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得意と苦手 私のトレーニングと食事法 第4回 郷 直樹

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.06.16
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―― トレーニングを開始した時期ときっかけを教えて下さい。

高校の野球部に所属していた17歳の時、怪我をしたリハビリとして医師に勧められたのがきっかけではじめました。

―― はじめたころのトレーニングはどんなものでしたか?

自宅の近所にあったジムに入会し、そのジムの会長にメニューを作ってもらった記憶があります。ちゃんと分割されたメニューだったと思いますが、なぜか1日で3時間以上かけてすべてのメニューをこなしていました。初心者にはかなりしんどかったのを憶えています。このトレーニングをはじめて半年以上経ったころ、会長に「1日でやるメニューではない」と指摘され、愕然としたのは今となっては良い思い出です(笑)。

―― ボディビルの大会を目指そうと思ったのはトレーニングをはじめてどれくらいしてからですか?

トレーニングをはじめて約1年半経ったころ、ジムに神奈川県選手権のポスターが貼ってあるのを見たのがきっかけです。野球をやめていなければ、ボディビルの大会に出る気にはなっていなかったと思います。

―― コンテストを意識しはじめてからのトレーニング法を教えて下さい。

ボディビル専門誌を読みあさって、種目の組み立て方や分割法、食事の重要性等を勉強し、使用重量を伸ばすことを主眼に置いたトレーニングにしました。ちなみに当時は専門誌といえば『月刊ボディビルディング』と『M&F』しかありませんでした。

―― 具体的にはどのような分割をしていましたか?

 はっきりとは憶えていませんが、大筋群を独立させ、そこに腕や肩、カーフを組み込み、疲れたら適宜オフを取る、という3分割にしていました。
写真=徳江正之

写真=徳江正之

最近、東京選手権優勝時よりも手を置く位置を前面にずらした。「幅は出なくなるけれど、このほうが大胸筋に立体感が出るから」という

得意な部位

―― 得意な部位の初期のトレーニングはどのような感じでしたか?

動作や使用重量、可動域などについては何も考えず、“教科書通りに行なえば効く部位が得意部位”と認識していました。したがってフルレンジモーションで使用重量だけを追い求めたトレーニング
をしていました。

―― 現在の得意部位のトレーニングについて詳しく伺っていきます。まずは種目数から教えて下さい。

私は以前から背中を注目されてきましたが、最近は以前に比べ、脚が改善してきたと思っています。同じコンテストに出場した選手から脚について聞かれることも増えました。09年初夏に発症した椎間板ヘルニアが13年に治ったのも、脚が良くなった理由だと思います。妻の美喜からは「12年ジャパンオープン(同点決勝の末、予選落ち)の直前、後ろ姿でも外側広筋が膨らんで見えるようになった時に『良くなった』と思った」と言われています。

脚に関して、現在は使用重量へのこだわりはあまり持っておらず、刺激の変化を重要視しているため、種目は厳密には固定していません。そんな中でこれまで効果が感じられ、過不足なく刺激が与えられる種目や組み合わせを中心に、大腿部の前後と臀部で合計7~8種目のメニューを3パターン組んで回しています。

―― それぞれの種目のレップスとセット数を教えて下さい。

以下のような感じです。

【パターン①】
①レッグエクステンション20レップス(レストポーズまたはディセンディングで)
②ハックスクワット15レップス→シッシースクワット20レップス:トライセットで4セット
③45度レッグプレス15レップス→ダンベルスクワット15レップス:スーパーセットで3セット
④プローン・レッグカール:15レップス(+2Nまたは5h)で5セット
⑤ダンベル・スティッフレッグデッドリフト:15レップス×2セット
⑥リバース・ハックスクワット:15レップス×3セット
⑦ケトルベル・ランジ(たまにブルガリアンスクワット):15レップス×3セット
⑧ダンベル・ベンチ台昇降:15レップス×2セット

【パターン②】
①レッグエクステンション20レップス→シッシースクワット20レップス:スーパーセットで3セット
※レッグエクステンションは20レップスできなかった場合、ドロップセットに。その場合、重さは50%にして15レップス以上行なう)
②プローン・レッグカール15~20レップス→ハイパーエクステンション15~20レップス:スーパーセットで3セット
③スミスマシン・ランジ:15レップス×3セット
④スミスマシン・ワイドスクワット15レップス→インナーサイ30レップス:スーパーセットで2セット
⑤スミスマシン・ボトムスクワット10レップス→ボトムハック10レップス:スーパーセットで3セット
⑥45度レッグプレス:合計100レップス※ディセンディング時にはナロー、ミドル、ワイドを使い分ける
⑦リバース・マシンデッドリフト:15レップス×3セット
⑧スタンディング・ワンレッグカール:15レップス×3セット

