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〝かきフライ定食〟

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[ 月刊ボディビルディング 1973年6月号 ]
掲載日:2017.10.23
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<悲しきサラリーマン>

 つくづくサラリーマンの身がなさけなくなる瞬間。――その1,おしくらまんじゅうしながら首都圏の酷電に乗りこむとき。発車のベルが鳴り終わって,両側からドアが閉まってくるのをこじあけて割りこむすさまじさ。小学校の運動会じゃあるまいし,と腹立たしいが,乗らないことには職場へ到達できぬ。かくして体力づくりトレーニングの第一コースがこうして始まる。――その2,昼休みにゆく飲食店の混雑。間口の小さな店に入りこみ,前の人たちが食べているのをにらみつけて,うしろに立つ。空席があくと先を競って座らねばならぬ。食べる方も,立って待つ側もイヤな気分で,ちっともおいしくない。――その3,抜けるような青空,ギラギラと強い太陽が照りつけているのに,室内の仕事にしばりつけられているとき。「自由な身になって,好きなときにタップリ日光浴できたらなあ」としみじみうらめしく,わが身がなさけなくなる。

<かきフライ定食は合格>

 物価上昇の波はとまるところを知らず,昼めし代に300~400円出しても美容食ぐらいのボリュームしか食べられないのは残念だが,スポーツマンの体力づくりにかろうじて合格するものといえば,かきフライ定食・トンカツ定食・しょうが焼き肉定食ぐらいなもの。
 西洋のことわざに「Rのつかない月はカキを食べるな」という言葉がありMAY,JUNE,……というような月のカキは中毒を起こす,というのだが,これは8月ごろカキが産卵するため,そのころになると生殖巣が成熟し生殖巣は毒物を持ちやすいこと,および生殖巣を成熟させるために体の栄養分が消費され,まずくなるからと説明されている。
 しかしながら,この古い概念は捨ててしまってよい。近代的な冷凍システムが全国的に整備された結果,カキは冬のおいしい季節にビニール袋にパックされ,マイナス30度の低温に保存される。冷凍トラックでスーパー等に運ばれ,消費者は一年中,むき身の大きなカキをおいしく食べられるわけだ。

<スタミナの秘密>

 カキは貝類の王者。栄養分とスタミナ源がいちばん豊富である。まずタンパク質の多いこと。水分を除いた固形分のほとんどがタンパク質で,リジン・ヒスチジン等の発育成長に役立つアミノ酸が多い。逆に動脈硬化等の原因になる脂肪がほとんどないので「高タンパク低脂肪」の理想食品といえようおまけに鉄・銅・マンガン・ヨード・りん・カルシウム・ビタミンA・B1・B2・B12・Cなどに富み,しかも,どれも消化吸収されやすくなっているので,貧血・肝臓病・病後の体力づくり幼児・老人・スポーツマンにピッタリだ。
 ついでながらカキの種類と養殖の方法を紹介しよう。日本にはマガキ・ナガカキ・ケガキ・スミノエガキ・イタボガキ等,種類が多く,瀬戸内海・松島湾・伊勢湾・有明海は有名な産地。
 海外ではヨーロッパ・アメリカ・オーストラリア・中国など,ほとんど全地球上でカキが養殖されている。
 養殖法は,海中にカキのマイホームとなる貝穀,ソダ等をセットし,その中にカキの幼卵をうえつける。半年ぐらいで成長してくるので,たいていの場合,場所を移しかえる。カキのえさは海中のプランクトンや珪藻類。海のスタミナ源をたっぷり食べているわけである。

<うまい食べ方>

 外国では穀のまま,レモン汁をふりかけて,塩からい,グシャグシャした生ガキを食べるのが一般的だが,日本ではやはりフライかシチュー,かす汁がポピュラー。そこでかきフライのおいしい作り方を披露しよう。
 買ってきたカキをザルにあけて,塩水の中で2回洗う。表面の汚れがとれて,まっ白になる。水洗いのあと,フキンでよく水分をとり,小麦粉をまぶす。といた卵にジャボンとつけて,パン粉のコロモをつける。フライパンで油をわかし170度くらいで約2分間フライする。キャベツ・レタス・レモンなどをたっぶり使うと,酸――アルカリのバランスがとれてちょうどよい。ソースのかわりにトマトケチャップで食べてもなかなかおいしい。
 なお,フライにした場合でも,カキの内部は90度くらいなので,生きた菌は完全に死んでいない。中毒を防ぐために,その日のフライはその日に食べた方がよい。
 かきフライを使ったメニュー例と,カロリー計算は次のとおり。
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[ 月刊ボディビルディング 1973年6月号 ]

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