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●トップ・ビルダーの素顔● 坪井選手(’72ミスター東京1位 ’72ミスター日本7位)の一日

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.10.18
記事画像1
 坪井選手の朝は早い。まだ夜の明けきらない6時ちょっとすぎには起床する。朝食はここ数年ほとんど食べたことがない。たまにバナナかみかんを少し食べるだけだという。
 江戸川区南小岩にある自宅を出るのが6時半。会社の始業時間は8時だが千葉市郊外にある会社まで1時間20分はかかる。
 この日の坪井選手の服装は,黒のタートル・ネックに黒いスーツ。逞しいからだによく似合う。小さな紙袋をぶら下げていた。袋の中味はゆで玉子とみかん。坪井選手の栄養補給用かと思ったら,実は,起きがけに取材に訪れたわれわれのために,奥さんの君子さんがわざわざ用意してくれた心づくしの差し入れであった。
〔6:30 冬の朝はまだうす暗い。奥さんに見送られて家を出る〕

〔6:30 冬の朝はまだうす暗い。奥さんに見送られて家を出る〕

 6時55分,国電小岩駅から千葉行きに乗る。7時30分,西千葉駅下車。
 駅前には会社の専用バスが待っていた。バスで20分,坪井選手の職場である横河橋梁千葉工場につく。
〔近くのバス停でバスを待つ。まだ人かげもあまりない〕

〔近くのバス停でバスを待つ。まだ人かげもあまりない〕

〔6:55 乗客もマバラな国電で西千葉駅へ〕

〔6:55 乗客もマバラな国電で西千葉駅へ〕

〔7:30 駅前から専用バスで職場へ〕

〔7:30 駅前から専用バスで職場へ〕

 埋立地の近くの広大な敷地に建てられたこの工場では,巨大な橋桁やビルの鉄骨がつくられている。大きなクレーンがいくつもそびえ,その間には製品が山のように積んである。まさに男の職場という感じだ。
 坪井選手は横河橋梁の下請会社である川北工業の社員だが,一年中この千葉工場で仕事をしている。彼の仕事はユニオンメルトといって,鉄板や鉄骨の自動溶接が専門である。
 8時。サイレンとともに,作業服とへルメットに身をかためた数百名の社員は,工場前の広場に集まり,軽快な音楽に合わせて軽い体操を行い作業につく。さっき男の職場といったが,女性の姿は1人も見当らない。
 12時。急に騒々しくなったと思ったら,一度に数百名は食べられる大食堂めがけて社員たちが殺到して来た。たちまちセルフサービスのアルミの盆をもった長い行列ができる。私たちも坪井選手のご好意で一緒に食事をさせてもらう。
 この日の献立は,コロッケ大1個,生野菜,マカロニのカレー炊め,シューマイ2個,松前漬,みそ汁,ごはんどんぶり1杯。
 重労働の多い社員のために,他の会社の社員食堂と比較すれば,はるかにボリュームも多く,これで充分だと思うが,なんといっても栄養には特別うるさいビルダーにとって,カロリー,タンパク質ともちょっと物足りないような気がした。
―― 朝食ぬきで,昼は社員食堂で一般の人と同じ食事では栄養が不足だと思いますが,この補給にはどうしていますか。
坪井 私はもともと栄養にはあまり神経を使いません。なんでもおいしく食べればそれがいちばんの栄養だと考えています。この社員食堂の昼食は,1週間に3回は肉の料理があるし,栄養士さんがよく研究してつくってありますので,おいしくて栄養も豊富です。たまに牛乳1本,チーズ2~3個食後に食べる程度です。
―― 栄養剤とか間食はどうしていますか。
坪井 栄養剤は前に試験的に使ったことはありますが,いまはまったく使っていません。間食も勤務中ですから食べられません。

 1時。朝と同じように広場で軽い体操をして,社員たちはそれぞれの作業場に散っていった。
 4時。作業終了。最近は仕事が忙しく,火曜日と土曜日以外はほとんど残業がある。きようは火曜日なので定時終了。さっそく着替えて専用バスで西千葉駅へ。
 5時10分。国電小岩駅前にある第一ボディビル・センターにつく。坪井選手が身じたくをする間に,コーチの斎藤さんにジムを案内してもらう。
 ビルの4階にあるこのジムの第一印象は,実によく掃除がゆきとどいており,器具類の手入れや配置がよくできていることだった。それにダンベルが多いのに驚いた。欧米のジムでは,多角的にトレーニングするためにダンベルを豊富にそろえていると聞いたが,日本のジムでこれだけそろえてあるのは珍しい。
 やがてビルダー・パンツとトレーニング・シャツに着替えた坪井選手は約5分間の柔軟体操をしたのちトレーニングを開始した。