【パターン③】※16年から採用
① ハックスライド:8~30レップス×4セット
※15レップス以上はディセンディング
②スクワット10~15 レップス→スミスマシン・スクワット(極端なナロースタンス)10~15レップス:スーパーセットで3セット
③レッグエクステンション30レップス(ディセンディング)→ジャンピングスクワット10レップス:スーパーセットで3セット
④プローン・レッグカール15レップス→ハイパーエクステンション15レップス:スーパーセットで3セット
⑤スミスマシン・ワイドスクワット15レップス→インナーサイ30レップス:スーパーセットで2セット
⑥リバース・ハックスクワット:15レップス×2セット
⑦ブルガリアンスクワット:15レップス×3セット
⑧ヒップリフト:50レップス×2セット

―― それぞれの種目は、どのような意識を持って、どこに効かせる目的でトレーニングしていますか? また、それぞれの種目のポイントは。

3パターンすべてで立位種目を入れています。各パターンの大まかな目的は次の通りです。
【パターン①】大腿四頭筋の密度とカット出し
【パターン②】ハムストリングス・臀部・内転筋
【パターン③】大腿四頭筋のバルクアップ

―― 以前と比べて何か変えていますか?

レップ数をハイレップス中心にしています。多くのトレイニーは大腿四頭筋と大腿二頭筋を分割したり、それによって脚の頻度を上げたりしていますよね。私もそれを採用したことがありましたが、疲労の抜け具合がイマイチ良くなく、また強度が下がってきたため止めました。現在の分割は次の通りです。

月曜日:胸・腹
火曜日:腕・カーフ
水曜日:脚・臀部
木曜日:オフ
金曜日:肩・カーフ
土曜日:背中
日曜日:オフ(オンシーズンはポージング練習)
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ハックスクワット
バランスボールを置くことで、可動域がちょうど良くなる。またボトムポジションでバウンドできるため、補助のような役割も果たされる
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レッグエクステンション
爪先は反り上げるほど上向きにする。「脚はしゃくり上げるのではなく、レッグプレスのように前へ押し出すイメージで」
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レッグプレス
背中に枕を敷いて高さを調整。足幅や爪先の向きは日によって変化させている
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シッシースクワット
大腿直筋の付け根がターゲット。ひとりでは負荷が弱いので、奥様に肩を押してもらっている
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レッグカール
スタート、フィニッシュは教科書とは反対にしている
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ダンベルスティッフレッグデッドリフト
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リバースハックスクワット

苦手な部位

―― 続いて苦手な部位のトレーニングについて聞かせて下さい。まず、苦手な部位はどこで、なぜ苦手なのでしょうか?

上腕三頭筋とカーフです。先天的に筋腹が短く、そのためトレーニング中に腱への負担が強くかかることが多くなります。

―― 苦手な部位は、どのようにトレーニングされていますか?

得意な種目のトレーニングにも当てはまりますが、改善が見られなければ頻度を上げたり、レップ数や可動域、重心位置、トレーニング種目やテクニック(スーパーセットやレストポーズ法など)などを組み合わせたり、組み替えたり、いろいろ試してきました。試行錯誤の末に現在取り組んでいるのは、プライオ・メトリックストレーニングです。トレーニング前の予備動作として、強い伸張反射を筋肉にかけ、ストレッチ・ショートニングサイクルを作り、腱にストレッチをかけることで筋肉の動きや収縮率を高めるのが目的です。また、筋肉の起始部でしっかり支えて、ウェイトを筋腹で受けるように意識しています。

―― 苦手な部位で行なっている種目をすべて教えて下さい。

上腕三頭筋に関しては、プレスダウン、ライイングエクステンション、ダンベル・フレンチプレス、ナロープレス、ディップスの中から3種目を選び、内・外・長頭の各筋に刺激が与えられるようにグリップや肘の角度、レップ数をその都度変化をつけて行なっています。

―― 苦手な部位の初期の頃のトレーニングはどんな感じでしたか?

フルレンジモーションを基本とし、使用重量アップを求めたトレーニングでした。そのため、よく腱を傷めていました。
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ケトルベル・ランジとベンチ台昇降
以前はジムの屋外駐車場でウォーキングランジを行なっていて効果を得ていたが、近所の子どもたちが近寄ってくるのでジム内で行なうことに。しかし不安定な場所でランジをする効果も実感しているため、ベンチ台の上に適当に折り畳んだマットを乗せ、わざとグラグラの状況を作って昇降している
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ライイング・エクステンション
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ケーブル・プレスダウン

食事と減量

―― 代表的なオフの1日の食事を具体的に教えて下さい。

7~8時、朝食。白米+五穀米250~300g、焼き魚(おもに鮭、鯵、鯖など。焼き魚はオンでも朝食に食べており、取材当日は自ら釣ったマスを食べたという)、全卵(レンジでチンする)1個、納豆1パック、野菜や根菜類の具だくさん味噌汁、果物とプレーンヨーグルト
 
15~16時、昼食。白米+五穀米200~250g、焼いた牛肉または豚肉(焼肉のタレを少しつける)200g、サラダ(ノンオイルドレッシングで)、果物少々
 
23~24 時、夕食。白米+五穀米200g、焼いた牛肉または鶏胸肉または豚肉(焼肉のタレを少しつける)200g、サラダ(ノンオイルドレッシングで)、果物少々または嗜好品(アイスや好物の煎餅)

トレーニングは朝食後に行なっています。昼食後にはジムで仕事をしています。

―― オフの食事で、もっとも気をつけている点は何ですか?

