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“狂気の男”ことボディビルダー合戸孝二選手にロングインタビュー!

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掲載日:2016.08.10
日本ボディビル選手権大会で4度のミスター日本の称号を手にし、“狂気の男”という異名を持つ、ボディビルダー合戸孝二(ごうど こうじ)選手。

今回は彼がボディビルという競技に出会うまでの道のりをお伺いすると共に、過酷な減量によって失われた左目の視力の真相、さらに今後の目標についてもお話しいただいた。

ボディビルとの出会い

― 身体を鍛え始めたきっかけは?
私が二十歳の時に、後輩から「フィットネスジムに行ってみない?」って誘われたんだよね。それで行った時に、当時盛んだったエアロビクスを見かけて、ジムに入会しようと思ったの。だから、トレーニングを目的としてジムに入会したわけではなく、ジムでいい出会いがあればいいな~っていう不純な気持ちで始めたんだよね。(笑)

― それは意外でした!では、何をきっかけにボディビルの世界に飛び込んだのですか?
当時は、そういう不純な気持ちでジムに一年くらいいたのかな。不純な動機があったとしても、せっかくジムに入会したんだからトレーニングをしなきゃ意味がないでしょ?それで、一年くらいトレーニングを続けていると自分の身体が変わってきたことに気付いたんだよね。

その時に初めて「ここにいたら、これ以上体は大きくならないな」と思って、より専門的な器具が揃っている地元のジムに通い始めたんだ。そして、そのジムに通い出した頃に、静岡県のボディビルの大会を観に行く機会があって、そこで「おぉ~!これだ!」って思ったんだ。

それで、「こういう競技があるんだな~」っていうのを知って、自分も「出たいな」と思ってさ。入会したジムがJBBF加盟ジムだったから、すぐに出場を申し込んだんだ。それがきっかけだね。でも、トレーニングを始めたきっかけは、不純な考えだったけどね。(笑)

― 初めて大会に出場したのはおいくつの時だったんですか?
20代後半だったかな。27か28ぐらいで、結構遅い方だと思う。

― デビュー戦の思い出はありますか?
ビルパン履くために毛を全部剃って人前に出るというのは、男としてちょっと恥ずかしかったなというのはあるかな。(笑)

― 最初は皆さん同じ気持ちですね。(笑)これまでボディビルの大会に出場されてきたなかで、一番記憶に残っている大会はどの大会ですか?
一番記憶に残ってるのは、ベトナムで開催されたアジア選手権だね。自分にとって初めての海外大会だったんだけど、2位になったんだ。実は、自分がボディビルを始めた目標っていうのは、「アジアで優勝する」っていうようなものだったんだよね。

― 初めから世界を見据えていたんですね。
そう。その当時は、日本クラス別とジャパンオープンには出場していたけど、日本選手権には出場していなかったからね。アジア大会で優勝すれば、自ずと日本でも結果はついてくるだろうと思っていて。そういう考え方だったから、日本選手権でミスター日本となることは全く興味がなかった。

当時の自分の計画としては、日本クラス別に出て、アジアに行ってそれで終わりっていう考え方でいたから。でもその時のコーチに「日本選手権も出なきゃダメだよ」って言われて。「出なきゃいけないんですかね。」って感じで、最終的に出場することにしたんだ。

― 一般的には逆ですよね。国内でミスターをとってから世界へ進むという選手は多いと思いますが。
自分はとにかくアジアで優勝っていう目標があったからね。

― いざ日本選手権に出場してみて、海外と比べて異なる点はありましたか?
日本選手権はオーバーオールで、海外はクラス別になっているからね。そこは違うかな。まあ、オーバーオールがあるとしても最後の各階級の優勝者が争うだけだから。それを考えると、日本選手権っていうのは日本独特だよね。世界中どこ行ってもそういうのはないから。

― 初めてのアジア大会で印象に残っていることはありますか?
初めてだから、もう無我夢中だったよ。周りの人は「絶対優勝してた」と言ってくれるんだけど、初めて出た大会にしては、2位という結果に自分のなかで満足してたから。2位なら「2位か」、それが3位なら「3位か」っていう。初めての大会だったから、そこまでの強い欲はなかったよ。

― 合戸選手といえば、“狂気の男”という異名がありますが、そう呼ばれるようになったきっかけは?
他の人には真似できないような、高重量を徹底的に追い求めるトレーニングをしているからだと思ってるよ。誰が見ても「この人おかしいんじゃないか」っていうくらいの高重量をね。(笑)

