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JBBAボディビル・テキスト④ 指導者のためのからだづくりの科学

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[ 月刊ボディビルディング 1973年11月号 ]
掲載日:2017.11.28
日本ボディビル協会
指導員審査会委員長
佐野誠之

F 休養と栄養

 健康で強い身体(体力)をつくるためには,いままでに述べた条件や原則に従った適正な運動が必要なことは論をまたないが,その他に忘れてはならないのが休養と栄養である。すなわち,運動・休養・栄養のバランスが良く保たれたとき,最も良い効果が得られる。


(イ)休養もトレーニングのうちである
 疲労したから止むを得ず休養するのではなく,活動物資を貯え,また組織細胞を造成するために休養があると考えたい。もちろん,結果的には疲労回復に役立っているが,たんに疲労回復の手段として,疲労性萎縮(蓄積疲労)防止,または過労から生ずる疾病や障害の防止という消極的な休養の考え方ではなく,より積極的な役割を認めて適当適度の刺激であれば,骨格筋はその刺激に対して少なくとも24時間程度は反応を示すものであるから,身体組織細胞の造成やエネルギーの合成を考えた方が適当のように考えられる。
 身体が安静状態のとき,エネルギーを必要とするのは主として内蔵諸器官である。血液供給も約80%がこれら諸器官に廻り,骨格筋へはせいぜい20%程度である。逆に身体が活動状態に入ると,骨格筋へのエネルギー供給のため,最大努力においては血液の80%が骨格筋の方へ廻って酸素供給を活発にする。運動後血液が再び元の状態に戻るには,最低1時間程度か,それ以上要する。それ故に運動,食事,睡眠との間隔は,各々1~2時間おくことが望ましい。すなわち,交感神経,副交感神経のリズムの問題である。
 運動後,その疲労を知るために,①運動終了後5分して心搏数をはかり,120以上あれば強すぎるとし,さらに5~10分後に再びはかり,100程度であれば普通,それ以上あれば運動量を少し減らす。②運動を終わって10分後に,なお息が荒ければ強すぎると考えてよい(正常な呼吸数は1分間に12~16回である)。②強い息切れとか目まい,あるいは吐き気をもよおしたようなときは運動を中止する。以上のような方法により運動量を調節し,疲労に注意することが大切である。
 適切な休養をとることが体力づくりの効果を左右するものであることを銘記すべきである。


(ロ)栄養について
 体力づくりにおいては,増量にしろ減量にしろ,慎重にして広汎な配慮をもって実際の栄養(食事指導)を考えなければならない。
 たとえば,間違った食事の摂り方で減量を目指している人が多いが,そのために栄養失調をまねき,かえって健康を害している状態を見かける。
 食事の摂り方については,栄養生理学的に見て次のような点に注意すべきである。

① 1回の食事に,蛋白質,脂肪,炭水化物,およびビタミンやミネラル類(野菜・果物)等が適量に含まれていることが必要である。つまり,1日3食を通算して栄養のバランスを考えるのではなく,毎回の食事にバランスを考えるべきである。
② 1回の量と1日の量をよく考えること。そして,無理な食事回数を考えないことである。
  食事回数が少ないほど,1食に食べすぎの現象が起こり,皮下脂肪が沈着し易いといわれている。しかし消費熱量と摂取総熱量との相互関係により,一概にはいえない。1回の食事が1日の消費熱量の40%以下の器合,あるいは,その摂取熱量が摂取後4~5時間で消費されてしまうような状態では,脂肪沈着の心配はない。ただし,この条件を著しく上回る場合は脂肪沈着をきたす可能性が強い。
③ 特殊な食べ物より,ふだん食べ馴れているものの方が効率が良い。つまり,まれにしか食べないようなものは効率が悪いということである。したがって,つねに継続的に食するものであることが必要である。

