フィジーク・オンライン

Ad by マッチョ29

Weekly Monthly Shopping

コンテスト・ビルダーとパワー・リフターは両立するか

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング
掲載日:2017.10.03
窪田 登

怪力フランコ・コロンボ

 昨年の4月初めのことである。IFBBジャパン1972年ボディビル選手権大会の京都会場において,アーノルド・シュワルツェネガーとフランコ・コロンボの2人が,ゲスト・ポーザーとしてわが国でははじめてのデュエットのポージングを披露した。この2人が同時に行うポージングは本場のアメリカでも滅多にはお目にかかれないといわれている。それだけに,観衆は完全に彼らに魅了されてしまった。ところが,この日,観衆はもう1つのことも堪能をした。
 かねがね大変な怪力者と伝えられていたコロンボが,232.5kgという巨大な重量(バーベル)を連続10回床からデッド・リフトをしてみせた。それも炭酸マグネシウムさえ手に塗らず,簡単なウォーム・アップをやったきりの記録なのだ。
 体重87kgという小兵ながら,バーベルを握る彼の指はフック・グリップすら用いていない。聞くところによると彼の最高記録は670ポンド(約350kg)とか。パワーリフティングでは他の2種目,つまりべンチ・プレスで445ポンド(約202kg),スクワットで585ポンド(約266kg)の記録をもつそうだ。
 そういえば,体重が113kgもあるシュワルツェネガーと一緒にトレーニングをしているコロンボが,すべてシュワルツェネガーと同じ重量でもって,同じ回数を楽に繰返していたのが筆者には印象的であった。そしてこのときフランコ・コロンボこそ筋力をも兼備した偉大なビルダーだ,と強く感じたものである。
〔フランコ・コロンボ〕

〔フランコ・コロンボ〕

昔のビルダーはカ持ちだった

 ところが,最近になって,筆者はしばしば「一流ボディビルダー,必ずしも筋力強からず」という話を耳にするようになった。考えてみると,一流ビルダーの中でウェイトリフティングにすぐれた記録をもっているとか,パワーリフティングで有名だ,という選手をあまりきかない。
 その昔は,一流ビルダーでありながら,リフターとしても著名な選手を沢山みることができた。とっさに頭に浮んでくるビルダーだけでも,たとえば次のような人たちがいる。
 1944年度のミスター・アメリカになり,1947年度の第1回ミスター・ユニバース(NABBA)に選ばれたスティーブ・スタンコ。彼は,1941年に世界で始めて1000ポンド(約453kg)の壁を破った偉大なリフターである。ベンチの上に仰臥して行なった彼のべント・アーム・プルオーバーの330ポンド(約150kg弱)は圧巻だ。
 また,1940年度,1941年度のミスター・アメリカで「ミスター・エブリシング」とまでいわれたジョン・グリメック。彼も力持ちとして名高い。1936年のベルリン・オリンピック大会のウェイトリフティング・へビー級選手としてアメリカを代表して出場した彼は8位を得ている。とくに余技として行なったコンチネンタル・プレス319ポンド(約145kg)は,1948年当時としては大変な記録であった。
 この挙上方法は,いったん床上から胸上までバーベルをクリーンして,腰を後ろに大きくひいて脚を完全に伸ばし,上体を前傾させて構える。そしてひいた腰を急激に前に突き出すと同時に,今度は逆に上体を後ろに反らしながらバーベルをプレスするのである。彼は前記の重量を体重88.5kgくらいのときに成功したといわれている。この他,ダンベル・プレスでは,117.5ポンド(約53.4kg)ダンベルを2つ使用して成功したと伝えられているし,ベンチ・プレスでも約170kgをもちあげたといわれる。ともかく,グリメックの全盛のころは,いまのようにはベンチ・プレスが行われていなかったのだから,この記録は立派である。
 ミスター・ユニバース(NABBA)3回の優勝の経験をもつイギリスのレジ・パークも快記録のもち主で,ベンチ・プレス530ポンド(約241kg),バック・プレス300ポンド(約136kg)が代表的だ。

ミスター・コンテストの功罪

 以上にみられるように,昔の一流ビルダーの中にはずいぶん傑出した怪力者が多かった。古くはボディビルディングの祖とまで称されているドイツのユーゼン・サンドウ然り。彼が19世紀末期から今世紀初頭にかけて筋肉美と怪力で世界中から注目を浴びたことは周知の事実であろう。
 しかし,1940年からはじまったミスター・アメリカのコンテストがウェイトリフティングをはるかに凌駕する人気を博するようになり,ボディ・コンテストだけを狙ったウェイト・トレーニング愛好者の数が大幅に増加しはじめた。
 これがもとで,ボディ・コンテスト自体の質的な向上も著しくなり,年を追うごとに参加選手たちの水準が高くなってきたので,ボディビルディングの他にリフティングの面にまで手を染めるのはエネルギーの浪費だ,とする考え方がビルダーの間でも支配的になってきた。
 また,ウェイトリフティング愛好者の方でも,年々世界競技成績が向上の一途にあるので,ボディビルディングを併用していくことが得策ではない,と考えるようになってきた。
 このようなところから次第に,ボディビルディングとウェイトリフティングは判然と区別されるにいたったのである。つまり,両者は独立し,専門化したというわけだ。

