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その他アミノ酸~非必須アミノ酸 グリシン、システイン~

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掲載日:2019.05.16
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グリシン

では非必須アミノ酸にいきましょう。
まずはグリシンです。
これは最も構造が単純なアミノ酸で、体内ではセリンからつくられます。
アスリートにとって重要なのは、グリシンはクレアチンやコラーゲンの材料となることでしょう。
またグルタチオンの材料にもなります。
さらに抑制性の神経伝達物質としても働きます。
グリシンを摂取することにより、癌の食欲減少による筋肉量減少を防いだという報告があります。(※124)

他にグリシンの重要な作用として、睡眠の改善が挙げられます。
「グリナ」という名前で商品化されていますが、グリシンには視交叉上核におけるNMDAレセプターを活性化し、血管を拡張することにより睡眠を改善することが分かっています。(※125)

またノンレム睡眠に至るまでの時間を短くし、さらにノンレムノンレム睡眠とレム睡眠のリズムを改善し、中途覚醒も減らします。(※126)

加えて抹消の血流量が増加して深部体温の低下が促され、睡眠を促進します。(※127)
健康な男性10人に3日間に渡って睡眠時間を通常より25%削ってもらい、代わりに寝る前にグリシンを3g摂取させた研究があります。(※128)

その結果、疲労や睡眠不足からくるVAS(視覚的評価スケール)の値が改善し、またパソコンを使うパフォーマンスも改善しました。
なおメラトニンや時計遺伝子における作用はなかったようです。

起床時の疲労感軽減や気分の改善も観察され(※129)、また日中に投与されても眠くなるようなことはなく、大量に摂取しても(一日31gなど)副作用は認められていません。(※130)

またグリシンはグルタチオンの材料となるため抗炎症作用や抗酸化作用があり、ロイシンと同時に摂取することで特に体内に炎症がある場合におけるタンパク同化作用を増強させる効果があるようです。(※131)
研究者はロイシン:グリシンを1:2の割合で摂取することを勧めています。

システイン

次にシステインです。
この含硫アミノ酸は前編でホエイプロテインのメリットとして何度か言及してきました。
なおシステインが2分子結合するとシスチンになります。

血漿中のシステイン量が全身のタンパク質代謝の制御剤となっている可能性があり、血漿中に存在する非必須アミノ酸の量は、肝臓におけるシステイン(とシスチン)の硫酸塩への異化を通じて制御されているようです。

アミノ酸が分解されて尿素が産生されると、血漿中アミノ酸レベルが低下し、そして異化反応が起こります。
異化によりシステイン(とシスチン)が放出され、それをシグナルとして肝臓での尿素産生がダウンレギュレート(低下)されるようです。
特に癌のように異化によって筋肉が減る場合、システインがそれを防ぐ可能性があります。(※132,※133)


またシステインの効果で有名なのが美白作用です。これはチロシナーゼという酵素を阻害して、チロシンからメラニン色素がつくられるのを邪魔する作用を持っています。(※134)国内ではシステインは「医薬部外品」となっており、美白のためのシステイン摂取量としては一日に240mg程度となっています。

しかしホエイプロテインを一日に100gも飲めば、その中に含まれるシステインは何と3300mgにもなります。
ホエイを飲めば、美白にも良いということです。

なお前編で紹介しましたが、システインにはSH基(チオール基)があり、重金属の解毒などを受け持ちます。
※124: Glycine administration attenuates skeletal muscle wasting in a mouse model of cancer cachexia. Clin Nutr. 2014 Jun; 33( 3): 448-58. doi: 10. 1016/ j. clnu. 2013. 06. 013. Epub 2013 Jun 26.

※125: The sleep-promoting and hypothermic effects of glycine are mediated by NMDA receptors in the suprachiasmatic nucleus. Neuropsychopharmacology. 2015 May; 40( 6): 1405-16. doi: 10. 1038/ npp. 2014. 326. Epub 2014 Dec 23.

※126: Glycine ingestion improves subjective sleep quality in human volunteers, correlating with polysomnographic changes Sleep Biol. Rhythms 5, 126? 13110. 1111/ j. 1479-8425. 2007. 00262. x

※127: 第 32 回 日本 睡眠 学会 学術 集会 (2007)

※128: The effects of glycine on subjective daytime performance in partially sleep-restricted healthy volunteers.Front Neurol. 2012 Apr 18; 3: 61. doi: 10. 3389/ fneur. 2012. 00061. eCollection 2012.
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  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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