だけど、ナチュラルである以上は他の人が真似出来ないようなことを追い求めなきゃ。海外勢の多くがユーザーだから、その人達にナチュラルで太刀打ちするには、同じ体作らなくちゃなんないでしょ。だからそれには高重量を扱って、大きくて丸い筋肉を作っていくしかないと思ってるよ。

ボディビルをとるか、治療して微かな光をとるか

― 左目の失明について、病院で診断結果を聞いたときはどのようなお気持ちでしたか?
んー、やっぱりショックだったよね。「あー見えなくなっちゃうんだな」って。

― そこで、医者に勧められたのがステロイド治療だったんですよね?
そうそう。ステロイド治療をすれば、まあちょっとは見えるようになるって話だったんだ。だけどその度合いが「0.00いくつ」っていうごくわずかな数値でさ。だから完全には治らないと言われたね。

それで、内出血するところを全部焼き切っていくレーザー治療が始まったんだけどさ。目に麻酔を入れるんだけど、麻酔が効かないくらいすっごく痛くて。レーザーの一発一発がパチパチッてこめかみに走るわけ。眼球は麻酔が効いてるから全く痛くないんだけど、神経をピンピンって触られてるような感じで、ほんっと無理だなって。三日治療に行って、そこでやめちゃったんだよね。

先生からは「トレーニングはもうやめろ」ってドクターストップがかかっていたんだ。だから、ボディビルをとるか、治療して微かな光をとるかという究極の選択に迫られたんだけど、反対の目(右目)はハッキリ見えるし支障はないので。最終的には、ボディビルをとったってことになるね。

― 左目の異変に気付いたのはいつ頃でしたか?
スロバキアの世界大会の時だったな。予選と決勝が終わった後に、もう何にも見えなくなっちゃってさ。なんていうの?テレビのザーっていう砂嵐あるじゃん。左目だけそういう感じになっちゃって。全然痛くもなんともないもんで、「あぁ、疲れてこうなっちゃったのかな」って思ったんだよね。でも全然見えないから、日本に帰って「目薬でも打てば治るのかな」っていう感覚だったんですよ。(笑)だけど、一週間経っても全く変わらなかったから、病院行ったら眼底出血を起こしてたよ。

― 前触れのようなものはあったのでしょうか?
今その時のことを考えてみると、世界選手権に行く前のトレーニング中に、視界にずーっと気にならない程度の小さい点があったんだよ。だから、きっとそれが始まりだったんだろうね。
気にならない程度の点だったし、別に痛くもなんともないし。ほとんどの人が絶対に気付かないと思うよ。その時に治療行っていれば治ったんだろうけど。あとは、スロバキア行くときに飛行機に乗るでしょ。だから気圧の関係で、そういうのもあったのかなって思うよ。

― 原因は分かっているのでしょうか?
先生曰く、年配の人がなる病気だって言ってたよ。今じゃとても考えられないんだけど、その時は過酷な減量をやってたんだよね。まあ今そんなことしたらとんでもないことになっちゃうんだけど。当時は自己流で、ストイックに減量していたから、栄養不足でそうなったんだって言われたよ。

― コンテスト出場レベルまでの体を作るって、生と死の瀬戸際というか、一歩間違うととても危険ですよね。
我々はナチュラルだからこそ、何が起こるかわからない。だけどユーザーの人たちは、何が起こるか想定できてやってるから。だからそれに対しての薬も飲むし、ケアもちゃんとできるわけよ。これを飲めば何がどっからどうなるって全部分かっているから。だけど、ナチュラルの人っていうのは何が起こるか分からないんだよね。

― 下手に薬を使うことはできないですもんね。
そうそう。だからステロイド治療をすれば良くなるって言われたんだけど、「ドーピングに関わる治療だけは絶対にしたくない」っていう話をしたんだ。

日々のトレーニングや食事について

老舗サプリメントメーカーKentaiの「TEAM Kentai」メンバーの一人である合戸選手

― 現在のトレーニングメニューやスケジュールについて教えていただけますか。
今は、4日やって1日休む。例えば、月火水木でやるでしょ?んで、金曜休んで、今度は土日月火になるから、日曜日だろうが、お正月だろうがお盆休みだろうが、関係なしにずっとそのサイクルを続けてるよ。

― 種目やトレーニング時間についてはいかがですか?
例えば、月曜日に胸と二頭筋、火曜が背中、水曜日が足全体、木曜日が肩というように、分割して一日三時間くらいだね。

