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2015年ジャパンオープン男子優勝 井上裕章

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.05.09
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選抜大会、アジア本戦と連覇し、飛ぶ鳥落とす勢いの井上選手は、ついに激戦ジャパンオープンまで制した。“魂の男”井上は全身全霊を今シーズンにかけて気迫で押し切った! この男の下剋上は止まらない!

――― ジャパンオープン優勝おめでとう! 今年は出る大会全て優勝だったわけだけど、まず選抜大会の丁度一週間前に月ボの取材で俺がジムを伺った時、まだ方向性も決まらず路頭に迷っていてアドバイスをして選抜大会は見事優勝したわけだけど、何か自分の中で変わった事はあった?

井上 まず、言われた事を一つ一つ実行する事に全く迷いはありませんでした。師匠の言葉一つ一つに説得力かあり、すべてを納得する事で不思議とスーと自分の中に入って行きました。選抜大会までの一週間はとても長く、そしてやらなければいけない事が沢山あり、短かい時間でその言われた事が終わった時やりきった充実感と達成感でいっぱいでした。正にいい意味での晴天の霹靂でした。言われた事ができた事でやりきった充実感でワクワクしながら仙台に向かったのです。そして会場では片川さんとかが凄い仕上がりで「やべぇー」と思ったんですけど、やりきった充実感は揺るぎなく俺もいけるかもしれないという手ごたえを強く感じました。そのいけるかもと思ったのは自分のトレーニングの中で、パンプしてないのに張りがあるというか、カーボが体内に行き渡る感覚を、師匠から言われた正にその感覚を感じていたからです。その域に達した実感したからです。この感覚により、もし大会で勝てなかったとしても成長した自分をしっかりと認識しました。

――― その中で大会中に優勝できると確信はあった?

井上 いいえ、片川さんもとてもいい仕上がりでしたし、他の選手もすごくよく見えたので不安はありました。自分はクラシックだけなので、クラス別を見学していた時に谷澤さんも良く仕上がっていたし片川さんも素直に良いなあと、すこし弱気になりました。仕上がりも良かったけど隙がなかったんですよ、でも僕も言われた事をやりきりましたから仕上がっているはずだと自分に言い聞かせて後はどう評価されるのか心配半分、楽しみ半分でした。検量が終わってみんながいろいろ食べてるわけですよ。もう腹減って、あの時本当に自分が極限状態でやばかった時に師匠に連絡とって師匠が「負けてよければ食え!いままでの苦労が全て水の泡だ!」あの一言でスイッチを入れなおしました。そして「グレープフルーツを食え!」と言われて仙台の街中を一時間以上うろうろと歩きまわりやっと見つけて、ホテルに帰り“これか~”と手に取り食って、本当に生き返りましたよ。普通は半分に切ってスプーンで食べるのに、直接口で貪りくいました。あの飢えた状態を経験したことで仕上がりが変わりました。

――― で蓋を開けてみたらぶっちぎりの優勝だったね。みんな、あの仕上がりには驚いただろうな!そんな好調のままアジア大会でも運良くトイレで会ってアドバイスできて、これも巡り合わせというか良かったよ。

井上 アジア大会は僕自身初の国際大会で、どこの国の選手が何人出てエントリー自体も何人なのか全く情報がないわけですよ。日本でやっているのに不安でしょうがなかったわけですが、そんな時にトイレで師匠とばったり会って心強かったです。

――― 今回は全て偶然と奇跡の中でらびっちょが勝利のスパイラルに入った形だったよな。俺の企業秘密的な調整をやりきった確かな手応え、そしてこの奇跡的なタイミングは俺も本当に怖かったよ。

井上 僕も本当に、そう、神かかり的だと思いましたよ。

――― 優勝の瞬間、俺は涙が出てきたぞ!その後ジャパンオープンの前に、俺に仕上がりの写真を送ってきただろ。見た瞬間“これは行くな!”と思ったよ。しかし他の選手の状態もわからないし、いいところ6番手くらいに来れば上等だと考えていた。表彰台いければ御の字だと思っていたのが優勝だもんな! お前には申し訳ないけど、よくやったよ。ほんとありがとうと言いたいよ!

井上 本当こちらこそですよ。なんでこんなズボズバ当たるか怖かったです。だって僕自身が8番手くらいだと思ってましたから。それがファーストコールだったわけですよ。“あっ! 来ちゃったよ”ってビビりました。今回は嫁と子供が来ていたので「よっしゃ、来たぞ!」って。アジアの時にも師匠に「日本人はおとなしすぎるから、もっともっと自信を持って前に出て行け」 って言われたじゃない
ですか。アジアを経験した事で自信を持って臨めたと思います。セカンドコール、サードコールと終わって自分の位置がなんとなく見えて来てそれでも呼ばれてたんですよ。でも嫁が今みんな迷っているから「上げろ、上げろ! 力を抜くな!」って。それでまたスイッチが入りました。ポーズダウンに入って6位、5位と呼ばれて、次は俺だ次は俺だと思っていたらいつのまにか辻田さん、浅野さんと残り、また次は俺だ次は俺だ思って辻田さんが呼ばれて2人になって、「あ~、2位になって良かった」と思ってましたよ。それが浅野さんが呼ばれてあれ!?俺勝しちゃっちゃったよ。え~俺優勝でいいの? って感じでした。
井上の売りは,何と言ってもこのバリバリ感の仕上がりだ!

井上の売りは,何と言ってもこのバリバリ感の仕上がりだ!

――― でも表彰の時に込み上げてくるものがあっただろ?