タンパク質量は除脂肪体重で1kgあたり2.5gを目安にしています。中華料理やタイ料理などの脂の多い料理も食べます。

―― トレーニングをはじめたころは、どんな食事を摂っていましたか?

普通の人と同じでした。お昼にラーメンとチャーハンを食べたり。五大栄養素などの栄養学は気にせず、ただただ美味しいものを食べていたと思います。

―― オフにはどんなものを摂りますか?

プロテイン、マルチビタミン、グルタミン、BCAAまたはEAA。

―― 減量に入ると食事の内容はどのように変えていきますか?

まず嗜好品をやめます。その後カーボの量を夕食から徐々に減らし、最終的には仕上がり具合によって朝食でも減らします。また、脂肪も極力減らし、旬のものを食べるように努めています。

―― 食事の回数は?

3回のままです。以前は3回と同じ食事量を5回に分けて食べていましたが、現在はサプリメントに頼っています。

―― サプリメントは変えますか?

減量が佳境を迎えるとプロテインを止めてアミノ酸に切り換えます。体感が速いですし、人工甘味料を摂らなくなるからか絞れてきます。お腹は減りますが。

―― 減量中、チートデーは設けますか?

週に一度、ジムが休館日の日曜日に設けます。家族もいるので自然とこの日になりました。チートデーとはいえ、高タンパクであまり脂肪が多くないものを選ぶようにしています。また昼まではカーボも多少は食べますが、夕食では極力カットします。

―― 大会前日、当日はどのようなものを、どれくらい食べますか? また、食べる時間を決めていましたら教えて下さい

前日は白米や餅、全粒粉パスタや隣町の名物『村山うどん』などの炭水化物を中心に、600~700gを朝6時から約3時間置きに5回に分けて食べていきます。

――大会に向けてカーボローディングや塩抜き・水抜きなどは行ないますか? 

しません。ボディビルダーは普段から薄味のはずですから、コンテスト直前に極端な水抜きをするのはかえって筋肉を萎縮させてしまいます。ナチュラルボディビルダーはやめたほうが良いと思っています。

―― 減量に入ってからトレーニング方法は変えますか?

今年は今まで行なってきて効果のあったものを中心にオフから取り組んでいるので、ほとんど変えません。

――有酸素運動は行ないますか?

減量中には一切行なわず、オフのみ週2回、40分程度エアロバイクを漕いでいます。オフシーズンは代謝が鈍りますし、家族と一緒にいろんなものを食べたいからです。娘と一緒にマラソン大会に出場したこともあります。

―― トレーニングは大会の何日前まで行ないますか? また、大会直前になるとトレーニングのやり方を変えますか?

大会2日前まで行ないます。大会1週間前から使用重量を普段の6~7割程度に抑え、セット数は2~3セット減らし、パンプ感を体感しながら、しっかり汗が出るように努めます。コンテストが日曜日にある場合、背中と肩が最後のトレーニング部位になります。筋肉痛が残っても大丈夫な部位ですから。
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15年の日本選手権終了後、郷選手の身体を長年見ている方に「負荷が筋肉よりも腱へ先にかかってしまう」と相談したところ、プライオ・メトリックストレーニングを提案された。ゴムチューブが縮む時に起こるゴムの伸張反射を利用して、腱を伸ばして硬さをほぐすことで、筋腹にしっかりウェイトが乗るようになったという。上腕筋のトレーニング前のアップとして「腱をほぐすことが目的なので回数は決めていないが、だいたい10〜15回くらいやっている」

上腕三頭筋の筋腹が短いため、腱にかかる負担が大きくなりやすい

上腕三頭筋の筋腹が短いため、腱にかかる負担が大きくなりやすい

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07年3月号『スポットライト』に掲載した時と同じ構図で。小学5年生になった一人娘の福寧ちゃんは、パパの出場するコンテストでは毎回大声援を送っている

  • 郷 直樹(ごう・なおき)
    1971年4月17日生まれ(45歳)
    神奈川県川崎市出身
    職業:ジムオーナー(BODY ZONE 東京都立川市西砂町6-18-22 TEL042-560-8715)
    身長167cm、体重71.8kg(15 年コンテスト時)・83kg(16 年オフ)
    トレーニング歴:27年

    主な戦績:89 年神奈川県ジュニア予選落ち(デビュー戦)、
    91年神奈川県ジュニア優勝
    02年神奈川県優勝
    06 年東京優勝
    14 年ジャパンオープン2位

    BODY ZONE所属

文と写真:
山谷茜
[ 月刊ボディビルディング 2016年9月号 ]

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