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カルシウムが不足すると…<カルシウムパラドックス>

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掲載日:2017.08.31
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カルシウムとマグネシウムはブラザーミネラル
マグネシウムの話が出たところで、少しマグネシウムの話をします。

血中のカルシウム量が低下すると、骨の中のカルシウムが出て来て、筋肉細胞に入り込みます。これが止まらずに血中平滑筋や骨格筋肉にカルシウムがどんどん入り込むと、血菅は縮み易くなり、肩こりや痙攣、高血圧の原因となります。ですから、血中のカルシウム量が低下しない様に、カルシウムをどんどん食べましょう。口から入ったカルシウムが増えれば、骨から出す必要は無くなります。

また、ストレス負荷などでカルシウムとマグネシウムのバランスが乱れると、ほとんどのマグネシウムは細胞から流れ出し、そのマグネシウムを失った組織細胞にカルシウムが侵入します。ストレスで高血圧が起こるのは、こういう理由です。この様に、カルシウムとマグネシウムはいつもパランスを保ちながら、体内の調節を行っています。そのため、ブラザー(兄弟)ミネラルと言います。

カルシウムパラドックス
カルシウムの摂取が不足すると、血液中のカルシウム濃度が下がります。カルシウムは、“動かす"という大きな働きがあります。皆さんが寝ている聞も心臓を動かしてくれているのは、カルシウムの大きな仕事です。

血中カルシウム濃度が下がって心臓が止まってしまっては困りますから、血中カルシウム濃度は常に一定に保つ様に、細かなチェックシステムがあります。では、足りないカルシウムはどこから持ってくるのでしょうか? そう、貯金してある骨から出すのです。先ほどのマグネシウムのところをしっかり読んでいた人は、答えが書いてありましたから、分かりましたよね。

さて、話を戻します。でも、足りないといって、しょっちゅう貯金を使っては、貯金は目減りしてしまいますね。ホルモンがカルシウムの出納をチェックして、使い過ぎないようにしているのですが、女性の場合は女性ホルモンが行います。閉経すると女性ホルモンは出にくくなりますから、女性は閉経後のカルシウム摂取量を増やさないと、気づかない内に骨からどんどんカルシウムを使ってしまっているかも知れません。これが骨粗鬆症です。

また、更年期になってエストロゲンという女性ホルモンの分泌が減ると、骨の吸収と形成の連携が乱され、破骨細胞(骨を壊す細胞)の作用が異常に亢進されます。腰のまがったおじいさんより、腰の曲がったおばあさんの方が多いのは、そういう訳です。

血中カルシウム濃度が下がった時、骨から取り出し血中に補填されたカルシウムは、骨に戻す事が出来ません。一度切り崩した定期預金を、“使っただけ戻すから継続して"と言っても出来ないのと同じです。骨に戻せないカルシウムは、血中をぐるぐる巡って、柔らかい組織に溜まります。軟骨に溜まれば関節痛、血管の内壁にくっ付けば動脈硬化の原因になります。このように、カルシウムは足りないはずなのに、体内にカルシウムが溢れたかのような状態になる事を、カルシウムパラドックスと言います。昔は、このような状態を発見した医師が“あなたはカルシウムの摂り過ぎだから、カルシウムの多い食品を余り食べ過ぎないように"と言う事もあったようです。今ならそれは間違いだと、皆さんは良く分かりますね。

骨とカルシウム
骨は、骨基質(タン白質)と骨塩(カルシウムとリン)から成り立っています。特に骨基質の材料には、動物性のタン白質が必要です。

世の中にある色々な食事法の中には、動物性タン白質を極端に制限する方法もある様ですが、このような勉強をしていると、私はそれをとても疑問に感じます。

骨は、主にコラーゲンやコンドロムコタン白で出来ている骨基質に、カルシウムとリン酸塩が骨塩(ヒドロキシアパタイトという水酸化物)として沈着して作られます。コンクリートの柱に強化タイルを貼った様な構造です。骨カルシウムは、骨格を作る他に、カルシウムやリンのストッカーでもあります。血中カルシウムが低下すると、副甲状腺ホルモンが中心となって骨からカルシウムを引き出して来ます。これを骨吸収と言います。吸収といいながら、実は骨からカルシウムが溶け出しているのですから、余り危機感の無いネーミングですね。
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反対にカルシウムが補給され充足すると、その一部はまた、骨塩の形成に使われます。これを骨形成と言います。

皆さんは、骨は生まれた時から同じ骨がずっと変わらずにあると思っているかも知れませんが、骨吸収と骨形成は、いつも同じくらいずつ作り替えられています。この、作ったり壊したりする事を、スクラップドアンドビルドと言い、スクラップド(壊す)細胞を破骨細胞、ビルド(作る)細胞を骨芽細胞と言います。成人でも全骨格の3~5%は常にスクラップドアンドビルドが繰り返されています。
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骨芽細胞は、いつもある訳ではなく、骨の幹細胞が、作り替えが必要な時だけ出て来て、分化(変身) して出来ます。他にもビタミンDやビタミンKなどが深く関わっています。分化といえば、それを誘導してくれる分化誘導ビタミンはビタミンAです。この様に、骨を作り、強化するには、様々な栄養素が必要ですが、意外に知られていません。