 減量・増量いずれの場合でも,肉や血をつくる良質蛋白質,たとえば魚介・肉・豆類,および,身体の調子を整えるための野菜・果物類等は絶対に欠かしてはならない。
 たとえば,成人男子の減量コースの場合を考えてみよう。1日の必要量は蛋白質が体重1kg当り1~1.2g,脂肪量は20~30g以下で80~100カロリー分,糖類は80~100gで320~400カロリー分,野菜(緑黄色)は100gで30カロリー分が栄養素として最低必要量である。すなわち,以上の分量は栄養素として考えた数字であるので,これを一般の食事としてみると,肉類または魚類で1日に150g程度,野菜類で300g程度の量を,糖質の場合は茶わんに軽く3杯程度で前記の最少限必要量を充足してくれる。
 以上を3食または2食で,各々平均に摂ることが必要である。脂肪量を20~30gとしたのは,脂肪の中に溶けこんでいるビタミンA・D・Eや必須脂肪酸等を摂取するためで,動物性の脂肪を避けて植物油のものを摂るようにすることが必要である。これらに日常の活動によるエネルギー源としてのカロリーの上積みを平均して考えていけばよい。
  現実の問題としては,現体重による基礎代謝量,および標準体重に対する基礎代謝量を計算のうえ,さらにその他の生活条件等を考えて,三大要素の配分とカロリーを決定するとともに減量・増量等により栄養素の配分に注意すべきである。また,蛮白質不足による運動性貧血を起こすことのないよう注意すべきである。
 蛋白質は体重の15~20%であるが,大部分が細胞の原形質の主要成分となっていて,貯蔵蛋白質としては存在しない。蛋白質も細胞の構成に必要なもの以外は糖質に変えられてしまう。脂肪は体重の13~20%を占めている。この脂肪は複合脂質と中性脂肪に分けられる。複合脂質は蛋白質と糖質とが結合したもので,細胞の中にあって量的には少ない。中性脂肪はグリセロールに脂肪酸が結合したもので,これが貯蔵脂肪となり脂肪組織に貯えられている。
 エネルギーを体内に貯えるのに脂肪は非常に都合よくできており,糖質や蛋白質では1gにつき4カロリーしか貯えられないが,脂肪では1gで9カロリー貯えることができる。しかも,蛋白質1gを貯蔵するのに4gの水がなければならず,1000カロリーのエネルギーを体内に貯えようとする場合,蛋白質では1000gの水分を必要とするため,蛋白質と水分の合計で1250gの体重増をきたすことになる。これが脂肪ではわずか110gの体重増にすぎない。このように,身体の成分で比率が大きく,かつ変動し易いのは水分と脂肪である。
 この水分の増加で体重が増した場合を浮腫(むくみ)といい,脂肪が増したために体重が増加した場合を肥満という。
 以上が食事に関して知っておくべき最少限の必要事項である。(詳細については各論に述べる)

<7>体力づくりの方法論

 ボディビルというと,太い筋肉や逞しい体格づくり(狭義)の一面が強く押し出され,誤解のもとに,おおかたの体育家やスポーツの指導者たちからそっぽを向かれていたようである。しかし,最近では健康づくり,体力づくりの身体面に与える効果が顕著であることが認識され,ボディビルの愛好者が日増しに増加しつつあることは大へんよろこばしいことである。
 ボディビルによる効果は次の5点に要約できる

 ①姿勢の矯正
 ②関節の柔軟
 ③筋肉の発達
 ④内臓諸器官の機能増強
 ⑤精神力の涵養

 すなわち,たゆまず規則的な運動を続ける習慣により,忍耐力と克己心と実行力が養成され,肉体をあらゆる角度から訓練するために,調和のとれた筋肉の発達を促し,不均衡な姿勢を矯正し,内臓諸器官の活動を活発にし,総合的な体力を強くするものである。

 また,ボディビルの特徴は
① 正しい規則的な練習を根気よく続けることにより,他の運動に比し比較的短時日に相当の効果をあげ得ること。
② 年令・性別を問わず,誰にでも自己の力量(現有体力)に適した練習を,使用する器具や重量により,あるいはその練習回数により容易に加減調節することができる。
③ 保健体育面のみでなく,他のスポーツの基礎体力を養成する。
④ 身体の発育,発達不充分な部分の発達を促すことができる。
 以上の4つに要約できるが,しかし体力機能の面より考察すれば,ウェイト・トレーニングの適用の工夫や他のトレーニング方法との混用等により養成しなければならない面もあることに注意すべきで,ただ「ウェイト・トレーニング万能」を称えることは,誤解を招くおそれもあり,慎しまなければならない。