ビルダーとリフターは両立できる

 しかし,筆者は思うのだが,やり方によってはビルダーとウェイト・リフター,またはパワー・リフターの両立は可能である。もっともウェイトリフティングの方は来年度からスナッチとクリーン・アンド・ジャークの2種目だけになる。これらの種目は,ボディビルダーのトレーニングには全くなじみのないものであるだけに,ビルダーが一流の記録をつくり出すことは至難のわざであろう。
 だが,パワーリフティングの方は。ボディビルディングの基本種目でもって勝敗が競われる(元来,パワーリフティング競技会が誕生したのもボディビルダーの参加を期待したからだ)。したがって,努力次第では第2のコロンボも必ず現われるものと筆者は固く信じている。
 そこで,そのためのアプローチだがこれには次のようなものがあげられよう。
〔レジ・パーク〕

〔レジ・パーク〕

週3回制の場合には

 トレーニングを1週間に3回ずつ,隔日的に行う練習者の計画例を次に記してみよう。
 そのポイントは,1回のトレーニング時にパワーリフト3種目の中の2種目を選んで行うということである。つまり,月曜日にはベンチ・プレスとデッド・リフトを行い,水曜日にはスクワットとデッド・リフト,そして金曜日にはベンチ・プレスとスクワットをコースの中に組み込むというわけだ。
 この方法にしたがえば,1週間に3種目の練習を2回ずつ実施できるということになる。これならかなり重い目方のバーベルをそれぞれのトレーニング日に扱ったとしても,そんなにきつ過ぎることもあるまい。まずは誰にでも向くトレーニング方式なのではないだろうか。むろん,どのトレーニング
日においても,トレーニングに移る前には準備運動を丹念に実施することを怠ってはならない。
 各トレーニング日に割り当てたそれぞれの2種目は,原則として重いバーベルを用いて低回数・高セット,つまり1セット当りの繰返し回数を少なくして,そのかわりセット数を多く行う方式を採用するのがよかろう。その1例を前記の月曜日のベンチ・プレスとデッド・リフトに求めて,もっと詳細に示してみよう。(A図参照)
 A図からもわかるように,ちょっと重くなってきたら反復回数を少なくして,それでも使用重量だけは最高記録の80~90%くらいまで高めていくのである。そして,約80~90%に相当する重量に到達したなら,そこで数セット(ここでは3セット)とどまって,各セットともそのときに繰り返せる最高回数を試みてみるのである。
 こうして,これらの各セットをそれぞれ4~5回ずつ反復して行えるようになったら,そのときはこれらのセットで使用する重量を2.5kg~5kg増量する。A図では,ベンチ・プレスは140kgを142.5~145kgに,またデッド・リフトは190kgを192.5kg~195kgに高めるということになる。
 また,トレーニングを続けている間には,1週間か2週間に1回くらいの割合で,体調のよい日を選んで,これらの種目での最高記録に挑戦するのもよい。このときには,軽い重量を5~6回ずつ準備運動的にもちあげたら。15~30kgずつ増量して7~8セット目くらいのときに新記録への挑戦が行なえるようにはかる。そして,ときどき1回もちあげられる最高重量に挑戦していくことによって,挙上記録はいちだんと増していくのである。

