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葉酸とホモシステインの効果

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掲載日:2019.11.21
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葉酸

葉酸はホウレンソウから発見されたため、この名前が付いています。
主に植物性食品に含まれますが、レバーなどにも含まれます。
アミノ酸やビタミンの代謝、タンパク質の生合成に関与しますが、特に重要なのは「ホモシステイン」の代謝です。
ここまでに何度か出てきたホモシステイン、これはいったいなんなのでしょうか?

ホモシステインとは

ホモシステインは必須アミノ酸のメチオニンから生まれる物質で、体内に存在するものです。
しかしこれが大量にできてしまうと、問題を引き起こすことがわかっています。
ホモシステインが血中に大量に存在すると、血液中の酸素と反応して、酸化を進めてしまうのです。
このときに活性酸素が発生し、これが血管にキズをつけてしまいます。


また過剰のホモシステインはホモシステイン・チオラクトンという物質に変わり、これがLDLとくっついてホモシスタミドという変性したLDLをつくってしまいます。

これもやはり異物として認識され、白血球に食べられて泡沫細胞となり、血管壁にくっついてしまうのです。
さらに泡沫細胞は血管壁の細胞を活性酸素が蓄積しやすい状態にしてしまい、細胞が傷害を引き起こします。

なお血中ホモシステイン濃度が高いと、アルツハイマー病になるリスクが高くなるという報告も出てきています。(※36)ホモシステインがつくられるときの流れを大雑把にみると、このような感じになります。

メチオニン→ホモシステイン→システイン→尿として排出

このとき、一度できたホモシステインはビタミンB12と葉酸の働きによってメチオニンに戻ります。
またホモシステインがシステインになるときに、ビタミンB6が必要とされます。
ですから十分なビタミンB12と葉酸、B6を摂取しておけば、ホモシステインが過剰になることはなく、動脈硬化にもなりにくくなるのです。
一日に400~800μgの葉酸摂取は脳卒中のリスクを減らし(※37)、B6やB12との組み合わせは血管の弾力を改善し(※38)、冠動脈疾患のリスクを低下させるようです。(※39)

他にシイタケに含まれるエリダデニン、ウコンとして知られるクルクミンなどもホモシステインを減らすのに効果的だとされています。

葉酸をあまりにも大量に摂取すると葉酸過敏症(蕁麻疹やかゆみ)を引き起こしたり、亜鉛の吸収阻害を引き起こしたりすることがありますが、通常の量(1mg以下)ならば全く問題はありません。

厚生労働省は胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減するため、サプリメントとして葉酸を摂取することを勧めています。(妊産婦のための食生活指針)この場合、一日に400~800μgを摂取するといいでしょう。

※37: Efficacy of folic acid supplementation in stroke prevention: new insight from a meta-analysis.nt J Clin Pract. 2012 Jun; 66( 6): 544-51. doi: 10. 1111/ j. 1742-1241. 2012. 02929. x.

※38: Folic acid improves vascular reactivity in humans: a meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Clin Nutr. 2007 Sep; 86( 3): 610-7.

※39: Dietary folate and vitamin b 6 and B 12 intake in relation to mortality from cardiovascular diseases: Japan collaborative cohort study.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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