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コンテスト前の水分カット【前編】

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掲載日:2018.01.10
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利尿剤では厳しいカットは生まれない

ボディビルダーの中には、コンテストでなるべくキレを出そうとして余分な水分をカットするために利尿剤を使っている人がいます。しかし、ほとんどの利尿剤は体にとって有害です。利尿剤は、ひどい筋肉の痙攣や(アーノルド・クラシックでのポール・ディレットを覚えているでしょうか)、心拍の乱れ、それに血糖値の上がり下がりを引き起こす事があるからです。

それに水分をカットするために利尿剤を使っているボディビルダーの多くは、実は水を含んでいないのです。彼らはただキレて見えるほど体脂肪を落としきっていないだけなのです。

利尿剤には2つのタイプがあります。一つは、アルドステロンと呼ばれるホルモンを抑えるものです。このホルモンのレベルが高くなると、体はソディウム(ナトリウム)を保持しようとします。逆に、ドラッグの使用によりアルドステロン・ホルモンのレベルが低くなると、体はソディウムを体外に排出しようとします。

ソディウムには、水を惹きつける性質があります。
ですから、ソディウムを失うと体内の水分も後を追うように失われてしまうのです。
もう一つは、ソディウムの排出とともに、大量の水分排出を引き起こすものです。このタイプの利尿剤を使っているボディビルダーは、きちんと絞れているなら、よりハードに見せることができます。しかしこの利尿剤によるシャープさはほんの一時的なものです。体から水分が失われると同時に、アンチ利尿ホルモンと呼ばれる別のホルモンが分泌されるからです。

このホルモンの役割は、体内に水分をとどめ、利尿剤の水分排出作用に対抗することです。ですから結果として、利尿剤の仕様によりシャープなコンディションが得られたとしても、いったんアンチ利尿ホルモンが分泌されると、水分を保とうとする方向に向かうので体はスムーズになってしまうのです。

利尿薬による影響

これによって生じる問題は、コンディションが予測できないということです。
体はその時々で違ったように反応します。アンチ利尿ホルモンが、利尿剤を摂った二日後に分泌されることもあれば、数分後に分泌されることもあります。

これが、あるコンテストではすごいカットだったのに、次のコンテストではスムーズだったなどということが起こる理由なのです。また、これが原因でピークを逃す者もいます。一日良くても、翌日はスムーズになってしまう事があるからです。


また利尿剤は、炭水化物を筋肉グリコーゲンとして筋肉内に蓄える能力を抑えてしまうので筋肉がフラットになってしまいます。それに利尿剤は水分を排出する際、あまり選別的とはいえません。
どういうことかと言えば、皮下から水分が失われた場合はよりハードに見えますが、筋肉内の水分が失われた場合は筋肉がフラットになってしまいます。
利尿剤を使用した場合、水分はしばしば皮下と筋肉の両方から失われるからです。筋肉から水分が失われると筋肉がフラットに見えます。

こういったフラットな状態では、バリバリに仕上げることはできません。なぜなら、ディフィニションをハッキリ出すには、脂肪(そして水分)の量は最小限に抑えつつも、筋肉は最大限フルな状態に保たなくてはならないからです。
このように、利尿剤を使ったボディビルダーは筋肉からも多くの水分を失うので、思ったほどハードに見えないという結果に終わることが多いのです。それゆえ、彼らの中にはハードさを出すためにさらに多くの利尿剤を使う者もいます。が、結果は悲惨なもので、コンディションはさらに悪くなるばかりです。

  • ■究極の筋肉を作り上げるためのボディビルハンドブック
    2013年6月20日第6版発行
    著者:クリス・アセート
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社

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