A 体力機能の要素

 体力づくりの方法論を考えるに当り先ず,機能面の基本的要素とは何か,について考えてみたい。
 巧緻性とか,平衡性とか,敏捷性とかあるが,それらが複合的に発揮されたとき,一言で表現されるのが「器用さ」ではあるまいか。つまり,この器用さという言葉の中にはいろいろな要素が含まれている。
 また,全身的な持久力を表現するのに「スタミナがある」とか「スタミナがない」とか表現されるだろうし,力強さを表現して「力が強い」とか「力が弱い」あるいは「非力だ」とか,柔軟性についても「柔らかい動きができる」とか「できない」とかというように評価される。
 すなわち,機能面を考えた場合,いまあげたような「器用さ」「スタミナ」「カ強さ」「柔らかさ」等の4つに大別して考えてよいであろう。細部については各論にゆずるとして,本項では以上の4つに大別して考えてみたい。


(イ)器用さについて
① 器用さは繰返し練習すること,すなわち,回数を多く反復練習することにより効果がある。
② 初歩の段階では応用がきかない。
③ 一度身につくと(たとえば水泳,自転車乗り等のように)なかなか忘れないものである。
④ 幼児期から成長するにつれて身につくものであるが,成人以後でも練習することによって修得できる。
⑤ とくに幼児期,少年期に身につけるよう心掛けねばならない。
⑥ 初めは意識的に行わねばならないが,反復練習により無意識のうちにできるようになる。

 このように,器用さは1つ1つの動作の反復練習の積み重ねが大切で,これは神経パターンの反応の問題である
 器用か不器用かは,必要な筋肉が必要な能力を出すタイミングの問題で,無駄な力で不必要な筋肉にまで力が入ると不器用となる。
 その動作なり姿勢に対して,不必要な筋力は力を抜いて動作することが必要で,疲労も少なくなる。短い時間ならば器用にす早く動作ができても,時間が長くなると,疲れて不器用なにぶい動きになるのは,器用さとは別のスタミナの問題である。


(ロ)スタミナ(全身的持久力)について
 ふつう日常生活では,身体の中の約1/3の毛細血管しか活動しておらず,他の2/3の毛細血管は休んでいる。心肺機能の増強とともにこの毛細血管の動員数を良くし,機能を能率よくすることがスタミナ増強につながる。
 毛細血管は筋肉や組織器官に酸素や栄養物を配送し,炭酸ガスや老廃物質を回収する役目を果たしている。したがって,筋や器官の毛細血管の数を増し,また毛細血管の壁の伸縮性をよくするように訓練すべきである。
 あまり弱すぎる運動は,酸素需要量が少ないので効果が少なく,効果をあげるためには何時間も費さねばならないし,逆に,あまり強すぎると「酸素負債」の状態を急速につくりあげ「嫌気的運動」となり効果が得られない。すなわち,スタミナを養成するためには運動時の定常状態を保つことが大切である。
 運動を始めてから,全身の組織や器官が動員され,定常状態に入るまでには少なくとも5分以上はかかるので,そのようなトレーニングを5分以上続ける必要があり,毎日か隔日に行うのがよい。いま1つ,骨を撓ませるような運動(刺激)が必要で,これによって骨髄の造血作用を盛んにし,血液中のへモグロビンを増やし,効率良い血液をつくることも大切である。
 運動による定常状態をつくり,心肺の機能を高めるとともに,毛細血管の動員数を増やして機能を良くすることが「スタミナづくり」の要点である。


(ハ)カ強さを増す(筋力を増す)ために
 力強さを増すためには筋力トレーニングが必要である。狭義のボディビルがこの面の強調となっており,一般にもそのように認識され,これが誤解の一因をなしている。
 筋力トレーニングによる筋肉内の化学変化は,24時間ぐらいかかると考えられているので,毎日または隔日に時間を決めてトレーニングを実施することがポイントである。
 筋力を増すためのトレーニング法として,動的・静的の2つのトレーニング法がある。
 動的なものをアイソトニックと呼び最大筋力の2/3以上の重量で行うのが通常である。普通最大筋力の2/3の重さとは,8~10回くらい動作を続けられる重さと考えてよい。そして普通次の原則により実施される。

