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ビタミンカスケード

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掲載日:2019.08.08
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三石巌氏の提唱したもう一つの理論が、「ビタミンカスケード」です。
カスケードとは段々滝のことです。ビタミンCの例で解説しましょう。

滝の最上流からビタミンCの水を流していきます。最初の滝で「コラーゲン合成」に水が流れ落ち、次の滝で「インターフェロン合成」に水が流れ落ち、三番目の滝で「活性酸素除去」、4番目の滝で「鉄の吸収促進」に水が流れ落ちていきます。

すると最後のほうの滝には、まだまだ「アルコール分解」や「副腎皮質ホルモン合成」があるのに、そちらのほうにはもう流れる水が残っていません。
となると、この人はケガをしにくく(コラーゲン)、風邪や癌にかかりにくい(インターフェロン)のに、アルコールを分解できず、副腎皮質ホルモンを合成できないため、お酒やストレスに弱いということになります。

人によっては、最初の滝に「アルコール分解」や「副腎皮質ホルモン合成」の滝があるかもしれません。
その人はアルコールやストレスには強いけれど、ケガや風邪、癌などの問題を抱えることになります。
この場合も、大量にビタミンを摂取することで解決することができます。つまりカスケードの最下流の滝にまで、十分水が流れ込むようにするということです。

三石巌氏は、1961年に白内障の診断を受けました。
医師からは失明は免れないと言われたのですが、だからといって黙っているわけにはいきません。
そして文献をあさり、白内障はビタミンCの不足が関係していると発見しました。

その時に三石氏が考えたのは、なぜ自分の妻は白内障になっていないのに、自分だけなったのかということです。
同じようなものを食べているのだから、ビタミンCの摂取量も同じくらいのはずです。

そこで「個人差」の原因を考えるに至り、ビタミンCの注射を続けて、自力で失明を免れることになったのです。それから約半世紀が過ぎ去り、国内でのコホート研究で「ビタミンCの摂取量が多いほど、白内障になりにくい」ということが示されました。(※2)

2007年にようやく発表されたこの論文では「欧米ではビタミンCと白内障の関連が報告されていたが、日本人にも効果があるかどうかわかっていなかった。

この追跡研究で、日本人においてもその可能性があると分かった」とのんきなことを言っています。

※2: Prospective study showing that dietary vitamin C reduced the risk of age-related cataracts in a middle-aged Japanese population. Eur J Nutr. 2007 Mar; 46( 2): 118-24.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]