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脂溶性ビタミンの大量摂取について

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掲載日:2019.08.23
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水溶性ビタミンはすぐに体外に排出されますが、脂溶性ビタミンは体内に留まります。となると、なんらかの悪影響がありそうです。まずビタミンEからいきましょう。

ビタミンEには後述のとおり、全部で8つの種類があります。
しかしこの中のほとんどのものは水溶性ビタミンと同じように、余剰分はすぐに排出されてしまうため、副作用の心配は全くありません。

ビタミンEの中でも最も活性の高いD-α-トコフェロールはα-TTPと呼ばれるタンパク質と結合して体内に貯留しますが、厚生労働省の報告によっても、ビタミンEの過剰摂取による弊害はほとんど認められていません。
よってビタミンEについては問題なしです。

次にビタミンDです。
実はビタミンDにはホルモン様作用があるため、他のビタミンとはちょっと性質が異なっているのです。

またビタミンDはカルシウムの吸収を高める作用もあるため、長期に渡って摂り過ぎると高カルシウム血症を起こすこともあります。
ただし実際にはビタミンDは不足していることが多く、またビタミンDを補うことによってさまざまな健康への効果が出てくることも分かってきています。

現時点ではサプリメントとしてビタミンDを摂取することが欧米ではトレンドとなっており、特に副作用の問題は出ていません。詳しくは後述します。

ビタミンA

最後にビタミンAです。これがもっとも議論の出てくるところではないでしょうか。

フィンランドで行われた有名な研究によれば、喫煙者に限り、βカロテン(ビタミンAの前駆体)を摂取することで死亡率が高まったとされています。

しかし一般にガンというものは数十年かけて大きくなっていくものです。
フィンランドの研究では調査期間が5~8年ですから、βカロテンのサプリメントを摂取したときには既にガン細胞が体内にあったのかもしれません。

またβカロテンは抗酸化物質となりますが、そのときにビタミンCやEと一緒に働きます。
しかし喫煙者は体内のビタミンCが少ないため、βカロテン自体が弱い活性酸素になってしまう場合があるのです。

ビタミンAについては、厚生労働省の報告では、「経口あるいは筋肉注射で適切に使用する場合、おそらく安全だ」とされています。

また一時的になにかの間違いで大量摂取してしまった場合もそれほど害はなく、むしろ大量を長期に渡って毎日摂取した場合に害が顕れるとされています。

よってビタミンAの場合も、普通にラベルに書いてある量を摂取するのならば、特に過剰性の心配はしなくていいと思われます。これについても詳しくは後述します。
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]