 ①漸増的負荷の原則
 ②筋力増強と筋持久力の養成
 ③セット法より出発
 ④セット間の休息は2分以内
 ⑤運動動作のスピードは各人の呼吸に合わせる
 ⑥練習頻度は1週3~4回
 また,静的なものをアイソメトリックと呼び,訓練する部位の筋肉に,最大限の負荷をかけて6~12秒頑張ればよい。(アイソメトリックにはいろいろと論義もあるので,詳しくは各論にゆずる)


(ニ)柔らかさについて
 柔軟性の問題は,①関節の可動範囲がいかにあるか ②関節の柔軟性,の2点にある。
 筋肉の柔軟度如何は,不労性萎縮,過労性萎縮,寒冷性萎縮等によるもので,その疲労とか,運動不足とか,冷えによる筋肉の縮み方の問題である。
 ひどく疲れたときは,初めは筋肉が堅くなり凝って熱を持ち,さらに疲れると冷たく重い感じになる。このようなときは,毛細血管に血液が循環しなくなる。すなわち,筋肉が堅くなったまま,もとに戻らない状態で,これは筋肉だけでなく,神経や心臓にも影響して身体全体の健康に大きく影響するので注意すべきで,このトヌースの状態を防止することが大切である。
 筋肉が縮んでもとの状態に戻らないトヌースに対しては,柔軟体操で筋肉を引き伸ばしたり,マッサージや入浴等による手当が必要で,身体を冷さないようトレーニングシャツ等をつけるのもこの故である。
 しかし,運動不足が原因で萎縮した筋肉は,体操,マッサージ,入浴等も一時期に効果はあるが,根本的には不労性萎縮であるから,柔軟体操等で一時しのぎをするよりは,筋カや筋肉づくり,あるいはスタミナづくり等のトレーニングが必要である。
 ここで注意を要することは,不器用でギクシャクした動作は堅く見え,器用で流れるような動作やフォームは柔らかく目に映るが,これは柔軟性とは別に,器用・不器用による場合もあるので,柔軟性のテストによって何れかを判定する必要がある。その結果如何によって,当然対策が違ってくることはいうまでもない。


(ホ)柔らかさとリラックス
 必要なときに必要な筋肉だけが力を出し,不必要な筋肉は力を抜いて動作するのが良いので,この不必要なカを使わないことをリラックスという。不必要な力を出して動作することは早く疲れる原因である。
 リラックスの場合も,柔軟性よりも器用さの問題が大きく影響する。対策としては,不必要な力を出さないで,リラックスすることを反復練習するのが良い方法である。
 ボディビルのコンテストにおいて,ほとんどの選手がリラックスを理解せず,つねにリキんで立っているのは非常に見ずらいものである。少しでも大きく見せようとの意識過剰がそのようにさせるのであろうが,それはかえってマイナスである。(ポージングについては別項目で述べたい)
 筋肉はカを発揮しているときは堅く皮の如く,カを抜いたときや,カを発揮していないときは柔らかくゴムの如く,という状態が理想的なので,この点注意されたい。
 柔らかさを望むために「柔軟体操」や「マッサージ」あるいは「冷さない」ということだけを忠実に守るよりは,かえって「筋肉づくり」のトレーニングをすることによって,力が強くて少しのことでは疲労しない,また疲労してもすぐに回復する筋肉をつくることが大切である。
 力が弱く疲れ易い低い水準の筋肉やたんなる柔らかさよりも高い水準の筋肉,すなわち,強く柔らかい筋肉をつくるための適度の筋肉づくりのトレーニングが必要である。このために,ウェイト・トレーニングの筋肉づくりの効果を充分活用すべきである。
 筋力づくりやスタミナづくりのトレーニングは,筋肉中の毛細血管の機能を良くし,また,毛細血管の動員効率を良くするとともにその数を増やし,運動に必要な酸素や栄養物質の補給を良好にし,さらに運動によって発生した炭酸ガスや老廃物質の回収効率を良好にする効果を狙ったものである。このような効果が,疲れにくいタフな状態をつくり,疲労の回復も早くするものである。
 筋力づくりにおける一般的注意は,幼少年期には静的努力を要する負荷を支えるような運動は,身体にマイナスの影響を与えることが多いので注意しなければならない。少なくとも16~17才ぐらいまでは,極めて強い筋力を発揮させて静的努力が長く続くような練習は避けるべきである。(<6>のB指導計画上の原則,B年令的考慮参照)
 以上,体力の機能面の発達を求めるために必要なことがらを4つの要素に大別して略説したが,これらの要素をいかなる方法により具体的に促進さすかが指導者の責務である。

