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スタミナをつくるトレーニング法 

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.10.02

オーバーロードの原則はスタミナづくりにも必要

 体力を構成する要素は沢山ある。その分け方にも流儀があって,べつに定説といわれるものはない。しかし,英語では口当りのいい言葉,つまり語呂のよい言葉として,体力要素をたとえば3Sとか4Sと呼んでいる。
 3Sとは,strength(筋力),stamina(スタミナ),そしてsuppleness(柔軟性)のそれぞれの頭文字をとった造語である。また,4Sとは前記の3要素の他にskill(技能,いいかえれば日本流には運動神経とでもいおうか)が加えられている。3Sおよび4Sは,ともかくいずれにしても体力の構成要素としてたいせつなものばかりである。
 ボディビルディングは以上の中の筋力面で,とくに大きな効果があがることが知られている。つまり,筋肉を太く,逞ましく発達させることができるのである。
 ところが,研究によれば筋力と並んで非常に重視されるスタミナの方がさして発達しないのも事実である。ここでいうスタミナだが,「サーキット・トレーニング」(加藤橘夫,窪田登訳ベースボール・マガジン社)の原著者R・E・モーガンとG・T・アダムソンは次のようにいっている。
 「スタミナは,全身を中等度に動かす運動に従事しているときの成績が最も明白に現われる」つまり,マラソンや長距離泳をやっているときに要求される体力資質のことであって,彼らはこれを循環・呼吸持久性とも呼んでいる。
 ボディビルディングにおいては,その基本的な方法として局部的な筋肉をとりあげて,それらに強い抵抗負荷をかけることが多い。したがって,このような運動方法では心臓や肺臓に大きく負担がかかるようになるまでには,局部的な疲労が起こってしまう。これではスタミナをつけていくのにプラスにはならない。
 ボディビルディングで基礎的原則をなしているオーバーロード(過負荷)は,たんにバーベルやダンベルで筋肉に強い抵抗負荷をかけて,筋肉の発達を促すために使うだけでなく,スタミナづくりのためにも,もっと活用されなくてはならない。
 スタミナが,後述するように心臓や肺臓,そして血管に負担をかける,すなわちオーバーロードをかけることによって発達することは,誰しもが知るところであろう。

スタミナづくりによいサーキット・トレーニング

 むろん,ボディビルディングの分野においても,このスタミナづくりのためへのアプローチはいろいろとなされてきた。
 その1つがイギリスで開発されたサーキット・トレーニングである。このトレーニング方式は,それまでのボディビルディングにおいて主流をなしてきた「セット法」に挑戦したものとみてよい。
 つまり「セット法」では,同じ運動を何セットも繰返して行なってから,はじめて次の運動に移り,これをまた何セットも繰返すという手法をとる。
 いうまでもなく,後述するようにスタミナづくりには脈拍をかなり上昇させたまま,それを維持する必要がある。だが,セット法ではセット間に長い休息をはさむので,かりに一時的に脈拍が上昇したとしても,休息をとればすぐに脈拍が平常に近く戻ってしまう。だからスタミナづくりにはならないということになる。
 モーガンとアダムソンはこの点に目をつけて,途中に極力休息をはさまぬように工夫をした。その結果完成されたものがサーキット・トレーニングと呼ばれるものである。
 すなわち,コースの中の運動種目を次々と1セットずつ休みなくこなして1循環したら,ふたたび最初の運動に戻り,2巡していくという具合にしてたとえばこれを3巡する。そして,全体の所要時間を予め計時しておいてこの時間を一定のところまで短縮しようとはかるのである。
記事画像1
国立競技場トレーニング・センターを訪れて窪田氏と意見の交換をするアーケン博士夫妻。博士は一九六三年のベルリン・オリンピック大会のウェイトリフティング・ミドル級候補選手だったので、ローマ大会選手の窪田氏としばし筋肉談義がはずんだ。(一人おいて左から窪田氏、アーケン博士夫妻)

サーキットよりもきついシークェンス・トレーニング

 ところが,ボディビルディングの本場アメリカでは,その後,ボブ・ガイダが「シークェンス・トレーニング」というサーキット・トレーニングに輪をかけたようなきびしいトレーニング方式を開発している。
 これは,5~6種目で1つのコースをつくり,これでサーキット・トレーニングと同じようにコースを何循環もしていくのである。だが,サーキット・トレーニングと違って,原則としてこのようなコースを2つ以上設けるのだ。こうすれば,1つのコースだけで終えるサーキット・トレーニングよりもずっと多くの運動種目をこなせることになる。これはたんにスタミナづくりのみならず,全身の筋肉を多角的に鍛えあげていく意味からいっても,たいへん効果的だといえよう。
 とくにこのトレーニングではサーキット・トレーニングと同じく,高い台にあがったり降りたりする運動やスクワット,あるいはフライング・スプリット,ハイ・クリーンなどのような脚や背の大筋群を使う運動をコースの中に必ず組み込んでおくのがよかろう。