― 合戸選手と言えば、胸全体のバランスが良いと思うのですが、何かこだわりのトレーニング方法はありますか?
「ストレッチ」かな。例えば、ベンチプレスで180キロをさす時に、降ろした時に180キロのストレッチがかかるじゃない。そういう「ストレッチ」について重視するよ。

― 肩については、いかがですか?
オーソドックスに、バッグプレス、フロントプレス、サイドレイズとサイドレイズのネガティブを重視してる。昔はいろんな種目をやったけど、結局落ち着くところはそれらのオーソドックスなものだね。

― 自分に合ったものを見つけるためには、色々な種目を試行錯誤する必要がありますよね?
そうそう。最終的にはやっぱりオーソドックスがベストだと思った。自分に合っているし、誰しもが効く種目だと思うんだよね。だけど、初心者の人へアドバイスをするとすれば、まずは色んなことをやったほうがいいと思う。初めは広く浅くやっていって、そのなかで最終的に自分が一番効く種目っていうのが出てきて分かると思うから。

人それぞれ手足の長さが違うし、骨格も違うし、体の大きさも違うじゃん。例えば、自分が「サイドレイズいいよ」って言っても、その人には効かないかもしれないし。だから、人それぞれ試行錯誤をして、最終的に自分にとって一番筋肉に効く種目を選んだ方がいいと思う。そのためには、例えば肩の種目にしても、胸の種目にしても、たくさん種目があるじゃない。それを、自分自身が覚えるためにも、ひたすらこなしていくことが必要だと思う。

― 普段の食事についてはいかがでしょうか。
自分は基本的に一年通して基本二食だね。午前中はトレーニングをするから、食事っていう食事は、お昼と夕食だけ。だいたい朝7~8時の間にトレーニングを始めるんで、午前中のトレーニング前っていうのが全部サプリメントで補ってる。トレーニングの一時間ぐらい前にサプリメント全部摂ってるね。それはオンもオフも一緒。

―オンとオフではどの程度の差がありますか?
オンとオフでは、当然食事の内容は変わるよね。サプリメントに関しては、同じだけど、オンの時はプロテインの量を少し増やしたりしてる。オフの時は好きなもの食べてる。(笑)オフの時でも気を付けている人は多いけど、俺は全く気にしないから、甘い物や油物も気にせず食べるよ。オンになったときに一気に変化させるけどね。

他の方はだいたいストイックでしょ。でも、自分はそれが原因で体が大きくならないと思ってる。年がら年中減量しているようなもんだから、もし自分がそういうふうにしてたら大きくならないと思う。体に対して刺激を変えてやらないと。オンはオン、オフはオフっていう風にね。スイッチを切り替えてやんないと。何を怖がっているのかが俺には分からないけど、若手選手なんかはオフになったら、ただ減量メニューの量が増えるだけ。だから体に対しての体感は全く変わってないと思う。

― サプリメントはどのようなものを摂っていますか?
プロテイン、BCAA、EAA、総合アミノ酸、クレアチン、グルタミン。ほとんど摂ってるよ。(笑)

― サプリメントを摂るタイミングや量についてなど、初心者トレーニーの多くが悩んでいると思うんですけど、何かアドバイスはありますか?
やっぱり一番のタイミングは、トレーニング前後に摂りたいよね。あとは、寝る前。食後は吸収率が良くなるから、食後にも摂るようにしてる。減量中であれば、食前に摂った方がある程度満腹感が得られるからいいと思う。

― プロテインはどのくらいの量を摂っていますか?
自分の体重一キロに対して3g~4gぐらい。

― 愚問かもしれませんが、減量を辛いと感じますか?
別にそうでもないよ。一年に半年ぐらいは減量してるからね。(笑)

365日、自分と戦って「その日」が無事にくるかどうか

― 今後出場を予定している大会はありますか?
やっぱり日本選手権だね。そして、もし選ばれれば世界選手権という感じ。

― 合戸選手の考え方として、周りの選手に対してライバル意識はあるのでしょうか?
全然ないよ。結局この競技って、陸上競技みたいに一番でテープ切った人の勝ちじゃないから。審査員が決めることじゃん。だから選手間のなかでは、誰がライバルっていうのは自分はないね。みんな仲間だって感じでやってる。順位つけるのは自分たちじゃないから。

― トップビルダーの方々は、そのような考えの方が多いですよね。誰がライバルではなく、自分との闘いということなんですね。
そうそう、全くないね。例えば日本選手権にしても、結局一年間やり通した結果がその日じゃん。だから365日、自分と戦って「その日」が無事にくるかどうかって事だけだよ。
だから、自分が日本選手権に出場しなかったら「あー、合戸さん遂に怪我したな。」って思ってくれればいいよ。(笑)

