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マッスルマニアプロ マイク宮本のアメリカ便り 13NPCエクスカリバーチャンピオンシップス

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.09.06
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宮本 充(みやもと・みつる)/プロボディビルダー名:マイク宮本/1974年6月4日生まれ/39歳/神奈川県相模原市出身/カリフォルニア州ロサンゼルス在住/趣味:愛車のベンツSLKをオープンにしてカリフォニアの海岸沿いをドライブする事/職業:プロフェッショナルボディビルダー、フィットネスコンサルタント
ブログ:http://ameblo.jp/miyamotopro/
FB:https://www.facebook.com/mmiyamoto
 アメリカで1年を通して誰もが一番忙しい時期は、間違いなくクリスマス前の2、3週間でしょう。日本からアメリカに渡り、これで年末の煩わしい年賀状やお歳暮から開放されると密かに思っていましたが、年賀状とお歳暮の代わりに、クリスマスカードとクリスマスプレゼントがアメリカには存在するということにすぐに気付きました。どこの国でも1年の締めくくりの12月の慌しさは変わらないようです。その猫の手も借りたい12月14日の一年で最も忙しい時にも関わらず、エクスカリバーは季節はずれの大盛況で行われました。今回の参加選手数353人。朝の10時にはじまり、終わったのは夜の11時半というボディビルのメッカ、ロサンゼルスの1年の最後を締めるコンテストに相応しい盛り上がりを見せてくれました。
自分が掲載されている月ボを指差すサーシャ・ブラウンと筆者。海外の雑誌に写真が載った事にご満悦

自分が掲載されている月ボを指差すサーシャ・ブラウンと筆者。海外の雑誌に写真が載った事にご満悦

 会場には、12月号の本欄で紹介したTOC(トーナメントオブチャンピオンズ)のプロフィギュアで見事4位に輝いたIFBBフィギュアプロ、サーシャ・ブラウンもスポンサーの広告塔として来て、会場に花を添えていました。プロモーターのジョンに、月刊ボディビルの12月号とクリスマスプレゼントを渡しに行くとたまたまその場にいて、日本のボディビル雑誌に自分が載っているのを見ると、たまらなく嬉しかったらしく、ソーシャルメディアのフェイスブックにアップするからと言って月刊ボディビルの記事を携帯ではしゃぎながら撮っていました。見てのとおりの美貌と抜群のスタイルを誇るサーシャはアメリカのフィットネス雑誌のモデルとしては売れっ子の存在、ただそんな彼女にとっての外国(つまり日本)の月刊ボディビルは特別みたいです。

 日本からは、175cm、97kg、日本屈指の大型ビルダー小野豊選手がマスターズ(40歳以上)の部のヘビー級を制しただけでなく、マスターズのオーバーオールでも断トツの体で総合優勝するという快挙を成し遂げました。日本でも、アメリカでもサプリメントやトレーニング施設の発達により、マスターズのレベルは年々上がってきています。小野選手は、今までNPCを舞台に活躍してきましたが、今回のマスターズでの優勝を境に今後はNABBA等違う団体の挑戦も考えているとの事です。

 昨年43歳のデクスター・ジャクソンが、12歳年下の31歳ベン・パクルスキーを破り5年ぶりにアーノルドクラシックで優勝したように、40歳を過ぎてもやり方次第でまだまだ伸びるのでがんばってもらいたいと思います。

 また小野選手は一般の部のヘビー級にも出場しました。スケールの大きな100kgのヘビー級の猛者の中でも持ち前のきれいに横に広がる大きな肩と、カットがしっかり入る脚で存在感は群を抜いていました。ただサイドやバックになると脚や背中の厚みに欠け、レター・ジェフに続き2位という結果となりました。本人もさらに上に行くには、横から見た時の厚みが必要な事を自覚しており、今後10年計画で完璧な体にしていくと意欲を見せていました。元ロックギタリストの小野選手は髪型もポーズも型にはまらない独自のアートを築きあげているので、10年後の体もきっと小野ワールドが深く刻み込まれた体を作りあげてくれるでしょう。
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マスターズ優勝、一般のヘビー級でも2位に入った日本の小野豊。今後はNABBA への挑戦も考えているという
 今回エクスカリバーのタイトルを手にしたのは、ライトヘビー級(80kg以上90kg以下)の覇者リマ・サントスでした。サントスはブラジルからの選手で、皮肉にも小野選手がこれから移籍を考えているボディビル団体NABBAからNPCへの移転組の選手。NABBAは今現在はあまり知られていないボディビル団体ですが、IFBB(日本最大のボディビル団体JBBFが加盟している世界連盟。NPCもIFBB傘下となります)が台頭してくる1970年位までは世界最大の勢力でした。アーノルド・シュワルツネッガーも1968年から3回連続でNABBAユニバースプロ部門で優勝してから、IFBBに移籍しています。日本人では、JPC代表、杉田茂選手が1976年アマチュア部門で総合優勝しています。