 きょうのスケジュールは,
☆準備体操 5分
バック・プレス 10セット
サイド・レイズ 10セット

オールターニット・プレス 8セット
チンニング 8セット

フロント・レイズ 6セット
スタンディング・ロー 6セット

バーベル・カール 6セット
フレンチ・プレス 6セット

インクライン・カール 5セット
ワン・ハンド・フレンチ・プレス 5セット

ラットマシン・プルダウン 5セット
スコット・カール 5セット
☆整理体操 5分
 以上であるが,回数は8~10回,重量はいくらか重めのものを使用する。そして,いずれもスーパー・セットである。休息はほとんどとらない。所要時間は約1時間40分だった。
 ついでにここで,坪井選手の1週間のトレーニングのアウトラインを紹介しよう。
 トレーニングは週6日。日曜日は休み。月曜日と木曜日は胸と背を中心にして約2時間半。火曜日と金曜日は肩と腕を中心にして約1時間半。水曜日と土曜日が脚と腕を中心にして約1時間半。
 坪井選手のからだは,どちらかというとバルク型であり,コンテストの前にはデフィニションを出すためのトレーニングに切り換えるが,シーズン・オフのいまは,ごく普通のトレーニングである。
〔8:00 軽い体操の後,作業にかかる〕

〔8:00 軽い体操の後,作業にかかる〕

〔12:00 社員食堂で昼食〕

〔12:00 社員食堂で昼食〕

 トレーニングを終わったのが7時少し前。シャワーを浴びて,あとは奥さんの待つわが家へまっすぐ帰り,楽しい団らんの夕食である。夕食の時間は残業のない日は7時半頃,残業のある日は9~10時頃になる。
 夕食のメニューは,うどん1人前生タマゴ2個,豚肉100gと野菜の油炊め,チーズ(25g)1個,牛乳2本。
 以前,本誌に連載したトップ・ビルダーたちの食事に比べると,坪井選手の一日の食事は量,質ともだいぶ見劣りするような気もするが,彼はこれで充分だという。
〔自動溶接機を使って作業する坪井選手〕

〔自動溶接機を使って作業する坪井選手〕

〔17:15 小岩駅前の第一BCでトレーニング〕

〔17:15 小岩駅前の第一BCでトレーニング〕

 われわれも一緒にご馳走になりながら,坪井選手にいろいろと聞いてみる
―― ボディビルを始めたのはいつごろですか。
坪井 昭和42年です。
―― 始めた動機は?
坪井 ちょうど結婚して間もない頃でしたが,テレビを見ていたら,その年,ミスター日本コンテストで優勝した小笹選手や武本選手の表彰場面が出てきたんです。それまではボディビルにはまったく関心がなかったんですが,筋肉美のあまりの見事さにびっくりして,なんとか自分もあんなからだになりたいと思って始めたわけです。
―― というと,最初からコンテストを目指したわけですね。その頃からからだにはある程度自信があったわけですか。
坪井 ええ,小さいときからスポーツはなんでも好きでしたし,体格や体力も人並以上はありました。
―― ボディビルを始めるとき,奥さんはなにかいいましたか。
坪井 別になんとも。以前は大酒飲みでしたから,ボディビルに熱中すればなおると思ったらしいんです。
―― いまは酒やタバコは?
坪井 タバコは全然やりません。酒は日本酒で1合,ビールは2日に1本程度にしています。もともと酒は好きですから,飲めば飲めるんですが翌日どうも調子が悪いんです。
―― 生活信条というようなものは?
坪井 別にありませんが,睡眠だけはできるだけ多くとるようにしています。とくにシーズン中は10時には必ず寝るようにしています。
 テレビを見始めると,どうしても遅くなりますし,連続もののドラマなどはまた来週も見たくなりますので,夏から秋にかけてはテレビは一切見ません。いまはシーズンオフですからテレビも見ますが,朝が早いので11時には寝るようにしています
―― いまどのくらい給料をもらっているか,よかったら教えてください
坪井 残業手当なしで9万8千円ですが,最近は週に4日ぐらい残業がありますので,手取13万円近くになります。
―― 昨年,いきなりミスター東京になって脚光を浴びたんですが,それまでの成績は?
坪井 いままでに6~7回コンテストに出ていますが,入賞したことは一度もありません。それが昨年は,ミスター東京優勝,ミスター実業団2位,ミスター日本7位と,3回出場して全部入賞したので自分でもびっくりしているんです。
―― ボディビルを始めた動機がコンテスト入賞だったのですから,一応その目的は達したわけですね。ところで,これからの目標は?
坪井 もちろんミスター日本で優勝することですが,とりあえず,ことしは6位以内にくい込みたいと思っています。いま29才ですから,年令的にみても飛躍的によくなることはむずかしいと思いますが,あと3~4年は現役で頑張るつもりです。
―― 趣味は?
坪井 趣味といえるかどうか,若いときはボクシングをやりましたが,いまはボティビルひとすじです。
 坪井選手もいっているように,新人といってもすでに29才。子供1人を持つ父親であり,インタビューしていて受ける感じも落付いていて,ベテランという感じであるが,仕事とボディビルに徹する坪井選手の気迫と情熱はまだまだ若々しい。
 きっと近い将来,この子連れビルダーが,ミスター日本コンテストの檜舞台で脚光を浴びる日がくるに違いない。
〔20:00 奥さんの手料理で楽しいタ食〕

〔20:00 奥さんの手料理で楽しいタ食〕

〔21:00 テレビを見ながらの団らんのひととき〕

〔21:00 テレビを見ながらの団らんのひととき〕

[ 月刊ボディビルディング 1973年4月号 ]

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