)は、ジュニアとのダブルエントリーの為、前日のジュニア部門で既に試技を終えていた。
山下は、260―275―280kgと3試技をしっかり組み立て、前回より記録を7.5kg伸ばして不利な闘いの先陣を切った。他の選手にとっては、山下の280kgが優勝の最低ラインになる。

前回優勝候補筆頭で地元開催に連覇を目指していた吉川望(兵庫・マッスルプロダクション)は、無念の失格を喫し今回はリベンジの全日本となった。その吉川は山下の記録を10kg上回る290kgからスタートしたが挙上が不十分で失敗したものの、第2試技でこの重量を成功させ、この時点でトップに立った。優勝を確信した吉川は第3試技に300kgに挑んだが、さすがにこの重量は重過ぎた。

3位争いは、林克也と世界マスターズ1チャンピオンの葛西昌彦のK's Gym の同門で競われ、第2試技に270kgを成功させ暫定3位の葛西は、第3試技に体重差2位狙いで山下の280kgに被せて来た。成功すれば2位、失敗すれば林の試技いかんでは4位転落という厳しい状況の中でこの重量に挑み、押し切ったかに見えたが、判定は無情の赤2つであった。4位を確定させ同じように3位狙いで葛西の270kgに被せた林は、この重量を成功させ逆転で表彰台を掴み取った。

以上の結果、吉川がリベンジのV2を達成し、山下2位、林3位という結果となった。

Lグループ:男子105kg級(出場9名)

男子105kg級初優勝の和田高平第3試技282.5kg

男子105kg級初優勝の和田高平第3試技282.5kg

この階級は、ディフェンディングチャンピオンの柴田道郎(石川・Team 力姫石川)を中心に4強が揃い、実力伯仲の優勝争いが展開された。第1試技を終えた時点でトップに立ったのは、9月に北九州市で行われた全日本マスターズベンチで、これまでのスーパーヘビー級から実に40kg弱の減量を成功させ、2階級も落として参戦して272.5kgの好記録で優勝した和田高平(大阪・烈剛河内)で、暫くぶりに全日本オープンのプラットホームにも拘わらず難なく275kgを成功させた。270kgでスタートした柴田は、この重量を失敗した。前回2位の佐藤優輝(神奈川・K's Gym 横浜)と前回失格でリベンジに燃える山森智行(大阪・K's Gym)は265kgを挙上し和田に続いた。

第2試技、柴田が再度270kgに挑み、これを成功させた。佐藤、山森共に275kgを選択し、佐藤は成功し山森は失敗した。最後に登場し280kgに挑んだ和田は、この重量も成功させてトップをキープした。

勝負のかかった第3試技、和田が申請した282.5kgが優勝のターゲットになった。この重量を佐藤以外が申告し、4人の中で検量体重95.35kgと最軽量の佐藤は体重差逆転狙いに絞って280kgに挑み、見事にしかも難なく成功させ3人の試技を見守った。増量された勝負の282.5kgに最初に挑んだのは柴田で、これを失敗。次に挑んだ山森も失敗。これで佐藤は3年連続の2位が確定し、最後の和田の試技如何では逆転優勝も見えて来た。優勝のかかった282.5kgの最終試技者として登場した和田は、この重量をしっかりと受けて力強く挙上し、初優勝をもぎ取った。和田の素晴らしいパフォーマンスに脱帽であった。

Lグループ:男子120kg級(出場4名)

男子120kg級後藤衆治は初優勝を確定させ第3試技に45kg増量の335kgに挑んだ

男子120kg級後藤衆治は初優勝を確定させ第3試技に45kg増量の335kgに挑んだ

120kg級は、第2試技に290kgの日本新記録を樹立した後藤衆治(兵庫・マッスルプロダクション)が、念願の初優勝を果たした。2位は、第1試技の240kgながら岡山三紀(北海道・北海道医療大学WTC同門会)が入り、3位にはマスターズ2に王手をかけた三種リフターの辻見直樹(神奈川・スーパーパワーアサマTC)が、3試技を成功させて自己ベストの235kgで初の表彰台に立った。

失格はしたものの原新一(愛知・Power Line)が挑んだ今大会最重量の335kgは、衝撃的であった。最高のピーキングと試合当日の最大限の集中力、それにセンター補助との絶妙なタイミング等、全てがまとまればこの重量征服も遠くはなさそうだ。

Lグループ:男子120+kg級

男子120+kg 級1位三土手大介の第2試技300kg

男子120+kg 級1位三土手大介の第2試技300kg

この階級は前回大会を制覇して、初の世界選手権で359kgの世界新記録を樹立しベストリフター賞を獲得した上田慎司(大阪・K's Gym)が、脊椎手術で療養中で欠場した為、三土手大介(東京・ノーリミッツ)只一人のエントリーとなった。

戦前、「調子はあまり良くなく、今回は確実に優勝を獲るだけです」とコメントを残した三土手。第1試技の285kgを難なく成功させて早々と18回目の優勝を達成した。第2試技に300kgを成功させたものの、第3試技の322.5kgは失敗に終わった。

こうして2日間にわたって開催されたベンチプレス日本一と世界代表の座をかけた壮絶な大会が閉幕した。今大会の会場となった宇都宮市コンセーレは、広すぎずコンパクトな空間で、選手も観衆もどちらにもその熱気が伝わったと思う。この会場は、地元ではボディビルやアームレスリングなどの競技会場にもなっているらしく、栃木県下のアイアンスポーツ競技のメッカになっているらしい。素晴らしい大会を主管し運営をされた栃木県協会の皆様のご苦労に敬意を表したい。

また、大会2日間を観戦して判定で気になった事が1点あった。それは、スタート時とフィニッシュ時のバーの受けの態勢が十分でない選手が見受けられ、それでも主審からスタートやラックのコールが掛かっていた点だ。当然副審2人が同意している状況では主審にスタートのコールをかける義務が生じるが、特にフィニッシュ時のロックが完了してないにも拘わらず主審がラックをコールするシーンが何回かあり、しかも白判定になっていた。主審がフィニッシュ時に肘のロック未完了で「ラック!」をコールする時は、危険と判断した場合で当然赤判定になるべき局面だ。これで優勝を拾った選手や失格を免れた選手はラッキーだった。

ギアベンチ競技は、ギアの効果を挙上に最大限生かして結果をだす為、勝負をかけて限界以上の重量に挑んで来る選手に対して、審判はしっかりと見極め、もっと自信をもって的確にジャッジして欲しいものだ。

今回の結果を踏まえ来年の世界選手権の日本代表が間もなく決定する事と思う。今、フルギアパワーリフティング競技の中で日本が世界を席巻出来る種目がベンチプレス競技だ。日本人の体型と物を活かす技術、それにパイオニアとして世界に挑戦を続けて来た先輩方が残した知恵や創意工夫をこらしたトレーニングノウハウが引き継がれ、今日の世界ベンチプレス王国を作り上げて来た。この絶妙なタイミングで日本パワーリフティング協会は、ベンチプレスの世界選手権開催誘致に立候補を表明するそうだ。もし最短で実現すれば3年後の2017年に世界ベンチプレス選手権の日本開催の可能性が現実味を帯びて来る。さあ、日本代表を目指してその日の為に、今日から挙げ始めよう!!
大会レポート&写真:
伊差川浩之(POWERSPORT)
[ 月刊ボディビルディング 2014年4月号 ]

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