― 合戸選手の目指す体、理想とする体はあるのでしょうか?
目指しているもの…。自分でもまだ良く分かんない。行き着くところは何なんだろうって。だから目指している体ってことよりも、今はトレーニングすること。まあ、年齢も年齢だから一日一日をしっかりやりきれるかっていうことだね。若い頃とは考え方が違ってるかな。

― 昔はどのようにお考えでしたか?
昔はどんどん大きくしたいっていう気持ちで重量を追い求めていたけど、今は年齢とともに、昔と比べて扱う重量は落ちてきてるから。それに対して、さっき言ったようにストレッチを加えたりとか、若い時の気持ち以上のトレーニングが出来るかどうかを大切にしているよ。
だけど現実出来ないんだから、できない以上は工夫をして、もっと追い込む。昔よりは種目数やセット数も落ちているんだけど、逆にもっと追い込むようにする。

― 体はどんどん退化しますから、そのことを考慮しながら変えていく必要がありますよね。
そう。だから若い頃は、重いのをガンガン出来た時代はあったんだけど、今となってはそれは無理な話で。だけど、さらに良くするにはどうすればいいんだろうって事を考えたらやっぱり工夫を入れていく事だね。そして種目数を削って、効くトレーニングにセット数を持っていく。いかに効かせられるかに重点を置く。

人の真似をするだけでは強くなれない

合戸選手の日々のトレーニングをサポートする奥様・真理子さん

― 最後にフィジーク・オンラインをご覧の皆さまに一言いただけますか。
さっきお話ししたように、初心者の人は「色んな種目をやって色んな刺激を得る」って事からスタートしたほうが良いね。例えば、自分にしても雅とか佐藤くんとかトップの人が言うことっていうのは、だいたい行きついた話なんだよ。だから、それを真似しても駄目っていう事。

トップの選手だって、元を辿ればスタートはみんな同じ。誰しもが同じところからスタートしているんだから、トレーニングを始めた頃を振り返ってみれば、その時は色んな種目をやって、どれがいいのかなって試行錯誤してやってきてるでしょ。だから自分たちの行きついたところの話を聞いてもしょうがないわけよ。

自分が初心者の頃を振り返ると、やっぱりそうやって色んなことをやってた。ベンチプレスも50キロ上がるか上がらないかのところからスタートしてるからね。今はこんな体しちゃってるけど、二十歳の時は60キロ体重があるかないかですごく小さかった。今じゃ面影もないよ。(笑)

誰しもみんなスタート地点は同じだから、とにかくそのスタートが大切。初心者が上級者の真似をすること自体が無理な話なので、自分に合ったトレーニングを見つけることが一番の近道なんじゃないかな。それには、色んな種目をやって、自分が上がる重さからスタートして、それで一キロでも二キロでも増やしていく。とにかく重さが停滞していたら駄目。一キロでもいいから増やす努力をすること。

焦っちゃダメだし、伸びないものは伸びないんだよ。だけど、そこを我慢して一キロでも伸ばせば、またグッと伸びてくるから。結局これって地道な事じゃん。コツコツコツコツやって、自分との戦いだから誰も助けてくれないよ。自分だって、今ではベンチプレス180キロ上がるようになったけど、スタートが50キロ上がるか上がらないかからスタートしてるから。それを30年かけて、ここまで来てるんだから。

だから自分の若い頃は、毎年毎年重さをどんどん増やしていった。それはなんでかっていうと、ずーっと同じ重さだと一年二年三年経ったって、体が変わらないから全く成長しない。初心者のうちは、食事で好きなものを食べて、サプリメントを摂って、扱う重量増やして体重を増やしていく。っていうことからスタートしてほしい。



合戸選手、本日はありがとうございました。

合戸選手のドキュメンタリー映像


  • 合戸 孝二(ごうど こうじ)
    誕生日:1961年04月01日
    出身地:静岡県

    <主な戦歴>
    [ 2010年 ]
    日本選手権 2位
    世界選手権70kg級 6位
    [ 2011年 ]
    アーノルドアマチュア70kg級 4位
    アジア選手権大会70kg級 優勝
    日本選手権 2位
    世界選手権70kg級 5位
    [ 2012年 ]
    アーノルドアマチュア70kg級 6位
    日本選手権 3位
    世界選手権70kg級 9位
    [ 2013年 ]
    日本選手権 3位
    世界選手権70kg級 15位
    [ 2014年 ]
    日本選手権 4位

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