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ボディビル審査員が語るステージの着眼点  #第63回 男子日本ボディビル選手権編

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掲載日:2017.11.27
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非常に高いレベルで行われるボディビルコンテストにおいてどういう着眼点で選手に順位がつけられているのか、どうすればもっと順位を上げることが出来るのか。

競技を広めつつ、すでに競技に取り組んでいる方やコンテストへの出場を迷っている方の後学にすべく、先日行われた国内最高峰のコンテストである日本・全国ボディビル選手権において実際に本大会の審査を行ったJBBF(公益社団法人 日本ボディビル・フィットネス連盟)の常務理事/女子委員会委員長/広報委員会委員長を務め、国内外のボディビルコンテストにおいて多くの入賞歴(詳細は末尾に記載)がある辻本俊子氏に解説と批評を依頼した。

本稿では第63回男子日本ボディビル選手権を例に取って紹介していく。

現在はシード制が導入されていて、上位の12名に入るだけでも非常に大変なことです。
そこからさらにトップを崩すことは本当に難関に思います。 

大会後に評価を聞きに来る選手もいますが、体をただ大きくしただけではなく既存の選手を大きく上回るインパクトがないと上位には入りにくく、その一方で常に上位を譲らない選手も本当に凄いです。

ポーズをとるほど内側から押し出される感じは積み重なった年輪を思わせます。いきなり上位に入賞することが稀なこともボディビル競技の特徴の一つです。

1位 鈴木 雅

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今までの大会では圧倒的なオーラがあったのですが今回は出てきた瞬間にそれが少なく、あれっという印象が第一でした。
今回2位となった須山選手が出てきたときにこれは危ないのではと心配になりました。

今回は膝を痛めて力が入らなかったため、いつもは歩くたびに足の筋がバキバキに割れる程でしたが、全体的にいつもの水々しく筋肉が弾ける感じがなく、モヤッとなってしまっていました。

それでも全体的な筋肉量、バランスが整っていて、パーツごとに密度と丸みが十分にありました。
単純にサイズだけで比較する競技ではありませんが、サイドポーズの重量感が決め手だと思います。サイドポーズでこれだけの重量感を出せる人は稀です。

背中の広がりや厚みともに素晴らしく、細かな部分に至るまでのポージングのテクニックがあり、怪我による不調を上手くカバー出来ていたと思います。
田代選手の背中や須山選手の腕など、一つの部位で見ていくと他の選手の方が大きいこともありますが、全身のバランスが非常にとれていて、総じて全てにおいて大きいです。

優勝を狙い、鈴木選手よりも上に行くには何か絶対的かつ圧倒的なものを身につけていくことが必要だと思います。

2位 須山 翔太郎

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本人談にもありましたが仕上げは完璧だったように思います。

カーフの細さが弱点でしたがそれが改善されていて、関節と筋肉のラインのメリハリがついた体でした。
会場から盛大な喝采を浴びた、和をイメージしたフリーポーズは世界を見越していたのかも知れません。

怒られてしまうかもしれませんが、胸や腕の筋肉を見せるサイドチェストポーズが非常にもったいなく、他の選手に比べて肘がのびているため、僅かに上半身が細く見えてしまいます。
それにより内側に小さくまとまってしまっている点が非常に惜しい点で、肘を曲げ、胸を押し出してもっと引けていると本来の太さを十分に活かしてさらに大きく見えます。
筋肉の境界をハッキリと出す良いカットがあり、ウェストの細さからプロポーションも良く、特に腕がしっかりと主張しています。


ところで、それらをしかと見るための審査員席は特異な環境で、一列後ろから見るだけで全く違う見え方になります。
写真や動画だけでは伝わらないものがあり、硬いものが飛び込んでくる感じがあります。細かいシワの一つまで本当によく分かります。

雑誌などで、「自分にはこう見えたが、評価や順位に疑問が残る」と書かれる場合は評価の違いではなく、見え方の違いによるものです。

3位 田代 誠

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まず背中の広さと厚みが卓越していて全身に一切の隙がありません。筋肉の塊という印象です。

あまり田代さんに物申せる者も少ないですが、表情を変えずに坦々とポーズをとる様からは、岩のような空気感を崩さないポリシーのようなものを感じます。
失礼ながら、おそらくどの雑誌のどの時期を見ても同じような表情に思うので、何かもっとアピールがあっても良いかと思います。例えば表情の豊かさが入ってくるとさらに見え方も変わり、見る者をさらに惹きつけるのではと思います。

まるでアメフトの装具をつけているような肩周りは近くで見ると本当に厚く、脚も凄く、強いて言えばカーフのボリュームがあります。
カーフが短く絞れていると全体的に視線が上に行きますが、カーフのボリュームがあると重量感がでます。


4位 合戸 孝二

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去年肩を怪我してしまい、腕が上がらないような怪我からこの状態は本当に凄い努力の成果に思います。
田代選手同様に岩のような、筋肉の塊のような密度のある身体です。