エアロビックスからヒントを得た有酸素性ウェイト・トレーニング

 スタミナを高めるためのボディビルディングの方式としては,アメリカのパトリック・オーシェがつくった「有酸素性ウェイト・トレーニング」もある。これの基礎となったのは,アメリカのサンアントニオの空軍病院に勤務しているケネス・クーパー博士の説である。彼は全身持久性(スタミナ)を高めるための条件として,次の2つの基本原理を設定した。(「エアロビクス」ケネス・H・クーパー著,広田公一,石川亘訳,ベースボールマガジン社)
① 運動が十分に激しく,心拍数が1分間に150あるいはそれ以上に達する場合は,運動開始後約5分してトレーニング効果が始まり,その運動が持続される限り長く維持される。
② 運動があまり激しくなく,心拍数が1分間150に達しないか,あるいは毎分150拍のレベルを維持できないが,それでもかなりの酸素を必要としている運動の場合には,運動は5分で終わらずにさらに長く持続する必要がある。そして,その持続時間は消費される酸素の量によって決まる。

 この2つの原則を基礎においたオーシェは,オレゴン州立大学の学生を対象に研究した結果,「有酸素性(エアロビックス)ウェイト・トレーニング」を開発したのである。
 これは,8種目以上の主としてバーベルやダンベルを使う運動を選んでコースをつくり,45秒間に15回のテンポで1つの運動を終えたら,次の運動に移るまで1分間以内の休息をとるという方式をとる。そして,能力が向上するにつれて,15回の繰返しを20回まで次第に高めていく。20回に到達したらふたたび15回くらいできる重量に増量するか,または休み時間の1分間をもっと短かくしていく。この方式で,オーシェは教え子たちの脈拍数が20分間以上にわたって150以上に保てたことを報告している。このことは,つまり,クーパーの研究結果からも明らかなとおり,十分にスタミナを高めていけるトレーニング方式になっていることを物語っている。

ジョッギングをとり入れよう

 さて,ボディビルディングのシステムとして,スタミナづくりに効果的な方式を数種紹介してきたが,現実にそれらの採用ぶりはどうだろうか。
 筆者の知る限りでは,ボディビルダーの大半はスーパー・セットか,これに類似した方式を採用しており,スタミナづくりにはあまり関心を向けていないようだ。だが,中には小沢幸夫君のように,脚はもっぱらランニングでというタイプのビルダーもいないではない。
 確か1969年の秋ごろの号だったと記憶しているが,筆者はアメリカで盛んになったジョッギングについて記したことがある。
 これは何人かの人がグループをつくって軽く走るのだが,初心者は,まず500mくらいからはじめる。このとき50~100m走ったら次の50~100mは歩く,という具合にして決して無理をしてはいけない。そして少しずつ全体の距離を延長していく。たとえば5kmくらいまで少なくとも週に4~5回ずつこなせるようにするのである。むろん走る距離も少しずつ増していく。
 このジョッギングに関する本の中には,グループで話をしながら走るようにと指示しているのがある。苦しくなったらその話もとぎれがちになるからそのときは歩けばよいというわけ。これは誰にでもできるランニングの方式なので,ぜひおすすめしたい。

アーケン博士のユニークなジョッギング

 ところが,去る9月25日に日本高齢者協会の招きで来日して,朝日新聞東京本社ホールで講演をした西ドイツの医学者エルンスト・ファン・アーケン博士のランニング走法は,また風変わりで面白い。
 同博士は,ランニング時の目安として脈拍数を採用しているのだ。すなわち,1分間当り最高130まで上昇するような走り方がもっともよいとしている。この状態を簡単にいい表わせば,呼吸が荒くなったらスピードをゆるめるか,歩くかすればよいというわけ。そして,この1分間に130くらいまでのペースで走るときが,もっとも酸素の摂取能力が高まる。そして,この状態で運動をできるだけ長く続けていくようにするのがよい,と彼は説いている。
 60歳を過ぎる同博士は,毎日2時間ものランニングをこの方式でもって続けているそうだ。このトレーニング方式はアウスダウエル(持続)・トレーニングと名付けられて,現在では広く世界中の中・高年者のスタミナづくりのために活用されているときいている
 アーケン博士のトレーニング法は,奇しくも筆者が4年前に本誌に記したジョッギングと同じものだったが,脈拍数を入れた点と,距離を非常に長くした点が多少異なっているといえよう。しかし,この距離にしてもいきなり大幅に延ばしていくのではなく,運動にからだが適応していくにつれて次第に増やしていくという手法をとるのはいうまでもない。
 このトレーニング方式は,いかなる年代の人にも無理がなく採用でき,しかもスタミナや健康を知らず知らずの間に高めてくれるので,今後ビルダーは大いに採りあげるべきではないだろうか。
 すでに述べたクーパー博士のスタミナづくりのための2項目中の2番目の原則が,このアーケン博士の推奨するランニング方式にあてはまることは読者も先刻お気づきのことであろう。
 スタミナづくりにはインターバル・トレーニングもあるが,これは最高スピードの80~90%で100~400mを走って,1分間の脈拍数を170〜180に高めそのあとジョッグをするか歩くか,あるいは,完全に休んで脈拍数を120〜130に下げるのを1セットとして,これを10セットも20セットも繰返すという方式をとる。したがって,これはかなり運動強度が高いので,誰にでもすぐ採用できるというわけにはいかない
 このような意味からも,ビルダーはまず「ジョッギング」や「アウスダウエル・トレーニング」からスタミナづくりを開始するのがもっとも楽なアプローチなのではあるまいか。
(筆者は早稲田大学助教授,国立競技場トレーニング・センター指導主任)
[ 月刊ボディビルディング 1973年2月号 ]

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