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NSCAジャパン北関東・東北地域S&Cシンポジウム 現場で使える簡単なメンタルトレーニング#1 笠原 彰

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掲載日:2019.01.29
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2018年10月13日に作新学院大学にて行われた、特定非営利活動法人NSCAジャパン 北関東・東北地域S&Cシンポジウムにおける笠原 彰氏(M.S.,作新学院大学経営学部スポーツマネジメント学科教授)の講演をレポート!

メンタルトレーニングの活用分野

メンタルトレーニングのベースになっているのはスポーツ心理学です。「スポーツ心理学」を真ん中で「スポーツ」と「心理学」に分けまして、「心理学」とはなにかといいますと、心の仕組みを知る学問です。それに「スポーツ」がつくので、スポーツや運動が心に与える影響を知るという学問です。
ストレスが減った、自信がついたなど、心がスポーツやパフォーマンスに与える影響を調べていきます。

「応用スポーツ心理学」という分野もありまして、スポーツ心理学を実践で活かすためのものです。
この「応用スポーツ心理学」の目指すところはスポーツやパフォーマンスを上げるだけでなく、それらを超えて最終的に人生そのものを豊かにしていくためのものなので、スポーツの分野に留まりません。

メンタルトレーニングの活用分野は一般的にはやはりスポーツが多いです。
しかしもともとは旧ソ連の宇宙飛行士のために作られていて、今では教育や学校等でも用いられています。
最近、中学や高校で流行っているのが「受験メンタルトレーニング」。

また、音楽や新体操などの芸術系、採点競技のような「パフォーミングアーツ」という分野でも用いられ始めていて、他にはビジネスにおけるメンタルトレーニング、社員に対するリーダーシップやコミュニケーションスキル、健康などの分野で活用されています。

メンタルは才能ではなくトレーニングして高めていくもの

メンタルトレーニングの正式名称は「心理的スキルズトレーニング」や、「メンタルスキルズトレーニング」といいます。

メンタルは心、スキルとは技能。技能とは何かと言うと、「トレーニングにより高めることができる能力」。同様に、メンタルにおいても才能ではなくトレーニングできるという考え方がベースになっています。


メンタルトレーニングの目的は主に2つです。
1つめは実力を上げる。
2つめは、高めた実力を本番で発揮できるようにする。

メンタルトレーニングの適用範囲としては、特に問題のないアスリートをさらに高めることです。(Weinberg&Gould,2015)
それに対して、うつ病や摂食障害など、精神的に病んでしまっている人に対して行われるのは臨床的スポーツ心理学といいます。精神科医、臨床心理士の方がこちらにあたります。

競技力向上の7段階モデル(Hardy,Jones,&Gould,1996)

①メンタルトレーニングが効果的か、目的の明確化
②スポーツ種目に関する情報収集
③選手やチームのメンタル面の長所、短所を評価
④メンタルトレーニングプログラムの作成
⑤メンタルトレーニングの実施
⑥練習や試合で実施したプログラムを調整、発展させる
⑦評価

メンタルトレーニングをやっていくための手順としてまず、心理的スキルをパッケージ化して使うということが提唱されています。

技術や体力がしっかりしているということがベース

①メンタルトレーニングが効果的か、目的の明確化

よく「心技体」という言葉がありますが、狭い意味で言えばメンタルは最後だと思います。技術や体力がしっかりしているということがベースです。

例えば、練習場ではうまくできても実際にプレーしてみるとなかなか良いスコアが出ないゴルファーがいたとして、そもそも実地での練習はしていますかということです。実地での練習ができていなければ良い結果は残せません。あとは柔軟性や筋力などの体力的な問題。メンタル以前の問題であることも多く考えられます。


あくまでベースは技術と体力。メンタルトレーニングだけやったところで効果は出にくいです。
また、「明日や一週間後の試合に向けて…」など、魔法のように短期での効果が期待されてしまうこともありますが、最低3ヶ月はかかります。

メンタルトレーニングでメンタルを高める技術を身につけるわけですが、それが習慣化されて試合や本番で無意識下でもできるようになるには最低3ヶ月と言われています。
私の経験上では、大事な試合までに2週間以内の場合にはだいたいボロボロです。


なぜかと言うと、メンタルのテクニックの代表的なものとして「ルーティーン」があります。
ルーティーンはマスターするまでに時間がかかるので、2週間以内に何かルーティーンを入れると、「ルーティーンをやるためにルーティーンをやる」状態になってしまい、パフォーマンスを上げるどころではなくなってしまいます。

