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負荷手段の選択 チューブは使えないのか?

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掲載日:2018.04.13
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多種多様な競技動作を再現した専門的エクササイズにおいて適切な負荷を加えるためには、トレーニング動作中に負荷の加わる方向や軌道などが実際の競技動作とマッチした負荷手段を選択することが必要です。
トレーニングで用いる負荷抵抗の特性についても、実際の競技場面と合ったものを選択することが大切です。例えば、可変抵抗方式のトレーニングマシンを使用した場合には、ポジションによって負荷が変化することに注意を払う必要があります。

また、チューブを使用した場合には、チューブが伸びるに従って負荷が大きくなる点に配慮します。専門的エクササイズを効果的に実施するための代表的な負荷手段と選択方法について以下に紹介します。
①メディシンボール(1~5kgのボール)
競技動作を再現しやすく、曲線軌道の動作にも対応可能な負荷手段です。投げることができるため、動作の終末局面でも減速しない利点があります。

②プーリー
フリーウエイトでは重力の影響によって負荷をかけにくい、「水平方向への動き」にも対応可能な負荷手段です。

③ウエイトジャケット、ウエイトベルト
体重を重くしたり、身体の一部を重くする効果が期待できるトレーニング器具です。バーベルやダンベルのようにウエイトを手で保持したり肩に担いだりする必要がないため、動きの制約が少ない利点があります。

④腰に付けた負荷を牽引する方法、踏み台・階段・坂道を利用する方法
ランニング動作やステップ動作など、身体の重心移動方向に対応した負荷をかけやすい負荷手段です。

⑤スポーツ用具を重くする方法
ラケットやバットのようなスポーツ用具を使用したスポーツの場合、スポーツ用具に負荷を加える方法が適用できます。負荷を重くしすぎたり、用具の重心分布を変えたりすると、フォームや運動感覚の乱れが生じることがあるので注意が必要です。
コラム:チューブは使えないのか?
チューブは、伸ばせば伸ばすほど負荷が大きくなる性質を持っています。ジャンプ動作のように、しゃがんだ姿勢から足が床から離れるまでに加速する動作に対してチューブを負荷として使用した場合には、動作後半で加速を抑制する作用が生じます。このようなトレー二ングでは、実際のジャンプ動作とは異なる神経や筋の動員パターンがインプットされることになり、「特異性の原則」からみて、パフォーマンス向上のための専門的エクササイズとしては適切とは言えません。

このようなことから、専門的エクササイズの負荷手段としてチューブは「使えないもの」として位置づけられることが多いのですが、本当に使い道がないのでしょうか? ジャンプのような「加速動作」ではなく、球技にみられる「減速動作」や、体操競技の着地にみられる「停止動作」の負荷手段としては大いに使えるのです。

例えば、サイドランジを行う際に、開始姿勢でチューブを十分に引っ張った状態で腰の部分に負荷をかけておけば、横方向にステップする際にチューブが加速をアシス卜してくれるため、着地時により強い負荷を加えることができるのです。

その他、チューブは、実際の競技動作の時に加わる負荷を軽減させる「アシスティッド・トレーニング」の手段として利用することもできます。例えば、長いチューブを腰につけて前方に引っ張った状態でダッシュを行なえば、通常よりも速いスピードを経験することができ、スピード能力向上の効果を期待することができます。

チューブの使い道として、チューブが伸びる時の負荷を利用することに固執すると「使えないもの」になってしまいますが、「逆転の発想」をして、チューブが縮む時の性質を利用すれば、一転して有効なトレー二ング手段となりうるのです。
  • 競技スポーツ別 ウエイトトレーニングマニュアル
    著者:有賀誠司
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社

[ 競技スポーツ別 ウエイトトレーニングマニュアル) ]