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材料と経路により性質が変わる物質「プロスタグランディン」とは

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掲載日:2018.01.15
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プロスタグランディンの供給源

プロスタグランディンといえばエイコサペンタエン酸というくらい、エイコサペンタエン酸は体内でプロスタグランディンという物質に変わり、生理学的な働きをします。

ホルモンが別の臓器で作られて運ばれ、作られたところと別の場所で働くのに対して、プロスタグランディンは細胞の細胞膜で必要な時に作られ、すぐ使われて、必要なくなったらすぐ消えるという素晴らしい物質です。

プロスタグランディンは材料と経路により性質が変わる

実はプロスタグランディンが作られるには様々な経路があります。元々の材料が違うと、経路も変わり、プロスタグランディンも違うものが作られる、という訳です。それぞれのプロスタグランディンには番号が付いていて、働きも違います。

全部で20種類以上ありますので、ここでそれを全て説明する事は出来ません。エイコサペンタエン酸から作られる経路は、血液を固める働きをする血小板という物質が、集まりすぎてかたまりにならない様に働きます。反対に肉類に含まれる脂肪から作られるプロスタグランディンは、血液を固める働きを促進させ、それぞれが逆の働きをします。

それ以外にも、エイコサペンタエン酸から作られるプロスタグランディンはHDLコレステロールを増やしたり、LDLコレステロールの排出を促進、コレステロール値を下げる、中性脂肪の蓄積を防ぐ、血管を拡張させるなどの働きをします。

スポーツ選手は運動時に大量の血液を運んでいます。ハードなトレーニングを続けている選手は、血管も太く強くなりますが、血液検査をすると、意外に水分量が少なく粘性の高い血液をしている選手もいる様です。その様な方にはこのエイコサペンタエン酸をお勧めします。

薬より凄い?!

血液をサラサラにする薬といえば、アスピリン。
元々は頭痛薬として使われていましたが、最近は高脂血症などの生活習慣病の方に処方される事が多いようです。でもアスピリン製剤は胃を荒らす副作用があるため、胃腸薬が一緒に処方されます。

同じ働きをするエイコサペンタエン酸が胃を荒らす事はありません。自然の栄養成分って、スゴいんです。

炎症を抑える

エイコサペンタエン酸には抗炎症作用もあり、慢性関節リウマチなどの慢性炎症性疾患の改善に役立ちます(LeslieG.& Cleland et al. (2003)Drags 63 (9) 845-853)。

また、肉類から作られるアラキドン酸をアレルギ一反応の原因物質に変える酵素を作らせないようにし、アレルギーを緩和させてくれる働きがあります。もちろん、それにはドーズレスポンスに値する量を摂取しないと効果は発揮できませんが。ステロイド離脱、アトピー性皮膚炎、乾腕(炎症性の角化症)などにも効果が期待できます。
  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)
    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901~1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ アスリートのための分子栄養学 ]

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