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バーベル放談
三つの教訓

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月刊ボディビルディング1968年6月号
掲載日:2017.12.07
アサヒ太郎
 スポーツ・ライターをやっていると意外な話をあちこちで聞く。バーベルが,思わぬ効果をあげているというのも,そのひとつ。——これは,いささかハメをはずした"バーベル放談"である。

ソ連で女とケンカするべからず

 女子砲丸投げの第一人者,ソ連のタマラ・プレス嬢(いまは夫人?)——ものすごいオバサンである。広い肩,分厚いバスト,東京オリンピックでまのあたりに見たが,1発くらったら吹っとばされそうな女丈夫だった。
 ある日,早大重量あげのジムで,90キロ台のバーベルを軽く持ち上げ,これを目撃した私の若い同僚は腰を抜かさんばかりだった。
 こんな怪力の選手を相手に,日本のかよわい女性が勝てるわけがない。いや,男だって負けるねえ。
 こんな例がある。
 私の社のモスクワ特派員が,ある日アパートの窓からなにげなく見おろしていると,道路ですれちがった男と女が,"肩がふれた,ふれぬ"で口論をはじめた。「こりゃ,おもしろい」と見守っていると,いきなり取っ組み合いのケンカがはじまった。組んず,ほぐれつの大乱闘のあげく,女のほうが馬乗りになって,ボカン,ボカンなぐりつけた。男はぎゅうぎゅうノドを絞めあげられ,そのうえ,松の木のようなウデでパンチを浴びて,たちまちグロッギー。この勝負。完全に女のほうにガイカがあがったそうだ。
 ソ連は,元来,女がたくましい。男と変わらぬ重労働を平気でこなすし,みるからにすごい体をしているが,このケンカの場面にでっくわして,「なるほど」とうなったという。
 ——教訓第一。「ソ連で女とケンカしてはいけません」

バカになってトレーニングに打ち込め

 大相撲の世界で,はじめてバーベル・トレーニングをとり入れたのは,高島(元大関三根山)部屋である。
 毎場所,親方と顔を合わせるたびに「どんな調子?」とたずねてみたが,「なかなかいいねえ。若いモンがぜんぜんケガをしなくなったよ」との返事だった。
 おすもうさんは。シコを踏んで足腰をきたえ,柱を相手にテッポー(突き)のけいこ。それに朝のけいこで"ぶっつかり"をくりかえし,上位力士の胸を借りて,だんだん強くなっていく。
 体づくりは,これで十分と思われたが,それでもベーベルを使うと,別の効果が出てくると聞いて感心した。
 ついでだが,おすもうさんの体が大きくなるのは,朝のぶつかりげいこ,チャンコナベ,それにぼけーっと何も考えないですごすこと,この三位一体のタマモノである。関西にある東西会(砂かぶりに陣どって,タバコも吸わずに見物する好角家グループ)の中村会長にいわせると,"人間と動物の境界すれすれの生活をすること"が,あんなでっかい体を作る理由だという。角界きっての人気力士,大鵬も新弟子検査は1度落ち,2度目にパスした。いま140キロ余という目方だが,当時は75キロに満たなかったそうだ。
 これも,ついで話だが,高島親方の腕の太さ(上腕囲)を冗談に測ったら44.5センチだった。140〜150キロの巨漢ぞろいの力士も,腕の太さはボディビルダーとそこそこ,ということになる。こう考えると,バーベルできたえたビルダーの腕っぶしはものすごいものだ。
 ——教訓第2。「バカになってトレーニングに打ち込むこと」

世界ーへの道はバーベルで

 "木村のさきに木村なく,木村のあとに木村なし"と。一世にうたわれた柔道界のキリン児木村政彦七段は,いま母校拓大で柔道師範をしている。一時プロレス界に足を踏み入れ,力道山と死の決闘をしたのはあまりにも有名な話。
 その木村さんは,やはりバーベル(実はトロッコの車輪)で快腕をつくりあげた。
 先日,そのころの練習模様をたずねたら,50キロのバーベルを毎日500回頭上にさし上げたそうだ。それも6年間,"毎日欠かさずに"というのである。「よくもまあ」とあきれたが,当時の木村師範の猛げいこは筆舌を越えている。朝,昼,晩(タ方と夜の2回)町道場,警視庁,大学を回って練習し,おまけに木を相手に打込みのけいこ,バーベル……と1日10時間以上もきたえている。
 こんな木村さんだから,武勇談も数限りないが,これは後日の話として,「バーベルは大いに役立つ」とご本人は礼讃論をブッている。この猛練習ぶりは,昨年11月号の文芸春秋でご当人が書かれている。
「オレだったら,へーシンクに負けない」と豪語されるのもうなずける。
 ところで,そのへーシンクも,バーベルで120余キロの体をつくり,柔道界の世界チャンピオンになった。柔道をはじめたころは,80キロそこそこのひょろひょろだったが,練習の合い間バーベルを持ち上げ,山野をかけて足腰をきたえた。キコリのマネをして山から大木をかついで降りるなど,ウェイト・トレーニングを"地"で行なった話は天下に知られている。
 ——教訓第3。「世界一になりたいなら,バーベルを忘れるな」
 こんな話をならべたらキリがない。
 ひとまず,今回はここで筆を休ませていただこう。

トピック

スカイ・ボディビル・ジム開く

「JBBAニュース」でお知らせしたとおり,横浜東口駅前,スカイビルの隣りに,スカイ・ボディビル・ジムが開設された。
 写真に見られるように,330平方メートルという広大さを誇り,まあたらしい施設,用具の完備した練習場は,ボディビル・ファンにとって大きな魅力だ。皆さんのからだづくり,健康づくりの場として,気がるにご利用いただきたい。経営と指導の責任者は金子武雄氏である。
ジムびらきのレセプションで玉利理事長と歓談する金子会長。金子氏は力道山時代プロ・レスラーとして鳴らした人である。

ジムびらきのレセプションで玉利理事長と歓談する金子会長。金子氏は力道山時代プロ・レスラーとして鳴らした人である。

330平方メートルという広いスペースをもつ,快適で充実した練習場

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月刊ボディビルディング1968年6月号

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