うつ病や自律神経失調症、リストカットなど明らかに治療が必要な人のメンタルトレーニングも危険です。これはカウンセラーの領域です。

②スポーツ種目に関する情報収集

去年から、競馬のジョッキーのサポートをしています。そもそも競馬のルールや中身を全く知らないと問題ですのでもちろんそれらを調べておきます。それは他のどんなスポーツでも同様です。

しかし、あえて知らないフリをします。

いろいろ調べたとしても、あえて知らないフリをしてたくさん相手に聞きます。そうするといろいろ話してくれます。
そのとき、相手の頭ではこちらが聞いたその状況が鮮明にイメージされます。それをしないと相手も漠然としていることが多いので、情報や状況を明確にすることにもつながります。

③選手やチームのメンタル面の長所、短所を評価
④メンタルトレーニングプログラムの作成

心理テスト等を使ったりもしますが、同じような項目を聞くテストを何種類もやって評価しないといけないので難しいです。
そのかわり選手から直接細かく話を聞き、それに基づいて必要と思われるメンタルトレーニングのプログラムを作成、提案します。

できるメニューをさせよ

⑤メンタルトレーニングの実施
⑥練習や試合で実施したプログラムを調整、発展させる
⑦評価

ここで大事なのは、できるメニューかどうか。できないメニューを渡しても仕方ないです。

宿題として渡して、実施してもらって練習や試合で試して発展させて効果があったのかを調べます。
最終的には「こう変わった」という選手の内省や主観なのですが、それらにもとづいて評価をしていきます。

ちなみに注意点としては、まず練習でメンタルトレーニングの練習をすることです。
時間としても30分などでなく、練習の合間にちょこちょこと小出しに入れていく感じです。そして練習試合や小さめの試合を経て、最後に大きな大会で導入していきます。

メンタルトレーニングをするための重要事項

・基礎的なメンタルトレーニングの開始は若いほうが良い。
・各個人に合ったメンタルトレーニングプログラムを作成する
・自分がナイスプレーをした時の様子を参考にする
・メンタルトレーニングは練習に取り込んで実施する
・メンタルトレーニングは日常生活でも活用する
・試合前の緊張や不安対策として試合前15分くらい前からのメンタルウォーミングアップ・プログラムを作る
・最初の2~3週間はマイナスの効果が出ることがある
・メンタルトレーニングの効果はメンタルテクニックをマスターしないと出にくい

各々自分なりのやり方があるので、メンタルトレーニングの導入は大学生くらいになると難しくなってきます。中学生、高校生くらいのほうが受け入れられやすい。また、男性よりも女性のほうが遥かに興味を持ちやすいです。

個人にあったメンタルトレーニングを選ぶことも大事

ACミランを含むイタリアのほとんどのチームにはメンタルコーチが入っているのですが、メンタルトレーニングのマニュアルはないそうです。

人それぞれ皆中身が違うのでマニュアルを作成しても当てはまらないことが多く、その場で話し合いながらアドバイスをしていく。私も基本的な部分のマニュアルのようなものを渡すことはありますが、基本的には雑談や質疑応答、選手自身がナイスプレーをした時の様子を参考にしていきます。

ナイスプレーをした時の状況というのはとても大事で、ナイスプレーがなぜできたかという理由を掘り下げていきます。

メンタルトレーニングは練習時間中だけでなく日常生活でも行います。
例えば深呼吸を練習しようとした場合には部屋でも通勤や通学中でもできますし、日常生活でも取り入れていきます。

試合前の緊張や不安に対して

試合前の緊張や不安に対するメンタル的なウォーミングアップとして、リラクゼーションやサイキングアッププログラムを作成します。 

サイキングアップとは簡単に言えば気合です。気合を入れるためのプログラムを作成します。
最初の2~3週はマイナスの効果が出ることもあるので、2~3週間後に試合が控えている場合にはやめておいたほうが良いです。また、これらはメンタルテクニックをマスターしないと効果が出にくく、しっかりとトレーニングが必要です。

よく、セミナーや勉強会で「メンタルトレーニングを受けてきた」ということを聞くことがありますが、それはメンタルトレーニングのやり方を聞いただけであってメンタル自体は何も強くなっていません。トレーニングをして初めて強くなるのです。話を聞くだけでメンタルは強くなりません。

続きは近日公開!