 サントスは、そのNABBAユニバースの2011年の総合優勝のチャンピオンです(ちなみに11年からNABBAはプロ部門のコンテストを開催していません)。サントスはさすがユニバースと思わせる筋量をもっており、有り余る筋肉が皮膚を押し上げて筋肉の凹凸感を出し、カットやセパレーションを創り出す非常に立体感と迫力のある体をしていました。恐らく体脂肪率という点では、ヘビー級で小野選手を破ったレターの方が、絞れており、皮膚感も薄く、バックポーズでもお尻まできっちりカットが入っていましたが、圧倒的な筋量を誇るサントスの前では多少のカットやコンディショニングでは太刀打ちできず、ひれ伏すことになりました。

 目立った選手としては、スーパーヘビー級を制したジョアン・カウロアニがいました。ジョアンはフランス生まれ、北アフリカの元フランス植民地であるモロッコ育ち、今はパリに住みながら、アメリカを拠点にボディビルダーとして活躍している選手です。さすが、ボディビルのメッカ、ロスアンゼルスだけあってブラジルのサントス、日本からの小野選手、フランスからのジョアンと次なるアーノルドシュワルツネッガーを目指し夢と希望を胸に抱き世界中からロスにやって来ます。

 28歳のジョアンは、体重110kg、身長183センチと身長に見合うだけの筋密度は今の時点では持ち合わせていませんが、男前の顔と万人に受けそうなバランスの良い体で、ヨーロッパでは数々のフィットネス雑誌のモデルとなっています。クラス優勝後のインタビューもフランス人にしては流暢な英語で喋っていたので、あとで「英語上手だね」と話しかけると、日本のアニメの大ファンだけど日本語がわからないので、英語の字幕で日本のアニメをいつも見ていたら、いつの間にか英語が上手くなっていたそうです。体育会系のNPCに出場している選手の割には、マッスルマニア所属の選手みたいにキャラのある、男前だなと思い、よくよく話を聞いていると以前はマッスルマニアにも出場していたとの事。ボディビルでは、まだまだ28歳これからの活躍が楽しみな選手の一人ですね。
 今回IFBB、NPC、JBBF、JPC、NABBA、マッスルマニアと一つのコンテストレポートで6つの団体の名前が出てきて、もちろんそれぞれの団体ごとに細かく見ればルールや審査に違いがあり、選手も各々自分に一番合った団体に出場するわけですが、団体が違ってもボディビルを愛する気持ちは皆一つ、お互いが切磋拓磨しながら益々のボディビルの発展とボディビルをとおして世界中の人々への健康の増進が出来ればと思いました。

 季節はずれの12月14日に開催されたエクスカリバーですが、353人の選手が参加し、アメリカのボディビル人気がいかに高いかお分かりかと思いますが、残念ながら女子ボディビルに関しては全く逆でほぼ絶滅状況というのが現状です。参加選手は3人、それも取るに足らないようなレベルという有様です。

 日本の女子ボディビルダーおよび私も含め女子ボディビルファンにとっては、ショキングなニュースですが、2014年2月27日から行われるアーノルドクラシックでは25年間続いた女子プロボディビルの競技がなくなるという衝撃的なニュースが報道されました。オリンピアに関しては、今のところまだ削除するという発表はされていませんので、完全になくなるということではありません。ただこのように女子ボディビルが絶滅状況に追いやられた背景として、男性と同じように究極の筋発達を女性が求めるのは、同姓からも異性からも支持されなかったということが挙げられます。その結果プロスポーツというビジネス的な観点からは、観客動員ができず収入に行き詰まり、選手人口という観点からは振興種目のフィギュア(ボディフィットネス)、ビキニといった人気競技に選手が移り、選手数が激減しました。

