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「柔軟性」とは何か#1 芋生祥之

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掲載日:2018.12.21
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2018年10月13日に作新学院大学にて行われた、特定非営利活動法人NSCAジャパン 北関東・東北地域S&Cシンポジウムにおける芋生祥之氏(CSCS,専門理学療法士(運動器),日本スポーツ協会AT,筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・水戸協働病院)の講演をレポート!


私は普段総合病院で働いていまして、スポーツ選手だけでなくいろいろな方を対象に指導をしています。本日は柔軟性をテーマにお話させて頂こうと思います。
まず、今回のタイトルにもあります、柔軟性とは何かということで以下のように考えます.

組織の柔らかさ:スティフネス
組織の張り:筋緊張
動きの滑らかさ:運動制御・姿勢制御 として、3つの観点に分けました。特に動きの滑らかさに関しては、今回の発表でもボリュームがありますので、後ほど時間をかけて説明をします。

組織の硬さ、スティフネス

まずスティフネスとは、組織の柔らかさや硬さ。
捻挫をして腫れている子が来まして、触ると固くなっています。これを腫脹といいます。

また、捻挫の後に固定して固まったりしています。これは拘縮ともいいます。これらは組織の硬さのみを考えればほとんど同じ意味です。
また、切り傷が治癒過程で瘢痕化したときも硬くなることもあります。

スティフネスは粘弾性ともいいまして、スティフネスが高ければ粘弾性も高い。
スタティック(静的)ストレッチを行うと粘弾性、つまり弾力性が落ちるので、バネのない動きになり、パフォーマンスも落ちることがあります。

一方で粘弾性はパフォーマンスを上げる上で必要な要素ですが、高すぎては問題があることもあります。

先ほど申し上げた通り、例えば関節を固定した後に組織が固まってしまった。もしくは外傷後に瘢痕化してしまった。
この時に何が起きているかというと、筋肉の中にあるサルコメアとも呼ばれる部分が萎縮や減少をして細くなったり小さくなり、スティフネスが高くなります。
その結果として、その部位の動きは筋力発揮できなかったり、滑らかな動きができなかったりします。

別の原因としては「硬結」や「トリガーポイント」とも呼ばれる、筋が部分的に固くなった状態になることもあります。
これは筋に対して頻繁に収縮刺激が入ると、筋の中にある血管や脈管が圧迫されて酸欠状態になることに起因します。

組織が酸欠状態であることを知らせるために痛みの物質を出したり、自律神経系に影響を与えることもあります。

そのため、硬結をマッサージのなどの手技でほぐすとこれらの固定化されたシステムが壊れて元の良い状態に戻ります。

神経の働きから考える「張りと緊張」

筋の緊張をとる事。
先程は局所的な話でしたが、今度は神経も関わってきます。どういった時に緊張が起きて固くなるかを知るには、筋の緊張が変わる条件を見ていきましょう。

まず姿勢や情動(心情)、感覚の入力が混乱することで固くなると言われています。
筋肉の中のセンサーである筋紡錘の話で、筋肉が伸ばされたことを感じると感覚神経から運動神経を通って筋肉が収縮する。これが伸張反射です。

一方で、それと同時に拮抗する筋には緩ませる信号が送られます。膝の腱を打腱器で叩くことで、大腿四頭筋が伸ばされたらハムストリングスが緩むということです。

また、脳が関わるときもあります。
例えば注射を打たれる時には眼を閉じて身体を傾けたり、身体を捻れさせます。同様に、何かを我慢しているときにも緊張が生まれます。
そのため、心の問題や嫌なことがあると緊張として表れることがあります。

一般的な事例としては姿勢も大きく影響します。
猫背の場合には背筋に頑張ってほしいところですが、引き伸ばされ続けると筋の緊張が高くなっていくことがあります。

視覚と姿勢

姿勢を司る要素として「視覚」の占める割合は大きいものです。
視覚が弱いと他のところを使わざるを得ないので筋の緊張が変わってしまったり、それに応じてアライメントも変化をしていきます。

なので仮説ですが、視力が弱くて腰痛の人ならば、矯正などで視力を良くすれば腰痛の症状も緩和することも考えられますし、筋の緊張も和らぐことも考えられます。

繰り返しになりますが、不安な要素や心の問題があると症状も悪くなってしまう恐れもあります。

ずっと腫れが続いている場合もあります。
痛みが発生して、脳が信号を出して血管の動きを異常にしてしまい、それにより治らないという悪循環になっていることもあります。そういった場合には精神的な不安要素を取り除くことが優先です。

また、トレーニングをすると筋肉が疲労するのに伴って段々と硬さが増してきます。
これは疲労物質が溜まってきていることを意味します。そして脳までそれが送られることで全身的に疲労を感じてしまいます。末梢性の疲労から中枢性の疲労へと変わるのです。
そのため、日々しっかりとケアをする必要があります。

感覚の入力の混乱

感覚の入力の混乱として有名なのはむち打ちです。
頭痛や眼の揺れ、吐き気、バランスの異常などいろいろな症状を訴えることがあります。首の痛みやストレスが、「前庭神経核」という部分を混乱させることでこういった症状が出ます。

または昔、何かしらの痛みを伴なった怪我の既往がある方であれば、トラウマとして疼痛を回避するような姿勢を持続している場合もあります。
その怪我に伴い筋力低下や関節の動かしにくさや不安定感が残存して、その部位をしっかり安定させるために筋緊張が高くなっていることも考えられます。

運動制御と姿勢制御

最後に、運動制御と姿勢制御。
例えば4歳位の子がボールを蹴ろうとしたときに滑らかに動けず姿勢を崩してしまう事は、先述の視力が弱い人が滑らかに動けず姿勢を崩してしまう事と似ています。

これらがなぜ起こるかというと、子供であれば感覚の入力や統合が弱いためともいえます。
したがって、関連する動きを滑らかにしたほうが柔軟性や姿勢の改善に繋がるとも考えられます。

そのような意味合いもあり、例えば太極拳をすることでバランスや柔軟性が向上したという報告も少なくありません。

認知、姿勢、運動

意図した運動が起こるまでは脳の中で3つの局面に分けられます。
まず最初は、大脳の表面上で生まれた感覚を情報として認知します。

例えば、暑い環境で目の前のペットボトルに手を伸ばすとする。喉が乾くという感覚と眼の前に飲み物があるという認知があります。

次に手を伸ばそうと姿勢を調節するプログラムが体幹を中心に脳から脊髄へと行き渡ります。そして腕を伸ばすためのプログラムが腕に行き、ようやく運動に至ります。

最初に感覚情報の認知、次に姿勢のプログラムが実行され、最後に目的となる運動プログラムが実行されます。

大事なのは、運動の前に細かい姿勢の制御が行われているということです。

続きは近日公開!