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対象者のレベルを問わないブートキャンプの応用 #理論編
NSCAジャパンS&Cカンファレンス2017 講演 Mark Nutting

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掲載日:2018.01.19
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対象者のレベルを問わないブートキャンプの応用 #理論編
NSCAジャパンS&Cカンファレンス2017
講演:Mark Nutting(CSCS,*D, NSCA-CPT,*D, ACSM HFD, ACSM CEP)

2017年12月9日(土)、10日(日) 神戸ファッションマートにて行われたNSCAジャパンS&Cカンファレンス2017での講演の概要を紹介する。
フィットネス産業分野において、高い人気を誇るブートキャンプ。
人々を惹きつけ、良いコンディションを保ち、楽しくそして長く継続していくことが可能となるブートキャンプを作成していくために、本講演では様々な層を対象にした基本的な考え方から変化を加えた工夫やプログラムへの効果的な導入を紹介し、ブートキャンプの理解を深め、実施することで新しいアプローチができるようになることを目的の一つとした。

ブートキャンプの指導を何年も行うMark氏。ブートキャンプを行うときには体育館を使い、およそ50~80名程で行う。参加者の年齢層は7~70歳と非常に幅が広い。
大変なことに挑戦することは大きな達成感と成果をもたらし、エクササイズの多様性や連帯感、普段と違う新しい体験ができるという期待は参加者を飽きさせず、常に新鮮さを与える事ができる。ビジネス、学校などの教育の場、栄養学、レクリエーションとしても世界中でブートキャンプは活用されている。

対象、スタイル

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スポーツ競技別のブートキャンプも行われており、世代別や高齢者向けとしても応用が効く。
ブートキャンプのスタイルとしては「ユニゾン」という、そこにいる全員が同じエクササイズを行う方法もある他、チームごとに分けたり、ゲームベースで競う合う形にすることもできる。本講演で後ほど実践するのはいろんな種目を順に行うやり方を順次行うサーキットスタイルと呼ばれるものである。

都度場所を代えたり、屋外で行う方法もある。屋外での運動の実施はグリーンエクササイズと呼ばれ、参加者の気持ちを上げる事ができ、施設等を借りる必要がない反面、天候の影響を受けたり、使用用具や音楽の制限を受け、インストラクターの声が聞こえにくいこと等が挙げられる。
屋外には屋外の良さがあるが、個人的には屋内が好きであると加えた。
天候の影響の一例。自宅の車が雪に覆われている。移動はもちろん屋外でのトレーニングの実施も困難である

天候の影響の一例。自宅の車が雪に覆われている。移動はもちろん屋外でのトレーニングの実施も困難である


また、一度スタイルを決めたらいい意味で参加者自身の予想できる範囲内で種目を選び、一貫性を保ち継続することが大事である。毎回コロコロとあまりに大幅な種目の変更や方向性の違いがあると参加者を困惑させてしまう上に、参加者が教室の内容を他の人へ紹介したり一緒に参加を促す際にも一貫したスタイルでなければそのイメージが伝わりにくくなるためだ。

時間ベースか、目標(強度)ベースか

広い年齢層を対象にしたブートキャンプでは、例えば腕立て伏せ20回を課題に入れると楽々とすぐにこなすことができる人も、多大な努力と時間を要する人も出てきてしまう。

目標の完遂が出来なければ達成感を得ることができず、次回から来なくなってしまうことや運動から遠ざかってしまうことも考えられる。その点、時間ベースでは腕立て伏せは各々の最大努力に委ねられることになるため汎用性が高い。

導入するエクササイズの選択とリスクの理解

単一の重量でしか行えない種目ではなく、強度は低いが、余裕がある人は段階的に強度を増して行うことができる種目が望ましい。逆に、段階的に強度を下げられることも種目を選ぶ上で非常に重要な点である。

そして何より、リスクを理解することが最重要となる。1人で50~60名を相手にする場合、全員を常に細かく終始観察することは難しく、その中で安全の確保をしないといけないため、仮にフォームが多少誤っていても怪我に直結するリスクの低いエクササイズを選ぶ事が推奨される。
 

実施する場所の広さや環境などにもよる

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例えば縄跳びは非常に有用な種目であるが、狭い場所での実施は自他共に危険を招く。
そのため、そういった場合には実際の縄跳びの動きを模した”ゴーストロープ”で代用を考える。実際にMarkが行うブートキャンプでは、ゴーストロープを多様している。
種目に使う「面」も床面だけでなく、壁面の利用や上方から吊るしたTRXの利用等様々なパズルのように対象者層、リスク、場所、環境等を考えて決定していく。

ブートキャンプ中に使用する音楽に関して、大音量の音楽の中で行うトレーニングでは平常時よりもハードに追い込めるという研究結果もあるため、理想としてはアップテンポな曲を大音量で流せることが望ましいが、周囲の環境を考えた大きさにすること。
特に会議室等が併設されている施設では音漏れ等の確認が必須である。

また、自分の好きなジャンルばかり一概に選ばないこと。一つのジャンルで全ての人の趣向を網羅することはできないため、様々な人に参加を促すのであればプレイリストに入れる音楽も様々なジャンルであることが大事な点となる。

新鮮さを失わないために

ブートキャンプへ没頭し、楽しんでもらうためには受講者の名前をなるべく全員覚えるようにする。Mark氏は自信のブートキャンプのフェイスブックのページを作り、参加者にできるだけ登録を促している。
ページ自体でトレーニングに関する有益な情報を発信しているのでそれらを知ってほしいということもあるが、なによりも参加者の名前を覚える事に非常に役立つ。

ブートキャンプはエンターテイメントであるべきだ。
インストラクターはエンターテイナーであり、参加者を楽しませるという意識を持つことが大事である。楽しく盛り上げるほど参加者もトレーニングに身が入る。そして参加者全員が達成感を感じることがなにより重要となる。

そのためには、例えば腕立て伏せのメニューで手首が痛い人がいればスクワットに変更する等、エクササイズ種目を多少代えても問題ない旨を伝えるようにする。種目以上に大事なのは強度である。

もちろん、リスク管理のためには時間を短くしたり、休憩を挟むことや途中で止めても良いと伝えておく。
安全を第一に考えて行うためには、方法は何でも良いのだ。
例えば箱を飛び越す事を繰り返す種目に関しても、飛び越す、ゆっくり乗って降りる、しがみつくように昇降するなど最初に様々な強度のパターンを説明しつつ実践しておく。
そして、ステーション(エクササイズ実施場所)に行った時に何をすべきかすぐに分かるように、写真やイラスト入りの立て札を準備しておく。

ブートキャンプを大音量の中で実践するに当たって使用するのは、ストップウォッチではなく大音量の中でもしっかりと聞こえる音を定期的に鳴らしてくれる器具の使用が望ましい。

よく用いられる代表的なメニューの例として下記のものがある。

ラウンド1:一種目50秒実施、10秒休憩
ラウンド2:一種目30秒実施、10秒休憩

後半では実際にブートキャンプを実践していく。

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