B 方法組立ての基本

 たんに身体の型態的発達面だけでなく,オールラウンド的体カの養成のために,トレーニング方法のいろいろな組合せや組立てが必要である。
 ウェイト・トレーニングは主としてセット法を原則としているが,単一に取り出してのみ考えるのではなく,広い意味のレジスタンス・エクササイズの内容の一部として,他のトレーニング法の原理方法等と適当に調和よく組合せることを考えるべきで,準整備運動と一体化した総合的な考え方で組立てる必要を感じる。
 たんなるセット法だけではなく,サーキット・トレーニング法による循環型式の組立ても必要になってくるだろうし,ストリクト・スタイルによる筋力増強だけでなく,チーティング・スタイルによる瞬発力の養成とか,ハイ・レピティションによる筋持久力の養成,あるいは,軽い負荷の連続運動による呼吸循環系持久力の養成等,それぞれの条件に適した組立てにより,オールラウンド的体力の養成促進にあたるのが指導者のつとめである。
 身体で筋肉の占める重量割合は,普通男子で約40%,女子では約36%であり,骨格は20~30才で成長を終わるものである。故に適当な刺激により筋肉と脂肪との置き換えも可能であり,体重調節による健康管理も可能である。
 身体の素成を考えると,体重の60~70%が水分であり,脂肪13~20%,蛋白15~20%,無機質5~6%,糖質300g程度をもって構成している。これらの事実を認識のうえ,個々の目標を確かめたうえで,各人に適した方法を決定すべきである。
 同一動作の反復のため,単調になり倦怠感をともなうおそれがあるときはこれが気分転換なり,その必要性なりを認識させ,運動の継続に必要な処置を考えるべきである。要するに単一の方法の繰り返しでなく,全般的な考慮のもとに,意欲的に実施せしめることが必要で,体力づくりのお仕着せによる低次元な方法より,高水準の体力づくりを心掛けるべきである。

 的確な組立てをするためには

①身体の運動器官としての知識が,解部学的基礎に立脚したものであること。
②機能面の問題として,○イ筋生理 ○ロ呼吸生理 ○ハ循環生理 ○ニ消化の生理 ○ホ神経の生理の5点を総合してトレーニングの生理としてつかむことが必要である。
③身体運動の形式と構成について,それがどのような効果,影響をもたらすものであるかを知ることも大切である。

 以上が身体運動を支える条件として必要欠くべからざるもので,その上積みに経験を合わせ持つことこそ最良であると信じる。
 これまでに多くの有名ビルダー等によって発表されたトレーニング法(たとえばスーパー・セット法,ヂャイアント・セット法,シークェンス法,セパレート法等々)や,何々体操,何々健康法等と称されているものも,その対象や目標によって,一時期に採用した組合せにいろいろの名称をつけたもので,段階や目標,その他の条件を考えて組合せた方法以外の何ものでもない。
 たんにこれらの表面的な名称に迷わされず,その本質をつかむことが重要である。各人の現状を見つめ,それぞれに適した組合わせをすることこそ大切で,何々法が最良であるかの如く錯覚することは厳に慎しむべきことである。
 機能面を考えた正しいトレーニングによる筋カトレーンニグが,決して関節の可動範囲や柔軟性,敏捷性を失うものではないことを強調したい。
[ 月刊ボディビルディング 1973年11月号 ]

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