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BCAAとEAA ~BCAAの効果~

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掲載日:2019.02.01
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退屈な話が続きましたが、いよいよアミノ酸それぞれの解説をしていくことにしましょう。まずはBCAAからです。

BCAAとはなにか

これは「バリン」と「ロイシン」、「イソロイシン」の3つのアミノ酸を指します。これらのアミノ酸は側鎖が全て枝分かれ(BranchedChain)した構造を持っていますので、"Branched Chain Amino Acids"の頭文字をとって、BCAAと呼ぶことになっています。

芳香族アミノ酸(チロシンやフェニルアラニン、トリプトファン)が肝臓で代謝されるのに対し、BCAAは主に筋肉で代謝されます。
なお筋タンパクの16%がBCAAを構成成分としており、これは1kgの筋肉あたり約32gとなります。(※88)

アミノ酸プールにもBCAAは存在していますが、かなりの低濃度であり(約650uM)、筋肉1kgあたり0.1gにもなりません。また血中のBCAA濃度も約400uM程度に過ぎません。

しかしサプリメントとしてBCAAを摂取すると、30分程度で血中濃度はピークに達します。5gのBCAAを摂取することで、通常の320%もの血中濃度になり、2時間後には元のレベルに戻ります。(※89)
この急激な濃度変化により、BCAAは様々な生理作用を示すと考えられています。

摂取したBCAAは分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素(BCAT)によって分岐鎖αケト酸になります。そして分岐鎖αケト酸は分岐鎖αケト酸脱水素酵素複合体(BCKDC)によってCoA化合物となり、それがアセチルCoAやアセト酢酸、スクシニルCoAになります。(※90)

BCAAの代謝について、こちらに載せておきましょう。
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BCAAの効果

さて、BCAAにはどのような効果があるのでしょうか。箇条書きで説明していきます。

1.筋肉を増やす

前述しましたが、タンパク合成を活性化するmTORシグナル伝達経路をBCAA(特にロイシン)が活性化します。(※91)

またロイシンはインスリン分泌も刺激して、こちらの方向からもタンパク合成を高めます。(※92)さらにミオスタチンを減らすことにより筋肉を増やすという効果も認められています。(※93)

またロイシンはリソソーム系におけるオートファゴソーム形成の阻害や、タンパク分解酵素であるプロテアソームを阻害してタンパク分解を防ぐ作用もあり(※94、※95)、特に低栄養児における筋肉の減少を防ぐ効果が知られています。

12名の男子大学生を対象にBCAAを一日12g摂取させてハードな水泳を行わせた実験では、筋分解の指標である尿素窒素やトリメチルヒスチジン、ヒドロキシプロリンのレベルが顕著に低下していました。(96)

つまりBCAAはタンパク合成を高め、同時にタンパク分解を減少させることによって筋肉を増やしてくれるのです。

2.持久力を増やす

炭水化物とBCAA、カフェインを配合したドリンクを飲んで2時間のランニングを行った実験において、通常よりも高いパフォーマンスを発揮することができたという報告があります。(※97)

また70%VO2maxでサイクリングを行った研究ではBCAA摂取によって運動後の筋ダメージを明らかに抑えることができています。(※98)

特にグリコーゲンが枯渇した状態では、BCAAが脂肪酸の酸化によるエネルギー合成を高めるため、疲労が起こりにくくなるようです。(※99)

3.体脂肪を減らす

BCAAはダイエットにも役立ちます。40歳から59歳の男女4429名を対象にした調査では、BCAA摂取量が多いと過体重や肥満になりにくいことが示されています。(※100)

また25名のエリートレスラーがダイエットと並行してBCAAを摂取したところ、特に腹部の脂肪を減らすことができたという報告があります。(※101)

高脂肪食マウスの実験ですが、ロイシン摂取量を2倍にしたところ、体重の増加が32%抑制され、褐色および白色脂肪組織、そして筋肉におけるUCP-3の増加に伴う安静時基礎代謝が増加しました。
またインスリン感受性が高まり、グルカゴンや糖新生アミノ酸が減少、さらにLDLコレステロールも低下(27~53%)しています。(※102)

さらにロイシンはmTORを活性化することにより筋タンパクを合成するだけでなく、体内にエネルギーが増加していると感じさせることにより、食欲を減らすことができます。
それだけでなく、満腹ホルモンであるレプチン感受性を高めてレプチンの働きを高めたり、食後のレプチン上昇を調整したりすることにより、食欲を抑える作用があるようです(※103,※104)

4.回復を促進する

BCAAは筋ダメージを急速に回復することにより、トレーニングによる筋肉痛を軽減することができます。(※105、※106、※107)
またBCAAはインスリンの働きを強化することができます。ブドウ糖にホエイプロテインを追加して摂取することにより、エクササイズ後のグリコーゲン回復を促進させることができています。(※108、※109)

5.集中力をアップさせる

血液中にはアルブミンというタンパク質が存在します。
そして普段はアルブミンにアミノ酸のトリプトファンが結合しています。

しかし運動時など、脂肪がエネルギーとして動員されるときは脂肪酸がアルブミンと結合しようとします。するとアルブミンはトリプトファンを離してしまいます。そしてトリプトファンはフリーとなるため、脳に入ることができるようになります。(※110)

脳に入ったトリプトファンはセロトニンとなり、これが精神的な疲労の原因になるという説があります。実際、セロトニン受容体の活性化は筋収縮の発火頻度を低下させるという報告があります。(※111)

BCAAも脳に入ることができるのですが、このときにトリプトファンと同じ運搬体を使います。つまりBCAAを摂取することにより、トリプトファンが脳に入るのを防ぐことができるわけです。そのため、BCAAの摂取は脳内セロトニンを減らし、精神的な疲労を軽減すると言われています。(※112)
なお12名の男性テコンドー選手を対象にした研究や、22名の男女ハンドボール選手を対象にした研究で、BCAAとアルギニンを同時に摂収したところ、非摂取群と比較して顕著にスプリントパフォーマンスの改善や、中枢性疲労が軽減されたという報告もあります。(※113,※114)


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  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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