フィジーク・オンライン

Ad by aerobis

Weekly Monthly Shopping
  • トップ
  • フィットネス
  • 子どもの体力・運動能力に関する諸課題と向上に向けた試み#2 小林育斗 NSCAジャパン北関東・東北地域S&Cシンポジウム

子どもの体力・運動能力に関する諸課題と向上に向けた試み#2 小林育斗 NSCAジャパン北関東・東北地域S&Cシンポジウム

この記事をシェアする

0
掲載日:2019.01.15
記事画像1
2018年10月13日に作新学院大学にて行われた、特定非営利活動法人NSCAジャパン 北関東・東北地域S&Cシンポジウムにおける小林育斗氏(Ph.D.,作新学院大学経営学部スポーツマネジメント学科 准教授)の講演をレポート!

投動作の理想的な動作モデルの構築

データ収集の方法として高速度カメラ2台を用いて3次元DLT法を使い、小学校の各学年の投距離上位者男女各7名を対象としました。

標準動作モデルの構築手順として、最初は身長も投げる時間もバラバラですのでまずそれらを合わせ、座標値を平均します。

その結果、男子上位者の標準動作モデルにおいては高学年ほど踏み出し局面の後ろ足の屈曲が大きいことがわかりました。
これにより前足の踏み込み(身長比ストライド)が大きくなるので歩幅も広がります。
男子上位群では、動作範囲の拡大が発達に伴う主要な変化と考えられます。

女子の標準動作モデルにおいては学年が進むにつれて上肢を中心とした動きのパターンが変化し、6年生はリリース前に急速な肩の外旋と内旋をすることがわかりました。

男子、女子上位群まとめ

男子上位群では、下肢関節の屈曲や体幹の回転など、動作範囲の拡大が発達に伴う主要な変化と考えられます。

女子上位群では、動作範囲が拡大する箇所もみられましたが、発達に伴い上肢を中心とした動きのパターンが変化しました。

もう少し詳しく調べたところ、男子においてはリリース前の投球側の肘伸展トルクは学年間に有意差がなく(女子は有意差あり)、男女ともに高学年の上位者では、肩関節パワーと体幹・肩トルクパワーによる力学的仕事が大きかったことがわかりました。

つまり、男子はボールを投げる際に肘を強く伸ばそうとはあまり意識していないこと、高学年になると男女とも腕の力ではなく、体幹と肩まわりで発揮した力でボールを遠くへ投げていたことになります。

投動作の練習

6年生の男女を対象にして、週1回45分、合計4回の技術練習を実施しました。

最初に標準動作モデルによるフォームを見せて、実際にボールを投げた動きをカメラで撮影し、投げた後に自分の動きを観察してもらいます。
これらを実施した結果、ボール初速度と飛距離は有意に向上しました。

過去に行った、同じ条件で標準動作モデルと撮影した自分の動きを見せなかった検証では、女子は少し向上しましたが男子は変わりませんでした。

実際に自分の動きを見る機会というのはそう多くありませんので、そのあたりが今回の結果に繋がったものと考えられます。

動作の変化としては、男女ともリリース直前における投球側の肩の外転角度が少なくなり、前足接地付近における体幹回旋が強くなりました。

テイクバック時に後ろから見ると、練習前は胸部が見えない角度でしたが、練習後は理想的なモデルに近い動きになり、胸部が見えるほど回旋が強くなっています。
そこからリリースすることで速さと距離の向上に繋がったと考えられます。

このことから標準動作モデルは、目標とすべき動作を具体的かつ視覚的に示すことができるので、小学生の投能力向上に有効な手段と考えられます。

指導支援システム

これらの研究により得られた標準動作モデルのデータを資料として試験的に専用の配信サーバーからPDFで配信できるようにしていましたが、残念ながら現在はこのシステムは動いておりません。

試験運用時は専用のビューワーソフトを用いて関節の座標値がわかるようになっていて、各動作の比較ができました。
ビューワーソフトを学校のパソコンにダウンロードでき、標準動作モデルと学習者のモデルを重ねることができます。
一般の小学校においても基礎的動作の指導に標準動作モデルを活用するためのハード・ソフトが整いつつあると考えています。

学校体育以外ではその場で観察して評価するのが精一杯かと思いますが、こういった蓄積したデータや資料を活用することで、それらと照らし合わせて現場の子どもへアドバイスを送るという方法も大いに有効かと思います。