週4回制の場合には

 週4回制をとる場合には,トレーニングが週3回制のときよりきつくなるのは止むを得ない。一案を示せば次のようになろう。
 月曜日にはベンチ・プレスとデッド・リフト,火曜日にはスクワットとデッド・リフト,木曜日はベンチ・プレスとスクワット,そして金曜日にはベンチ・プレス,スクワットおよびデッド・リフトの中のどれか2種目を採用するのである。とくに弱いと思われる種目を採用して,それらの強化にあたるのが賢明なことはいうまでもない。
 そして,どのトレーニング日にも,原則として2種目の中のどちらかについて最高記録の90%以上まで使用重量を高めていくのである。そのときの要領については,前に示したA図を参照していただきたい。もちろん,その日に予定した2種目について,共に最高記録の90%以上にまで使用重量を高めていけば理想的だが,これは個人差があることなので,自分の能力とよく相談して決めるべきであろう。蛇足かも知れないが,1週間か2週間に1回くらいの割合で新記録に挑戦していくのはいうまでもない。
 また,この1週4回制のトレーニング計画の場合には,2日連続してトレーニングを行い,1日休むという方法をとらないで,月曜日,火曜日,水曜日と続けてトレーニングをして,1日か2日休みをおいて金曜日か土曜日にもう1日トレーニングをするという方法を採用してもよい。
 月・火・水の3日間で採用する運動は,たとえば前記の月曜日,火曜日,木曜日の内容でよかろう。そして,金曜日か土曜日のどちらかで行う運動はパワーリフティング種目の全部,つまりベンチ・プレス,スクワット,デッド・リフトの3種目とする。この日は原則として最高記録に挑戦していくのである。
 月・火・水曜日と3日連続してトレーニングをする関係上,これらの日については特別に体調がよい場合を除きその日に行う2種目についてそんなに重いバーベルを使用しない方がよかろう。まず,最高記録の85%以下の重量でもってトレーニングをするに限る。
記事画像3

コースのあとの運動種目の選択は

 ところで以上は,それぞれのトレーニング日に実施するコース(内容)の中の2種目に限って説明を加えたに過ぎない。
 いうまでもなく,これらはパワーリフティング向きのトレーニングである。
しかし,これらの運動種目のボディビルディング面における効果も高く評価されてよい。すなわち,ベンチ・プレスで大胸筋と上腕三頭筋が,スクワットで大腿四頭筋と大殿筋が,そしてデッド・リフトでは脊柱起立筋と大腿四頭筋および大殿筋が発達するのだ。
 したがって,この2種目以外の運動種目としては,主としてこれらの運動では不可能だった筋群の強化ができるような運動を適宜選んで,コースをつくりあげるようにすればよいことに気づく。
 たとえば,ベンチ・プレスとスクワットの2種目を実施する日には,腹筋の運動としてツイスティング・シット・アップを,広背筋の運動としてチニングとベント・アーム・プルオーバーを,脊柱起立筋の運動としてハイパー・バック・エクステンションを,三角筋と僧帽筋の運動としてアップ・ライト・ローイングとベック・プレスを,大腿二頭筋の運動としてレッグ・カールを,下腿三頭筋の運動としてカーフ・レイズを,そして上腕三頭筋の運動としてバーベル・カールをつけ加えるという具合である。これなら全部で11種目の運動で構成されたコースができる。
 もっとも,ベンチ・プレスだけでは上腕三頭筋の発達が思わしくないと考える向きには,フレンチ・プレスをこの筋肉の鍛練のために採用してよいことは改めていうまでもない。
 コースを構成する運動種目の数は,その練習者の体力水準に応じて決めるべきである。セット数や反復回数,そして使用重量もそれまでのトレーニング体験から推して,自分に適したものを決めればよい。
 このようにして,この他の日のトレーニング・コースも独自のものを設定して,トレーニングを進めていくのである。3カ月もすればかなりの効果が期待できよう。また,その間に試行錯誤をしながら,コースの内容も自分により適したものへと修正されていくものと思う。

パワーリフティングとボディビルディングを交互に

 さて,筆者はこれまで1日のトレーニング内容の中に,パワー・リフトとボディビルディングの両者を盛り込んだトレーニング・コースの作成法について述べてきた。しかし,練習者の中には両者を別々のトレーニング日に実施したら,という気持をもたれる人があるかも知れない。
 たとえば,きょうパワーリフティング3種目を実施したら,その翌日はボディビルディングそのもののトレーニングに集中する,といった方式をとりたいという場合である。むろん,これもよい。
 1例をあげれば,月曜日と木曜日にパワーリフティングのトレーニング,火曜日と金曜日にはボディビルディングとするならば,週4回制のトレーニング計画ができあがる。
 パワーリフティングの方はすでにこれまでに何回となく述べてきたように最高記録の90%前後まで使用重量を高めていくトレーニング方法をとればよい。そして,体調のよい日をとらえて(1週間か2週間に1回くらい),これぞと思う種目では新記録に挑戦してみるのである。
 さらに,疲労の回復能力の旺盛な練習者は,週5回制,あるいは6回制のトレーニング方式をとってもよかろう。
それには,これまでに述べてきた要領を見本にして,自分の能力にもっともマッチした形でもって計画すべきであ
る。
 そして,パワーリフティングとボディビルディングは両立するのだ,という強い信念でもってトレーニングを押し進めていって欲しい。
(筆者は早稲田大学助教授,国立競技場トレーニング・センター指導主任)
[ 月刊ボディビルディング 1973年1月号 ]

Recommend