カルシウムの必要量
毎日失われるカルシウムは、糞便中に約100mg、尿中に約130mg、汗による排出で約30mg、合計すると一日で約260mg無くなります。腸からの吸収率を約50%と考えると、理論上は一日520mgの摂取で足りる事になります。日本では一日の所要量は600mgですが、カルシウムの腸管吸収率が50%という根拠はありません。あくまで理論上の話です。

日本の土壌は多くが火山灰地のため、カルシウムの含有量は少ないと言われています。そういう土壌で育つ野菜や果物のカルシウム含有量も当然、他国より少なく、実際のととろ、カルシウムは日本人に最も不足しがちなミネラルとなっています。ですから、所要量の600mgすら充足するのは実は簡単ではないのです。

所要量とは、あくまで必要最少量です。多くの研究者達は、健康レベルの維持には800mg必要だと言っています。しかし、トップアスリートを目指す皆さんなら、やはり1000mg以上摂るべきと、私は考えます。

カルシウムを一日1000mg摂取するには通常の食事に加えて、サプリメントで特に補給したい栄養素です。

★成長期
健康維持と別に、骨の成長に必要です。発育維持量は男子が13-14歳、女子が10-15歳がピークとなります。乙の時、男子は900mg、女子は700mgで最高所要量を示します。補給の目安は、300-400mgですが、ナトリウムやリンを多く含んだジャンクフード(スナック菓子など)を食べると、カルシウムの吸収率は著しく低下します。

学校帰りにお腹が空いたからといって、コンビニで菓子パンやジュースを食べていては、カルシウムはどんどん奪われてしまうのです。

★成人
骨量がピークに達する25-30歳までに、出来るだけ多くのカルシウムを骨に貯蔵しておく事が、骨粗鬆症を引き起こさない為に重要です。

ピークに達した後、骨量はしばらく安定していますが、40-50歳頃からl年に0.3-0.5%ずつ減少して行きます。特に女性は、閉経前期から10年聞は、1年に2%-5%という早さで失われて行きます。男性の必要量プラス500mgくらいの上乗せ摂取が必要でしょう。

骨量の維持には、男性は男性ホルモン、女性は女性ホルモンが関係します。また、アルコール、コーヒーの過飲、運動不足、高カロリー摂取などの生活習慣も関係しますので、心当たりの方は、今からでも修正を試みて下さい。

老人性骨粗鬆症は大腿骨頭部骨折や脊柱圧迫骨折の危険が高まります。閉経後の女性は特に注意して下さい。

★妊婦
妊娠中は、母胎から胎児へ、総量として約30mgのカルシウムが移行します。出産後の母乳には一日約230mgのカルシウムが分泌されます。

ですから、ご自身の健康維持量に加えて、胎児の必要量、そして出産、母乳に備えてカルシウムを備蓄しておく必要があります。アメリカ国立衛生研究所(NH) は、1996年の勧告で、妊婦は一日1200-1500mを確保する事が望ましいと言っています。そのためには、普通の食事だけでは確保出来ないので、カルシウム補給剤やサプリメントなども使うようにと指導しています。

ある歯科医の先生から聞いたことがありますが、「妊娠すると歯が悪くなる」と言います。妊娠、出産を経験された方は、ご自身の身体でよくご存知だと思います。そのくらい、胎児にはたくさんのカルシウムが必要なのです。

妊婦高血圧が懸念される方は、一日2gの摂取を心がけて下さい。

★糖尿病
糖尿病は、排池される尿中に糖が含まれています。このような尿の事を、高浸透圧尿(こうしんとうあつにょう)と言います。高浸透圧尿は、糖が邪魔をして電気が通りにくくなっています。

身体の中で使われ、腎臓から膀胱に尿をためる時に通る管を、腎尿細管(じんにょうさいかん)と言います。腎尿細管では、様々な栄養素をリサイクルするために、電気的な濾過をします。しかし糖尿病の方の高浸透圧尿は電気を通しませんから、濾過出来ずに使い捨てされてしまいます。この、栄養タップリの尿には、当然カルシウムも含まれています。糖尿病の期間が長引けば長引く程、栄養欠損は深刻になって行きます。

これで糖尿病の方は、アスリート並みに栄養が必要だと、想像出来ますね。

糖尿病だけでなく、慢性関節リウマチ、大腸ガン、認知症、腎結石など、カルシウムが関係する病気は多いです。
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最後に
カルシウムは“動かす"という仕事をする大事な栄養素である性質上、血中濃度は常に一定を保っています(足りなくなったら、骨から出して使います)。ですから、血液検査データでカルシウムの値は、いつも殆ど変わりません。では、カルシウムの不足を知るデータは、どれなのでしょう?

骨の状態を知るOC(オステオカルシン)やucOC (低カルボキシ化オステオカルシン)などを見るのも一つですが、余り調べない数値かも知れません。ALB(アルブミン)は、カルシウムと連動して下がりますが、実はアルブミンが下がって来るのは、カルシウムがかなり不足してからで、時間差があります。

一番分かり易いのは、ミネラルの数値の中で、一番敏感に反応するカリウムを見る事でしょう。カリウムが不足していたら、カリウムだけでなく、ミネラル全体、もちろんカルシウムも不足していると考え、早めの摂取を心掛けて下さい。

また、カルシウムは吸収が悪い栄養素の一つですから、多め、多めの摂取をする事が大切です。
  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901~1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ アスリートのための分子栄養学 ]

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