フィジーク・オンライン

第四十四回 新サプリメント・トピックス~DHEA~

この記事をシェアする

0
[ 月刊ボディビルディング 2013年9月号 ]
掲載日:2017.08.10
年間70 本塁打を記録したマーク・マグワイア

年間70 本塁打を記録したマーク・マグワイア

 1998年マーク・マグワイア選手が、当時の大リーグ記録となる1シーズン70本の本塁打を記録しました。その際、彼がアンドロステロンというプロホルモンを使用していたことで物議を醸しました。

 しかし当時アンドロステロンはドーピング対象ではあったものの、MBLが禁止していなかった事もあり、さほどマイナスのイメージはなかったように記憶しています。しかしその後、彼に憧れる子供たちまでが筋肉をつけたいとアンドロステロンを使い始めたこともあって、アメリカでは厳しく使用を禁止することになりました。

 日本においては元々医薬品扱いであるためサプリメントとして購入することは出来ませんでした。しかしアメリカでは容易に購入できることもあって、実際は少しマニアックなサプリメントショップでは見かけることもしばしばありました。

 そんな中、筋肉をつけるという意味合いとは若干違った観点から注目を浴びていたサプリメント(日本で医薬品)がDHEAです。
記事画像2
 DHEAとは若返りのホルモンとして注目されている副腎から分泌されるステロイドホルモンの一種です。正式名称は、デ・ヒドロ・エピ・アンドロステロンといい、血液を使って様々な組織に運ばれ、性ホルモンへと変化していきます。つまりその人の必要に応じて女性ホルモンにも男性ホルモンにもなる手前のホルモンです。

 成長ホルモンなどと同様に、20歳前後がピークで右肩下がりに減っていくホルモンでもあり、80歳になると20歳時の1割程度しか分泌しないとも言われています。

 海外ではサプリメトとしても購入できますが、国内では輸入製剤を処方してもらうなどの方法をとらなくてはなりません。どちらもドーピングの対象となりますので、ボディビルをはじめとする競技者は使用が認められないのが実状です。

 では直接DHEAを補充するのではなく、自身の身体でDHEAの分泌を増やすことができないのでしょうか。そもそもホルモンとは身体の限られた器官で作られ血液によって運ばれます。微量で強い作用があって、特定の器官に作用する化学物質です。

 コレステロールから作られるステロイド系、アミノ酸がつながったペプチド系、アミノ酸が材料として作られるアミノ酸誘導体系の3つに大別されます。例えば成長ホルモンはペプチド系で、アドレナリンやドーパミンはアミノ酸誘導体系ということになります。
記事画像3
 そしてDHEAに代表される性ホルモンはステロイド系に属します。従って、減量時に極端な脂質カットの状態を長期間にわたって続けた場合、ステロイド系のホルモンの材料が足りないことになる懸念があります。代謝を上げるという意味合いもありますが、チートディにはステロイド系ホルモンの材料を補充するという意味合いもあるのです。

 DHEAをダイレクトに摂取せずに体内での分泌量を増やす可能性のある食品(素材)もいくつか考えられます。

 例えばセックスミネラルとも呼ばれる亜鉛や、NO系のアミノ酸のアルギニンは以前からこの期待が大きい栄養素です。

 加えて伝統的にも注目が高いのがニンニクかもしれません。ニンニクにはアリシンという硫黄性の化学物質が豊富に含まれており、このアリシンがビタミンB1の吸収を促進してくれます。そしてニンニク自体にはビタミンB6が非常に多く含まれています。またこのアリシンは殺菌力・抗菌力に優れているため様々な疾病予防に愛用されています。

 更に性ホルモンを刺激するという点から、滋養強壮という観点からの効果も期待されます。

 そのニンニクを発酵させることで、臭気成分のアリシンはSーアリルシステインというアミノ酸へと変化し、独特の嫌な臭いがなくなります。このSーアリルシステインは生のニンニクにはあまり含まれないもので、更にパワーアップした含流アミノ酸といえるでしょう。

 突き詰めていくと、硫黄(S)を含んだ含流アミノ酸がテストステロンを増やすことにつながっていくようです。もちろん発酵させたニンニクがドーピングの対象になることはありません。

 世界中で古くから民間薬として利用されてきたニンニクですが、その薬理作用にはまだまだ解明されていない部分が多いようです。減量期、疲労時、風邪の予防などにも、発酵ニンニクを検討してみてはいかがでしょうか。


江崎グリコ株式会社スポーツフーズ営業部
桑原弘樹
[ 月刊ボディビルディング 2013年9月号 ]

Recommend