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ビタミンDの作用と合成

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掲載日:2020.02.13
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ビタミンDについて:脂に溶けるビタミン。食品で摂取するほか、日光の照射によっても体内でつくられる。

・カラダでの主な作用:カルシウムの吸収を促進する。また細胞の分化を誘導し、ガンの発生を妨げる可能性がある。

・不足すると:カルシウムの吸収が悪くなる。筋力が低下する。

・摂り過ぎると:高カルシウム血症を引き起こす。食欲不振や腎臓の障害を起こす可能性。

・多く含む食品:カツオ塩辛、アンキモ、レバー、卵、牛乳、キノコ類

ビタミンDは植物に多く含まれるビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と動物に多く含まれるビタミンD3(コレカルシフェロール)の総称です。

また皮膚に存在する7-デヒドロコレステロールに紫外線が当たると、ビタミンD3ができます。
食事や紫外線によって得られたビタミンD3は肝臓に行って水酸化され、25-OH-Dになります。体内のビタミンDの量を評価するときは、これが指標となります。

そして25-OH-Dはさらに腎臓に行って水酸化され、「カルシトリオール」となり、活性型ビタミンDとなります。

活性型ビタミンDはカルシウムの吸収を促進するほか、ビタミンD受容体(VDR)と結合します。
活性型ビタミンDがVDRと結合すると、βカテニンの転写活性を抑制したり、ヘッジホッグシグナル伝達系を阻害したりすることにより、抗癌作用が発揮されます。

ビタミンDの摂取量

こういった作用は、どれくらいのビタミンDを摂取すれば得られるのでしょうか。厚生労働省によれば、日本人が一日に摂取するべきビタミンDは5.5μg。

なおビタミンDは「IU」という単位で表示されることもあって、μgをIUに直すためには40を掛けます。つまり5.5μgだったら220IUです。

厚生労働省による一日の上限摂取量(副作用の出ない安全な上限の量)は50μg(2000IU)となっています。
しかし、これでは少なすぎるのです。ビタミンDは太陽の光によって体内で合成されます。

では、太陽の光が当たらなかったらどうでしょう。
実は、潜水艦の乗務員を対象にした研究があります。

その結果、一日に10μg(400IU)を摂取しても、適正なビタミンDの血中濃度を維持できていなかったとのことでした。(※81)
つまり太陽の光に当たらない場合、5.5μg(220IU)では全然足りないのです。

ちなみにビタミンDを合成するのはドルノ線といって、UV-Bと呼ばれる線です。
これは日焼けのときに肌を赤くしたり、皮がむけてしまったりする原因になりますので、日焼けサロンではUV-Bは極力減らされており、代わりにUV-Aという線が多くなっています。ですから日焼けサロンに行っても、ビタミンDの合成は期待できません。

余談ですが、UV-Bに比べてUV-Aは皮膚の奥深くまで浸透するため、皮膚がんになりやすいとも言われています。

最近の報告では、北緯34度線(瀬戸内海のあたり)を超えると(それより北だと)、UV-Bが少ないため、ビタミンDの合成が通常の半分以下に低下するとも言われています。

ちなみにアメリカでのビタミンD摂取推奨量は、一日に15μg(600IU)です。日本の約3倍。また上限摂取量は一日に100μg(4000IU)となっています。

※81: Vitamin D supplementation in underway submariners. Aviat Space Environ Med. 2005 Jun; 76( 6): 569-75.

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  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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