 ただ2011年女子フィジークが出現するまではハードコアな体を求める一部の女性は女子ボディビルを続けていました。男子フィジークは水着で完全に脚を隠しボディビルとは似て非なる競技ですが、女子フィジークはポージングスーツもポーズも女子ボディビルとほとんど同じです。審査基準が女性らしい美しい筋発達が求められるという、非常にわかりづらい抽象的な項目がつけてあります。見た目で決定的に違うのは、ポーズを取る時、手を開いて取らなければいけないという事です。ダブルバイセップスにせよ、サイドチェストにせよ手を握り閉めてポーズを取ってはだめで、手を開いた状態、ジャンケンのパーの状態でポーズを取らなければいけないという事です。力こぶしは、逞しい女子ボディビルを象徴し、開いた手で指先を華麗に見せるのが、美しく鍛え上げた女子フィージークというようなイメージでしょうか。またフロントラットスプレッド、バックラットスプレッドというような体をより大きく見せるスプレッド(広げる)ポーズがありません。この女子フィジークという女子ボディビルと非常に似ているものの、よりフェミニン(女性らしい)究極の筋肉を求めるというスポーツの出現により、女子ボディビルは今のような状況に置かれてしまったという状況です。
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男子ボディビルオーバーオール比較。左よりスーパーヘビー級優勝者ジョアン・カウロアニ、ヘビー級優勝者レター・ジェフ、ライトヘビー級&総合優勝者リマ・サントス
 デパートの洋服売り場で、女性物は男性物に比べ、デザインやブランド等、多種多様な洋服がそろえてあるように、理想な体も女性10人いたら、十人十色で女子ボディビル、女子フィジーク、フィギュア、フィットネス、ビキニとそれぞれ好みがあり、おのおのがなりたい体によって競技を選べるという点では、それはそれで良いのかもしれません。

 女子フィジークを制したのは、カルマー・スクープとなりました。長い手脚に、切れのある筋肉で女子フィジーク総合優勝を手にしました。女子フィジークは、優勝したカルマーのように元フィギュア選手や元ボディビルダーの競技者からの転向組が多いですが、男子フィジークは今まで競技とは無縁だった人達のグループが多く、私にとってはボディビル(ウエイトトレーニング)をとおして新たな兄弟が出来たようで非常に嬉しいです。

 男子フィジークは、大会の規模によっても変わりますが、今回のフィジークは170cmから1インチ(2.54cm)ごとにクラスA、B、C、D、E、Fと6クラスに分けて戦い、その後、それぞれのクラスの勝者がオーバーオール(総合優勝)を決める流れとなります。男子フィジーク総合優勝を制したのは、これぞビーチボディという逆三の体と腹筋を、ドラゴンとタイガーの刺青で身を着飾ったミルトン・エスカランテになりました。
女子フィジークショート優勝者ステファニー・アシュトン(左) とトール&総合優勝者のカルマー・スクープ

女子フィジークショート優勝者ステファニー・アシュトン(左) とトール&総合優勝者のカルマー・スクープ

男子フィジーククラスFに出場したジェス・シンクは、義手ながら5位に入った

男子フィジーククラスFに出場したジェス・シンクは、義手ながら5位に入った

 またクラスF(183cm以上)に、義手を付けたジェス・シンクが見事5位入賞を果たし、観客全員からスタンディングオベーションを受けていました。彼の5位入賞という結果はハンデを背負いながらがんばっているから5位になったのでなく、純粋に彼の体が素晴らしかったから5位を付けられています。ただ当然片手がなければ、どんな種目をやるにしても人の何倍の努力と工夫が必要です。そのハンデを背負いながら、ステージに立っているジェスに会場の観客は感動し、勇気づけられていました。
女子ボディビル優勝者のブルックス(右)とフィギュアオープン総優勝者のケイティー・マクドナルド

女子ボディビル優勝者のブルックス(右)とフィギュアオープン総優勝者のケイティー・マクドナルド

 最多出場選手数を誇ったビキニを制したのは、コリン・スレーザーとなりました。女性選手は下半身がなかなか絞れないという話を聞きますが、コリンも全く同じで腹筋が出てきた後もなかなかヒップラインの脂肪が取れなかったので、ダンベルランジやスクワットをかなりやり込み、さらに有酸素運動で追いこんでエクスカリバーに臨んだとの事です。試合後、14年のビキニプロカード取得への意欲を見せていました。
ビキニクラスの入賞者。左から3人目の剣を持っている選手が総合優勝者の コリン・スレーザー

ビキニクラスの入賞者。左から3人目の剣を持っている選手が総合優勝者の コリン・スレーザー

 司会はフィギュアオリンピアのニコール・ウィルキンスで、機転の利いたトークと素晴らしい笑顔で盛り上げてくれました。参加出場選手は、353人という事でしたが、欠場した選手やダブルエントリーした数も含めると、延べ参加数は400人を超え、最後プロモーターのジョンにあいさつしにいくと、次回からはローカルコンテスト(USAやナショナルズは全米大会になり、エクスカリバーは全米大会への出場資格を得る為のコンテストの位置づけとなります)としては異例の金曜日、土曜日の2日間で選手数700人まで対応出来るようにすると話していました。メッカ、ロサンゼルスのボディビル人気の火は強くなる一方の模様です。
今大会のMCを務めた2013年フィギュアオリンピア のニコール・ウィルキンスと筆者

今大会のMCを務めた2013年フィギュアオリンピア のニコール・ウィルキンスと筆者

[ 月刊ボディビルディング 2014年3月号 ]

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