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1コの金メダルより100人のカナヅチをなくせ

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.10.04

保健体育審議会の答申

 去る12月20日、文部大臣の諮問機関である保健体育審議会(東竜太郎会長)は、「体育・スポーツの普及振興に関する基本方策」と「児童生徒の健康の保持増進」についての意見をまとめ、文部大臣に答申した。

 この答申を要約すると、まず、日常生活に密着したスポーツ活動をさかんにすることが強調されている。

 平均寿命が年々伸びているにもかかわらず、運動不足やストレス、肥満体が増えて健康や体力は逆に低下しつつある。このことは、いままでの体育・スポーツ活動が選手中心の競技スポーツの育成に重点がおかれてきたからであり、これからは国民総ぐるみのスポーツが急務だというわけである。

 オリンピックをはじめとする国際試合に勝つためであったり、あるいは対校試合に勝つためのスポーツではなく国民のだれもがスポーツに親しみ、いつでも、どこでもスポーツ活動ができるように施設の増設と指導者の養成を急ぐべきだと答申は指摘している。すなわち、1コの金メダルをとるよりも100人のカナゾチをなくすほうが大切であり、これがための施策を講ずるように要望しているのだ。

 たしかにいままでは、何人かのエリート選手を育てるために、多額のカネと施設が提供されてきた。そして、一般国民の間にも、スポーツは一部選手たちの競技を見て楽しむという傾向が強く、自ら実践しようとする気持が少なかった。

 ようやく最近になって、都市化の進展や機械文明の発達が、われわれの日常生活における身体活動を減退させ、体力が低下しつつあることに気づいてきた。また、一方では生活水準の向上と自由時間の増大が、これまでにないほどのスポーツへの欲求を高めてきたのである。テレビで選手の活躍を見て拍手するより、自分がスポーツをして汗をかくほうが大切だという、スポーツ本来の姿を自覚してきた。
 ここで問題になるのが、スポーツ施設と指導員の不足である。

 まず、指導員だが、スポーツ人口を増やすには会員制のスポーツ・クラブやスポーツ教室といった自発的なグループを育て、援助していくことが肝心である。ところが、指導者の不足とその役割のあいまいさが障害となってせっかく作った施設も宝の持ち腐れになるおそれが強い。

 このため、①民間の指導者には、技術や素質面での認定制度を設け、将来職業化できる道を開く②職場の指導者は選任を置くほか、外部の指導者の協力を求める③公共施設では、施設ごとに専任の指導員を配置、体協が養成しているスポーツ指導員を教育委員会や施設に登録して、住民の求めに応じる一などをこの答申では提案している。

 いままで長い間、国民の健康づくり体力づくりをとなえてきたボディビル関係者の声が、いまようやく認識されてきたのであるが、ボディビルの普及発展のためにも、この機会をとらえて「国民総ぐるみのスポーツ運動」に進んで一役買う絶好のチャンスではないだろうか。

 すでに全国には200近いジムがありその他にも多くの実業団ジムや公共のトレーニング施設もある。指導者にしても、数年ないし十数年にわたる実践と指導を経験した人たちが数多くいるはずだ。これらの施設、指導技術を積極的にこの運動に参加させ、ボディビルに対する偏見をとり除き、真の有効性を理解してもらうべきだ。

 このためには、資金的な問題もあると思うが、できるだけ設備を改善し、また、指導者にふさわしい広い知識を吸収して、国民の要請にこたえられるだけの実力をたくわえておかなければならない。狭いカラにとじこもって、時代の波にとりのこされないようにしたいものだ。
[ 月刊ボディビルディング 1973年2月号 ]

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