しかしこのレベルになってくるとそれだけでは厳しく、今回は怪我の影響もあって、絞り、皮膚感、張り感をピークに持ってくることが難しかったかと思います。

全体的な筋肉量と密度を保てていたことがすでに十分凄いのですが、それでもポーズをとったときの肩の位置に影響が出ていて、肩を広げる動きでも僅かに寄りがちになっているように思いました。
肩を動かせない期間があったということはその周辺のトレーニングまでも行いにくいことがあり、腕が少し細くなった印象があります。それでも、怪我の状態からこの状態に持ってくることは凄いです。

今回はシードではありませんでしたが、予選から勝ち上がってきました。やはり目を引く存在です。

5位 佐藤 貴規

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細いウエストと上に広がる背中をしていて、毎回全体のバランスが良くとれていてポージングもきれいです。
しかし他の上位選手に比べると腹筋がぼやけてしまうことがあり、4位、5位を行き来することが多いように思いますが、今回で言えば須山選手のように、空気を抜いた布団圧縮袋のような皮膚の張り付く感じがあればもっと上に行ける選手だと思います。

リラックス時はまだしも、ポーズを取った時にいかに薄い皮膚が筋肉に張り付くか、そこがもう一声で上位に入ると思います。

順位付けしていくときにはまず筋肉の充実度、次に皮膚感、インパクトなど一つずつの要素を比較していくのですが、そうなった時に合戸選手と佐藤選手を比較するとポーズや表現力は佐藤選手の方が上なのですが、皮膚感で差がつきます。
それでも今年の仕上がりは良く、4位に入っても良かったほどだと思います。

6位 横川 尚隆

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中央が横川選手

中央が横川選手

なにより非常にインパクトがありました。
横川選手も特に脚が良く、去年から1年経たずにこんなに太くなったかと驚くほどでした。脚だけでなくそれに見合うように腕も太く、背中も広く厚みも出てきていて、本当に良く成長しているように思います。

ウエストのきれいな細さがある反面、ポージング時にスキマが出来てしまうときがあるのが難しいところです。ウェストが太い選手ではスキマがなく、より太く大きく見せることができます。

決勝で鈴木選手と並んでポーズをしたときに手の置き方や動きまでピッタリ一緒で、よく研究していると思いました。良い選手のポーズのとり方は良い体の見せ方をしているということなので、良い勉強の仕方だと思います。

去年課題と言っていたハムストリングスは随分大きくなっていました。僧帽筋をさらにつけて首が太くなると重量感が出てくるので、そのあたりが来年の課題かと思います。

現時点でも単体で見た場合には本当に大きいです。
そして何より、見ている方も爽やかになるような雰囲気や表情も素晴らしく、ボディビルの新しいイメージを作ってくれそうな選手に思います。

7位 木村 征一郎

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右が木村選手

右が木村選手

一連のバックポーズが素晴らしく、特にバックダブルバイセプスはダントツに思います。

肩の丸みや腕、背中の一個ずつの充実度が凄く、刻み込んだような深いカットとポーズをとったときに押し出される密度を合わせ持った感じがあります。
大きいだけでなく皮膚も薄く、フロントポーズの見せ方が変わるともっと良くなると思います。バックポーズは本当に魅力的でした。

8位 山口 裕

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元々器械体操の選手だったこともあってか、腕が太くボリューム感があり、横に大きく広がる背中と肩幅の広さ、それに加えたウエストの細さを合わせ持っています。
去年は背中が広く脚もありましたが、今年は僅かに細くなったような印象がありました。

9位 須江 正尋

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左が須江選手

左が須江選手

左が須江選手

左が須江選手

ベテランで頑張っている選手で、須江選手といったら背中という印象があります。
日本人にあまりないようなインパクトがある反面、背中のインパクトが強すぎて上下のバランスがとれなくなってきていたように思いますが、前よりも脚の弱さを感じませんでした。今後もさらなる下半身の充実が課題に思います。

ダブルバイセプスで腕の太さを十分に見せられている反面、僧帽筋が少々弱くなった感がありました。
独特の世界観があるポージングは、見ている者にボディビルを楽しませてくれる1人です。

10位 髙梨 圭祐

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全体のボリュームがあり、重量感で攻めてくる選手に思います。去年は相当なインパクトに比べると、今年は仕上がりの面で僅かにゆるく感じました。

ゴリさんというあだ名があるほどゴリゴリとしたバルクがあり、どこを見ても筋肉が詰まっています。仕上がりをもう一段階厳しくできたらさらに順位も上がると思います。

もったいなく思うのはサイドチェストポーズをとったときに肘の位置によりストンとみえてしまうことがあるので、もっと肘を引くと本来の太さと大きさを十分に見せることができます。

これくらいの筋肉があるだろう・・・ではなく、ポーズをとったその瞬間や実際にとっているポーズで審査していますので、最大限に大きく見せるためにも改めて見せ方が重要です。

