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疲労と栄養対策<活性酸素>

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掲載日:2016.09.05

活性酸素

ヒトが呼吸をする際、細胞のミトコンドリア内、電子伝達系で2分子の水ができます。その際、または同時に、1%の活性酸素が発生します。つまり人間は、生きて呼吸している限り、必ず活性酸素を作り続けることになります。

反応性に富む酸素種を総称して活性酸素と呼んでいます。その多くはラジカル(1個以上の不対電子を持つ分子あるいは原子)です。一般的には活性酸素はフリーラジカルと同等に扱われています。それは、電子の授受によって容易にラジカルになるからです。

活性酸素は名前だけ聞くと身体を活性化させるものなのかと勘違いしそうですが、身体の中ではガンの元になるなどして、決して良いものではありません。その為、人間の身体にはそういったものを除去するシステムがあります。例えば、スーパーオキサイドジムスターゼ(SOD : superoxide dismutase)やカタラーゼ、グルタチオンペルオキシターゼ(GPx)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)などの酵素や、その他の抗酸化物質です。ヒトの身体には、このようにたくさんの消去システムが存在しますが、それにはその材料となる物質(食物)が必要となります。

また、中には1重項酵素などの様に、消去するシステムがないものもあります。その場合は外部から消去できる物質(食物)を摂取しなければなりません。例えば、カロチノイド(ブドウやビルベリーなどに含まれるアントシアニン)や亜鉛(亜鉛はSODを活性させる)などです。

ヒトの身体は、ストレスを感じたりエネルギーを代謝したりすると酸化します。酸化を科学的に言うと以下の様になります。

①酸素原子と結合する
②化合物から水素原子(H)が取られる(脱水素)。
③原子またはイオンから電子が取られる。
※還元とは、上記と逆の反応のことです。


フェントン反応
体内の微量金属の中で、鉄(Fe)や銅(Cu)などは複数の不対電子を持ち、他の分子やイオンと簡単に電子のやり取りを行い、複数の酸化還元状態を作ることが出来ます。このような微量金属を遷移金属といい、酸化還元に関する多くの酵素の働きに深く関与しています。

過酸化化合物は、鉄イオンや銅イオンなどの遷移金属があるとその電子を奪って、過酸化ラジカルを作ります。これをフェントン反応といいます。タンパクと結合した鉄は安定しています。しかし、活性酸素が存在すると鉄イオンが遊離してしまい、フェントン反応が起きやすくなる可能性があります。

また、鉄イオンや銅イオンが不足すると、過酸化水素を還元できず、ヒドロキシラジカルに換えてしまいます。これも“ラジカル”ですから、悪いやつですね。ストレスでヒドロキシラジカルが発生している人は、間接ビリルビン値が上がります。私が血液検査のデータを拝見する人の中では、この間接ビリルビン値の高い人が最近増えています。それだけ、現代はストレス社会なのだと思います。

しかし、そういう方々に“ストレスで体が酸化しています”と言っても、なかなか体で感じている方は少ないようです。やはり定期的な血液検査で確認することが望ましいですね。簡単に言うと、ヒトが肉体的ストレス(激しい運動など)や精神的ストレス(人間関係や環境の変化など)を受けると身体が酸化します。酸化した細胞を還元することに関係しているのが微量金属やタンパク質、ビタミンなどですが、こういった栄養が不足すると還元が追いつきません。

酸化的ストレスの強さに応じて、抗酸化酵素の誘導が起こりますが、抗酸化酵素は加齢によって活性が低下するといわれています。抗酸化酵素の活性の維持には、微量金属やビタミンが必須ですね。現代社会ではヒトは慢性的にストレスを感じています。つまり、慢性的に酸化し続けているわけです。どこかでこの酸化を還元しないと、それが老化を進めることになり、怪我やガンの元になったりする訳です。

話は少し脱線しますが、ガン細胞は、その一つが出来てから「早期発見ですね」と言われる大きさまで、10年~20年を要します。その間に体内の消去システムが追いついてくれれば、「ガンですね」と言われないで済むわけです。ガン細胞は毎分事に作られる、と言われていますから、消去の栄養素はいくらあっても多すぎることはないでしょう。

分子整合栄養医学の父、ライナス・ポーリングは、そのときヒトが必要とする栄養素の個体差(個人差)は1:20だと言っています。つまり、1摂取して足りる人もいれば、その20倍摂取しないと足りない人もいる、という事です。


スポーツ障害とフリーラジカル

ヒトが呼吸する際に活性酸素が発生すると最初に述べました。当然ながら、その消去のシステムも存在します。

しかし、運動時のエネルギーを大量に必要とする場合には、多量に発生した活性酸素は消去システムの許容量を超えることになります。その活性酸素が細胞に障害を与えることは、容易に想像がつきますね。

運動をしているときは、筋肉への血流が増加しますので、肝臓や腎臓への血流配分が減少します。血液は酸素を運んでいるわけですから、臓器への酸素供給量も低下します。運動終了後、血流が減少していた組織に血流が急激に増加します。この一過性虚血→血液再濯流の際、活性酸素が発生するのです。

これを消去する栄養素がビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、コンドロイチン、グルタチオンです。特に有酸素系の運動をされている方は、多めの摂取をお勧めします。
前章のエネルギー代謝でも述べましたが、エネルギー代謝に欠かせないビタミンB群やCoQ10、抗酸化ビタミンのCやEが欠乏すると、ミトコンドリア内のTCA回路が上手く働かず、疲労物質である乳酸が発生します。乳酸は筋肉組織内に溜まりやすく、筋肉痛や腰痛、肩こりなどの原因となる物質です。ストレッチしたりマッサージしたりして追い出す方法は、対症療法としては有効ですが根本治療にはなりません。そもそも乳酸を作り出さないように栄養摂取をすることが大切です。

ビタミンCは使われると酸化しますが、それを還元するのがビタミンEです。しかしそうすると、ビタミンCは還元されますが、今度はビタミンEが酸化してしまいます。この酸化したビタミンEを還元するのがビタミンB群です。還元したビタミンB群は体外に排泄されてしまいます。

ですからビタミンCをたくさん摂取するときには、ビタミンB群もたくさん摂らなければいけないということになります。意外に知られていないことです。

このように栄養はそれぞれ単独で働く以外に、リンクして使われます。現代はビタミンCの働きがどんどん発見され、体内での需要量は相当量になっていますが、摂取量はそう増えていません。
しかもビタミンCをどんどん摂取すればビタミンB群がどんどん排泄されることになりますから、B群の欠乏まで起こってしまいます。「ビタミンCを摂取するときは、ビタミンB群も一緒に摂る」を忘れないでください。
  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901〜1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


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