井上 それが不思議となかったんですよ、それより驚きと戸惑いがおおきかったです。

――― 俺の調整ってめっちゃきついだろ。俺なんかいつもフラフラだったけど、改めて聞くけどどうだった?臀部はクロワッサンみたいだし、胸はフカヒレみたいになってくるだろ? それでやる気スイッチが入るんだよな!

井上 もう、毎日泣きそうでした。心の支えは師匠との約束、家族の応援、息子に親父の頑張る姿を見せる、ただその一心で乗り切りました。よく最高の身体はそのシーズンは一回だとか言ってましたけど、師匠の言う通り大会を重ねる毎に良くなっていく、ドンドン厳しい仕上がりが感じられました。そこでターボエンジンの加速ポンプが上がった感じがしました。自分はみんなより筋量がない分仕上がりで勝負するしかないので本当に苦しかったです。選抜大会、アジア大会、ジャパンオープンと確実によくなっていったと思います。

――― そうだ。この調整は決して終わりのない通過点なんだ。これで良いなんてない。ボディビルという競技はただ筋肉を鍛えて、それを競うものではないからね。その中にはシンメトリー、仕上がり、ポージング、様々な条件のもとに審査されるのだから自分で決めるものではない。今年のオフは馬鹿食いせずある程度の身体を維持しつつ過ごす事で又、インプルーブできるはずだ。その前に全日本は出るのか?

井上 ビビらずに挑戦しようと思います。せっかくここまできたし調子も上がってきているので何処まで通用するのか確かめてみたいと思います。

――― ここまで来たら波に乗ってチャレンジする事は大事だね。らびっちょ自身、今年大きく変わった事はなんだと思う?

井上 師匠との再会は勿論ですけど、ボティビルを続けてきて今まではそこそこの結果は出ていました。それが一気にタイムマシンに乗って時間が短縮された感じなんですよ。その要因になるのがやはり出会った人々だと思うんです。節目節目でタイミングが良かったです。ジャパンオープンの前に歌手の長渕剛さんが僕のジムに来て、追い込んだトレーニングをしていたんですね。確かに芸能人オーラも凄かったかもしれません。でも、彼のオールナイトライヴ2015m富士山麓に向けてのトレーニングを見て流石プロだな! と勉強させられました。俺も負けてられねーなって。そこで長渕さんと約束したんです。「僕はライヴ見に行けないですけど、ジャパンオープンで決勝に残ったらトンボを使います」って。それも実現できて良かったです。

また僕は今までは嫁さんとか息子を大会に連れてきた事がなくてみせた事がないんです。それを息子が「とーちゃん、俺、仙台もアジアも見た事ないから見せてくれよ」って!自分自身、子供に親父の一生懸命に物事に取り組む姿を見せたいという気持ちはありました。ジャパンオープンはお陰さまで優勝という最高の形を家族に見せることができました。

――― それは最高だと思うよ。子供に親父が一生懸命物事に取り組む姿勢を見せれるって、誰もができることじゃない。それを見た息子が大会を見て変わった事はある?

井上 息子がジムをやりたいと言い始めました。幼稚園の息子が父の日とかで僕の絵を描くと真っ黒でポーズを取っているんです。僕はこれになりたいって言っていたと嫁から聞きました(笑)。子供は何か悪い事をするとお父さんに怒られる、ではなくお父さんに嫌われると思っているらしいです。なんか愛おしくなります。

――― それは親父として最高だぞ!父親の鏡だよ!今後は全日本に向けて最後のチャレンジとなるわけだけどプランはどうする?

井上 それはもちろん師匠に指示を仰いで(笑)。どうしても体重が落ちやすくなるので、筋肉を維持しつつ仕上がりが甘くならないように、今年の集大成ですから一番の仕上がりで臨みたいです。

――― どうしても自分自身でこれくらいでと判断しがちだから、妥協しない姿勢で本当のセパレート、ポーズを取った時の筋肉の隆起、そして力を入れた時に細かい筋肉まで浮き上がらせるポーズを見せてくれ! それで結果的に決勝進出も夢ではないと思うよ。人の記憶に残る井上スタイルでね。ここ最近上野、谷野両選手を凌ぐスーパーカットの選手を見てないから。

井上 もちろん、出場する以上は決勝進出を目指します。僕と比較された時に仕上がってる選手でさえ“甘いんじゃない!”って言われるくらいに仕上げたいです。今僕の持ってるもので戦うには、自分の弱点をカバーし、長所はより良く伸ばして行かないとですね。

――― よし! 固い決意も聞けたし、良い報告を待ってる。

井上 ここまで来たからには死ぬ気で行きますよ。月ボの表紙に使ってもらったし、恥ずかしい結果は残せません!師匠、今後ともご指導よろしくお願いします。
アジア大会の金メダルをかけて

アジア大会の金メダルをかけて

  • 井上裕章(いのうえ・ひろあき)
    1972年12 月1日生まれ(42歳) 静岡県富士宮市出身
    身長170.5cm、体重オフ82kg・ オン71kg 血液型:O 型
    趣味:ショッピング 家族構成 :妻、娘8歳、息子5歳

    主なタイトル:
    97年 静岡県ボディビル選手権 新人の部優勝
    03・04年 日本社会人大会優勝
    04年 静岡県大会優勝
    07年 西日本70kg優勝、東海大会優勝
    15年 日本クラシック171cm以下級優勝、アジアクラシック171cm以下級優勝、ジャパンオープン優勝

    ジム経営(ラビッチョ代表)

text:
千束正彦
Photo:
Ben
撮影協力:
成増トレーニングセンター
[ 月刊ボディビルディング 2015年12月号 ]

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