11位 木澤 大祐

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長い間トップに入っている選手ですが、今年は良く仕上がっているように思います。
今までは仕上がりをゆるく感じることがあり、大きいのですが飛び出してくる感じを少なく感じていました。

ポージングに関して特にサイドチェストは凄く、サイドのポーズや絞るポーズは筋肉が浮き出てストリエーションも出てきて凄みを感じました。
正面から見ると下半身がやや甘めの印象があり、下半身のポーズに関してはあともう一押し、出し切れてない感じがありました。

腹筋が角度によってはゆるく見えてしまう時があり、かといって上半身がそこまでか皮一枚に圧倒的に絞れているわけでもなかったため、特に腹部と下半身を仕上げてみると順位が上がるのではないかと思います。

12位 加藤 直之

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去年残した4位という好成績に比べると今年は仕上がりが全体的に少々ゆるく感じました。
関節が細く、そこから筋肉が広がるメリハリのある体は見ていてかっこいいきれいな体型をしていますが、今回に関しては関節周りの細さがぼやけてみえてしまう程仕上がりがゆるく感じ、立っているときの雰囲気や表情も少々元気がないように見えて、調整途中に思えました。

昨年度のようなピークのコンディションを安定して作ることができるようになると、それに伴って順位も安定するかと思います。

総評

日本の選手はポージングが上手く、国内最高峰の大会であると改めて感じました。

不動のトップ選手たちがいて、その方たちもまだまだ負けじと体を作っていて毎回とても楽しみな一方で、今年ファイナリストに新しく顔を連ねた選手達が来年どこまでベテラン勢に食い込むかが非常に楽しみです。

決してトップ選手が落ちてきているわけではありません。
牙城をどれだけ崩し、どれだけ守るかが来年の見どころです。

フィジークに関して

フィジークの人気はすごく高くなってきていて、どんどんボリュームが大きくなってきています。

ボディビルは全身の筋肉をくまなく極限まで鍛えていきますが、フィジークは全身の綺麗さを崩してはいけません。そのためにはバランスを崩さない程度の筋量と大きさが求められます。

全身のトータルバランスで順位がつけられるので、腕が太い、肩が大きいというように一つの部位に目がいってしまうようだとその時点でバランスが崩れてきてしまっています。

フィジークの場合は、肩が凄いけど全体も凄い、という感じだと良いと思います。
あくまでバランスが大事で、どこか特定のパーツが飛び抜けて凄いというわけではなく、全身が凄い選手が上位に入ります。

ボディビルであまり勝てないのでフィジークに行ってみようかな、で勝てるものでもありません。
ポーズの取りかた、雰囲気の作り方、たった4つのフロント、サイド、バックポーズの中でそれぞれのポーズに行くまでのプレアクション、捻って見せるのではなく関節の動きを考えてキレイにポーズを見せ、さらに表情、視線や少しの仕草、細かい部分までも研究し尽くした選手が上位に入ります。


今まで一般のトレーニーとボディビルコンテストの間には大きな隔たりがありましたが、ボディビルよりも出やすいためにフィジークはその橋渡し的な位置になっています。


横川選手の様にフィジークからボディビルに転向するケースもあるので、フィジークのあり方として芽が出てきているように思います。
以前は関西方面で盛んなイメージでしたが、現在は全国的に盛んになってきています。いずれは関東と関西で競っても盛り上がるかと思います。

関西はインパクトのある選手も出てきていて派手な感じがあり、雰囲気出すのがうまいように感じます。ビキニ部門を見ていても表現力が高く、自分の魅せ方を知ってるような印象です。

一方、東京はわりと控えめでシャイなイメージも受けますが、地域性もあるかもしれないですね。それぞれ両方の良さがあると思います。
選手人口も増えてきていて、関東でも一つの大会で200~300選手が集まるようになってきました。

今は加盟ジムでなくても個人で出られる様になったこともあり、徐々に門戸は開かれています。
今後が非常に楽しみです。
辻本 俊子氏 

【ボディビル戦歴】
1987年第1回東京クラス別ボディビル選手権46kg級優勝
1987年第5回東京ボディビル選手権大会ミスの部優勝
1991年社会人ボディビル選手権大会マッスルの部優勝
1992年日本クラス別ボディビル選手権大会52kg級優勝
1992年日本ボディビル選手権大会第10回女子の部優勝
1993年ワールドゲームス(オランダハーグ)52kg級7位

公社)日本ボディビル・フィットネス連盟理事/女子委員会委員長、東京ボディビル・フィットネス連盟副理事長

【資格】
保健体育教員免許、THP指導員(企業向け)、NESTAシニアフィットネストレーナー、NSPA公認パーソナルトレーナー、国際ボディビル・フィットネス連盟国際審判員


公益社団法人 日本ボディビル・フィットネス連盟 ホームページ

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