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ナイアシンの健康への効果

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掲載日:2019.10.24
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ナイアシンには善玉コレステロール(HDL)を増やす作用があるため、脂質異常症の治療に使われることがあります。

ナイアシンを一日に2~4g、コレステロール低下薬と同時に摂取したところ、心臓血管系イベントの発症率が低下しています。(※13)

また心筋梗塞の既往がある男性にナイアシンを一日3g摂取させたところ、死亡率の低下が認められました。(※14)

ただしこれだけの量を摂取すると、肝臓に負担がかかることが問題となります。

ナイアシンとGPR109A

こうした効果は、ナイアシンが「GPR109A」という受容体と結合することによって得られます。

この受容体は腸でつくられる酪酸の受容体でもありますが、これには炎症を抑制する作用があるのです。

動脈硬化の原因の一つは、血管の炎症です。
血管に炎症が起こると、そこに悪玉コレステロール(LDL)が入り込み、活性酸素の影響を受けて酸化LDLとなります。

これは「異物」ですので、免疫細胞である「単球」が働き、マクロファージとなって自分の中に取り込んでいきます。
そして大量の酸化LDLを飲み込んだマクロファージが死んでしまうとアテロームプラークとなり、血管にこびりついてしまいます。
これが動脈硬化の原因の一つです。

またアテロームプラークが破れると血栓ができ、血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。

このときGPR109Aは血管の炎症を防ぐことによって、動脈硬化を予防してくれるのです。
またGPR109Aは皮膚のランゲルハンス細胞にも存在します。ナイアシンがこれと結合すると血流が促進され、ナイアシンフラッシュ(顔が真っ赤になる)ことがあります。

※13: Simvastatin and niacin, antioxidant vitamins, or the combination for the prevention of coronary disease. N Engl J Med. 2001 Nov 29; 345( 22): 1583-92.

※14: Fifteen year mortality in Coronary Drug Project patients: long-term benefit with niacin. J Am Coll Cardiol. 1986 Dec; 8( 6): 1245-55.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]