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ビタミンE(トコフェロールとトコトリエノール)の抗酸化作用

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掲載日:2017.06.22
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脂溶性ビタミン② ― ビタミンE

トコフェロールとトコトリエロール
ビタミンEは、自然界に多く存在しているビタミンです。

しかし、少しずつ形の違う種類があります。側鎖の違いからトコフェロールとトコトリエノールに分類されます。更に、クロマン環に結合しているメチル基の位置と数によって、トコフェロールとトコトリエノールはそれぞれがα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)という4種類に分類されます。

合計するとトコフェロールが4種類、トコトリエノールが4種類の計8種類になります。

トコトリエノールは、ターゲットとなる細胞内へ素早く取り込まれ、機能性を発揮します。つまり、即効性があります。

トコフェロールは持続性がありますので、両方を摂取する事で体内のビタミンE濃度が高濃度で維持されます。

ではビタミンEの働きについて見ていきましょう。

ビタミンEの主な働き
①抗酸化作用
②膜の安定
③ホルモン活性化作用
④血行促進作用


①抗酸化作用
初めにお話ししましたα、β、γ、δですが、ヒト体内における抗酸化活性の強度によって、α<β<γ<δと分類されます。体内で生理活性(先述の④)が最も強いのがα型です。

また、抗酸化作用が強いのがδ型です。天然のビタミンEは、αが半分、残りのβ、γ、δが半分の形をしている為、血行促進などの生理活性作用と共に、抗酸化作用があります。

一方、合成のビタミンEは、その大半がα型です。残りのβ、γ、δ型は殆ど入っていませんので、抗酸化作用は殆どありません。

薬局などに行くと、天然ビタミンEと合成ビタミンEの両方が売られています。恐らく価格は全然違うので、安価な合成を買いたくなってしまうかもしれませんが、ビタミンEは天然のものを購入して欲しいものです。血流が良くなるのも大切ですが、ビタミンEの抗酸化は外せません。血行促進は感じやすいですが、抗酸化作用はすぐに感じにくいので、合成ビタミンEの方が効いた気分がするかもしれませんね。

さて実はその他にも、天然にも合成にも入らない、天然型というビタミンEがあります。これは、天然ビタミンEの一部を使い、残りは合成のものと合わせています。ですから、α型が半分とはなっておらず、大抵は合成と同じようにα型が殆どというバランスになっています。

天然型というネーミングは、天然のビタミンEと勘違いしそうですが、実は合成とほぼ同じです。私は、この天然型というネーミングは、消費者をバカにしているように感じます。

天然型には抗酸化作用は余りない、という事になりますから、やはりビタミンEは「合成」でも「天然型」でもなく、「天然」を選びたいですね。
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②膜の安定
細胞膜の働き

細胞はリン脂質という膜で覆われています。脂溶性ビタミンであるビタミンEは、この細胞膜のリン脂質に作用して、膜を安定させます。膜を安定させるとはどういう意味でしょうか?簡単に言うと、細胞膜には、細胞の中の栄養や老廃物の出し入れをする専用の出入り口があり、そのドアが錆び付かないようにしているのがビタミンEなのです。

細胞膜には、次のような働きがあります。
①物質の移動や情報の伝達を仲介する
②選択的透過性を持ち、代謝や生合成に関与する。

細胞膜には、それぞれ栄養の専用入り口があります。同時に、老廃物の専用出口もあります。この必要な栄養だけを、専用入り口から選択的に細胞内に通すことを、選択的透過性(せんたくてきとうかせい)と言います。

細胞膜が酸化していると、専用の出入り口の扉が錆び付いている状態ですから、大切な栄養は入る事が出来ず、老廃物もさっさと出て行けません。つまり細胞が元気ではいられないのです。

ビタミンEは出入り口の酸化を防ぎ、細胞を元気にしてくれます。

トコトリエノールはトコフェロールの40倍の膜酸化防止力があると言われています。トコフェロールは膜近くのポケットのようなところに入り、周囲の抗酸化をします。一方トコトリエノールは、膜周囲全部の抗酸化をします。

働き方の違うトコフェロールとトコトリエノールの両方を摂取する事で、お互いが能力を発揮しながら助け合い、相乗効果を発揮します。まるでトップ企業の社員みたいですね。

さっきから膜、膜としつこいですが、赤血球膜もビタミンEが強化しています。赤血球は骨髄で作られ、120日間、体中をめぐり酸素を提供しています。赤血球膜が弱いと、120日使われる前に壊れてしまいます。そうすると、中に積んで安全に運ばれていたはずの鉄が、血管中にバラバラと出てきてしまいます。道端に石がゴロゴロしていたら、他の車は通りにくいですね。血管の中がそんな状態になっているのです。そして赤血球は寿命より早く壊れてしまう訳ですから、どんどん作らなければならず、体内では材料調達が大変です。このような方の血液データを拝見しますと、間接ビルビン値が高く、壊れた赤血球からこぼれ落ちた血清鉄が高くなります。膜が弱くなる原因は酸化ストレス(ストレスによる身体の酸化)ですが、強化するのは?そう、もちろんビタミンEですね。
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  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901~1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ アスリートのための分子栄養学 ]

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